食欲魔人日記 01年01月 第5週
1/29 (月)
タイ風ぶっかけ飯 (夕御飯)
551蓬莱の
 ぶたまん
 ユーチュウ焼売
 マンゴープリン
プーアル茶

憂鬱な月曜日。目下おきらくごくらくな専業主婦状態の私が憂鬱であるのだから、だんなに至っては何をかいわんや、である。
なのに彼は朝から元気だった。午前7時、オンタイマーでセットされていたNHKニュースがテレビから流れ出すやいなや飛び起きて、何やら台所でガシャガシャやっている。ほどなく戻ってきて、それから5分、布団の中でごそごそと暖を取った後、またごそごそと布団を出ていった。

台所に行ってみると、蒸籠用の鍋で湯がグラグラと沸きつつあった。彼の目当ては、昨日届いた「551蓬莱」のぶたまんであったらしい。そんなに朝飛び起きてまで蒸かして食べたかったのか、君。
「おゆきさーん。焼売は、どれを何個?」
いきなり「焼売何個?」ときた。焼売を食べるか食べないかという選択肢はそもそも存在していないのであった。「……2個」と答える私も私だ。いつもの朝なのであった。

温かく蒸したぶたまんと、焼売2個ずつで朝御飯。
なんでも551蓬莱ホームページからの情報によると、ぶたまんに餃子用のタレをつけても美味しいものらしい。「餃子のタレもちょうだいね」とだんなは注文したらしく、届いた箱の中にはたっぷりの餃子のタレが入っていた。袋を1つ、うやうやしく開け、ぶたまんつけて食す。

関西方面の人々は、それほど551蓬莱のぶたまんを買うものではないと聞いたことがある。それは関東圏の人々が崎陽軒の焼売をあまり買わないようなものなのだろうか。いつでも買えると思うと案外と買わないもので、でも我が家は551蓬莱の熱烈なファンなのであった。今回は、初体験の「ユーチュー焼売」なるものもやってきた。貝柱入りの焼売なのだという。

相変わらずぶたまん、旨い。焼売も期待に違わず旨かった。白っぽくてちょっと脂身っぽい味がする肉あんがほの甘い生地にくるまれたぶたまんも、モチモチして肉汁がじゅわっと出てくる焼売もめちゃめちゃ美味しい。
「崎陽軒より、全然美味しいよー。コストパフォーマンスも良いし。」
と、注文しただんなはこの上なく幸せそうだった。

で、餃子のタレつきぶたまんだけど、酢醤油の酸味とぶたまんは案外と似合っていた。醤油も良いし、練り辛子も良いし、……うーむ、でもやっぱりぶたまんに何かつけるとしたらウスターソースかな、と思ったりする。
冷蔵庫の中にはまだまだ551蓬莱の赤い箱が詰まっている。ちょっとシアワセ。

レーズンパンのバナナサンド
コンデンスミルク入りホットミルク

本日は1日かけてAccessのデーターベースのお勉強。ちょっと深いところに足を踏み入れようとするとすぐにビジュアルベーシックなる分野に突入してしまうのが恐ろしく、おたおたしながら試行錯誤を繰り返す。何故、「今日の日付」の関数を入れようとするとエラーになるんじゃーい。説明してみんかいワレ、とヘルプキャラクターに凄んでみても事態は好転しないのであった。

お昼はバタバタと、買い置きのパン。レーズンパンを厚めに切って、間にバナナを挟んだやつをホットミルクと一緒に食べる。
「バーナーナァ〜?」
と踊り喜んでいた息子は、与えるなりパンとバナナの分解作業に入った。右手にバナナ、左手にパンを持って喰っている。私のランチ準備作業は、彼の行動を前に水の泡。とほほほほ。

タイ風ぶっかけ飯
牛肉とルッコラのサラダ
アイスアールグレイティー

だんな、飲み会。
「だんな不在=だんなの嫌いな料理を作る」
の鉄則の元、今日も私の好物香菜料理にチャレンジする。簡単な"ぶっかけ飯"系が食べたかったので、作ったことのある料理を記憶から掘り起こしつつ、適当に創作料理。「タイ風ぶっかけ飯」と名付けてみたものの、タイの人が本当にこんなの喰ってるかどうかというのは、しらん。ナンプラーと香菜たっぷりだから「タイ風」。安直だ。

サラダ油でにんにくスライスをじくじく炒め、そこへ冷凍保存してあったシーフードミックスをパプリカと一緒に放り込む。適当に炒めて、ナンプラーとスープを投入。適当な水分量と塩分になるまで煮詰めている間、横のフライパンで半熟目玉焼きを作成。炊きたてご飯にナンプラー味魚介炒めをぶっかけて目玉焼きを飾り、上から黒胡椒をガリガリかけて香菜を山盛り飾る。
本来は、魚介は海老のみを使用し、香菜じゃなくてバジルを混ぜ込む料理だったような気がする。ナンプラーならバジルじゃなくて香菜でも良いはず、ついでにイカや貝が入っても良いはず、と思いながら作ってみたら、これがめちゃめちゃ上手くできた。ばんざーい。

昨日の残りのルッコラのサラダに、少量残っていた薄切り牛肉もしゃぶしゃぶ状態にして水で締めてから混ぜ込み、バルサミコ酢のドレッシングをかけて並べると、10分で作ったとは思えない食卓になった。

半熟卵にスプーンをぶっすと差し、黄身がとろんと出てくるのをナンプラー味のご飯や具とかき混ぜつつ、食べる。たっぷりの香菜も寄せ集めて一緒に口にすると、香菜のカメムシ臭さとかナンプラーの独特な生臭さが渾然一体となって口中に広がって、異国情緒満載だ。いやーん、臭いわ美味しいわ、としばし無言でがつがつ食す。アジアンご飯は妙に美味しい。

1/30 (火)
アクアパッツァ(西麻布)にて「猪肉のグリル」 (昼御飯)
ミルククラブの
 チーズマフィン
ミスタードーナツの
 アップルパイ
カフェオレ

昨日、だんなは大手町JAビル内のミルククラブでマフィンを買ってきてくださった。
ミルククラブはJAのアンテナショップ。全国各地からのすてきな乳製品を山と売っている。しかも牛乳が100円で飲み放題。年会費1000円で会員になるとすべての商品が10%OFFになるというおまけつきだ。ソフトクリームも美味しいし、私はこの店をこよなく愛していた。だんなもこよなく愛していたようで、
「今日と明日、このビルの隣で会議なんだよねー」
と人の会員証を奪ってミルククラブに行ってしまった。昨日のお土産はチーズマフィン。今晩にはチーズケーキを買ってきてくれるらしい。万歳。

チーズマフィンもチーズケーキも、小さな店の奥の小さなコーナーで作られる。いかにもな手作り的味の、なんとも素朴な商品だけどしみじみ美味しい。てっぺんにチーズがとろけて固まっているマフィンを、もう一度オーブンレンジで温めて、カフェオレと一緒に並べる。それだけじゃ朝御飯としてちと足りないかと、ミスタードーナツの各種ドーナツも添付。甘いパイありマフィンありとまた朝から高カロリーな食卓になった。

ひっさしぶりのミルククラブのマフィン、しみじみしみじみ旨かった。土日休みで平日は7時まで。なかなか行く機会を見つけるのが大変な店だけど珍しいチーズは買えちゃうし、北海道から通販するしかない「アドナイ」という店の超絶美味なモッツァレラなども買えちゃうし、素晴らしい店だ。ミルククラブ。

西麻布アクアパッツァにてBコース
 生ハムとフォカッチャ
 スティック生野菜
 冷前菜の盛合せ
 大麦入りウニのスープ
 ずわい蟹のトマトソースパスタ
 猪肉のグリル
 スプマンテ、赤ワイン

 マチェドニア
 いちぢくのタルト、チョコレートと栗のタルト
 エスプレッソ

本日、ラッシュ状態の電車に乗るのは10年ぶりかという状態で朝の総武線に乗り込み、一路東京へ。私は「上京だ上京だ」と浮かれていた。
ここ10年、自宅の最寄り駅はラッシュといまいち無縁な営団地下鉄の駅、というロケーションに住んでいたおかげで満員電車と無縁な生活を送っていたわたくし。
「ど、どこまで混むんですか、この電車。」
「ん、降りるまで。」
「ま、まだ混むんですか、この電車。」
「うーん、船橋・錦糸町間はちょっとすごいね。」
「ひえー。」
とラッシュ状態を同じ電車に乗ってくれただんなと存分に堪能する。おお、縦長折り畳み新聞を読むおじさん。その技術やすばらしい。

して、朝の電車に何故に乗っているかというと、お仕事の打ち合わせなのであった。「ホームページにレシピコーナーを作りたい」と、青山アクアパッツァのシェフKさんと1時間ほど話し合い。現状に満足することなく「あれしたい、これしたい」と意欲的な人たちやお店は、関わってる私も楽しくなってくる。来週は、写真撮影。レストランの厨房で、料理作りの課程を私が撮影することになった。レストランの厨房に足を踏み入れるなんてこた初めてのことで、恥ずかしながら密かにミーハー根性剥き出しだ。一体どんななんだろう。わくわくわくわく。

打ち合わせは11時に終了。そのままてくてく歩いて南青山から西麻布方面へ。打ち合わせをしたお店で昼食をとるには開店時間まで30分以上もあったので、ならばと久しぶりに西麻布のアクアパッツァに行くことにしてみた。
このお店には私とだんなが「伝説のギャルソン」("ギャルソン"は仏語なので、伊語の"カメリエレ"が本当だけど)と呼ぶマネージャー、Kさんがいらっしゃる。動きはスマートで料理の説明も的確で旨そうで、眼は行き届くし気配りも素晴らしいし、自ら鍋をふるっていたということで料理の含蓄も並々ならず、しかもソムリエでもある。彼に給仕してもらうと大変に楽しいし美味しい。一人でもあんまりしゃっちょこばらずに食事ができる。で、一人豪華西麻布アクアパッツァランチ。

座るなりスプマンテをちびちびやりつつ、料理の検討。
今日のパスタはずわい蟹のトマトソースパスタに、自家製ソーセージのクリームパスタ、イノシシのラグーのパスタ、とあるらしい。イノシシと言ったら、つい数週間前に原稿をいただいてホームページを更新したばかりだ。箱根のイノシシ。銃ではなく、罠で仕留めた血の臭みのないイノシシ。ジビエ好きな血が騒ぐ。もとより野生のケダモノの肉は大好きだ。

「そ、そ、それにしてください。いのしし!」
と血相を変えたら
「ラグーはメインにもできますが……」
と言われ、再び、
「それ!」
で、奥にすっと引っ込んでいったスタッフが再び目の前にやってきて、
「今日は、ラグーの他にイノシシのロースの塊肉もあるそうです。皮目をこんがりカリカリに焼いて、グリルにしてもお出しできます。」
とまた断る理由のない申し出をしてくれた。もう、それそれそれ!と一人テーブル席でくねくねする私がいた。

コースは3800円のBコース。前菜がたっぷりと、パスタ、メイン料理1品、ドルチェがついてくる。
最初に温めたフォカッチャにとろりとした生ハムを乗せた小さな突き出し。ふかっとした熱く柔らかいパン生地の上のハムが熱でくたっと柔らかくなっている。ハムの塩気とパン生地の塩気が良い感じ。

共に来たのが生野菜の盛合せ。有機野菜のにんじん、大根、紅芯大根、紫芋、イタリアンパセリにパプリカはほとんどが生のままか茹でただけの状態で小さなお皿に乗っている。それをトマト味のマヨネーズやバジル入りマヨネーズ、オリーブ油や塩胡椒でぽりぽりと食べる。料理と言えるのか言えないのかわからない皿だけど、この野菜がいつもいつもとても美味しい。悔しいほど美味しい。そこらで有機野菜買ってきても太刀打ちできない味なのだ。バジルマヨネーズも、シンプルな味なのにどういうわけか再現できないのだ。
ポリポリポリポリ、ウサギのように生野菜を囓りながら次の料理を待つ。

続きこの店名物、前菜の盛合せだ。どれも冷菜ながら手間のかかった10品が大きな皿に少しずつ盛合せられている。レンコンのプッタネスカ風、ブロッコリーのくたくた煮、タコのマリネ、鶏のグリルときぬさやのトマト和え、葉玉ねぎのグリルとオリーブ油、大きな貝はマヨネーズ風味のソースで和えられている。1種類が1つの料理として充分出せるものが10種類。シアワセなことだ。

一人ナイフとフォークを持ってはむはむと食す。手が空いたのか、Kさんがそそそと側にやってきて色々な事を教えてくれた。
店の中にイタリアで修行してきた者が10人ほどになってきたけど、"今のイタリア料理"は時代と共にどんどん変わってきているのがわかる、とか、昔は食べなかった大麦も積極的にヘルシー嗜好もあって食べられるようになってきた、とか、そのくせ何故か以前はイタリア人は口にしなかったラードが使われるようになってきた、とか。江口洋介に似た風貌ののっぽのホールスタッフさんは美大出身で、今はワインのエチケット(←ラベルのこと)デザインの修行とフランスへ旅立ってしまった、とか。
そう、年末はリストランテ・ヒロで業界内の忘年会が料理持ち寄りで開かれたとか。アクアパッツァのスタッフは「おでん」を持って行ったそうだ。イタリア料理人がよってたかって、持ち寄ったのが「おでん」というのがとても笑える。「ああ、やっぱりそういうものも好きなのか」という気がする。

スプマンテに引き続き、イノシシに合うものをとリクエストしていただいた個性と酸味の強い赤ワインをくぴくぴ飲みながら、パスタはずわい蟹。
フレーク状になった蟹がこれでもかこれでもかとパスタに絡む、うっすら紅色の皿だ。菜の花にも似た、少し苦みのある青菜が混ざっている。蟹はほんのり甘く、青菜はほんのり苦く、トマトはほんのり酸味があり、塩気の具合もちょうど良い。ふわっとした蟹肉がスパゲッティと一緒に口の中にはいると全面的にカニカニカニカニ状態になる。……美味しい。

して、いよいよメインのイノシシ様だ。
ざくさくと切られたグリル肉がたっぷりと7切れほど。ほうれん草のバター炒めが添えられている。ウェルダン状態にしっかりと焼かれた肉は切り口からじくじくと肉汁が出てきていて、表面の脂の層はこんがりと茶色く焦げ目がついている。表層2mmほどがカリカリと油が抜けていて、その中はもう弾力のある肉の中はジュースだらけという状態だ。野生動物の肉だからして、当然普通の豚よりは堅い。運動して引き締まった黒豚、という印象だけど、ほのかに独特のケダモノの匂いがある。

猪料理で有名なのはやはり「ぼたん鍋」だけど、あれは猪の肉の臭みをわざと出すために肉を熟成させるのだそうだ。しかも銃で殺すと殺した瞬間から血が体中に巡ってしまい、これまたケダモノ臭くなる原因の1つになってしまうのだとか。罠で捕まえた猪は血抜きを徹底できて、毛穴の臭腺も徹底して抜いてしまうからグリルにしてもえぐみが出ないんですよ、とKさんは言っていた。
しかも、2月一杯で猟期が終わってしまう上に、もう猪が発情期に入ってしまうので入荷は難しいのだとか。
「発情期になるとね、猪が痩せちゃって美味しくなくなっちゃうんです。」
だそうだ。
弾力の強い肉をかみしめかみしめ、山盛り肉を満喫した。

で、デザート。足つきグラスにたっぷりの果物と洋酒の香りのシロップが満たされたマチェドニアと、小さな皿に2切れ乗ったタルトが2つ。エスプレッソをダブルでたっぷりいただきつつ、甘く充実したドルチェもしっかり平らげた。大きな栗の入る、チョコクリームがねっとり濃厚なタルトに、いちぢくのコンポートが乗ったさっぱりしたタルト。マチェドニアにはベリー類やキウイ、りんごやオレンジやグレープフルーツがざくざくと入っていた。

2時間のランチを一人でのんびり食べ終えて、寒風の中、六本木駅へ歩く歩く歩く。池袋まで移動し、ハンズを散策して新居用の必要雑貨を各種買い込み、楽しい今回の上京終了。千葉の我が家へ、帰ろう。

だんなの実家にて
 挽肉入りオムレツ
 ロースカツ
 ご飯

息子を預かってもらっていただんなの実家に帰ると、もう5時半近かった。お昼寝爆睡中の息子を起こすのは可哀想、とそのままずるずるコタツで一休み。6時になっても息子起きず、7時になっても起きず。とうとうだんなも、この家に帰ってくる事態になった。

「オムレツぐらいで良ければ、ご飯食べてく?」
のお義母さんの言葉にありがたくすがり、そのまま夕飯を馳走になる。挽肉と玉ねぎたっぷりを卵でくるんだオムレツと、ご飯。さっと揚げてくれたロースカツを皆で食べる。ううう、ありがとうお義母さん。料理する気が失せつつあったのでとっっっってもありがたかったです。

1/31 (水)
ミルククラブ(大手町)の「チーズケーキ」 (夕御飯)
551蓬莱の
 ぶたまん
 焼売
 ユーチュウ焼売
プーアル茶

水曜日。冷蔵庫の中にまだまだ詰まっている赤い箱をがさがさと出して、551蓬莱朝飯。寒い日のぶたまん朝食は何だかとてもシアワセな気分になる。だんなががさがさと蒸籠をセットしていたのだが、本日はぶたまん1人1ケずつに普通の焼売が1ケずつ、貝柱入りのユーチュウ焼売が2ケずつというセレクションだった。種類豊富だ。

ほんのり甘いぶたまんと、焼売。今日のお供はウスターソース。甘辛いソースをぶたまんにぺたくたつけて楽しみながら食べていて、ついつい焼売にまでウスターソースをつけてしまった。ぶたまんにはウスターソース似合うけど、焼売にはやっぱし似合わなかった。とほほ……。

さんまの蒲焼き缶詰
ご飯
抹茶入り玄米茶

今日は一日家でお仕事。ポストカード作成の仕事をいただいてしまったので、使い慣れたPhotoshop及び初めてのIllustratorに向かい合う。「配置」ってなんだ。「アウトライン」って、なんだ。頭の中はかなり真っ白だった。1000枚くらい刷って配るらしいので、気合いを入れなければならぬ。

従って、今日は料理に気合いを入れている場合ではないのであった。料理の写真に気合いを入れなければならないのであった。前菜やパスタやドルチェの写真を前に、あーでもないこーでもないと右往左往する私。

さて、昼御飯。
私には密かな野望があった。人生のうち、片手の指に足りるほどしか食べたことのない「さんまの蒲焼き缶詰」、これを食したいという野望である。小骨まで柔らかいような、あの独特に甘ったるい缶詰の蒲焼きの味って、実は好きなのである。好きだけれど、私の母はこれを食卓に出すことはなかったし、ついでに私も夕食の卓に出すようなことはいまいちしたくない。なんか、あからさまに手抜きのご飯なような気分になってきてしまってどうも後ろめたくなってしまうのだ。

でもでも、あれって美味しいんだよねぇ。先日スーパーの安売り棚の前で「98円」のポップ札を前に思わず買ってきてしまった次第である。平日の昼にこっそり食べる分には良いだろう、と満を持して缶詰をキコキコと開ける。炊飯器のご飯をぺたぺたと茶碗に盛り、熱い茶を入れ、缶詰開けたそのままのところからさんまの蒲焼きを箸でつまんでひょいと食べる。

「蒲焼き」というより、「蒲煮」なのである。トロンと粘度があって甘ったるいタレにさんまの切り身が3枚、表皮の銀色もそのままにテラテラと光っていて、中までじんわり甘辛い。さんまの味でもなく、蒲焼きの味でもなく、「さんまの蒲焼きの缶詰」の味なのである。そうそうこれこれ、この味だ。10年ぶりくらいに食べちゃったぞ。どきどきどき。

ご飯と一緒にさんまを口に放り込んでははぐはぐと喰いまくり、缶詰とご飯と茶、という単純きわまりない昼食は幕を下ろした。あー、美味しかったぞ。またこっそりやろう。

「さぼてん」の
 牡蠣フライ盛合せ弁当(竹)
 イカフライ
焼き鳥(ねぎま・皮・つくね)
モルツ・抹茶入り玄米茶

ミルククラブの
 チーズケーキ
カフェオレ

お仕事、佳境。夕飯の準備をすべき6時過ぎ、10枚のレイヤーをどう組み合わせれば良いのかサルになっている私がいた。今から帰るよ、と電話をしてきただんなに「飯買ってきて」とお願いをし、1時間後。彼は駅前のとんかつ屋でフライの盛合せ弁当を買ってきた。
「焼き鳥でビール飲んで、そいで弁当食べましょ」
と少しばかりの焼き鳥も袋に入っている。この男、ぬかりない。

ちょっと安っぽいタレの味のねぎまとつくね、塩味の皮。レンジであっためて、アツアツのところを冷たいビールと流し込む。昼から続き、どうもこういう味のものに今日は縁がある。
フライは牡蠣とヒレカツ、クリームコロッケの盛合せ。卵焼きとツナ味のマカロニサラダとキャベツつき。2つある牡蠣フライをだんなの海老フライ半分と交換したりなぞして油分たっぷり弁当を満喫する。こういう弁当のご飯には、ごま塩が良く似合う。

で、豪華デザートチーズケーキ。
だんなが昨夜、予告通りに大手町ミルククラブにてホールのチーズケーキを買ってきた。ピースで買うとと1切れ1/12ホールの大きさで250円。それがホールになるとちょっと割安になって2500円になる。「割安だし」という理由で巨大なチーズケーキを買ってくるだんなもだんなだ。

クリームチーズがたっぷり使われた、きめの細かいみっしりとしたケーキがここのベイクドチーズケーキだ。スポンジっぽい生地じゃないのでどっしりと重々しいけど、食感は案外と軽い。素朴な素朴な感じの生地に、底にはほんの少しのレーズンが沈んでいる。決して広くはないお店のキッチンで、手員の女の子がシャッコシャッコと泡立て器を動かして焼いているのがこのケーキなのだ。表面に綺麗な焼き色がついてチーズケーキ特有のひび割れが走っているまんまるなケーキをさくさく切ってコーヒーと食べる。

やっぱり魅惑的だ。ミルククラブ。