食欲魔人日記 03年02月 第3週
2/17 (月)
あんかけ焼きそば〜 (夕御飯)
キャベツのカレー粉炒め入りホットドッグ
チキンクリームスープ(昨夜の残り)
牛乳

最近は、すっかり我が夫が"我が家のホットドッグ担当"としてホットドッグを作ってくれていた。他にも以前から"炒飯担当""炒めスパゲッティ担当""角煮担当""餃子担当(最初は"焼き担当"だったのにいつのまにか"タネ担当"も兼務)"などの担当分野があったのだけど、
「あ、君の方がステーキ焼くの上手いからステーキもだんな担当、ということで」
と私が様々な分野からフェードアウトしていくことでだんなの担当分野は微増傾向にある。それでも、我が家の食卓にのぼるのは初めてというようなものを作る時は、大抵私が動くことになっている。ボルシチとか。

今日はだんながネットサーフィンしている間に私がホットドッグを作った。スキレットにバターを溶かして刻みキャベツを炒めカレー粉をふり、隣のミニサイズスキレットでソーセージを炒める。切り込みの入ったドッグパンにキャベツを詰めたらソーセージを乗せ、ピザ用チーズをたっぷりとかける。あとはオーブンに入れてチーズを溶かしたらできあがり。数日前に食べたのは何か物足りないと思っていたのだけど、チーズが足りないのだった。やっぱりチーズは必要だ。
昨夜のスープも温めて食卓に出し、焼き上がったホットドッグにケチャップをにょろにょ〜ろとぶっかけて食べる。

アメリカのものは何でもサイズが大きめなのかと思いきや、ドッグパンや食パンは、日本で買うそれよりも少々小型だ。食パンは明らかに1片の長さが2割減ほどのサイズだし、ドッグパンも日本のいわゆる"コッペパン"サイズのものの重量2/3、という感じ。小型のドッグパンはホットドッグ用のソーセージの大きさにぴったりで、それを2個も食べると充分に満腹になれるのだった。2個も食べるなよという気もするけれど。

だんな特製 中華風あんかけそば
ロメインレタスのサラダ
ビール(Abita Golden)

授業が終わっただんなから
「そういえば焼きそばが余っているから、今晩は焼きそばにでもするー?」
とメールが届いた。それに対し、
「焼きそばだったら、あんかけの方がいいなぁ。キャベツか白菜か青梗菜か(←どれもウチにない)と豚肉(←これもない)とうずらの卵(←これはある)入れてさー、中華風の味つけで」
と返信する私。「それは俺に買ってこいということかー!?」と大学のパソコンモニター前で苦笑いしているだろうだんなを想像してしばし待つと、買い物袋を下げただんなが帰ってきた。
「白菜とか無かったから、キャベツ買ってきたよー。あと、特売の豚肉。あとね、帆立も買ってきた〜」
私の意向は完全に伝わっている。素晴らしいわー、だんなー。

"焼きそば"とは、アジア食材屋の冷蔵ケース内に売られていた2.5kgほども入った中華麺入りの巨大袋。食べても食べてもなくならず、留学生仲間に「出張料理するよ〜」なんて声をかけてはだんながキムチ焼きそばなどを作りに行っていたりした。それでも無くならない。黄色みがかった麺はかなり太めで食べごたえがある。縮れがなくどっしりとしていて、アメリカじゃあまり見ないタイプの麺だ。

同じくアジア食材屋で買ってきたうずらの卵を茹で、せこせこと殻を剥く。焼きそばの具は豚肉と帆立とキャベツと葱、そしてそのうずらの卵。中華スープ味のとろんとしたあんにして、茹でて炒めた麺の上からとろんとかけた。うずらの卵が入ると、なんでこんなに幸せな気分になっちゃうのだろう。鶏卵にはあまりありがたみを感じないくせに、うずらの卵の存在は妙に嬉しさが漂ってしまう。10個あった卵は私が4個でだんなと息子が3個ずつ。

非常に平和的な今日の夕食だったけれど、今日のテレビ番組は色々とショッキング。
Fear Factor」という、"恐怖を克服して賞金をもらいましょう〜"的な我慢比べのような番組があるのだけど、今日のは"ミミズん万匹に顔まで埋もれながら3分以内に固く結ばれた紐をほどく"などという内容で、たまたまそのチャンネルをつけてしまったことを激しく後悔しながら眺めてしまった。あああ〜、キレイなおねぇさんがミミズまみれに。
更にその後放映されたのは「Living With Michael Jackson」なる番組。長く隠されていた(隠れていた?)現在のマイケルジャクソンに密着したドキュメンタリー番組だ。他の地域では1週間ほど前に放映されていたりもしたらしいけど、この町で流れたのは多分今日が初めて。ある意味ミミズ万匹よりショックな内容だった。あ、あんな顔になっていたんですね……。子供時代に"スリラー"を見て陶然としていた記憶があるのですごく複雑な心境。

2/18 (火)
風邪気味のときは豚にんにくおじやに限ります
中華風あんかけ御飯

「途中でドーナツでも買っていくかなぁ……いってきまーす」
と出ていっただんなを見送り、私と息子は2人で遅めの朝御飯、というか昼御飯。
昨夜の"あんかけ焼きそば"のあんがまだ残っていたので、今日は御飯にそれをかけて中華丼もどき。残念ながら、うずらの卵は昨夜のうちに食べきってしまっていたのだけど豚肉たっぷり帆立たっぷりキャベツたっぷり。

そういえば、このへんの中華料理店は"くわい"を使うのが大好きらしく、どこで炒め物を食べても大抵シャキシャキした食感の輪切りのくわいが入っている。くわいって安いのかなぁ……となんとなく思いながらアジア食材店を覗いたところ、真空パックになった水煮スライスくわいが業務用パックでうじゃーっと販売されているのを見てしまった。こりゃ確かに他の野菜使うより安上がりかもしれない。

豚にんにくおじや
ロメインレタスのサラダ
マッシュドポテト(一昨日の残り)
蜂蜜がけバナナヨーグルト

午前中は元気だった息子が、突然昼過ぎてゴロゴロし始めた。なんだかほのかに熱っぽい。
「気持ち悪い?どっか痛い?」
と聞いてみると、
「ん〜とね、ぼくね、かぜだと思うなぁ〜」
と返された。いや、所見を聞いてるんじゃなくて。

とりあえず寝てなさい、とか、水分取る?とかぱたぱたしている間に、そういや私もイヤな寒気がさっきから感じられるなぁと自覚するに至った。ここ数日は、雪がちらつく日があったり最高気温が15度Cほどになったりとやたらと気温の変動が激しい。風邪ひいてくれと言わんばかりの気候だったよねぇ、と息子と2人でごろごろしていた。
「風邪、ですねぇ……」
「かぜひいたと、思うよー」
と、今晩はパーティーに出ているはずのだんなの帰宅を待つ。

夕飯は、「きもちわるいのー」と言う息子はヨーグルトのみ。相変わらず食欲は減退しない私は自分で豚にんにくおじやを作って食べた。豚肉とにんにくを御飯と一緒に水に放り込んで煮るだけ。今日は豪華卵入りバージョンだ。冷蔵庫に残っていたサラダやマッシュポテトも出したところ、脈絡はないけど充実した食卓になった。マッシュポテトもガーリック風味なので全体的ににんにく臭漂う夕食に。

更に、「まだなんか食べたい気分……」と、バナナを輪切りにしてプレーンヨーグルトをかけ、そこに蜂蜜をひと垂らししたものまで食べてしまったり。風邪ひいてるときのヨーグルトって妙に美味しいんだわぁ。

2/19 (水)
カルボナーラリングイネ (夕御飯)
だんな特製 腸詰入り炒飯
アイスティー

昨夜は盛大に風邪気味だった息子と、やや風邪気味だった私。一夜明けてみると、一見すっかり元気な息子と、相変わらずやや風邪気味の私がいた。一見すっかり元気とはいえ、息子はまだちょっと微熱がある様子。
「熱下がりかけなんだからおとなしくしておきなさいよー」
とか言っても、子供はそんなこと聞きゃしない生物なのだった。だからおとなしくしてろってばよー。

朝御飯は
「……ん、炒飯が食べたい……かな」
と呟いただんなが「作ったら君たちも食える?」と作ってくれた卵と葱の炒飯。スライスした腸詰入り。今日はちょっとばかり塩加減を誤ったのか少し塩辛い炒飯だった。腸詰がかなり甘いのでバランスが取れているようないないような。

「ほいじゃ、大学行って、ついでに買い物してくるよー」
と出かけていっただんなを見送り、ほんのり具合の悪い私と今や絶好調の息子。しばらくじたばたとかけずり回って遊んでいたのだけど、急にびたっと止まってパソコンの前に座る私に近づいてきた。
「なんかねー、あのねー……ちょっと、ヘン……」
額に触ると、体温は推定2度ばかり上昇していた。だ、だから言わんこっちゃないのに……。

カルボナーラリングイネ
ビール(Sierra Nevada Pale Ale)

結局すっかり高熱になってしまった息子は
「おかーさん、そばにいた方がいいと思う〜」
とか、
「おとーさあぁん、行っちゃダメェェェ〜」
と"母も父も僕のそばに、はべっていなさい"と泣きながら主張。泣いたり吐いたりと大変なことになってしまって夜7時を過ぎて洗濯機2杯分を動かしにいく羽目になった。

そういうわけで、夕飯は手早くカルボナーラのパスタ。以前買ってきたカントリーベーコンが使われないまま冷蔵庫に突っ込んであったのでこれを切ってみることにした。普通のベーコンよりもかなり水気が少ない、カッチンカッチンに固いベーコンだ。リンゴの木でいぶしたのだそうで、表面からはものすごく良い匂いが漂ってくる。
「これ、すっごく固いんだけどさ……」
「火を通したら柔らかくなるんじゃない?」
とえっさえっさとカットして炒めてみた。脂の部分が透き通っていてかなり良い感じ。生クリームと卵とチーズを合わせたソースにパスタとベーコンを放り込み、ざざざっと混ぜてから盛りつけた。うむ、見た目は良い感じ。

ベーコン、味と香りはものすごく良かった。良かったんだけど、やっぱり火を通しても固かった。
「皮がねー」
「そう、皮がねー、美味しいんだけどね」
「すっごく香りがいいんだよね。この煙臭さが、なんとも……」
「いいんだけどねー」
「噛み切れないのよねー」
と、ベーコンすまんと思いつつ噛みきれず飲み込めない皮だけは残しつつガジガジと囓って食べた。このベーコン、どうやら煮込み系(アメリカ人ならここぞとばかりに"キャセロール料理"とか)に向いているものらしい。
今度はキャベツと煮込もうか〜、などと盛り上がる我が家だった。

2/20 (木)
巨大な「Alpha Bakery」のパン (朝御飯)
「Alpha Bakery」の
 カレーパン
 ベジーロール
牛乳

ここ数日、
「カレーパン分が足りない」
と騒いでいた私たち。
「カレーパン分はカレーパンにしか含まれていないからな」
「カレーパン分が体内に不足すると、色々やっかいな症状が出てしまうしな」
などと、漫才を始めると止まらなくなる。そういえばロールケーキ分も足りないぞラーメン分も足りないし、と足りない栄養素(栄養素?)を求めて議論してしまうのだった。

ともあれ、現在圧倒的に足らないのは確かにカレーパン分だ。カレーパンには久しくご無沙汰だった。で、だんなが昨日一人買い物に出て「Alpha Bakery」のカレーパンを買ってきてくれた。しかも6個も。今日食べる分を除いて残り4個を冷凍保存にしておいた。

今日の朝御飯は、そういうわけでカレーパン。そしてだんなが選んできてくれた"ベジーロール"。もちもちした日本の菓子パンそのままのパン生地の上にコールスローサラダが盛られているのがベジーロールだ。セロリの香りが強い、いかにもなアメリカンな味のコールスローが日本くさいパンに不思議とよく似合う。このパン屋さん、経営しているのは台湾人のご夫妻だけれど修行した地が日本ということで日本の菓子パンそのままの味の各種パンが楽しめるのだった。チョコパンもクリームパンもあるけれど、なんといってもカレーパン。しっとりとしたひき肉ベースのカレーが適度な量のパン生地にくるまれ、全体がこんがりと揚げられている。旨い。しかもでかい。

息子は今日も熱。せっかく息子の分のチョコパンもあるのだけれど、
「チョコパン食べるとねー、……きもちわるくなっちゃうと思うよー」
とただ水だけを飲む息子。がんばれー、もうちょっとでチョコパンだー。

肉もやし炒め乗せ バターコーン味噌ラーメン 卵乗せ
冷茶

午前中だけ大学の授業があっただんなが、1時頃に帰ってきた。今日のお昼はラーメンを作るんだ、と昨日から何やら気合いが入っていた。
発端は、留学生仲間から借りた『銀河鉄道999 PERFECT BOOK』。久しぶりに銀河鉄道999の絵を見てしまい、
「そうそう、あの漫画見ると無性にラーメンが恋しくなっちゃうんだよねぇ」
「彼の漫画は、何しろラーメンとビフテキに愛情が注がれてるんだよねぇ〜」
と、頭の中が全面的にラーメンになってしまったのだった。

本当だったら醤油ラーメンに卵を割り落とすのが松本零士風なのだけど、ここはより飢えていた味噌ラーメンに。牛ひき肉ともやしを炒めたものをトッピングし、更にコーンもたっぷりと。ゆで卵を添えてバターをひとかけら、最後に焼き海苔も1枚すみっこに立ててみたりした。なんとも豪華なラーメンだ。コーン好きな私は肉もやしよりも大量のコーンを浮かべ、表面積の半分ほどを黄色い粒々が覆ってしまうことになった。

塩ラーメンのバターコーンも良いけれど、味噌ラーメンのバターコーンも美味しい。コーン増量は、なお美味しい。
肉もやしがたっぷりなだんなのどんぶりと比べると、全く違うラーメンのような光景に。溶けかけて溶けきってないバターを囓るのがまた美味しかったりして。

鶏釜飯
わかさぎの佃煮
大根の味噌汁
冷茶

自家製ニューヨークチーズケーキ
紅茶

夕食は、釜飯が懐かしいねぇということで、適当に作ってみた鶏釜飯。炊き込み御飯のレシピは山のようにあるのだけど、釜飯のレシピというのはあんまり存在しないのである。
「で、釜飯と炊き込み御飯の違いって何よ?」
「炊き込み御飯は炊飯器で炊く。お釜で炊いたらそれが釜飯……」
「ほんとうに?ほんとうにそれでいいのか?」
「いーんじゃなーい……?」
と、いまいち釈然としないまま作ったらいまいち釈然としない釜飯が炊きあがってしまった。一応理想形として「峠の釜飯」をイメージしながら作ってみたりしたのだけど、イメージはイメージのまま霧散してしまったらしかった。

にんじんと油揚げを甘辛く煮て米と混ぜ、骨つき肉から外した骨でスープを作ってそれで炊いてみた。味つけは醤油と味醂。表面に一口大に切った鶏肉を乗せて炊きあげ、炊けてから甘く煮た椎茸と銀杏を添えた。あと、きぬさやとか栗の甘露煮とかを盛りつけたかったのだけど、手元になかったのでそれは断念。思っていたより薄味になってしまったけれど、ちゃんとお焦げもできて一応釜飯風味にはなった……と思いたい。
いりこだしで作った大根の味噌汁と共に、ひたすら釜飯だけをはふはふと食べまくった夕御飯。具がたっぷりの御飯をひたすらわしわし食べる食事というのも、丼ものを食べるのとはまた違った悦びがある。

そしてデザートには、昨日の夕方に私がせっせと作ってみた初めての"ニューヨークチーズケーキ"。美味しいチーズケーキレシピはないかと探していて、参考にしたのは『Dean & Deluca: The Food and Wine Cookbook』。今のところ私には最高クラスに美味しいと思われるニューヨークの高級食材店「Dean & Deluca」のレシピ本にチーズケーキの作り方が載っているのを見て、思わずこの本を買ってしまったのだった。9インチの型で作るための材料は、クリームチーズが1kgほどにマスカルポーネが250gほど。

「うわー、チーズが1.3kg弱……」
と思いながらとりあえずはレシピを信じて材料を揃え、作ってみた。チーズの他には砂糖と卵と塩とバニラエッセンスしか入らない、何も独特な材料は使われていない感じだ。5cmほどの高さがある型にみっしりと生地を流し込み、湯煎にして75分かけて焼いていく。焼いた後は「オーブンの蓋を少しだけ開けて2時間かけて冷まします」なんて書いてあって、なかなか細かいところまで指示がある。
そして更に一晩かけて冷蔵庫で冷やしてみたチーズケーキ。できあがったのは「こ、これは確かにニューヨークチーズケーキ……」と唸りたくなるほどのボリュームたっぷりケーキだった。8等分に切ろうとしてその大きさにびびり、1/4を家族3人で食べることに。息子はやっと回復してきたようで、御飯を少し食べた後
「ちーずけーきなら、食べられると思うよー」
と果敢にチーズケーキにかぶりついた。

ねっちりどっしりとした、素朴な味の適度な甘さのチーズケーキだった。確かに美味しいけど、確かにニューヨークチーズケーキなんだけど、ニューヨークで食べたあの味とは何だか微妙に違う感じ。理想のチーズケーキ作成道はまだまだまだまだ遠き道のりらしかった。
……しかし、1.3kgもチーズ使って作ったケーキ、誰かにお裾分けしなきゃ、あれが全部家族の腹に入るかと思うと……。

2/21 (金)
グリルチキンの油淋鶏風 (夕御飯)
Big Soup Noodle Bowl "Miso with Tofu"
納豆
御飯
抹茶入り玄米茶

昨夜の釜飯の残りがあるにもかかわらず、私は無性に納豆飯が恋しかった。先日日本食材屋の冷凍ケース(!)に見つけて買ってきた3パックセットの納豆がまだ1パックも消費されずに冷蔵庫に入れられている。私は納豆が大好きなのだった。だんなはキライ。息子は大好き。留学生仲間のHさん宅においてもだんなさんが納豆嫌いで奥さんと子供さんが納豆好きということから、「"納豆がキライ"というのは劣性遺伝ではないのか」という議論が我が家で沸騰中である。

久しぶりに納豆をにっちゃにっちゃねっちゃねっちゃやり、チンした冷凍御飯に山盛りぶっかけて食べようとした。すると、1時間ほど前にチョコパンの朝御飯を済ませたはずの息子(本日私は盛大に寝坊して、だんなが息子の世話をしてくれていた模様)が、テーブルの横から目をきらきらさせてこちらを見ている。
「白いごはん、ぼくも食べたいなぁ……」
「なっとうも、食べたいなぁ……」
と訴えかけられ、結局私の納豆の1/3ほどは彼に奪われた。

その代わりにというわけじゃないけど、味噌汁代わりに準備してだんなと2人で啜ってみたのが「Big Soup Noodle Bowl」なる怪しいアメリカ製商品。見かけは背の低いカップラーメンという感じ。ごろりとしたカップのパッケージはどことなく和風な雰囲気を醸し出しており、「Miso with Tofu」という文字からするとインスタント味噌汁のよう。
「麺が入ってるみたいだけど」
「おまけ程度の麺だよねぇ?味噌汁みたいだし」
と買ってきてみたのだけど、期待はおおいに裏切られた。中身は「味噌汁(味噌スープ、ではなくて)のカップヌードル」という感じ。麺がみっちり詰まっており、そして味噌汁からはなぜかにんにくの風味が漂ってくる。日本のインスタント味噌汁の乾燥豆腐の品質より著しく悪いふよふよした豆腐が浮いている。葱なんかも浮いているけど……そもそもにんにく臭がしてくる時点で「なんじゃこりゃ……」なシロモノだった。
パッケージには「Fantastic」「All Natural」「Always Natural」の文字が。ある意味確かにファンタスティックな味わいだった。

「Copper Kettle」のMeat&3
 チキンポットパイ
 マカロニ&チーズ
 マッシュドポテトwithグレービー
 苺のサラダ

ここ数日風邪をひいていた息子、今日はやっと平熱近くまで下がってきた。一度盛大にぶりかえしたので今日も静養していましょうねと一日中家に籠もる私と息子。昼御飯は大学に出かけて行っていただんながテイクアウトも可能な南部料理屋さん「Copper Kettle」でMeat&3をテイクアウトしてきてくれた。発泡スチロールのケースには、今日のおかず"チキンポットパイ"がたっぷりと。その脇に私にはマッシュドポテト、だんなにはさやいんげんのキャセロールがこんもりと。そして区分けされたあと2つのへこみに、マカロニ&チーズとイチゴのサラダ。だんなにはマカロニ&チーズとオクラ(ガンボ)のフライ。ご丁寧に表面にオイルペーパーをかけ、上にころりとパンとバターまで添えてある。いつもながら愛に溢れたこの店の料理の光景だった。大雑把なアメリカ人とは思えない(←失礼な)気づかいがいちいち効いている。

今日初めて食べた苺のサラダは、ベビーほうれん草をメインとした葉野菜にスライスした苺とナッツ類を混ぜ合わせ、苺の果汁をベースにした甘酸っぱいドレッシングをかけたもの。赤いドレッシングの色はどぎついけど、味は少しもどぎつくなく薄甘くほのかな酸味が良い感じ。チェダーチーズの風味少なめな軽めのマカロニ&チーズと、クリームソースで煮込んだようなチキンポットパイも素朴な味わい。グレービーソースをだばだばだ〜とかけた柔らかいマッシュポテトだってなかなかのものだ。うまー。

グリルチキンの油淋鶏風
グリルポークの油淋鶏風(?)
クレソン
中華風卵スープ
羽釜御飯
ビール(Sierra Nevada Pale Ale)
冷茶

「探せばある」という話も聞いたことがあるけれど、我が家の周囲のスーパーでは「骨なし鶏もも肉」というものを見かけることはない。日本では普通に
「鶏もも、3枚ちょうだいねー」
と注文して出てくるあの鶏もも肉が、ないのである。むね肉は皮つき皮なしとご丁寧に種類がわかれているのに、もも肉というと骨つきの、学校給食でクリスマスあたりに照り焼きになって出てくるような、あの骨つきのやつしか置かれていないのだ。むね肉よりはももが好き、1枚肉のももを焼いたり揚げたりして食べると美味しいのよね、と思うとなかなか難しい状況なのだった。

そして最近、ついに「骨つき肉から骨を外してみるか〜」と、私はがんばるようになった。魚の構造だってろくにわかっていないのに、動物の構造なんて余計にさっぱりわからない。
「関節……外すのよねぇ?」
「要するに、最終的に1枚の肉になればいいんだから……」
と昨日、鶏スープを取ろうという目的もあって肉から骨を外してみた。日本から持ってきた、魚のさばきかたも載ってる『おかず超決定版』なんて本にもさすがに「鶏のさばき方」なんて載ってないし。

で、どうにかぐちゃぐちゃになりつつも1枚肉らしきものが作れるようになった。日本のお肉屋で買うようなキレイなもんじゃなく、厚さもまちまち。それでも、塩胡椒して焼いて喰ったら旨そうなものにはなった。
今日はそれを使って油淋鶏風。本当は揚げ鶏に甘酸っぱいソースを葱と共にかける料理だけど、揚げ鶏はめんどくさいので焼き鶏で。皮目に焦げ目を作るようにこんがり焼いた。
「僕が肉を焼いてあげよう」
と台所に立っただんなは、「これじゃ……ちょっと足りないかも」と、おもむろに豚肉まで冷蔵庫から出してきて、豚肉も同時にグリルすることに。できあがったのはグリルチキンの油淋鶏風と、グリルポークの油淋鶏風というちょっと謎な光景になった。添えものの野菜はちょっと不似合いかもと思いつつ残りもののクレソンを山盛りに。

「焼き豚の油淋鶏風って、どんなよ……」
と思いつつ葱ふって甘酢醤油をかけて食べたみたけど、これがなかなか悪くない。黒胡椒をガーリガリかけてみたら、またちょっと美味しくなった。

2/22 (土)
Charley's(Nashville)にてチーズバーガー 野菜山盛り (昼御飯)
Nashville 「Charley's」にて
 6oz チーズバーガーコンボ

ここしばらく、この町は雨ばかり。昨夜からの予報は"雷雨"で、夜中からガランガランとすごい雷の音が響いていた。
「雨だけどー」
「土砂降りだけどー」
「……何か食べに行きますか?」
と、ブランチに目指したのは"Noshville"というお店。ニューヨークスタイルのデリなのだそうで、「スモークサーモン入りのオムレツとかフレンチトーストが美味しいわよー」という噂を聞いていて一度行きたいと思っていたのだった。

が、雨の中目指して行ったそこは大行列。11時半という時間もあってか席を待つ人が20人以上も並んでいた。仕方なく、今日はこの店を諦めて近くにある馴染みのハンバーガー屋さんへ。チェーン店じゃない「Charley's」というお店、名物の6ozチーズバーガーはボリュームたっぷりだしセルフサービスで挟む野菜も新鮮だしで近隣学生のみならずおばちゃんおっちゃんにも愛されている。今日も私たちが注文をした直後、10人ほどのおばちゃんの団体がハンバーガーを食べに来ていた。

注文してから焼かれるハンバーグとパンは、数分後に名前を呼ばれるカウンターに取りに行かなければならない。バターを塗って焼いたパンの上にチーズがとろけたハンバーグが乗っただけのものが渡され、お客はワゴンに盛られた野菜を自分でトッピングする。ピクルスは4種類ほど、レタスも普通のレタスとリーフレタスの2種類、更に玉ねぎだのトマトだのマッシュルームだのスプラウトだのが用意されていて、全部盛りつけると大変なことになってしまう。今日はレタスとトマトと玉ねぎとピクルスとスプラウト。全部積み上げた後にマヨネーズも少しかけ、「また分厚くなってしまった……」と後悔しながら両手でぎゅうぎゅう挟んでかぶりつく。握力に訴えないと食べられないハンバーガーを創作するのは止めよう、と毎回ハンバーガーを受け取るまでは思うのだけど、ついついいつのまにかボリュームたっぷりなハンバーガーになっちゃうんだなぁ。大体、180g近くもあるハンバーグのボリュームがすごいのだから、野菜を少なくしたところであまり変わりはないのかもしれない。

他の人を見ていると、人によって色々独自のポリシーがあるようで、横の席のおばちゃんは肉を一度パンから持ち上げ、その下にレタスとトマトを挟んでいた。肉をその上に積み上げた後、改めて玉ねぎやマッシュルームを盛りつけている。ピクルスはハンバーガーに挟むものじゃなくてつまむものよ、という感じに紙皿にピクルスだけを大量に盛りつける人もいたり。レタスや玉ねぎを別個に盛りつけてサラダのようにして食べるのもありなのだけど、6ozバーガーとフライドポテトを食べるとかなり満腹になるのでサラダを食す余裕まではなかったり。

それにしても大行列だったのがショックだった"Noshville"。今度は平日の午前中にでも来てみようかしらん。

ひつまぶし
鶏肉と銀杏の茶碗蒸し(大)
ビール(Corona)

先日、日本食材屋で9ドルほどの真空パック冷凍鰻を買ってきた。
「冷凍だけどね……」
「9ドルは、安くはないけど」
「でも、けっこうでっかいよね」
と、"美味しくなくてもともと"という気分で買ってきてみた。一家で鰻重にして食べられるほどの量もないし品質の程もわからんし、ということで名古屋名物"ひつまぶし"にして食べることに。"ひつまぶし"にはだし汁が必須なので、ではたっぷりだしを取って他の料理も作りましょう、と茶碗蒸しも決行することにした。

茶碗蒸しができるような適度な器がなかったので、大きなサラダボウルにたっぷり3人分ほどを作ってしまう。具は鶏肉と銀杏、干し椎茸。蒸し加減がわからないのでちょこちょこ蓋を開けて確認してしまいつつダッチオーブンでじくじく蒸した。卵が小さめだったのかちょっと柔らかめになってしまったけれど、プルプルと良い感じに固まった茶碗蒸しに。

そして、ひつまぶし。万能葱を刻み、海苔を刻み、わさびを用意しておく。だし汁は吸い物と同じような味つけにしておき、鰻は解凍してからスキレットで酒をふりつつ温め、ざくざくと細かく刻む。あとは適当な器に"御飯・鰻・鰻のタレ・御飯・鰻・鰻のタレ"といった感じに盛りつければできあがり。どうせ食べる直前に全体をざくざくっと混ぜてしまうので丁寧に"御飯・鰻"なんて層を作らなくても良いような気もする。

で、食べ方は
1/3ほどは"鰻の混ぜ御飯"として、
1/3ほどは葱と海苔を散らし、わさびを添えつつ"薬味がけ"として、
1/3ほどは薬味がけ混ぜ御飯にだし汁をかけて"うな茶"として食べる。
……という感じ。うな重も"鰻を食ってます〜"という気分が盛り上がりまくるので大好きだけど、鰻料理として最高に美味しいのは"ひつまぶし"なんじゃないかと私は密かに思っている。薬味がけ御飯からうな茶への流れがもう、涙ちょちょぎれるほど美味しい。鰹と昆布のだしの味が鰻と似合うし、しかもわさびがさりげなくアクセントになっていくらでも食べられそうな勢いがつく。
早々に第一、第二段階をクリアして第三段階のうな茶だけをさらさらと2杯3杯と啜っていたところ、だんながしみじみと
「君は……ほんっっとーに、うな茶が大好きなんだねぇ……」
と呟いた。
いーじゃない、大好きなのよぅ。

2/23 (日)
名古屋名物、イタスパ (昼御飯)
卵御飯
納豆
鰹節
焼き海苔
わかさぎの佃煮
鶏肉とごぼうの吸い物
冷茶

「朝飯は、ご飯だ!」
「卵御飯が食べたいなぁ……」
と、冷凍御飯をチンすることで始まった日曜日の朝御飯。生卵はそのままだとサルモネラが怖いので"1分ゆで卵"にする。理論上はこれでサルモネラが死滅するらしいのだけど、気分は相変わらずロシアンルーレットだ。早くそんなこと気にせずに生卵をばくばく喰える環境に戻りたい……ような戻りたくないような。

昨夜の"ひつまぶし"に準備して残っただし汁には鶏肉とごぼうを放り込んで吸い物にし、ついでにテーブルに御飯のおかずをずらりと並べた。納豆に焼き海苔、佃煮、ついでに鰹節。御飯1膳じゃ絶対足りない光景になってしまったけれど、そこは無理矢理1膳で食べる。卵御飯に納豆かけて、海苔巻いて食べてみたり。

だんな特製 イタスパもどき
アイスカフェオレ

Lodge社のスキレット及びダッチオーブンを愛してやまない我が家だけれど、あまり使われていないFajita Kitなるものも2個ほど所有しているのだった。ファヒータと名がつくからには、メキシコ料理ファヒータを作るためのフライパンなのであるけれど、これを初めて店頭で見た私たちは
「おおー、ステーキとかアツアツのまま食卓に出せるねぇ」
とか、
「イタスパが作れるじゃん!」
などと全然別の事を考えていたのだった。一度はきちんとファヒータ用として使われて我が家でデビューしたこの楕円の持ち手つきパン、今日はイタスパ用として活躍していただくことに。

"イタスパ"とは、名古屋のローカルフードで"イタリアンスパゲッティ"の略らしい。鉄製の皿に溶き卵を流し、ナポリタンスパゲッティを盛りつけたようなものだ(名古屋旅行時のイタスパレポートはこちらから)。
なんでも「名古屋でスパゲティと言えばイタリアンだがね」と言われちゃうくらいメジャーな料理らしい(ホントかなぁ……)。
雑誌で見かけて「これ、美味しそう!」と騒いでいた私たち(主に我が夫)は、実際名古屋でそれを食べて「やっぱりうみゃ〜!」となお騒ぐことになった。
目の前にあるのは、イタスパを作るのに理想的な美しき鋳鉄のフライパン。だんなが「ウィンナーでしょ、玉ねぎでしょ……」と材料を揃えて昼御飯に作ってくれた。

具はウィンナーと玉ねぎとピーマン、そしてひき肉。本当はベーコンか薄切り肉かが欲しいところだったけど冷蔵庫の中のひき肉処分ということでひき肉使用にふみきった。バターとケチャップで炒めた、ナポリタンスパゲッティと何ら変わりないその麺を熱した鉄板に盛りつけて溶き卵を回しかける。すぐさま「じゅうぅぅぅぅ」と卵に火が通っていき、半熟に焼けたその卵を絡めつつ麺を食べる。
要するに"ナポリタンスパゲッティ卵添え"なんだけど、やっぱりこれがなかなかどうして美味しいのだった。

マグロの刺身
御飯
ビール(Abita Ambar)

今日の昼御飯は、たいそう重かった。ずっしりと胃にきた。
「あのさー……具沢山のスパゲッティはさ、麺を控えめにした方がいいと思うよ……」
「そうね、俺も"ちょーっと茹ですぎたかなー?"って思ってたのよね……」
と、なんて言いながら午後は動けないほど満腹だったのだった。

で、夜は結局マグロの刺身とビールと御飯というやる気のない内容に。確かマグロのステーキをしよう!とかユッケ風の丼にしよう!などと予定して買ってきたマグロだったはずなんだけど、スライスして練りわさびと醤油を添えるだけという"晩酌"な光景に。1膳分ほどの御飯を用意してだんなと分けあってさらさらっと胃に流して夕食終了。しかしまだ胃が重い……。