9月21日(月) 奄美大島上陸

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朝食&歓迎セレモニー

泥のように眠って眠って、爽やかに起床……いや、体中が痛い。特に足が痛い。特に太股全面とふくらはぎと脛が痛い。
 
旅行を終えてから後、友人に
「クルーズ行ったら痩せませんか?」
と言われた。曰く、クルーズ中は無意識に体がバランスを取ろうとするので、地上で普通に生活するよりもよほど体力を使うのだそうで、普段と同じ摂取カロリーであることを前提とするなら、痩せるのだそうだ。……でもなぁ、毎日良く食べてるし。夜食とかアフタヌーンティーのケーキとか食べていたら絶対痩せないと思う。むしろ太ると思う。
 
ともかくも、この「無意識に体がバランスを取ろうとする」のが地味にやっかいで、筋肉痛を抱える身で船内を移動するのが大変。エレベーターが来るタイミングが悪いと「じゃ、2フロアだし階段で行こうか」となるのだけれど、その階段上り下りがまた地獄。生活するのにフロアの移動が必需の船旅で、筋肉痛はなかなかつらい状況なのだった。
 
今日は午前7時に奄美大島に入港。
なので朝食は通常より早めの6時半から可能となり、7時45分からは奄美大島の島民の皆さんによる「名瀬港入港歓迎セレモニー」なるものもあるのだそう。私たちのスケジュールはややのんびりめだけれど、朝から全体的にざわついている船内だった。
 
オープン直後のピーク時を少し過ぎてから、7時頃に朝食を摂りにダイニングに向かった。
私と息子は毎朝飽きもせず洋食を選択し、だんなはだんなで毎朝飽きもせず和食を選択している。これまた毎朝作ってもらっているオムレツは、今日はマッシュルームと玉ねぎ入りで。
 
今日いただいたのは、オムレツの他、サラダとハッシュドポテト、温野菜、サーモンときのこのクリームソースパスタ、チョコデニッシュとマロンパン、紅茶と飲むヨーグルト、牛乳というところ。
甘そうなチョコデニッシュは、でも食べてみると案外チョコは少なめだった。栗の乗った菓子パンも囓り、温野菜コーナーからはウィンナーとじゃがいも、キャベツ、きのこ、人参などを塩味ベースで炒め合わせたものをたっぷりめに。今朝はハッシュドポテトがあったのも嬉しかった。
 
「ようこそ名瀬港へ!」ということで、船の三役と市長さんとのご挨拶 朝食後は、ちょうど歓迎セレモニーが始まるところ。
 
「踊ったりするのかな?」
と、カメラ持って8Fデッキからセレモニーを眺めてみた。
 
残念ながら歓迎セレモニーでは歌や踊りはなく、市長さんの挨拶に始まり、船長の挨拶で応え、花束贈呈があったり記念品交換があったりの、割合と淡々とした内容のもの。船着き場前にはお土産物屋さんのテントがずらりと並び、セレモニー終了と同時に営業し始めた。
 
今日の予定では、夕方早めくらいに船に戻れるなら徒歩圏内にあるハブセンターを覗きに行きつつお土産物屋を覗く……という風に思っているのだけれど、実際にそれが可能かどうかは今ひとつ見通しが立っておらず、だんなと2人、このお土産テントを少し覗きに行ってみた。奄美大島名物の一つが「黒糖焼酎」で、それがずらりとテントの一角に並んでいる。いくつか味見させてもらった中から好みな味だった「高倉」を貰うことにして、あとは半分ネタで、ミニサイズのハブ酒も1本。
 
嘘か誠か、ハブ酒は傷にかけると治りが早くなるとの、お店のおばちゃんのセールストーク。
「口内炎が出来たらねぇ、口に含むと良いですよぅ!」
って、それはハブ酒じゃなくともアルコールなら変わらない効果があるのじゃないかなと思いつつ。

名瀬港特産品販売特設コーナーにて
黒糖焼酎(高倉)
ハブ酒ミニ瓶
\1600
\350

原生林ツーリング

今日は「アイランドサービス」というところが主催している「マウンテンバイク&マングローブカヌーツーリング」という一日ツアーに参加することになっている。原生林をマウンテンバイクで疾走というのが楽しそうだし、マングローブ林を見るのは初めてではないけれど、カヌーは未体験なのでどちらも楽しめそうだった。
それはそれとして、屋久島ハイキング(いや、屋久島"登山")の翌日に入れるべき予定じゃなかった……と後悔しても遅い。自分の体力を信じて、今日も楽しもうと思う。
 
送迎の車が来るのは9時過ぎ。
指定された時間に船を出ると、ちょうど送迎のワゴン車が港にやってきたところだった。島内に宿泊しているのだという女性客2人連れと、若夫婦が御一緒。
 
プロテクターつけて、この砂利道をマウンテンバイクで走ります 目指したのは、港にほど近いところにある「金作原原生林」。
 
船のオプショナルツアーでも、この原生林をトレッキングするツアーはあったのだけれど、マウンテンバイクに乗って、というのは存在していなかった。
 
ある程度山の上まで行ったところに別のワゴン車が待機していて、中にはスペアも含めたマウンテンバイクが乗せられている。
膝当て肘当てヘルメットをしっかり装着し、サドルの高さもしっかり合わせてから、いざ原生林へ。
 
さほど車通りのない道だけれど進入禁止というわけではないので、安全のために前後に伴走の車がついてくれるのは有り難い。荷物は全て車に積んでおけるし、自転車にトラブルがあれば交換もしてもらえる。
 
これが、ここ金作原原生林を代表する風景なのだそう 走りはじめて少し行ったところで、
「ここがこの原生林を代表する風景です」
と紹介され、自転車を止めて皆で少しばかり記念撮影。今夏の皆既日食の際のテレビ番組などのレポートでも、この場所が使われていたのだそう。
 
この道まではらくちんだった。ほぼ平坦、時々下りという感じで、「マウンテンバイク、楽勝〜」という印象だったのだけれど……ここから先の約3kmは、「苦行」の一言だった。
 
道はさほど急ではないものの、上りの傾斜一辺倒で、しかも無舗装。ギアの数値を一番低くして漕ぎやすくしていても、息が切れてくるし足は痛くなってくる。一度、少し平坦になったところで休憩が入って冷たいお茶がふるまわれたところでは、私を含め、耐えきれずにマウンテンバイクを降りて押す人たちが続出した。
 
この休憩から後、1.7kmはただひたすらに上りで、最高に辛かった数十分。体力自慢のだんな以外、参加者皆死にそうな顔で頂上にたどり着いた。
南国ならではのシダ植物が繁る鬱蒼とした雰囲気のオフロード。これが上り道でなければ快感なんだけど……!と思いつつ、それでもお茶休憩後は自転車を降りることなく頑張って上りきった。
 
絶賛筋肉痛中の私も当然つらかったのだけれど、だんな1人を除くメンバー全員、息子含めてげっそりした表情になっていたので、私じゃなくてもつらい道だったのだろうと思う。

 
そして残り7km弱は、舗装道の下り坂。
 
先の上り道の思い出だけだったら、さほど感動の残らない(というかつらい思い出だけが残るであろう)ツーリングだったのだけれど、その後の下り道の気持ち良さと言ったら、このクルーズ旅行で最も爽快な1時間だったと言っても過言ではないくらい。
 
息子は「風になった気分だった!」と詩的な表現をしていたけれど、対向車もない舗装の山道、原生林の中を自転車で滑走する気持ちよさは初めて体験するものだった。周囲では、オオシマゼミというセミの鳴き声が美しい。「ケン!ケン!」というか「カン!カン!」といった風の高く短い鳴き声で、最初は鳥の声かと思っていた。
 
そのセミの声も入っていたので、短い動画を1つyoutubeにアップロードしてみたのでした。動画自体はたいして面白いものでもないけれど……。
 
金作原原生林の小さな滝は少し神秘的でもあり あと1kmほど、というところで先導のワゴン車が止まり、
「ここでちょっと滝を見に行きましょう」
とのこと。
 
曲がり道の広めのスペースに自転車を止め、ハブ避けに枯れ木を左右に振りながら20mほど歩くと、細く綺麗な滝が現れた。
水もおそろしく澄んでいて、靴を脱いで水に入ってしまいたいくらい。
実際、息子はサンダル履きだったのを良いことに、靴を脱いで水の中にじゃぶじゃぶと入ってみていた。
 
最後の最後、本当にあと50mでツーリング終了というところで、私が小石に車輪を取られて転倒してしまい、
「皆様無事に怪我もなく!……と言いたかったところで、最後にね」
と先導していた指導の方に苦笑いされてしまった。幸い怪我らしい怪我もなく、左腕を少し打ったくらいでさして痛みもなく、午前中のツーリングは終了。

お昼御飯は鶏飯

マウンテンバイクを降り、再びワゴン車に乗って、今度は昼食を摂りに。
このツアーは昼食もついていて奄美大島名物の「鶏飯」が食べられるということで、ちょっと楽しみにしていた。
 
もしかしてオーナーお手製のだったりするのかしらと半分楽しみ半分不安だったのだけれど、連れて行かれたのは「鳥料理&地どりの鳥しん」と看板の出ていた、「鳥しん」というお店。入り口上には「山羊汁」「黒ぶた豚飯」「黒ぶた角煮」などの文字も掲げられていて、店内の案内を見ると鶏飯などの地方発送も対応してくれるとのこと。観光客向けというより、むしろ地元で愛されているお店という雰囲気だった。1階のテーブル席には既に何組かお客さんたちがいて、私たちは上階の座敷席に案内された。
 
テーブルには既にカセットコンロが置かれていて、人数分の楕円皿の上に鶏飯の具が綺麗に盛られていた。そして大きな丼と、小鉢に2種類の料理。
 
飲み物は別途個人支払いでということで、「オリジナルジュースがございます」とのことだったので各自タンカンジュースやパッションフルーツジュースを注文してみた。
 
400円とお手頃価格だったこともあり、自家製と言いつつ濃縮のものを割った風なものなのだろうな、くらいに思っていたのだけれど、大きなサイズのジョッキにたっぷり満たされてやってきたジュースは、パッションフルーツの果肉の粒々が入った、とてもとても美味しいもの。パッションフルーツの甘さと爽やかさを感じられる絶品のジュースだった。だんなや息子が注文していたタンカンジュースも、みかんとは異なる濃厚な甘さを感じる、これまた幸せな美味しさ。甘さと酸っぱさに午前中の疲れも吹っ飛びそうだった。
 
初めて食べた、本場の鶏飯 飲み物がジョッキで来てしまったものだから、勢い「かんぱーい!」という感じになり、参加者で適当に雑談しながらいよいよ「鶏飯」を。
ほどなくテーブルにはおひつ入りの御飯と鉄鍋に満たされた鶏スープがやってきて、スープはコンロにかけられた。
 
鶏飯の具は、鶏むね肉(茹でるか蒸すかして細かく裂いた風のもの)、錦糸卵、刻み海苔、甘く煮た干し椎茸、パパイヤ漬け、刻み万能葱、刻んだタンカンの皮といったもの。御飯は普通の御飯。鶏スープは、鶏ガラでとったスープを塩と薄口醤油で調味したもの、ややしっかり味……という感じだ。
 
各自御飯に好きなように具を乗せ、鶏スープをかけて食べる、いわば「鶏茶漬け」のようなもの。じわっとした旨味が口中に広がる、とても好きな感じの郷土料理だった。
 
家で再現しようとすると「パパイヤ漬」がネックになりそうだけれど、都内にある鹿児島アンテナショップなどで購入できそうだし、何なら通販を使ってでも、と色々考えてしまいながら味わった。そう強い風味ではないけれど、タンカンの皮やパパイヤ漬が良いアクセントになっている。
 
小鉢に入っていたのは、もずくと、"にがうり味噌炒め"。ゴーヤーと豆腐を甘めの味噌炒めにしたこの料理は、この店の定番料理の一つなのであるらしい。ニガ甘くて美味しかった。
 
丼にさらっと2杯御飯をよそって鶏飯を堪能し、鍋に残った鶏スープを最後までちびちび啜って1時間ほどの昼御飯休憩。
そのうち鶏ガラ買ってスープを大量にとって、家でも鶏飯を作ってみようと思う。

「鳥しん」にてお昼御飯
鶏飯(小鉢つき)
パッションフルーツジュース
\?
\400

マングローブ林のカヌー体験

午後になって再びワゴン車に乗り込み、今度はマングローブ林近くの河口に移動した。マングローブの林を見ることは初めてではないけれど、カヌーに乗るのは家族皆これが初体験だ。
 
これからこのカヌーに乗ってもらいまーす、と講習を  
午前中から一緒の方たちプラス、このプログラムにのみ参加の方たちも合わせ、参加者は全部で15人ほど。
 
ライフジャケットを着用し、自分のパドルを持って川岸に集合し、まずはパドルの動かし方、カヌーの乗り降りの仕方のレクチャーを受けることから始まった。
 
今日も素晴らしく良い天気で、首筋から肩、二の腕はじりじりと焦げ付くよう。
 
今は干潮時、水深はかなり浅め カヌーは1人乗り2人乗りの2種類があり、子供と一緒なら家族3人で2人用に乗れるとのこと。
 
なにしろ初めてだし、私はヨレヨレだし、馬力は多い方が良いでしょうということで、3人で乗ることにした。
 
……が、2人乗りでもやや窮屈なカヌー、3人でそれぞれパドルを持って……となると、相当緻密に息を合わせないとわやくちゃになる。
「息子ー!ちゃんと合わせて!息合わせて!」
「やってるよー!」
「合ってないよー!」
とジタバタジタバタした挙げ句、結局息子のパドルは引率の方に預けることになり、だんなと2人で漕ぐことになった。それでも試行錯誤しつつ、カヌーはよたよたと右に行ったり左に行ったりしながら、それでもゆっくり前方向に進みだした。
 
「皆さん最後は慣れてきますから!漕ぐことだけに必死にならないでくださいね!カヌーは手段ですから!今日の目的は、マングローブを見ることですから!」
と、引率の方も皆を励まし励まし、皆でゆっくり川を下る方向に進んで行った。
 
浅瀬のぬかるみから上陸しまーす 1本のパドルで右、左、と交互に水をかいて進むカヌーは、小刻みに左に右にと船首を振りながらジグザグに進む。
 
公園などにある両手こぎのボートに比べると格段に難しく、2人でこぐと尚のこと、ふらふらと右に左にと曲がっていってしまう。
 
「次!左2回!」
「はい!ひだーり!ひだーり!」
と号令かけつつ、最後の最後まで「思い通りにスイスイ」とはいかなかった。カヌー、なかなか難しい。
 
泥の中を素足で散策 そんな感じで数百メートルばかりカヌーを漕ぎ漕ぎ、干潮で地面が露出した干潟に皆で上陸した。
 
今が満潮時だったら、マングローブ林の中の水路をカヌーで進むことができたそうだけれど、午後のこの時間はあいにくの干潮時。カヌーでは進めないので、素足になって干潟をペタペタと歩いてマングローブ林を散策する。
 
それはそれでなかなか楽しい体験で、干潟に生きるトビハゼやシオマネキ、浅瀬で泳ぐ体長10cmほどのハゼなど、かなりの数の生き物を見ることができた。
これはオヒルギの花 足元を頻繁にトビハゼがジャンプする中、柔らかい泥の上をぺたぺたと歩く。周囲は樹高2mちょっとほどの、やや小さめのマングローブの林。
 
この一帯に生えているのは「オヒルギ」「メヒルギ」という木なのだそうで、オヒルギの木には色鮮やかなピンクの花がついていた。この華やかな色の部分は実は「ガク」なのだそうで、花本体はこのガクの中にひっそりと隠れている。
 
「天然泥パック」の腐葉土の中をずぶずぶと 私たちが歩いている、この表面の茶色い泥もフカフカと柔らかくなんとも言えない感触がするのだけれど、この少し下を掘れば腐葉土の層になるのだそう。
 
「この腐葉土がですね、天然の泥パックなんですよ。実際、エステの泥パックとほとんど成分は変わらないんです」
このあたりがほら、腐葉土が出てきて柔らかくなってますよー、と案内されて足を踏み入れた一角は、底なし沼のようになっていた。
 
足首あたりまでほとんど抵抗なく足が沈んでしまい、生温かい泥にくるまれる感触は、半分気持ちよく、半分気色悪い。「泥!泥パックですか!?」と、果敢な女性たちが、手や足に泥を塗りたくっていた。本当に見事なまでに真っ黒な、上質な泥だ。
 
もうすぐ満潮に転じるそうですが、まだこんな感じ 相変わらず干潮まっさかりという、周囲の風景。
 
子供の背丈ほどしかないマングローブに囲まれていると、自分が巨人になったような錯覚を覚えつつ、たっぷりと泥の触感を堪能してからカヌーに戻った。
 
相変わらず照りつける日差しが厳しい中、行きよりは若干手慣れた風にカヌーを漕ぎ漕ぎ再び船着き場まで帰還。
 
ついついマングローブ林の中で長居してしまったようで、午後4時には終了予定だったカヌー遊びは4時半頃までの長丁場になり、帰船は5時過ぎ。
空港やフェリー乗り場に行かなければいけないお客さんもいて、私たちは送迎のワゴン車から途中タクシーに乗り換えてねと指示されて(お金も先方が出してくれた)、急ぎ船に戻っていった。
 
結局、朝に黒糖焼酎とハブ酒を買えた以外はお土産屋さんを覗くことはできず、客船の近くにこれというお店もなく(繁華街は歩いて15分くらいの距離だったらしい)、そのまま帰船。お土産物屋さんはともかく、スーパーは覗きたかったかも。「島バナナ」とか売ってたら買いたかったな。

出港セレモニーは紙テープで

宿泊のない、立ち寄りでの寄港の船旅は、「この時間までに絶対帰らなければ」というリミットがあるから、そのあたりはいつもの旅行よりもどうしても慌ただしい感じになってしまう。昨日も今日も「もっとのんびりしたかったー」と思うことしきりで、せめて夕飯も外で食べて帰れるくらいの余裕があればなと思いつつ、でもこの連休に屋久島と奄美大島に両方行くという贅沢な旅ができるのもクルーズだからこそ、という気もする。
 
帰船してすぐさま展望風呂に向かい、泥やら何やらで汚れた体をすっかり綺麗にすると、もうすぐ船出という頃。
 
17:40頃から、岸壁では「名瀬出港歓送セレモニー」が開催されている。
島唄の生演奏があり、その後は島の皆さんが輪になって踊り始めた。ハッピを着た観光協会(多分)の人が踊る。バスガイドさんも運転手さんも踊る。そして続々やってくる町の人たちも踊る踊る。子供も踊る。
 
「また来てねー」「また来るよー」と 昨日の屋久島の出港は誰に見送られるということもないあっさりしたものだったけれど、ここは最後には「テープ投げ」まであって、実に賑やかな船出だった。
 
私たちは出遅れてしまって、既に8Fデッキはけっこうな混雑だったので、11Fのデッキからセレモニーを眺めていた。色とりどりの紙テープが風に舞う様はとても綺麗で、船が出港して岸壁の人たちがほとんど見えなくなるまでデッキでのんびりしていた。奄美大島も楽しかったなぁ。
 
その後、「バーでカクテルでも飲みましょうか」とオープンバーに降りていくと、入航時に記念品として渡されていた黒糖焼酎が無料で飲めるようになっている。これは素敵、と、ミックスナッツなど注文してしまい、パリポリナッツを囓りながら1時間ほど焼酎を飲みつつだらだらと。おかしいぞ、「船内生活、夕方にカクテルグラスを傾けて」とかいう趣向だったはずなのに、普通に居酒屋な雰囲気になっちゃってるぞ。
 
今日の夕食「伊佐木のポアレ」 そして今日の夕食は、洋食のコース料理だった。
 
インフォーマルディナーに比べると前菜の皿数が少なめ、グラニテもない内容だけれど、それでも魚料理、肉料理と出てくる豪華なもの(量の方はさほど多くないけれど)。
 
和食の会席風の料理には閉口気味の息子も、フレンチのコース料理は嬉しそうに次々皿を空にしていく。
 
海老やムール貝、帆立の乗った前菜の皿に添えられていたのは「トマトのコンソメジュレ」。綺麗に透明なのに濃厚なトマトの味がするコンソメジュレは面白く不思議な感じ。口当たりは滑らかで、しかもそれがきちんと冷えているので炎天下を1日動いた体にとても心地よかった。濃厚な味のラタトゥイユが添えられていて、これもまた良い感じ。
 
続くスープは、これまたしっかり存在感のあるカリフラワーの風味を感じるもの。こんがり焼かれたズッキーニなどが添えられたメインディッシュは、とても綺麗なボルドー色の赤ワインソースがたっぷり添えられていた。小さめのモンブランにはメロンや柿、苺も添えられていて、すっかり満足。

「ぱしふぃっくびいなす」本日の夕御飯
魚介とラタトュイユの冷製 トマトのコンソメジュレを添えて
カリフラワーのポタージュ
伊佐木のポアレ 香草風味のバターソース
牛肉の赤ワイン煮込み 彩り野菜と共に
ホームメイドパン
さつま芋のモンブラン
紅茶

たっぷり夕食も摂ったし、これで「おやすみなさい」でも良かったのだけれど、息子にせがまれて午後11時(出港セレモニーがあったので夕飯はいつもより30分遅く、夜食も準じて30分遅い始まり)からの夜食会場にもちらりと顔を出してきた。
 
今日の麺類はとろろ昆布の蕎麦とうどん。息子は当然のようにうどんを貰っていたけれど、私とだんなはそこまで食べたい気分ではなく、さらっと卵雑炊をいただきつつ、1切れのミックスサンドとフルーツを少しいただいた。
 
どうやら息子、献立まですっかり決まった昼食夕食が少しばかりストレスのよう。「お父さんとお母さんに連れられてお店に行っても、そこで自分の好きなものを注文できる」のが良いのだそうで、だから並んでいるものから好きなものを食べられる夜食がお気に入りなのだそうだ。
 
「あー……そっかー」
「君は、こういう旅行、一度もしたことなかったもんね」
団体旅行に参加すると、全部の食事が決められていることは普通だから、私とだんなは「そういうものだから」とあまり違和感も感じずにいたのだけれど、息子が産まれてからの旅行は「飛行機と宿は決まってますが、あとは全部自由!」というものばかりだったからねぇ、と、私とだんなは目から鱗。好き勝手に旅行することが多かったから、クルーズ旅行は新鮮な感覚でもあり、反面、確かに窮屈な面も少なからず感じるところではある。
 
そして船がまた、けっこうな大揺れ……。
明日の終日クルーズはどんな感じになるのかな。