7月19日(水) 私は"ママ・グリン"……

バリ島5日目の朝。いよいよ最後の朝御飯だ。
4日続けて同じ場所でのブッフェ朝食。さすがに食べ尽くした感がある。最後のテーマは当然「バリ飯」。

大きな白皿にたっぷりのナシ・ゴレンとミー・ゴレン。魚のフライや炒めマッシュルームも飾り、ナシ・ゴレンの上に目玉焼きを1つ焼いてもらって乗せてもらう。牛乳とアップルジュースをコップに1杯ずつ。
少しばかり上品な味付けのナシ・ゴレンはやや薄味でいくらでも食べられそうな感じがする。甘辛いインドネシアのこの炒め飯はやっぱり美味しい。

そして第2ラウンドはブブル・アヤム。鶏肉のお粥に今日もたっぷり赤玉ねぎのフライや茹で卵、葱を乗せてきてわしわしと食べる。バリ風一色にしようと思った今日の朝食だったけれども、ついついブッフェコーナー入り口にあった日替わりデザートコーナーのドーナッツが美味しそうで1ついただいてきてしまった。砂糖をまぶした、素朴な感じの揚げドーナツだ。美味♪

「今日は"焼き"に入るぞ」
と決意して、午前中からホテルのプールで遊びつつ日光浴。デッキチェアに寝ころんでは表も裏も綺麗に火を通す。いや、違った。"陽"を通す。SPF30の日焼け止めを3日間塗っていたら、全然焼けてくれないので、今日はオイルなーし。これが後々の悲劇を呼び起こすきっかけになってしまうんだけど。

今日はちょっと曇り空だ。パーッと晴れたかと思うとまたあちらから雲がもくもくやってくる。
11時過ぎて日が陰ってきてしまったので、お昼御飯にすることに。午後も水着で遊びつづけるつもりでいたため、プール近くのカフェで水着のまま食べるか、ルームサービスでも取ってベランダででも食べるか、と考える。
部屋の近くのラグーン沿いにある小さなカフェにソト・アヤムがあったらそれがベストなんだけど……と思ったら、あった。ラッキー♪

水着のまま木製のテーブルに腰掛けて夫婦してソト・アヤムを注文する。飲み物はマンゴージュースにグレープフルーツジュースにジンジャーエール。
やたらと濃厚な、若干の青臭さが香る見事にオレンジ色したアップルマンゴーのジュースはこってりと甘い南国の味だ。

そして今回2回目のソト・アヤム。鶏肉ベースの黄色いスープに春雨やもやしや肉が沈んださっぱり塩味のスープは上品ながらも典型的な味がした。海老せんべいとサンバルソースとライムがついている。ライムを絞るとまた一段とさっぱりして美味しくなった。両手で抱えるほどの大きな蓋つきのポットに入ったソトアヤムは春雨もたっぷりで1皿で充分1回の食事として成り立つくらいの量がある。
この味日本でも是非再現したいものだけれど、なかなか手に入らないようなスパイスが必要らしい。せめてインスタントの「ソト・アヤム・ミックス」なんてのがあればサイコーなんだけど、それもどうやらトラギアでは売っていないみたいだ。どこかに売ってないかしら。

ホテル内 "SAPPHERI CAFE"にて
SOTO AYAM
FRESH MANGO JUICE

午後も引き続き"焼き"に入る。
息子と遊びつつ、子供用のプールにごろごろと足を伸ばして寝そべって全身を焼こうとしていたら、だんなが
「ああ、おゆきさんが"ママ・グリン"になっている……」
(注:"バビ・グリン"が"子豚(バビ)の丸焼き(グリン)"という意味の料理名)
とか呟いていた。失礼な。したら君は"パパ・グリン"ではないか。
息子は既に、見事なまでに茶褐色の肉体に良い具合にこんがりと美味しそうに焼けている。まさにバビ・グリンだ。

いくら焼きたいからと言って、日焼け止めも塗らないで午後の太陽の下にいたのはかなりまずかったらしい。
「おゆきさん!背中も肩も真っ赤だよ!」
とだんなに指摘されて初めて身体中がヒリヒリしているのに気がつき、慌てて部屋に戻ることに。
時刻は丁度2時半を過ぎたところ。シャワーを浴びてアフタヌーンティに行くにはぴったりの時間だ。うはー、シャワーのお湯がしみるしみるしみる。まずい。

3時を数分過ぎたところ、他の客もほとんどいないサービス直後の時間にロビーのソファに腰掛ける。砂糖と牛乳を入れた甘い紅茶と、お菓子は今日も2種類ある。
1つは空気をいっぱい含んだフカフカのチョコレートケーキ、もう1つはピサン・ゴレン。バナナの揚げ菓子だ。でも……おととい食べたピサン・ゴレンと随分違う味がする。上にかかっているのはカスタードクリームではなくオレンジソースだ。それに衣もついていない。

見ると、ロビーの片隅の鍋ではオレンジソースが満たされていて、そこへ皮を剥いたバナナをナイフで切ってはどかどか入れているようなのであった。バナナのフライ、というよりはオレンジ煮込みという感じ。ナッツが上にぱらりと散らされていて、ちょっと酸味のあるバナナはこれはこれでとてもイケる。

「アフタヌーンティって言っても、3段重ねのやつが来ちゃうようなやつは畏まっちゃうけどこれはいいなぁ〜。」
だんな、このサービスをいたく気に入ってる様子。3日連続で来ちゃうくらいだから相当気に入ってるのだと思う。

今日はいよいよ帰国なのである。
ただし、フライトは午前1時40発の超深夜便。それまでの時間、チェックアウトしたらくつろぐ場所も無くなってしまうので、ホテルにレイトチェックアウトの旨、あらかじめお願いしておいていた。
夕方5時までは無料で延長できるけど、それ以降ならば1日の金額の半額いただく、とのこと。夕食後にちょっとのんびりできるならと、午後11時のチェックアウトをお願いした。だから今日もほとんど丸1日のんびりできるのだ。

アフタヌーンティから帰ってきた後はひとしきり荷造りをする。中身を全部クローゼットに入れてしまっていた服や小物をスーツケースに1つ1つ入れていく。だんなの大きなスーツケースの半分は、おみやげ物でぎっしり埋まってしまった。何がいけないってそりゃ、ガルーダのお面やBALIOPOLYや石製マンゴスチンがいけないのである。

さー、最後の夕食だ。
例によって毎日配達されるホテル情報ペーパーに気になるものが載っているのである。
「Jegog Cultural Show - Every Wednesday night at Temple Garden, with International BBQ Buffet dinner offering freshly grilled meats and seafood cooked to perfection with soup, salads and dessert buffet, only at Rp 230,000-.」
ジェゴグ!それはとても嬉しい!というわけで昼前に予約をぬかりなく済ませた私たちはいざいざ、と行ってみることに。

本当はウブドゥという地域に行ってきちんとしたものを見る方がずっと素晴らしく楽しいのはわかっちゃいるけど、2歳時同伴の今回の旅行は、ひたすら"楽をする"に重点を置いているのであった。ホテルの洗練されたブッフェ料理を食べながら、ついでに子供がいても歓迎してくれるスタッフに囲まれながらショーを見られるのだから多くは言うまい。

午後7時の時間よりちょっと早く部屋を抜け出して、ホテルのおみやげ物屋などを覗きつつ会場に向かう。朝食を毎日摂っていたカフェのすぐ横には小ぶりながらもバリ建築の寺院があり、ショーはその前でやるらしい。

私たちは最前列の良い席だった。左側にはなんの障害物もなく、大きなジェゴグが9台並んでいる。竹製の木琴、と言えば良いだろうか。大きなものは管の1つが数メートルもありそうな大きなものもある。間近で見るのは初めてかもしれない。

ジェゴグの隣には舞台もしつらえられている。今日は音楽だけかと思ったけれども踊りもやるらしい。わくわくわくわく。
ホテル滞在4日目ともなると、スタッフの中には顔を覚えてくれた人もいるようだ。息子の名前を覚えて、顔を見る度
「○○サーン、オ元気デスカー?」
と名前つきで陽気に声をかけてきてくれる人もいる。

前座のバンド演奏が始まる中、今日も料理を堪能する。たっぷりの前菜から6種類ほどをお皿に盛ってくる。今日のガド・ガドは厚揚げに切り目を入れて中にモヤシやにんじんを詰めたアレンジものになっている。甘いピーナッツソースが相変わらず美味しい。
そしてそして、メイン料理コーナーには今回も愛しのバビ・グリンが〜〜〜♪

「I love Babi-Guring, very very much!」
などとバビ・グリン付きのおっちゃんに伝えたら笑いながら豚肉も皮もてんこ盛りにして下さった。緑色のスパイシーなソースつき。相変わらず皮はパリパリ、肉はふくふくのジューシーなばっちり加減だ。ああ、美味しい……。たまらなく美味しい……。
周囲には魚介のステーキやサテもたっぷり用意されている。これがバリ島最後の食事とサテもステーキもたっぷりいただく。ターメリックで炊いたちょっと甘い御飯、ナシ・クミンもたっぷりと。バリの御飯を食べていると、不思議と和食はそれほど恋しくなってこない。私よりも格段に日本の米を愛するだんなが騒ぎ出さないので、彼もまたここの御飯に馴染んでいるのだろう。

そして会場の一角。そこではフライパン隊が待機しているのであった。彼らの前には山積みになった皿と各種の野菜が盛られたボール。このコーナーでは野菜を自由に皿に盛りつけ、魚介や肉をチョイスしてナシ・ゴレンとミー・ゴレンを作ってもらうことができる。具となる野菜を自分で盛りつけてフライパン隊に渡すと、その具を使って調理してくれるのだ。面白く楽しい仕掛け。

もやしと玉ねぎたっぷりのナシ・ゴレンを作ってもらった。メインの具はたっぷりの海老♪
目の前で海老を炒め、すりおろしにんにくと一緒に野菜を炒め合わせ、あらかじめ赤っぽくソースで炊いてあるような御飯を混ぜて炒め合わせる。最後に揚げにんにくをぱらりと。作りたてのナシ・ゴレンをブッフェディナーで味わえるというのはとても嬉しいことだ。

そしてデザート、イチゴのタルトやチーズケーキ、カスタードプリンや沢山の果物がたっぷりと用意されている。
デザートグラスに入って並べられたものはバナナとタピオカにココナッツミルクをかけたようなもの。

眺めていると、横に立つ日本人親子が会話をしているのが耳に入った。
「この粒粒はイクラじゃないのかなぁ。随分変なものを使うなぁ。」
という父親の声。それはタピオカじゃないかなぁとツッコミを入れたくなる自分をぐっと堪えて彼らの話を聞く。
父親はそばに立つスタッフに英語で聞いている。
「これは植物なのかい?」
スタッフ、
「それはSEAFOOD EGGだ。」
……がーん。本当に魚卵だったとは。し、信じられない。

彼らが去った後、同じスタッフに思わず歩み寄ってしまう私。
「Isn't this "タピオカ"?」
「Yes,This is "サグ". Seafood eggs.」
おおおおー。本当に"魚卵"と言っているー!
良くみると、その"サグ"なるものはタピオカよりお互いがみちみちとくっついて集合体となっていてほんのりピンク色なのではあった。確かにタピオカとは違うみたいだけど……。
一口食ってみる。塩気は特にない。やっぱりタピオカみたいな味がする。大変謎なデザートなのであった。

デザート食って困惑している間に、ショーは始まっているのである。
9台のジェゴグは重々しく鳴り響く。太い管のものは、"鳴る"というより"空気を震わせている"という感覚だ。皮膚の表面が空気の波動でビリビリと震えてくるような、そんな感じ。乾いた木の音を鳴らすジェゴグ、私の母はこの音が大嫌いだと言っていたけど私は好きでたまらないのだ。金属のガムランの音もまた好きなんだけど。

緩急ある華やかな曲が数曲終わった後、踊りも次々催された。
いただいたパンフレットによると、こんな感じ。

Puspawresti Dance
Young Balinese girls and boys perform this "Welcome dance" throwing flowers onto the stage as a sense of blessing and to honor the arrival of guests.

Balibis Dance
The flight of birds called "Belibis" to the Garden Palace, six dancers in full costume, perform this dance re-enacting the flight of a flock of birds.

Joged Dance
This social dance is performed in the village by both men and women who dance to the beat of giant bamboo Gamelans in celebration of the rice harvest.

Makepung Dance
A famous dance illustrating the dynamic and courageous "Bull Race" through the rice fields to the sounds of the Jegog Bamboo orchestra. This Bull race is commonly called "Makepung" originating from Jembrana, one of the regencies in West Bali.

バリでの正装を着た女性が2人、花びらを飛ばしながら踊る歓迎のダンス。鳥を模した羽のような布を腰から手に広げて踊る鳥のダンス。収穫を祝うダンスは女性と男性が1人ずつ出てきて踊る珍しいもので、服装も農民を模したようなもんぺにも似た装いだ。稲の収穫を模したようなその動きはとても優美で美しい。最後は牛追いのイベントが題材らしい、若い女性が耳をつけた牛の衣装で踊る。途中で先の収穫の踊りを踊った男女も出てきて牛追いの動作をする。

全てが音楽と踊りのみで構成されていて、それでも見ていてそれとわかるような動きだ。目や手の繊細な動きはバリ舞踏ならではで、思わずうっとり見とれてしまう。
あまり期待していなかったショーは、期待していなかったのが申し訳ないほどとても堪能できるものだった。ジェゴグ奏者の腕も大したものだった。荘厳な音色に満たされた1時間少しのショーで、日本に帰る決意がついた。……嘘です。ついてないです。あああずっとここにいたい。

踊りが終わった後、踊り手が全員こちらの方にやってくる。テーブルの間を動き、何か話しかけては頷いた人を舞台の上に乗せていく。小さなダンスパーティーをやろう、という趣向らしい。しかしほとんどの人は首を横にふる。舞台に上っても困ったようにその場に立ちすくんだり、ただ足踏みをしてみていたり。あああ、私を上に上らせなさい!踊るわ踊るわ!と期待して待っていたら先の収穫の踊りを踊った男性側の踊り手がこちらにやってきた。
英語で「一緒に踊って?」みたいなことを言われる。やりぃ。良いですとも良いですとも。ていうか踊らせてください。

他のお客5人ほどと舞台に上り、目の前の彼の動きを真似して手をくねくね、足をくねくね。中指や薬指が別の生き物のように動く彼のようにはいかないけれどもなんとなくその気になってみたり。
息子も面白がって後をついてきて、そうして息子も舞台の乗せる。数分間、くねくねと一緒に踊る。

かくして楽しいディナーもおしまい。午後9時半にお部屋に戻り、シャワーを浴びて最後の片づけ。
肩が服に擦れると痛いことこの上ないのでできるだけ楽なツルンとした服を着る。午後10時45分。忘れ物は……ないね。いよいよチェックアウトだ。

午後11時半、チェックアウトをした私たちはホテルのリムジンでングラ・ライ空港に戻ってきた。出発まで2時間、まだまだ開いている免税店やおみやげ物屋を覗き込む。インドネシア産のマンゴープリンを買ってみたり、いつも使っているシャネルのファンデーションを買ってみたり。そしてある店では、ソト・アヤムのインスタントスープをついに発見!あまりに嬉しくて5袋も買ってしまったり。

まだまだ時間がある。空港のレストランで一休みだ。
最後の最後のソト・アヤム(写真がそのソト・アヤム)。これは一杯Rp10,000(=約120円)だ。それと紅茶Rp5,000。春雨たっぷりの、とっても安っぽい味のソト・アヤム。それでもなんとなくシアワセになってしまうのであった。

JL1714便は予定通り午前1時40分に出発した。
眠い眠い。目が覚めたら、きっと日本領土に戻ってきているのね〜。
バリ島、さようならー。近いうちにまた絶対来ます。バビ・グリンを再び食べに。

戦利品1・ココナッツグッズさまざま 戦利品2・山のような食材の数々♪