2月27日(金) 札幌散策と驚異の舟盛り夕御飯

※ 文中の写真はクリックすると大きくなります ※

遠くに行こう、北海道に行こう

1月の下旬、だんなが「こんなキャンペーンやってるよ」とJALのwebサイトのキャンペーンページのアドレスを教えてくれた。
我が家はJALのマイルを溜めている。ショッピング提携カードまで作り、買い物にカードを活用してはせっせと地道にマイル積み立てに励んでいるところ。
「国内線特典航空券ふたりから!おとくdeマイルキャンペーン」なるそれは、2名以上(4名まで)での予約で、1人分の必要マイル数が通常時の45%ほどディスカウントされるというもので、北海道に行くなら通常1人15000マイル必要になるところ、1人8000マイルでいいよという内容のキャンペーンだった。

「1人8000マイル!ほぼ半分じゃん!3人で24000マイルなら、通常の2人分よりも少ないじゃん!」
「どっか行く?どうせだったら遠くに行く?」
「北海道?沖縄?」
「北海道!?僕、旭山動物園と洞爺湖に行ってみたい!」
「北海道かー……」

キャンペーンには設定期間があって、3月半ばまでとのこと。家族会議を重ねた結果、2月末の週末を利用して2泊3日で北海道に行ってしまうことにした。札幌に宿を取って、最終日に旭川に移動して旭川空港から帰ってくるようにすれば動物園も行けそうだよねと、往路は千歳空港、復路は旭川空港を利用する旅程にして席を予約。往路は朝早めの7時過ぎ、復路は夜8時過ぎという便になって、往復とも睡眠時間を削っての移動が予想される展開になってしまったけれど、その分北海道にたくさん居られるよねと「あそこ行こう、ここも行こう」と予定を立て始めた。行きたい料理店のリストから充実していってしまうのはいつものこと。

そんな訳で、今朝は最寄り駅から高速バスに乗って空港を目指した。
空港到着は朝6時頃。飛行機が出るまでにはまだ間があるしと、空港内のフードコートTOKYO CHEF'S KITCHENで朝定食を食べることに。このフードコートには浅草の洋食「ヨシカミ」、銀座のとんかつ屋さん「梅林」と魅力的なお店が並んでいて、でも残念ながらモーニングタイムは選択肢がほとんどなく、お店の味も何も関係ない様子。私の注文した洋食セットはクロワッサンとスクランブルエッグと2本のウィンナー、サラダとコーヒーという内容だった。
早朝深夜でさえなければ、空港で見知ったレストランの味を楽しめるというのは嬉しいことで、久しぶりに訪れた羽田空港の施設の充実ぶりに少々驚きながら搭乗口に移動した。

とりあえず牛乳から〜「食と観光」情報館

千歳空港到着は午前9時過ぎ。朝早めの便だというのにジャンボジェットはほぼ満席で、混雑する空港を抜けてJR乗り場に向かい、列車に乗って札幌駅に移動した。今回の宿は札幌駅前にある手頃な価格の宿「ルートイン」。荷物を宿に預けてから、今日は札幌市内見物に繰り出すことにした。

私は十数年ぶりの北海道、息子に至ってはこれが初めて訪れる北海道。今日はいかにもな札幌見物をしようということになった。あと40分もしたら目当てのスープカレー屋さんがオープンする時間だからと、札幌駅ビル内を少し歩いてから地下鉄に乗って、まずはお昼を食べに行くことに。

駅構内、北口側に「食と観光」情報館という道産のお土産ものを扱うショップがある。あれこれ美味しいものがあるよと聞いていたので、さっそくちらりと覗いてみた。美味しそうな魚介の加工品あれこれに調味料、チーズ、牛乳、生キャラメル。特に乳製品の並ぶ冷蔵ケースに私は釘付けだった。美味しそうなチーズが山ほどあるよー……。

更には特別出店中だったらしい干物屋さん(?)、北洋食産で試食をあれこれ。次々と「味見してってよ」とほっけの燻製や鱈の白子を渡されては食べてみたのだけれど、どれもとても美味しい。これは買って帰りたいな、と思いつつも冷蔵保存の食べ物持って札幌散策はしたくない。
「ごめんなさい、これから札幌散策するんで夕方また来ますね、ホテル戻る時にここ通り道なので」
ごちそうさまでしたー、と踵を返すと、「じゃあ散策中にこれ食べるといいよー」と一口サイズに包まれた昆布のおつまみをいくつも持たせてくれた。実に気前の良いおっちゃんだった。

ショップ脇には、ケーキやソフトクリームが食べられるコーナーも併設されている。「牛乳だー」「ソフトクリームだー」と、早速そこに引き寄せられてしまい、到着早々に瓶牛乳を飲んだりソフトクリームを食べたり。私は山川牛乳の瓶牛乳、だんなはノースプレインファームの瓶牛乳(おこっぺ牛乳)、息子は同じくノース〜のソフトクリームを。

「……う、美味しい……すっごく濃厚だね、上にクリーム浮いてるし」
だんなと交換しながら飲んだ牛乳は、どちらもノンホモタイプの、瓶の上部にクリームが浮いているもの。ノース〜の方がより濃厚で甘い味がしたけれど、どちらも素晴らしく美味しかった。牛乳が美味しいから当然ソフトクリームも美味しいわけで、皆して乳製品好きの我が家は到着早々に「北海道最高ー!」と盛り上がる。
いいなぁ札幌、普通に駅前にこんなに美味しいものがあって。

札幌駅構内 「「食と観光」情報館」 にて
山川牛乳
ノースプレインファームのおこっぺ牛乳
ノースプレインファームのソフトクリーム(レギュラー)
\160
\190
\300

デパ地下も少し歩いて、では地下鉄にと地下鉄駅を目指し始めたらかの「花畑牧場」のショップもあった。生キャラメルの販売が間近なのか、店頭にはかなりの行列ができている。かの生キャラメルは美味しいと聞いているけれど、どうなのかな。するっと買える機会があれば買いたいと思っているけれど、あの行列につく根性は……ちょっとない。

野菜たっぷり辛旨スープカレー〜「ガラムマサオ」

「ガラムマサオ」、2階のお店への小さな入り口はこんな感じ 北海道旅行最初の食事は、スープカレー!

スープカレー、私はCoCo壱番屋のそれは食べたことがあるけれど、スープカレー屋さんのスープカレーというのは未だ食べたことがない。

札幌が発祥だというスープカレー、当然市内にはたくさんのスープカレー屋さんがある。美味しそうなお店をたくさん選択肢にしてたいそう悩みつつ、「ガラムマサオ」に行ってみることにした。店主の名前がマサオさんだから「ガラムマサオ」、そんなネーミングセンスに惚れた。一度聞いたら忘れようがない店名だ。

地下鉄で数駅、「北24条駅」から歩いて数分のところにあるお店。ビルの2階にあるそうで、看板を探しながら雪の道を歩いた。

今年の北海道の冬は雪が少ないと聞いていて、確かに車道も歩道もアスファルトが綺麗に見えている。が、歩道の脇にはこんもりと除雪の山ができていて、その光景に息子は大喜び。「どこを歩いても雪がある」という状況に、「滑るから止めなさいよ」と注意しても歩道の端の積もる雪の部分を踏みしめてはスキップしそうな勢いだ。スキー場ではなく、デパートなどが並ぶ普通の街の中が雪だらけというのは息子にとってはとても新鮮な光景らしい。

そんなこんなでオープン直後くらいの時間に到着した「ガラムマサオ」、私たちは今日数組目のお客さんといったところ。12時近くなると、ほどなく店内は満席に近い状態に混雑してきた。店内には香ばしいスパイスの香りが漂い、レゲエがゆったり流れている。

十数種類もあるスープカレーは、御飯の量、スープの味と辛さを選ぶ。御飯の量はデフォルトが200gで小盛りや大盛り(+\100)などに変更可能。玉ねぎとトマトがベースの「大地の恵み赤」のスープか、豚骨と昆布の風味の黒胡麻白胡麻入りの「新アジアの香りイエロー」、スパイス大盛りの「マニアスープ」のいずれかを選択し、辛さはお勧めの「中辛」が2.5、「ほんのり刺激的」な1から痛いくらいに辛い5まで設定されている。追加できるトッピングもいろいろ。

で、私は人気ナンバー1だという「やわらか骨付きチキンベジタブルスープカリー」を赤スープ、2.5の中辛で。だんなは「パリパリ骨付きチキンベジタブルスープカリー」を黄スープの2辛、息子は「ダブルチーズとチキンスープカリー」を赤スープの1辛で注文してみた。150円でつけられるランチドリンクがあったので、皆してラッシーを頼んだら、カウンターのミキサーで作られたたっぷり分量のものが。淡い甘さでスープカレーによく似合う。
「ガラムマサオ」のやわらか骨付きチキンベジタブルスープカリー

ラッシー飲みつつのんびり待っているうちに、大きなスープ皿と御飯皿がやってきた。

写真は私の「やわらか骨付きチキンベジタブルスープカリー」。
スープの中に骨つきの鶏もも肉が沈められ、大きく切られた素揚げの野菜は揚げ茄子やかぼちゃ、人参、じゃがいも、ピーマンなど。「ベジタブル」の名前がつくだけあって本当に野菜たっぷりで、それぞれの野菜への火の通り具合も程良かった。じゃがいもやかぼちゃはほくほく、茄子も中までしんなりと、でもグズグズにならない程度の火の通り具合。

御飯を1さじすくってはスープに浸しつつ、しっかりと辛いスープをハフハフ言いながら啜って食べた。中辛でもしっかりと辛い。少なくとも、我が家で作る中辛ルーを使ったカレーよりはずっと辛く、息子の食べている「1辛」が我が家のカレーの辛さに相当するくらい。それなりに厚着でやってきていたので、すぐに額に汗が出てきた。

適度に焦がしたスパイスの香りが強く漂うスープは、辛味と酸味とわずかな甘味のバランスがとれていて、トマトと玉ねぎの野菜の味がする「大地の恵み赤」のスープはいかにもなスープカレーの味。だんなのカレーの「新アジアの香りイエロー」は胡麻の香りが強く漂い、これもまた美味しかった。

骨から身がするっと外れるホロホロに煮込まれた骨つき肉もスープの中でほぐしつつ。最初のうちこそお上品に食べていたけれど、最後は残った鶏の身を細かくほぐして、その残り少ないスープに少量残った御飯を投入して「スープカレー雑炊」を数口堪能。美味しかった〜。

息子のカレーは、私たちのものよりも若干野菜が少なめで、代わりに肉にとろけるチーズがかけられ上からパルメザンチーズもかかっているというもの。辛さ控えめにしてもらったせいもあるけれど、チーズのおかげでよりマイルドな味になっていて、味見させてもらったらこちらも美味しかった。

札幌市北区 「ガラムマサオ」 にて
やわらか骨付きチキンベジタブルスープカリー
パリパリ骨付きチキンベジタブルスープカリー
ダブルチーズとチキンスープカリー
マンゴーラッシー
イチゴラッシー
\930
\950
\1100
2×\150
\150

すっかり体も温まり、では午後は札幌散策だー、と、大通り公園方面を目指す。

ビルの谷間の風景こそ"がっかり"だけれども〜「時計台」

時計台、ビルを入れずに写真にするのは難しいね まずは、札幌観光の基本ということで、時計台を目指してみた。
私は一応、数度目の訪問。学生時代にも見に来たことがあるから十数年ぶりに見る佇まいだった。

なんでも「日本三大がっかり」の一角を担っている名所らしい(諸説あるけれど、あとは高知の播磨屋橋、沖縄の守礼門という組み合わせが有力みたい)。絵はがきなどで目にする時計台は、青い空を背景に白い壁の木造建築がそびえているような印象を受けるのに対し、実際はそれほど大きな建物ではなく、周囲は公園や緑地が無くてすぐそばに近代的なビルが迫っているあたりが「がっかり」なのだろうか。赤い屋根の下に赤い星の装飾のついた建物は、以前と変わっていなかった。

今回、息子は初めてだしと、中に入ってみることにした。地下鉄「大通」駅を降りて、そびえるテレビ塔を見た息子が「あれにも上りたい!」と言っていたので、私とだんなはテレビ塔との共通入場券を購入。小学生の息子はテレビ塔は有料だけれど、時計台は無料で見学することができるとのこと。

時計台が建設された当時の記録の展示、明治の姿のまま今も動く時計の説明などを見ることができ、思った以上に楽しめた。時計が動く力は、重力。現在の建物の5階相当の高さに時計があり、そこから1階までの高さを使っておもりをぶら下げ、巻き上げたおもりが重量で落ちていく力で時計が動いているのだそうだ。50kgのおもりは、週に2回人力で巻き上げ作業を行っているのだそう。「ビルの谷間」という風景こそがっかりかもしれないけれど、時計は全然がっかりじゃなかった。すごかった。

札幌市中央区 「札幌市時計台」 にて
札幌市時計台・さっぽろテレビ塔 共通入場券
2×\720

ゆるキャラがたまらなかった〜「テレビ塔」

「札幌に来たぞー」という気分になる風景です 「小さな東京タワー」みたいなさっぽろテレビ塔

「あれ、あのタワー、東京タワーみたいに上に上れる?2段になってる?」
「2段?……ああ、特別展望台のことねー。さすがにそれは無いと思うけど、でも上には行けるよ」
ぜひ上りたい!との息子のリクエストで、これまた上まで行くのは私も初めてではないかというテレビ塔にも上ってきた。
大通り公園を見下ろしてみる

上には100円入れて見るタイプの望遠鏡と、お土産物屋さん。眼下には大通り公園が見下ろせて、そう遠くない距離に雪山も迫って見える。このあたりの道路にはほとんど雪はなく、やっぱり今年は雪の少ない暖冬なんだなぁという実感が沸いた。

さっぽろテレビ塔には、「テレビ父さん」なるオリジナルキャラクター(非公式キャラクターなのだそう)がいる。東京タワーの「ノッポン」もネジが数本抜けてるような風体だけれど、それを上回ってあまりある、ゆるゆるっぷりのゆるキャラだ。

時計台は時計台で「時計大臣」なるものがいて(更には「とっけ」という可愛らしいのも時計台にはいて)、そのグッズが笑っちゃうくらいゆるゆるで大変に面白かった。父さんと大臣ととっけが並ぶとこんな感じだ。

「クリアファイルあるよー……絵はがきも楽しいよ」
思わずお土産を買おうとしてしまったけれど、「でも、買ったところでいつどこで使うのー?」と思い直して、あやうく購入は踏みとどまってみた。

どこから見ても美しい建物〜「赤れんが庁舎」

シンメトリーの建物、実にカッコイイ テレビ塔を降りた後は、デパ地下を散策しながら歩いて札幌駅に戻ることにした。
ついさっきまで青空が見えていたはずなのに、雪がちらちら舞い始めたと思ったら、どんどん雪の勢いが増してくる。

「あれ、あそこのカッコイイ建物、あれなんだろ?」
「あれは赤れんが庁舎だよ、知らない?」
「知らないよ、行ったことない」
赤れんが庁舎、趣のある館内でした

足を止めて通りの向こうに見える建物を眺めた私に、「あれは古い庁舎」と教えてくれただんなが、じゃあせっかくだし見に行きましょうと駅とは90度違う方向に寄り道。
建物の外観を見ることができるだけかと思っていたら、中まで見学することができた。

当時そのままの会議テーブルや椅子の展示があったり、北方領土に関する資料室があったり。赤絨毯の敷かれた館内は、これまた重厚な趣のある空間だった。
軽くはないデジタル一眼レフをかついで来たので、ここぞとばかりに撮りまくってみたり。しかし……雪が降り始めて一気に気温が低くなってきた気がする。うっかり手袋を家に置いてきてしまったので、指先がとっても冷たいです。どうしましょう。

北海道の味をお買い物

そんなこんなで、ホテルにチェックインできる午後3時を回ったところ。あちこち寄って買い物しながら、初日からけっこうな大荷物でホテルに戻ることになった。

テレビ塔のお土産もの屋さんで見つけたのは「じゃがポックル」。北海道内だけで販売しているカルビーのスナック菓子。「あー、売ってるー」とばかりに買ってしまった。ビールのおつまみに良いんだわ……。

札幌市中央区 「さっぽろテレビ塔」 にてお買い物
じゃがポックル
\840

丸井今井の地下の「きたキッチン」にも寄り道。道内の食材を扱っているショップで、美味しそうな調味料や生ラーメン、レトルトスープカレーなどに目移りしつつ、生キャラメルを2種類買ってみた。どちらも美味しいと名前をよく聞くもので、ノースプレインファームのものとサクラ・ドゥ・ノールのものと。それぞれいくつか味の種類があったのだけれど、生キャラメル自体を食べるのが初めてに近いので、まずは基本のものをということでどちらもプレーンのものを。

札幌市中央区 「きたキッチン」 にてお買い物
「ノースプレインファーム」の生キャラメル
「サクラ・ドゥ・ノール」の生キャラメル(プレーン)
 
計\1516

そういえば、道内のセブンイレブンで扱いがあるっていうソフトキャンディーがあるんだよーと話しながら道を歩いていて、幸いセブンイレブンがホテルの近くに。寄ってみたらありました、「甘酒ソフトキャンディー」。
なんでも、札幌唯一の酒造蔵元である「千歳鶴」の吟醸酒粕を使ったソフトキャンディーなのだとか。びっくりするぐらい、ものすごい勢いの甘酒味のキャンディーだった。アルコールは含まれていないそうだけれど、風味だけで酔っぱらってしまいそう。

セブンイレブンにてお買い物
「ロマンス製菓」の甘酒ソフトキャンディー
値段失念

このお菓子メーカーの「ロマンス製菓」は生キャラメルも美味しいのだとか。
北海道滞在中にちょこちょこ探していたのだけれど、今回は残念ながら出会えなかった。

ここでホテルにチェックイン。
連日の激ジョブでお疲れのだんなは息子と一緒に部屋で一休みしていてもらって、一人駅ビルに戻ってきた。目指すは覗いてみたかった、JRタワー展望台のチケット売り場脇にある札幌スタイルショップ。円形のカウンターにぐるりと一回り、北海道のデザイナーたちによるオリジナルグッズを販売している。それほど点数はなかったけれど、他ではあまり見ない楽しい品がいろいろあった。
ここで、前から気になっていた紙石鹸「初雪」を購入。雪の結晶型の紙石鹸で、とっても綺麗なのだけれど、もったいなくて使えそうにない。

札幌市中央区 「札幌スタイルショップ」 にてお買い物
紙石鹸 初雪
\1050
北海道到着初日にこのお買い物……

で、午前中に立ち寄った「「食と観光」情報館」に再び向かい、買おうと思っていたあれこれもごっそり買った。

ホテルの部屋には空の冷蔵庫が用意されていたので、冷蔵ものも購入して大丈夫だろうと、帰宅までに賞味期限が来ないかだけ確認しながら籠に入れていく。チーズいろいろ、海産加工品いろいろ、ホテルの小さな冷蔵庫に詰めたら、買ってきた飲み物を入れる場所にも苦労するくらいになってしまった。

大好きな「アドナイ」、大好物のカチョカヴァロは1/8カットほどの使いやすいサイズになったものが真空パックになって売られていた。このお店のカチョカヴァロは丸々1個買うとたいそう巨大だから、このサイズは手軽で嬉しいなと2カット購入。

面白いチーズがあるなと、イタリアピエモンテ州のチーズ「ロビオーラ」の美味しそうなのを見つけたので、これも1つ。どうにもそのネーミングが気になった「冷たいチーズフォンデュ」も1つ。十勝の名物料理なのだという「豚丼」のたれも数種類売られていて、一番気になったものを1本買ってみた。

初日からちょっと飛ばしすぎなお買い物だったかなぁと少々反省しながらホテルに戻る。
夕方から降り始めた雪はいよいよ本格的な降りになっていて、気温もどんどん低くなってきた感じ。

札幌駅構内「食と観光」情報館 にてお買い物
アドナイのカチョカヴァロ
酪恵舎のロビオーラチーズ
ひがしもこと乳酪館の冷たいチーズフォンデュ
北洋食産
 たちかま(鱈の白子のかまぼこ)
 ほっけの燻製
 干しほっき貝
居酒屋十一の豚丼のたれ
\766、\833
\504
\525
 
\1260
\1050
\1050
\780

お刺身だけでお腹いっぱい〜「てっちゃん」

そしてすっかり日も暮れて夕御飯、今日はすすきのの雑居ビルの中にある「大漁居酒屋てっちゃん」に予約を入れてある。

数年前、だんなが札幌に出張に来た折に、当時札幌で働いていた友人に連れてきてもらったお店なのだという。
「とにかくすごい舟盛りで、おゆきさんが想像する舟盛りの1.5倍くらいのが出てくる感じ。お店の雰囲気もちょっとすごいよ」
と聞いていた。ともかく札幌に一緒に来る機会があったら絶対連れていったげる、と何度も聞いていて、その野望がやっと叶ったという次第。

「行ったらびっくりするお店だよ」
「……小汚いとか、狭いとか?池袋の静岡おでんのお店みたいな?四谷の牛タン屋さんみたいな?」
「いや、そういうんじゃなくてね……」
雑多な雰囲気の小さなお店は慣れてなくもないから、一体どう驚いちゃうのかなーと思いながら、雑居ビルの7階にあるその店を目指してエレベーターに乗り、エレベーターの扉が開いた直後、後ずさりそうになった。……うわぁ、びっくりしたぁ。
大漁居酒屋てっちゃん、座敷からカウンターを臨む

駄菓子屋さんというか、おもちゃ屋さんというか、壁も柱も天井も大変賑やかなことになっている。
一面に貼られているのは昔のめんこやシール、ポスターなどなど。貼られたそれらを覆い尽くす勢いでお面や駄菓子屋で扱うようなおもちゃ類がぶら下がる。壁のちょっとした段差にもブリキのおもちゃや古めかしい人形などが並べられ、白熱灯でぼんやり照らされる店内は表現しようがない異空間になっていた。エレベーターから降りた時点で、少し頭を下げなければ歩けないくらいの内装だ。

全部が全部古いものかと思いきや、ポンキッキのコニーちゃんがいたり、お面をよくよく見れば割と最近のジャンプ漫画のものがあったりも。でもコニーちゃんの隣に貼られたシールは実写版の赤胴鈴之助のものだ。こっちはもう30年以上前のもの?

大人もびっくり子供もびっくり、息子は目を見張って「探険してくる!」とトイレなどを見に行って興奮した面もちで帰ってきた。男女共用のトイレには、男用の小用便器の前、目線の高さに水槽が並べられて熱帯魚が泳いでいた。手を洗おうとすると、すぐ横の機械(多分ハロウィンのおもちゃ?)が作動して「わーっはっはっはっは」と笑い声が響いてくる。とにかくびっくりな内装で、内装もびっくりだけど料理もびっくりだった。

お店に来る人は、問答無用で「舟盛り」を食べなければいけないらしい。
実際、予約の電話をしたら
「大人はお2人様ですね。では2名様分の舟盛りをご用意しますね」
と通告ベースで告げられた。すごいと聞く舟盛りを食べるのが目的だったので異論もなく「お願いします」とお返事した。
タコがこぼれそうです、白子が見えません

……で、出てきたのが「どどーん」「ばばーん」という感じの、左の写真のようなもの。
「1.5倍じゃないよ……3倍くらいはあるよ……」
と、聞いてはいたのにそのボリュームに圧倒される。舟の上、魚介が3段くらいに積まれて盛られているらしい。舟に盛られてるから、「舟盛り」なのだろうけど、でも舟盛りの定義からは逸脱してそうな舟盛りだよね、と、唖然としながら「何が乗ってるのかなー」と端から掘ってみる。

この写真で2人分。1種類の魚介を鷲掴みにして、それを盛りつけること15回繰り返します、みたいな感じだった。溢れそうだし、実際、まだピクピクと動いている生ダコが逃走を試みて端から落ちそうになっている。

盛られていたのはウニ、鱈の白子、甘海老、帆立、マグロ、シメサバ、生牡蠣、サーモン、生ダコ、クジラ、数の子、ナマコ、アジ、イカ、赤貝。更に、クラゲとおぼしきもの、蟹の殻の中身と思われるもの(蟹のふんどし?)、何かの魚卵と思われるもの(黒っぽい色だったけど海ぶどうで良いのかな?)、更に貝類が他にも数種類。貝は普段あまり食べないので、どれがどれだかわからなかった。多分ほっき貝あたりも入っていたのじゃないかなと思う。

舟の端っこには山盛りの刻み葱やおろし生姜、わさび、ホースラディッシュが添えられていた。卓上には醤油とポン酢。

迫力の舟盛りももちろんだけれど、少々お値段お高め(\840)なお通しもまた食べ応えがあるものだった。大根の煮物と海老と蟹肉の鉢、鮭ハラスの塩焼きと、おそらく自家製なのだろうイカの塩辛。日替わりのお通しは、「蟹1ぱい」とかいうこともあるらしい。このお店に訪れる者全員に供される、そのお通しと舟盛りで、他にはもう何も頼めないのがこのお店のお客さんの一般的なありようであるらしかった。

舟盛り用にと、御飯と海苔の「手巻き寿司セット」なるメニューもあるし、生のお刺身に食べ飽きてしまったら、残りは無料で塩炒めにしてくれる。余力があったら手巻き寿司セットももらおうかしらねーとか言っていて、手巻き寿司セットにすら到達できなかった。舟盛り完食への道ははるか遠く険しいものだった。てか、多いってー!多すぎるってー!10年前ならまだしも、私もうそんなには食べられないってー!

これが、美味しくない舟盛りだったらただの苦行なのだけれど、どれもこれも美味いのが素晴らしい。さすが北海道。
1人分が1575円、それで「お刺身だけでお腹いっぱい」という希有な体験ができてしまった。

上に乗ったウニはプリップリで甘くとろけるよう。
「あ、一番下に生牡蠣あるじゃん!その隣は白子じゃん!」
盛りを崩さないように気をつけつつも、早々に掘り出して食べた牡蠣と白子もぷりっぷり。牡蠣も白子も生姜醤油でせっせといただいた。どちらも「海のミルク」という形容が似合う濃厚さ、クリーミーさ。魚も貝もどれも新鮮な美味しいものだった。

でも、いかんせん量が多い。ついつい好きなものから箸を伸ばしてしまうと、最後に残るのは貝類ばかり。炒めてもらって出てきたものは「貝の塩炒め」に他ならないもので、それを最後までがんばってつまんだけれど、あと100gというあたりですっかりお腹いっぱいになってしまった。
それはもう見事に、だんなの予言通りに「お刺身だけでお腹いっぱい」という事態。

札幌市中央区 「大漁居酒屋てっちゃん」 にて
お通し
大漁舟盛り
鮭茶漬
生ビール中
月の桂 大吟醸にごり酒
ウーロン茶
2×\840
2×\1575
\525
2×\630
\1050
\315

「……うう、パフェとかとても食べられそうにないや……」
「だから言ったじゃん、最初っから、"それは無理"って」
「いや、でもアイスくらいはね、パフェくらいは別腹かなって……」
「で、食べられそう?」
「全然無理……」

本当は、歩いて数分の、数ブロック離れたところにある"バーラー"(お酒も飲めるパーラー、昼間は普通のアイスクリーム屋さん)で食後の甘いものでも食べられたらなーと思っていたのだった。もう全然無理。無理でした。

「よたよた」という表現がふさわしい足取りで地下鉄に乗って宿に戻り、一休みしてから大浴場へ。お風呂に入ったら一気にぐにゃぐにゃと力が抜けてしまい、早々に就寝した。
札幌最初の夜は、舟盛りの夢を見てしまいそう。