今日は数週間前から計画していた「豚汁の会」。
「大鍋に豚汁作って、みんなで"御飯と豚汁"を楽しみましょう〜」
というのが当初の目的だったけれど、そのうち
「だったら豚料理尽くしのおかずを作ってみましょ〜」
「生姜焼きとか、トンカツとかもやっちゃいましょ〜」
とどんどん壮大な計画になっちゃったのだ。料理担当は我が家。会場のHさん宅に昼過ぎから材料や大鍋を持ち込んで準備することになっている。
これから山のような仕込み作業が待っているので、ごく簡単な朝御飯。
そろそろコーンフレークに冷たい牛乳という組み合わせが寒々しく思える季節になってきた。
ツナサンド
レモネード
「豚汁」作成にあたり、肉は豚バラ肉の塊を冷凍して(冷凍しないとニニョニニョするのでスライサーにかけられない)スライサーで薄く薄くカット。大根は近所のスーパーで売られているし、にんじんも問題ない。が、どういうわけかいつもだったら労せず見つけられるゴボウがここ数日、近隣のスーパーでは発見できなかった。ゴボウは豚汁に欠かせない。私にとってはカレーライスにおけるジャガイモ位に重要な存在だ。で、午前中にだんながアジア食材屋に車を走らせて、ゴボウを買ってきてくれた。ついでにコンニャクなんかも。
山のような野菜を刻んでジップロックに詰め、研究所の備品のクーラーボックスにアルコールやソフトドリンクも詰めて用意した。鍋や調理器具類も車に乗せ、いざいざ最後の仕込みにHさん宅へ。
時間も台所の余裕もなかったので、昼御飯は近所のSUBWAYから買ってきて食べることに。野菜、「ハラペーニョ以外は全部入れて」と頼んだら山のようなブラックオリーブが挟まってきてちょっと困惑してしまった(ああいうのはパラパラッと軽く入るのが美味しいと思うのよね)。
確か日本のSUBWAYは4インチか6インチか選べたと思うけれど、こちらのやつは6インチかさもなきゃフルサイズ。可愛らしい4インチなんてものは存在しないのであった。
「だからさ、"うちのサンドはビッグマックよりこんなに低カロリー!"とかやる前にさ」
「コンボにするとポテトチップがついてきたり、6インチ以外はフルサイズしかなかったり、そういうところから摂取カロリーを少なくする道を構築してはどうだろうか……と思うよねぇ」
「思っちゃうよねぇ」
と今日もニヤニヤしながらファーストフードものを楽しむ我が家だった。
トンカツ
豚肉の生姜焼き
煮豚&煮卵
千切りキャベツ
ポテトサラダ
スティック野菜
豚汁
御飯
セロリとにんじんの紹興酒漬け
酒類各種
マンゴプリン
午後2時から、Hさん宅でH夫人と共に仕込み作業。途中からY夫人もやってきてくれて、3人でわちゃわちゃと豚汁作成やトンカツの衣つけ作業などをしていた。500gほどの豚肉に1本分の大根、3本のにんじん……などという量の材料で豚汁を作ると、それは「料理」というより「工作」という感じ。非常にダイナミックだ。味噌なんて、300gくらい溶いてもまだまだ薄く思えたりして。
豚肉の生姜焼きには千切りキャベツよね、と1個分のキャベツを千切りにしてみたり、セロリが好物とMさんが言っていたのでスティック野菜に多めにセロリを混ぜた挙げ句、にんじんと一緒に紹興酒漬けにして箸休めも作ってみたり、あとは昨日仕込んだ大量のポテトサラダとマンゴプリン。一昨日から仕込みしていた煮豚と、その汁に漬け込んでつくった煮卵もたっぷりと。
午後6時の会開始までにはダイニングテーブルに大量の料理が並ぶこととなった。今日の参加者は大人10人、子供3人。誰かの家に集まって云々、という会合ではこれまでの最大規模だ。
クーラーボックスにたっぷり冷やしたビールをつぎつぎ開けて、「かんぱーい!」と大騒ぎしながら食べる食べる食べる。今日は確か"豚汁と御飯を楽しむ日"という趣向だったはずなのに、まずテーブルの上のトンカツや生姜焼き、煮豚が、その近辺にブラックホールでも沸いたのかという勢いでなくなっていく。トンカツと生姜焼きと煮豚用で、確か豚肉、全部で3kg以上はあったはずなのである。それが瞬く間に消えていく。Iさん・Mさんの大食漢ぶりは承知していたけれど、それ以外にも大喰らいがうじゃうじゃいたというのが敗因だった。トンカツは揚げても揚げてもなくなるし、生姜焼きは何回スキレットを洗ってコンロにかけなおしたかわからない。
それでも一通りおかずを食べて落ち着いてからは、居間のそこここに座り込んでまったりと豚汁と御飯を楽しむモードに以降した。それまでは、皆ダイニングテーブルの脇に立ったまんまで(それはもう、ブッフェ台の正面から剥がれませんといった雰囲気で)飲み食いしていたけれど、御飯と豚汁でちょっとばかりのんびりした空気に。
大根と人参とゴボウ、こんにゃくと豚肉を入れた豚汁は、かなり好評だった。Mさんは4〜5回居間と台所を移動してお代わりしていた。
後半はマンゴプリンをつつきながら、男性陣はモノポリーに興じ、女性陣は日本酒傾けつつおしゃべりなどしたり。4時間半も盛り上がり続け11時前に解散、という長々とした会になったのだった。
大量に作った豚汁は、やっぱり大量に作ったならではの美味しさがあって、それはそれはシアワセだった。
アイスティー
昨日の「豚汁の会」に向けて、数日前から煮豚を煮込んで我が家を醤油臭くしていた我が夫。
「チャーシューがあったら……チャーシュー麺が……」
などと呟きつつ、一昨日手打ちラーメンの製作に励んでいたのであった。パスタ打ち、うどん打ちに続いて、こんどはラーメン打ち。昨日のうちにできあがった麺はほんのり縮れの細い麺で、見かけはかなりラーメンっぽい。"かん水"ではなくベーキングソーダを使ったそうなので、色だけは白さが強い。
煮豚の醤油だれを煮豚を下茹でした時のスープで割り、具は煮豚と煮卵。ここいら辺では貴重品の長ねぎの刻みをパッと散らして作ってくれたラーメンは、見かけは見事なチャーシュー麺。味も見事なチャーシュー麺だった。
あまり凝った味ではないスープはシンプルきわまりない「醤油ラーメン」という感じだけど(煮豚の煮汁は醤油と酒しか入っていないからしょうがない)、豚の味がそこかしこに染みていてけっこう本格の味がしていた。麺もインスタント麺を使うのより何倍も美味しい。
我が家の麺メニューがまた増殖することになったらしい今日だった。
ザラークラウトつきホットドッグ
オニオンリング
アイスティー
Nashvilleの右上(←北東)に「Opry Land」(オープリー ランド)という巨大観光名所がある。
この町の地元ラジオ局が広大な土地を買い占めてテーマパークをオープンしたのが始まり。公開録音スタジオが建設され、カントリーミュージックがそこここで流される遊園地や巨大ホテルが運営されていた。
が、現在遊園地はなく、2000年5月に遊園地跡地は「Opry Mills」(オープリー ミルズ)として巨大ショッピングモールに生まれ変わったのだとか。
私自身としてはショッピングモールより遊園地の方が遙かに嬉しいのだけど、なんでも「1日じゃ回れないほどの」巨大モールなのだとか。この町に住む者としては一度は行っておかなきゃいけないエリアが、オープリーランドなのだった(博物館などもあるらしいし、滝の流れるホテルがあるらしいし)。
で、今日はとりあえずその巨大モールに行ってみることに。別に何かを買おうという目的はなかったものの、行ってみると
「好みな形のオリーブ皿発見〜」
「子供服が安売り中〜」
「欲しかった蒸し器が2ドル〜」
「あー、たっぷり中国茶いれるのに丁度よさそうなポットが〜」
などと、結局大量に買い物するに至ってしまった。しかし、広い。めちゃめちゃ広い。ほとんどの店を通過して歩いているだけでも全部回るのに4時間くらいかかってしまう。丹念に好みの店を覗いていたら数日間かかってしまいそうだ。
2時過ぎて、かなり遅めの昼御飯はモール内の巨大フードコートで。買った荷物を席に置き、「荷物と息子は見ているよ〜」とだんなに食料買い出しをお願いしたところ、15分くらい待っても戻ってこない。各飲食店はどこも大量の行列で、購入に時間がかかるらしかった。
そのうち早足で戻ってきただんなの手にはホットドッグが。ホットドッグ専門店であれこれ買ってきたらしく、トレイの上にはチリドッグやらプレーンのホットドッグ、ポテトやオニオンリングが山になっていた。巨大なソフトドリンクのカップも3つ。
ザワークラウトが別皿で添えられてついてきたプレーンホットドッグにケチャップこてこてつけて、ついでにザワークラウトも乗せて囓る。中華風デリ屋があったりCINNABONがあったりするところはお台場の「AQUA CITY」のフードコートと雰囲気はそう変わらない。ただただ巨大ではある。店の数は10軒以上、客席数は1000以上といった感じで、ほとんどの席が埋まって人々がピザだのハンバーガーだの焼きそばだのシナモンロールだのを食べている様は壮観だ。
週末のオープリーミルズはすごい人混みだった。この町にもこんな賑わうところがあったのか!と感動してしまうほど都会っぽさを感じてしまったところだった(こういうモールで都会っぽいと言ってるくらいだからこの町って田舎なんだなぁと苦笑い)。
今度は落ち着いて平日に来ることにしよう。
「鮎家」の子持ち鮎巻き
ポテトサラダ
2日目の豚汁
羽釜御飯
ビール、日本茶
ショッピングモール歩きですっかり疲れ、スーパーでちょっと安かった帆立を買って帰宅。
昨夜の残りの豚汁があるし、ポテトサラダがあるし、これでいいやいいや〜とゴロゴロしていたところ、だんながその帆立貝をガーリックバター醤油炒めにしてくれた。
「にんにくの分量はどうしますか?"普通""大盛り""これでもか"?」
と台所から聞いていたので
「これでもか」
と即答したところ、
「そうよねぇ〜やっぱりねぇ〜」
とにんにくを刻む音が返ってきた。聞くだけ無駄なような事を彼は時々こうやって聞いてくる。こういうやりとりが夫婦円満の道の1つなのかもしれない(だから我が家は一見無駄な会話がものすごーくものすごーく多い)。
そして食卓は、「2日目の豚汁」をメインに据えた布陣になった。豚汁の供は御飯だ。御飯が旨いおかずをと、醤油の香りのバター味たっぷりの帆立に、日本にいる母が送ってくれた鮎家の昆布巻き。さらっとつまめるポテトサラダ。さー、食べるわよ食べるわよ御飯食べるわよ、といった姿勢で臨んだ夕御飯となった。
鮎家の昆布巻き、すごくすごく好きなのである。独身の頃は、母が何かと買ってきてくれて、夕食にたまにつまんでいたりした。結婚してからは、その値段の高さに脅えてほとんど買うことはなかったけれど、久しぶりに食べてみると御飯は進むし懐かしい日本の味だしでしみじみ有り難く思えるのだった。
ところで冷蔵庫には1パック(12個入り)の卵が入っていて、今日も"Buy One Get One Free"の札につられて思わず買ってしまった卵が2パック。計36個の卵が眠る恐怖の冷蔵庫となってしまった。
さすがにプリン作成を続けるのも何だし、さてどうしようかと思案中。
3日目の豚汁
今日は10時頃までひたすら熟睡。本当は布団を買いにアウトレットモールでも行こうかね、と計画していたものの、今日は一日中雨だというので"ごろごろ日"に決定したのだった。幸い御飯の材料も揃っているから買い物に出る必要もないし。
朝御飯は、あと僅か残っていた煮豚でチャーシュー炒飯。
アメリカにやってきて、それまで馴染んでいたガスコンロから電気コンロへの移行を余儀なくされ、中華鍋を封じられただんなは
「もう炒飯も作れない……」
とかなりヘコんでいた。何しろこれまで3ヶ月半、一度も炒飯を作らなかったくらいだ。彼の落ち込みは相当なものだった。
が、電気コンロには鋳鉄鍋という強い味方があるのである。分厚い鉄製のフライパン"スキレット"を使えば、中華鍋を使うのと同様に美味しい炒飯が作れるのだと聞いた。せっかく美味しい煮豚もあるし、長ねぎも買ってきたし、"Buy One Get One Free"で買ってきた卵も大量にあるし、炒飯の材料に何ら障害はないのである。で、スキレットをカンカンに熱し、スキレットでの炒飯作りに取りかかってくれた我が夫。
数分後、台所から
「俺の5年ちょっとの苦労は何だったんだ〜」
と叫び声が聞こえてきた。
何でも、ものすごーく火の通りが良いそうである。ちっとも焦げつかないそうである。鍋をふるわず、ただお玉でかき混ぜているだけなのに、すごく良い感じにできあがっちゃったんだそうである。
結婚してから何年もかけて中華鍋の"あおり"を練習し、鉄製中華お玉も買い揃えて油をなじませ、美味しい炒飯を作るべくテクニックの磨きに余念のなかった我が夫なのである。それがもう、スキレット置きっぱなしでかき混ぜるだけでほとんど味に差の無いパラッと炒飯ができあがちゃったのだから、相当なショックだったらしい。
「美味しくできたのは嬉しいけど……なんだかすっごく悔しい気分……」
と皿に盛りつけてくれた炒飯は、煮豚の煮汁がテラッと絡まっていて卵たっぷり、非常に美味しそうだった。実際、美味しかった。もう、日本で食べるのと何ら変わりなく美味しい。炒飯の脇にあるのが少々煮詰まった"3日目の豚汁"というのがまた良いじゃないか。
「ぼくはねぇ、チャーハンが好きなんだよぅ〜」
と御機嫌な息子も一緒に、3人で朝から炒飯をわしわし食べる。ほろほろに煮崩れた肉がたっぷりで、なんだか非常にシアワセだった。
ポテトサラダ
蟹汁
ビール(コロナ)
今日は天気予報のとおり、一日中冷たい雨。
テレビでフットボールの試合を見ながらプレッツェルを囓るという、非常にアメリカ人っぽい週末の過ごし方を堪能してみた。フットボールのルールは、未だによくわからないけど、我が州の人気チーム"タイタンズ"が大雑把な試合運びをするチームであるらしい、ということだけは良くわかった。攻撃力はそこそこあるみたいなのに、すぐボールを奪われたりしている。プレッツェルが美味しいわぁ。
夕飯は、天津丼。
昨日、スーパーマーケットで冷凍蟹の安売りをやっていたのだ。巨大な蟹の足が2匹分ほど袋に入って10ドルくらい。
「蟹だー」
「……カニチャーハン?」
「天津丼?」
と盛り上がり、1袋買ってきた。蟹の袋を見るまでは、「焼売でも作ろうか」などと言っていたのに、蟹の御姿を目にしてしまってからは、頭の中は蟹一色。蟹は偉大だ。何しろ蟹の前では人は無言になってしまう。
カチンカチンに凍っていたそれを昼過ぎから室温に置いて溶かし、夕方になってからだんなと二人でバキバキと蟹の身を取り出し始めた。ちょっと身はペショついているし、カスカスした感じもなくはないけど、蟹はたまにしか見かけられない貴重品だ。
「爪とか足の根本とか、味噌汁に入れちゃえ〜」
と少量残っていた豚汁に蟹の殻をどかすか放り込んで、豚汁を蟹汁に加工してしまう。豚と蟹の風味がバッティングしてしまいそうな気もしたけど、気にしない。
我が家の掟は
「その料理をより愛する人がその料理を作るべし」
である。その方が、絶対美味しくできちゃうのである。だんなの作る炒飯や炒めスパゲッティは絶品だと思うし、私はエスニック料理や煮物類はだんなより巧く作れると思う。そうすると、今日は炒飯も天津丼もだんなの担当になっちゃうのであった。
「……また"だんな特製"が続いちゃうねぇ」
とニヤニヤだんなに笑われながら(←そろそろ私が腕をふるわなければ妻の威厳が、などと私が危惧しているものだから)、それでも今晩も「だんな特製」。
蟹肉と長ねぎ(本当は椎茸とか筍も)を軽くサラダ油で炒めてから溶き卵と混ぜ合わせ、あとは両面こんがりふっくらと焼き上げるだけ。甘酢あんは、ケチャップ味がするものより酢と醤油と砂糖を同量ずつ混ぜてスープで伸ばしたものの方がお気に入りだ。
朝食に続き、またもスキレットに活躍していただいて(だんなにも活躍していただいて)、両面こんがりきつね色の卵が焼けた。豪華蟹肉、盛り沢山の天津丼だ。しかも蟹汁つき。
シャクシャクした葱も香ばしい、缶詰じゃない蟹の味がする天津丼はすごく豪華な味わいだった。町の中華定食屋あたりの天津丼だと「一体どこに蟹が!?」と発掘作業をしたくなるほど蟹の存在は希薄だったりするけど、今日のは卵の中に赤い蟹の身がたっぷり透けて見えるほど。
……しかし、あんなに蟹の足、いっぱい売られていたけどアメリカ人はどうやって喰うのかしらん。