ソーセージ
アイスミルクティー
今日はやっと、見えない右目の診察日。食事の支度から洗濯まで(冷静に考えればランドリー往復くらいはどうにでもなりそうだけど、そこはまぁ……)だんなに頼りっきりになっているのも、今日を境に良い方向に行くと良いなぁ、いや行くはずだ、と前向きに考える。
朝御飯は、「Alpha Bakery」のデニッシュブレッド(この店での正式名称は"Alpha Fan Bread")。薄切りにされているものの2枚を、オーブンで焼いてサクサクになったところを食べた。ホットドッグ用の太めのソーセージも炒めて、ケチャップぶっかけて囓る。
見える方の目に負担かけちゃいかん、と思いつつ、ついつい我慢できずにネットサーフィン。「自制」とか「節制」とか「忍耐」とか、そういう言葉は私の辞書にはどうやら薄墨で記載されているらしい。
炒飯・豆腐と豚肉の炒め物・野菜炒め
アイスティー
「1時過ぎから病院でしょ?何か食べていかないと、ねぇ」
とだんなに言われ、そう言われればそうよね、と途中にある「HONG KONG」でランチボックスを家族で1つ食べていくことに。なにしろここの飯は大量なので、2人前貰うと3.7人前ほどはありそうなのだ。
ブッフェ台のようなカウンターの向こうに店員さんが立ち、「これとあれ、詰めてね」と伝えるとダバーッダババーとおかずや御飯を容器によそってくれる。中で食べる人は平皿に盛ってもらうし、持ち帰る人にはドギーバッグに最初から入れてくれる。で、大抵その場では喰いきれないのでドギーバッグに詰めてもらってそのまま持ち帰る人が多い。
私の好物、蒸した鶏が葱と和えられているやつは本日は置かれておらず、シンプルな塩味系炒め物2種を炒飯と共によそってもらった。更に1本70セントの春巻も2本。1つのドギーバッグを店内の席で家族でつつきあう。息子は春巻が気に入ったらしく、手をネトネトにしながら1本喰いきった。
微妙に美味しくないんだけど微妙に美味しくて(どっちや)、昼食にピザ喰ったりするよりはついついこちらが恋しくなる。何しろ5ドルだ。このへんの飯処の中でも圧倒的に安い。
トンカツ定食
握り寿司(穴子・イクラ)
「血液検査、異常なし。MRIも、全く異常無し。あえて言えば、視神経がちょっと腫れているくらいで……"MS"(多発性硬化症)を示すものも特に出ていません」
が、注射針刺されたり巨大な機械に突っ込まれたりした結果だった。
「で、病名は?原因は?」
と聞くと、「う〜〜〜〜む〜〜」と詰まる主治医ローマン先生(ムスカ似)。
「原因がわからないので何なのですが、ステロイド投与をお勧めしたいと思います。これから3日点滴して、数日様子を見る。その後は経口のステロイドを投与します。それで良いですか?」
とのことで、治る可能性があるならOKだよ、と承諾した私だった。
診察はそれだけで終わったのだけど、それから先が長かった。点滴処置室では、現在20人の点滴待ちが居るそうなのである。2時過ぎに診断を下され、それから一向に「今いる眼科に点滴の係の人が来ますので」と言われた係の人はやってくる気配がなかった。3時になり、5時になり、
「これじゃラチがあかないのでERに行っちゃいましょう!」
と、先生に告げられた私と、通訳についてくれているRさん。
思いもよらず、突然ER(Emergency Room)に行くことになってしまったのだった。
生まれて初めての「ER」。病院内部からその区間に入ったのだけど、いきなり空気が他の場所と違っていて、純粋に「うぉー、あのドラマの世界だー」と何やら感動している私がいる。
スタッフは全員ブルーの半袖シャツとズボンを着用。早足に歩くその手には諸々の機械が掴まれていたりして、4畳半ほどの処置室には"いかにも重体"といった風情の人々がいた。チェックインカウンターに辿り着くと、そこには一点を見つめて動かない中年女性だとか、両足にこれでもかと包帯を巻いた男性とか、病人を待っているのか一心不乱にサンドイッチとパフェを食べまくっている巨体のおばちゃん2人組だとか。浦沢直樹さん(←『MONSTER』の画風で)に絵にしてもらったら、さぞ迫力があるだろうなぁという光景が広がっていた。
病院内部からの打診による診察だったので、受付は比較的スムーズに終わった。まだまだ待合には処置を待っている人がいるように思えたのだけど、私たちだけが先に呼ばれていく。もう心中、「私が来るところじゃないような気がする……ごめんなさいごめんなさい」という感じ。
かくして、受付そばの小部屋で車椅子に座り、無事に点滴を打たれて終了したのが午後8時半。点滴をしてくれたスタッフは、ジュリア・ロバーツを日本人好みな感じに小ぶりにしたような、素晴らしく美人でナイスバディのおねぇさんだった。
「明日も点滴、するのよね?明日は眼科に行けばやってくれると思うけど……いっぱいだったらまた私がやったげるわ♪」
と帰り際にウィンク。……このおねぇさんには会いたいけど、ERには正直、もう来たくない。「生死の境」みたいな匂いがそこかしこから漂ってきて、ちときつい。
午後、ずっと研究室で待っていてくれただんなと息子。連絡を入れたら車ですっとんで迎えに来てくれた。
「おゆきさんもお腹、すいてるでしょ?KENちゃん行こ、KENちゃん!」
と、そのまま車で3分ほどのところにある「Ken's Sushi」に。右手の甲に点滴を打たれていたので少々食べにくかったものの、トンカツ定食をきっちり食べた。頑張った自分へのご褒美に、ちゃっかり穴子握りなんかも注文してみたりして。
日本で食べるより高価な握り寿司、これまで遠慮して手を出していなかったのだけど、初めて食べる穴子握りは十二分に美味しかった。ちょっと固めだけど、脂のノリもタレの味も、懐かしい味だ。息子は玉子とイクラの握りを一心不乱に食べている。
ちょっと薄めで、ちょっと細めのトンカツは、でも、ちゃんとトンカツ。キャベツの千切りとトマト、茹でたブロッコリー、ポテトサラダがついてくる。マッシュルームの入った味噌汁と御飯、あとは1.5ドル増しでサラダもついてくる。
そして、だんなは隠れメニューの「天丼」。メニューには載っていない天丼だけど、天ぷら定食はあるし、カツ丼もある。
「あのお店ね、忙しくないときには天丼も作ってくれるのよ」
と研究室スタッフMさんに教えられ、頼んでみたのだった。「勿論OKよ」と問題なくオーダーでき、やってきたのは豪華な天丼。海老、人参、かぼちゃ、ブロッコリー、いんげん、マッシュルーム、ピーマンの天ぷらが2つずつ盛られ、タレは少々甘め。どの天ぷらも申し分なくサクサクで巨大で、だんなは涙しそうな勢いでかっこんでいた。天ぷら定食や天ざるも美味しいけど、天丼の味はまた格別なのよね。
スクランブルエッグ&カリカリベーコン
牛乳
「今日と明日の点滴の予約、眼科受付が"そんな話はドクターから聞いてない"って入れてくれないんです〜」
と少々憤った声の、お世話になっている通訳Rさんの電話で始まった今日の朝。
「3日間点滴してね」と指示は受けたものの、昨夜は遅くて予約が入れられず、今朝一番にRさんが私の代理で眼科に電話をしてくれたのだった。
それからはRさんが大活躍してくれ、10時頃には「では今日も明日もERに行って点滴してもらってくださいね」という結果を聞くことができた。うわー、今日も重病人盛り沢山のER。あそこに行くだけで鬱になってしまいそうだ。
そして落ち着いたところで遅めの朝御飯。すっかり「僕が御飯担当だもんね」と脊髄反射で食事の準備をしてくれるようになってしまった我が夫(ああ、素晴らしい……素晴らしくてよ、ダーリン)が、デニッシュブレッドを温め、スクランブルエッグとカリカリベーコンを作ってくれた。卵4つ使用の、たっぷりスクランブルエッグだ。ここだけの話、オムレツを作ろうと思ったらしいけれどスキレットでは上手にできず、なし崩し的にスクランブルエッグになってしまったのだとか。いや、ここだけの話だけど。
食いしん坊の通訳Rさんは、「Alpha Bakery」の事情にも詳しい。昨日、病院での待ち時間に聞いた話では、
店員さんたちには、その店の夫人スーさん(美味絶品ロールケーキの担当がこの人だとか)が作るまかない昼食がふるまわれるらしい。それは"カレーパンの中身のドライカレー状のものを御飯にかけたもの"であったりして、それはそれは美味しいものだらけなのだとか。この昼飯を、店員さんたちはそれはそれは楽しみにしている。ということだ。
現在、「Alpha Bakery」2号店のオープン準備をしている(オーナー夫妻の娘さんに継がせようとしているとか)らしい。場所は北京!
「北京なら……」
「日本からナッシュビルに行くより近いよねぇ……」
とほくそ笑む私たち。北京にロールケーキ買いに行くつもりなのだろうか私たちは。
とにかく、日本人にもアメリカ人にも大人気の店なのだった。
いいなぁ、カレーパンの中身の御飯ぶっかけ……。
角煮大根
スライスオニオン おかか醤油
羽釜御飯
ビール(コロナ)
「Alpha Bakery」のロールケーキ(チョコ)
カフェオレ
午後1時、ERにやってきた。チェックイン手続きして、血圧計って、手首に名前と住所と電話番号が書かれたタグを巻き付けられ(←このへんがいかにも救急って感じで、もう……)、さんざん待たされた後なんとか点滴終了。今日は手続きのところだけだんなに付き添ってもらい、あとは1人。「アレルギーはあります?」の質問が聞き取りづらくて3回も聞き直してしまったトホホな私の語学力。無事に終わったのは、5時半だった。
私たちが受付で待っている時、向かいのソファには左の手首あたりを包帯でぐるっぐるに巻いたお兄ちゃんが。露骨に痛そうな顔をしているし、刃物で何やらざっくりやっちゃったような、そんな風情。いかにも急患といった様相で、「私なんかよりそっちの兄ちゃんを先に診てやってよね」と思ってしまったほどだ。
で、その兄ちゃん、私が点滴打ってた処置室の向かいの部屋にやってきた。ドアが開いているのでなんとなく見えてしまう。
「仕事の……チェンソーを当てちまって……」
「あらら、これは酷いねぇ」
みたいな会話が聞こえてきて、目の前の廊下を真っ赤な包帯やら何やらがじゃんじゃん運ばれて行く。ああ、いかにもなERな展開が我が目の前に。ついつい点滴打ってる左腕にググッと力が入ってしまい、見ちゃいかん、と思いつつついつい目線はそちらの方へ(悪趣味だなぁと我ながら思う)。
それからは、ドクターの背中に隠れて多くは見えなかったものの、恰幅の良い兄ちゃんの
「ノオォォォォ」「シ〜〜〜ッッット」「アウチッアウチッアウチッ」
といった押し殺した悲鳴がえんえんと聞こえてきたのであった。こちらも痛くなってしまいそう。イヤだわぁ(と言いつつやっぱり見てる)。
帰宅後、だんなは数日前に買ってきた豚バラ肉でおもむろに角煮を仕込み始めた。
このところ、煮豚ばかりを作っていたので、アメリカに来てからの角煮作成は初めてのことだ。けっこう旨い豚バラ肉が入手可能な事がわかり、しかもそれは日本じゃあまりお目にかかれない皮つきバラ肉ということもあって、我が家はここすっかり豚バラ料理ブームなのだった。日本に居るのと変わらない事やってるような気がしないこともない。
「泡盛」は「ウォッカ」で代用可能らしいので、次は「らふてぇ」(←沖縄料理の煮豚)にチャレンジしようかと野望を抱えている私。いや、いっそのこと日本から12月に遊びに来る予定の友人Sちゃんに「泡盛持ってきて」と頼むべきだろうか。
で、今日の夕御飯は角煮大根。
「お豆腐とか、セロリのスティックとか、さっぱりしたものが食べたいなぁ……」
と呟いていたところ、オニオンスライスを作ってくれた。鰹節たっぷりかけて、ポン酢醤油かけて、見事なまでのさっぱり味副菜。
角煮は、残念ながら仕込みから1時間半しか経っておらず、今ひとつ味の浸みの足りないものだった。「どっちの料理ショー」の途中経過の「ご試食♪」のごとく、
「……うん、素材はサイコー」
「煮汁もサイコー」
と呟きつつ、いつもなら5切れ6切れ食べちゃうところ、2切れで我慢。角煮の本番は明日の夜頃からだろう。
ただし、大根はホロホロと煮えて非常に良い感じ。久しぶりに大根らしい大根を見かけて(大根はそのへんのスーパーでも見かけるけど、長さ20cmほどにぶった切られていて、しかも妙にグニャグニャと柔らかかったりする)WAL☆MARTで買ってきたやつだ。1本まるごと角煮の鍋に投入されたものらしいけど、飴色に、良い具合に煮えていた。大根だけで御飯3膳くらいいけちゃいそうだ。でも軽く2膳で我慢、デザートあるし。
「やっぱりね、体調崩していて、だんなが御飯作ってくれて、でも"毎食冷凍食品ばっか"というのはあり得ると思うのよ」
チョコレート風味の淡い甘さの生クリームをぺろぺろ舐めながら、私が言う。
「そうねぇ、そうなったら"もういい!私が料理作る!"ってなるだろうねぇ」
と、大事そうに茶色のスポンジ層を剥がして食べた後に"クリームだけをすくって舐める"という子供みたいなことをしながら、だんなが答えた。
「うん、"料理好きの夫で助かったー"と感謝してるんだけどね」
「……総力あげてビビンバ作ったり角煮仕込んだりしなくてもいいと?」
「そうそう」
苦笑いする私の意図は、正確に汲み取っていただけたようだった。
だって私、普段の料理そんなに気合い入れてないもの、完治したらそのテンションでおさんどん交代だなんて、絶対無理〜。
御飯
緑茶
昨夜、だんなが仕込んでくれた豚肉の角煮は、夕食後もコトコトと煮られて良い感じに煮詰まり、今朝にはすっかり味も色も染みた素晴らしい外見に変貌していた。
「ナイス煮え具合〜!」
「ナイス〜」
「すんばらしぃ〜」
起きるなり鍋の周囲に群がり、拍手している怪しい家族。朝から早々に「角煮&御飯」という組み合わせになってしまっても、致し方ない事態なのだった。
皮つき豚バラ肉、脂の層とはまた違った"コラーゲンプルプル系食感"が素晴らしい。肉と脂の層の重なり具合もこれまた心を鷲掴みにしてくれるナイスバランス。肉はほろほろ、脂はプルプル、醤油と砂糖のシンプルな味付けも肉の魅力をこれでもかと出してくれている。煮豚もいいけど、角煮もやっぱりサイコーだ。
そんなわけで、朝から角煮2切れに大根1切れというヘビィな食事になった。
目の具合は日に日に回復傾向、というところだけれど、ステロイドの作用なのか何なのか、妙に気分が高揚して眠れない。話によると、ステロイドは鬱な気分になるらしいけど、鬱というより躁かもしれない。
昨夜、だんなに突然
「ミクロ経済学とマクロ経済の違いって何よ?君は経済学部出身だから説明できるでしょ?」
と聞かれ(内心、"いつも「経済学部を出ただけ」と公言して憚らない私にその問いかけは新手のイジメなのかしら"と思ったりしながら)、
「えっとー、ミクロはちっちゃくて、マクロはでっかいの」
と答えて頭を抱えられ、その話の影響からか価格分析だのゲーム理論だのが夜中ずっと頭の中をぐるぐるしていた。朝、目が覚めるなり
「せりあちゃんは右目症状景気動向を3日連続で上方修正した。昨日の"回復している"から"はっきりと回復している"に進め、精神状態においては"弱めの動きが続いている"と昨日の判断を据え置いたが、持ち前の明るさを鑑みて"一部には底堅さが伺われる"と付け加えた……」
などとごにょごにょ呟いてしまった。そうそう、底堅さがねー、弱めの動きなのよ(←全然わかってない)。
天ザルうどん
今日は昼過ぎに病院に行きましょうかということに。ドクターの指示によると、
「今日もER行って点滴してきてね♪」
ということになっている。もはやちっとも重病人じゃない私、エマージェンシールームなどを訪れるのは、正直気が引ける。
遅めの朝食(しかも角煮)だったし、では適当に軽く昼食食べて行きましょうかね、と病院近くの「Ken's Sushi Restaurant」に寄ってから行くことに。一昨日もこの店に来たばかりなのだけど、今日は食事以外にこの店に来る理由があった。
日本から持ってきた、出刃包丁と蕎麦包丁が錆びちゃったのである。
蕎麦包丁はだんながうどん打ちに頻繁に使っているけど、生地の塩気が原因でか錆び始めてしまったのである。出刃は、丸のままの魚が滅多に手に入らないことから出番がなくて、ボーっと放置している間に錆び始めてしまった。
「ちょ、ちょっと手に負えない状態になってしまったから、どこかで研いでくれないかなぁ」
「でも刃物屋さんとか、ないしねぇ」
と悩んだ後、「お寿司屋さんはどうだろう?」と一昨日、店主に
「包丁、持ってきたら研いでくれる?」
と聞いてみたのだった。返答は、二つ返事。どうぞどうぞ、という事だったので、本日食事がてら包丁を持参したのだった。
昼御飯は、軽く天ざる。うどんか蕎麦かを選択できて、うどんを頼んだ。海老天2つに、葱とワサビと生姜が添えられたざるうどんで6ドル弱。何しろ天ぷらが天ぷららしい味の天ぷらなので嬉しいのだ。鰹の香りがするだしは、ちょっと甘め。
食後、12時過ぎ頃にERに到着し、今日は2時間ほどで点滴は終了した。もう係の人にすっかり覚えられてしまったようで、係の人自ら薬局に行ってステロイド入りの小瓶と食塩水を取ってくる始末。点滴の、上にぶら下げられたパックからチューブから針までをちらちら眺め、点滴終了直後に手首に刺さった針から血が少しずつ逆流して透明な管を赤く染めていくのをぼんやり見つめて
「あああ、私の大切な血液が大さじ2ほど失われてしまった……」
などと今日も思ってしまうのだった。
角煮大根
はまぐりの酒蒸し
ナムルの残り(ゼンマイ・大根・炒め挽き肉)
「鮎家」の昆布巻き(子持ち鮎)
豆腐の味噌汁
羽釜御飯
ビール
「Wild Oats」のニューヨークチーズケーキ
カフェオレ
昨夜の角煮、朝にもテラテラと美しく光り輝いていたわけだけど、夜にはますます艶を増して色っぽくなっていた。
「いやーん、もー」
「いっぱい食べるじゃ」
「腹一杯、行くじゃ」
と、いよいよ角煮をもりもり食べる。私のリクエストにより茹でほうれん草を皿の下にたっぷりと敷き、上にたっぷりの角煮。しかも飴色大根つき。最高の夕御飯となった。
しかも、現在"口は出すけど手は出さない"という最低の主婦っぷりを発揮している私は
「お魚も食べたい。最近お肉ばっかりだし」
とリクエストした挙げ句、
「がんばった自分にご褒美するの。ニューヨークチーズケーキを買って帰るの」
とか言っているのであった。2年後くらいの自分がこのへんの日記を読んだら過去の自分を激しく罵りたくなってしまうに違いない。とにかく最近の私はダラけていた(だんな曰く「片目で料理させて指でも切られたらもっと面倒くさいし」だそうだ)。
で、夕方オーガニックスーパー「Wild Oats」に寄ってきた。旨そうなハマグリ(クラム)がちょっと安くて、1ポンドちょっと所望。酒ふってちろっと醤油かけて、にんにくかけてスキレットにてぴっちり蓋を閉めて蒸し焼きにした。仕上げに刻み万能葱をたっぷりと。肉あり魚あり、しかも冷蔵庫から残りもののナムルやら昆布巻きやら出したら、豪華な夕食となった。鰹だしの風味たっぷりの豆腐の味噌汁、炊きたての羽釜御飯。もうこれが快気祝いじゃないかという勢いだ(まだ快気してない、しきってない……症状動向は上向き修正されたとはいえ)。
これでもかとたらふく食べた角煮は、しみじみシアワセだった。やっぱりこういうもの、ちまちま2切れ3切れ食べていたら微妙に欲求不満になってしまう。勢いつけて5〜6切れガツガツッと囓って始めて至福の域に達するのだ。甘く煮えた大根と、汁がちょびっと染みたほうれん草を間に挟みつつ、
「そのまま食べても、ウマ〜」
「ビールと一緒にいっても、ウマ〜」
「御飯に乗せたら、これまたウマウマ〜」
と角煮の至福を享受した。しかも適度な口直しになる、にんにく風味ブリブリはまぐりもたっぷりと。
そしてデザートにニューヨークチーズケーキ。
ビスケットを砕いたような土台はしっとりと、ほんのりシナモン風味。ふわりとしたチーズ生地は甘さ控えめで一見食べやすく、でもどっしりと胃にたまる"さすがアメリカ"なデザートだった。
ボリュームたっぷり豪華デザートまでたいらげて、やっぱり気分は快気祝い。
ミルクティー
月曜から水曜日までの3日間のステロイド点滴を終え、
「目が覚める度に右目が見えるようになってくる」
という嬉しい状況にある私。今朝には、右目だけで息子の寝顔も(若干ぼんやりだけど)見えるようまでになり、ああ良かったホントに良かった、としみじみ思ったのだった。
今のところ、副作用らしい副作用はなく(鬱になるどころか躁になっている感すらあり)、そして今日は眼科診察に行くことになっている。
7時に起床し、朝御飯は薄切りデニッシュブレッドをトーストに。安売りのを買ってきたティーバッグの紅茶は「風味無し、色だけ」という今ひとつなものだったけれど、濃いめにいれて牛乳ダバダバ入れて飲む。
アラッビアータ リガトーニ ミートボール乗せ
マンゴーアイスティー
午前8時半からの診療は、無事に10時過ぎに終了。
「OKOK、回復しましたね。これから2週間、経口ステロイドを引き続き飲んでください。後半4日で量を半分半分にしていって、投薬終了後にまた診察を」
とのこと。
主治医ラーマン先生(ムスカ似)は、通訳についていてくれるRさん曰く、「なんだかインド系の訛があるのよね」という方である。白髪混じりの黒髪で、アジア系とラテン系が微妙に混ざった顔をしている。「ケー、ジー、ケー、ジー」言うので何だと首を傾げたら「君の体重はキログラム表示で何キロだ」と言いたかったらしい、なんて事まである、意志疎通がちょっぴり難しい先生だった。
英語っぽく聞こえない英語で、先生は
「貴女の回復を本当にお喜びします。あと少しだけど、まずはおめでとう」
てなニュアンスの言葉を笑いながらおっしゃった。いやー、もう、本当に、ありがとうございます。ぺこりぺこり。(心配してくださった皆様も、本当、ありがとうございました。ぺこりぺこり)
昼御飯は、通訳Rさんと研究所スタッフMさんが熱烈にお勧めしていたイタリアンレストランに行ってみることに。ちょっと郊外にある「Caffe Nonna」なるお店は、パスタがなかなかいけるらしい。Rさんに地図を書いてもらって、小さな看板がかかるその店を目指してみた。
客席数は20ちょい、といった程度の小さなお店。オレンジ色っぽいマットな壁紙が華やかな、そのくせちょっと落ち着いた雰囲気の店だった。
「お飲物はどうしましょう?今日用意したアイスティーは、マンゴーアイスティーとホニャララと……」
とまず聞いてきた店員さんに
「マンゴ!マンゴーアイスティーください!」
と即決で告げ、メニューの検討。
肉料理、魚料理もあるけれど、ピザやパスタにサラダをつけて、というランチでも問題ないようなメニューになっていた。ピザやパスタにサラダをつけると3〜4ドル増し。パスタはクリームソースやドライトマトのペーストソース、クラムソースなど数種類があり、それを好みでペンネやリガトーニ、フェットチーネなどと組み合わせて注文するようになっている。更に3ドルくらいでグリルドチキンやミートボールのトッピング、1ドルくらいで茄子やマッシュルームなどの野菜系トッピングをつけられるようだ。
テーブルには、柔らかなスライスされたパンと、オリーブ油とチーズと唐辛子とバルサミコ酢を合わせた小皿がやってきていた。甘さのあるバルサミコ酢にたっぷりのチーズがふられた皿にパンをちょこちょこつけて食べつつ、料理の注文。
「僕は、プッタネスカソースのフェットチーネに、茄子をトッピングで」
「私はアラビアータをリガトーニで、ミートボールをトッピングしてシーザーサラダもつけてね」
と、トッピングありサラダあり、の豪華注文になった。
チーズをたっぷり散らしたシーザーサラダは松の実もざくざく入ったロメインレタスの盛り合わせ。くどくないほのかなビネガーの酸味と、ガリガリ挽かれた胡椒が「あ、なんかアメリカーンなレストランとはちょっと違うかも、かも」と嬉しくさせてくれる。
「1人1つサラダ取ったら多いかと思ったんだけど」
「やっぱり1つでちょうどよかったね」
と言いながらだんなと2人でつつきまわす。大皿にこんもり盛られたロメインレタスは、なかなかの分量があった。
そしてそして、サラダに輪をかけて山盛りのパスタがやってきた。
「洋風どんぶり」とでもいった感じの深さのある皿(スープ皿よりも深みがある)に、ドカッと大きめリガトーニが赤いソースにテラテラと絡まっている。
「エクストラチーズもかけます?」
と店員さんが巨大なボウル入りのおろしチーズを持ってきて、こちらが頷くや否や、バッサバッサと大量にかけてくれた。あああああ、チーズ前に写真を撮っておけばよかったと思っても後の祭りだ。私の皿もだんなの皿も真っ白になった。アラビアータパスタは、一気に"アラビアータ風味チーズパスタ"といった風情に。
トッピングの肉団子は直径5cmほどのものが2個、ごろりごろりとソースに絡まっていた。香草の香りのする肉団子は野菜もたっぷり入っていて、なかなか手がかかっている。挽き肉も混ぜられたアラビアータソースは、生のトマトもたっぷりと入っていて唐辛子がこれでもかと効いていた。チーズの塩気もソースの塩気も心持ち強めで、ちょっとオイリー、コッテリコッテリとしている。でも不思議とバクバク食べられる"ただ味が強いだけじゃない"味がした。だんなのプッタネスカも、たっぷりの巨大オリーブは種が抜かれ、ケッパーもプリプリの大粒のものがたっぷりと。日本で食べるパスタとはまた違い、もちろんアメリカ名物"くたくたパスタ"とも全く違う、ちょっとクセになりそうな店だった。
ティラミスもけっこう旨いらしい。ピザも美味しそう。
ちょっとばかり値段の張るお店だったけど、今度はクリームソースパスタを食べに来てみよう。
冷や奴
3日目の豚の角煮
煮豚丼
豆腐の味噌汁
ビール
一昨日、角煮を仕込んでくれた我が夫。タイミング良く、というか悪く、というか、だんなは同時に
「煮豚頒布会」
の役も仰せつかっていた。
「君ん家の煮豚サイコーだよー、また喰わせてよー、また作ってよー。あれ、御飯にも合うし酒にも合うし、ラーメンに乗せたらサイコーだし、パーフェクトフードだよー」
と毎日のように留学生仲間Iさん及びMさんにせっつかれていたらしい我が夫。
「じゃあ、この店に行って豚バラ肉買ってきなさい、ね。そしたら煮豚に加工して渡してあげるから。あ、長ねぎもあったら買ってくるように」
と、だんなは彼らに告げたらしい。そして
「あ、マージンとして豚バラ半分、貰うからね」
と通告したのだそうだ。
マージン、半分。それだけ聞くと「そんな、女郎屋の元締めみたいな取り方を……」と思ってしまうのだけど、この地では貴重品である醤油と日本酒を使っての煮豚加工だからして、肉の価格の安さを前提に考えると"それくらい貰ってもバチは当たらないだろう"というバランスになっているらしいのであった。
で、昨夜。台所には2日目の角煮がたっぷりある状態で、別鍋では醤油と酒で煮込まれた煮豚が台所に醤油が煮詰まる匂いを充満させていた。
夕飯時に鍋持参で我が家にやってきた両氏は
「もうすぐ米も炊けるところです♪」
と嬉しそうに煮豚を抱えて帰って行った。Mさんの家で二人で「煮豚&白飯の夕べ」を堪能したということだ。本日M氏が自白したところによると、
「Iさん……"一度やってみたかった"とか言って、煮豚を切らずに塊のまま、半ブロック一気食いしてました……」
とのことである。……さすがに胸焼けしたんじゃないだろうか(←したらしい)。
そういうわけで、「3日目の角煮」あり、「昨日仕込んだ煮豚」あり、という食卓になった今日。鰹節てんこ盛りの冷や奴に、味噌汁に、白い御飯の上には煮豚をトッピング……となった食卓は、全体的に渋茶色一色だった。角煮と煮豚、両方食卓に出ていてなんだか凄い状態に。ある意味豪華だ。
「3日目の角煮」は、1日目の可憐な乙女が2日目に熟女になり、更に妖女に変貌と遂げちゃったような外見になっていた。皮も脂も肉も、各層がもう分別つきかねるほど濃い色に染まっている。どこを噛んでもホロホロと崩れてしまう。
ビールを飲みつつ冷や奴と角煮を平らげ、そしてメインディッシュは煮豚丼。
薄く薄くスライスした煮豚を御飯の上に散らし、醤油と酒が煮詰まったタレをちらっとかけて白髪葱わさわさ盛りつけてかっこんだ。うむ、角煮も良いが、これもこれでやはり良い。美味しい。
来週半ばには、「サンクスギビングランチパーティー」なる料理持ち寄りのパーティーがある。そろそろ家事のリハビリも始めなければならぬ。
今日は美味しそうなモッツァレラチーズを買ってきてみたりしたので、週末にはピザでも焼いてみようかなー(生地から自作で)と思っているのであった。
昨夜も私は眠れなかった。
どうも、ステロイドには感情の揺れの起伏が大きくなるような副作用があるらしく、人によって鬱寄りになったり躁寄りになったりするらしい。私はこれでもかとはっきり「躁」になっていた。
「眠れなーい、眠れなーい、あっはっはっはー」
と深夜2時過ぎまでパソコンの前に座っている私。ああもう、何やってるんだか。
何やってるんだかついでに、昨夜は
「GRAMERCY NEWYORKはニューヨークに実在しなかった」
なんてものまで、書いてしまった。ここ数日、メールをいただいては顔を白黒させていた結果をまとめたもので、
「ニューヨークに行ったらー、新宿と名古屋と京都にある、あのケーキ屋さんの本店に行くんだー」
という計画が儚くも消え去った経緯を残しておくことに。
そういう業界に詳しい人なら「そう、良くあることなのよ」という事かもしれないけれど、"日本ではこの店が最初!"(←微妙な表現……)と散々言われていた店が、何のことはないコテコテの日本発ブランドだったというのは、ちょっぴりショックだ。
右目が治る経緯より、密かにこっちの展開にドキドキしていたここ数日の私。
今日は、予定されていた息子の予防接種に行くことに。
本来ならば先週の今頃に行かなければいけない事になっていたのだけれど、延び延びになってやっと今日、行くことになったのだ。
午前3時頃に布団に入った私はすっかり寝不足のまま7時起床。
「オラオラオラオラ、起きんかーい!」
と息子と自分を叩き起こし、半分瞼が落ちたままでシリアルをかっこんで家を出た。
一番寝起きが良かっただんな、しかし彼は昨夜からアメリカ人臭かった。
日本から持参していたデオドラントスプレーが無くなり、じゃあアメリカのものを買ってみましょう、とWAL☆MARTで安売りしていた怪しい黒缶スプレーを買い、使い始めた我が夫。すごい、すごい匂いがする。"ああ、アメリカ人男性とすれ違うと確かにこういう匂いするよね"と頷きたくなるような凄まじい芳香が彼の周囲に漂っている。消臭効果もあるのだろうけど、それよりは「臭い匂いを上から蓋しちゃいましょ」的なものを強く感じるスプレーだ。
「すごい、すごいよだんな、もうキミはアメリカ人そのものだ!」
と、寝不足なのにやっぱりテンションの高い私は、「昨日つけたのに、まだ匂ってるー」と服の匂いを嗅ぎ続け、だんなに心底イヤな顔をされた。
ごめん。
アイスティー
1時間半ほどで、予防接種は無事終了。本日はブッスブッスと3本打たれ(無料だ、素晴らしい)、
「あとは4月に最後の1本を打ちましょう」
と言われて帰ってきた。だんなは、まだアメリカ人の匂いを発散させている。
昼御飯は、冷蔵庫に久しく保存されていたミートソース(だんな特製)を食べてしまうことに。1人分のパスタソースとしても物足りない分量だったので、瓶詰めトマトソースも開けて2色がけにすることにした。アルデンテに茹でたリングイネに、だんなが作ったひき肉たっぷりのソースをかけ、更に肉っ気がほとんど感じられない(ソーセージ入りと書いてはあるが、一体どこに混入しているのかといった具合の)トマトソースを横にかける。おろしチーズをたっぷりかけて、いただきます。
肉たっぷりこってりソースと、酸味強めのトマトソースはなかなかバランスの良い組み合わせだったようだ。トマトソースだけじゃめちゃめちゃ物足りなかっただろう味が、ミートソースのおかげでかなりイケるものになっていた。
グリーンサラダ
豚汁
羽釜御飯
「そろそろリハビリ開始しなきゃねぇ〜」
と今日の夜は私も一緒に夕食準備。
「ポークソテーに、クリーム味のスープをつけようと思ってたんだけど……?」
と言うだんなに、
「豚汁が食べたい。食べたい食べたい食べたい」(←まだ和食スキスキ病らしい)
とワガママ言って、言うだけじゃ何なので野菜を刻み、肉と炒めての豚汁作りはおおむね私が担当。
ウィスキーとバターと醤油で味つけてだんなが焼いてくれたポークソテーには、たっぷりの千切りキャベツ(←イタリアの煮込み料理リボッリータをしようと思って買っておいた縮緬キャベツ……)。"袋入りで、あとは皿に盛るだけ"状態のサラダパックがあったので、それには胡麻味ドレッシングを。御飯に豚汁、今日も何やら和風になった。
何だか猛烈にお腹が空く(これまたステロイドの副作用で"食欲亢進"などというのがあるらしいのだけど、それなのか、単に私個人の特性なのか)。
我が家最大の平皿にこんもり刻みキャベツを盛り、ポークソテーを盛りつける。ざっと炒めてからウィスキーをたっぷりふってフランベし、バターと醤油で風味をつけたポークソテーは、いつも以上に汁っぽく好みのシャバシャバ加減だった。
「そうそう、この"ウィスキーバター醤油風味肉汁"を吸ったキャベツがね……」
「サイコーなのよね……」
「御飯にかけても美味しいのよね……」
「豪華なのよね……」
などとゴニョゴニョ言いつつ、肉汁まで余すところなくポークソテーを堪能。
クロワッサン
牛乳
「不眠気味なのはステロイドの所為だー!」
「なんか妙にハイテンションが続いているのはステロイドの所為だー!」
「腹が減ってしょうがないのはステロイドの所為だー!」
「このままじゃ太ってしまう!やっぱりステロイドの所為だー!」
……と、この世の不具合をすべてステロイドの所為にしてみる、経口ステロイド服用3日目(点滴開始からは6日目)。
「全然外見が変わってないのに"顔が丸い!ステロイドの所為だー!"とか言わないようにね」
と、だんなは若干冷ややかな目で私を見つめているのであった。いや、でも、本当にお腹が空いてたまらないんですってば。
そして、クロワッサンと豚汁、という異色な組み合わせの朝御飯。刻み長ねぎをどばっと散らした豚汁は、不思議とパンに似合う(バタートーストやクロワッサンはなお似合う)。しかも牛乳にも似合う。その豚汁が"2日目の豚汁"ともなれば、もうサイコーなのであった。
台所に味噌の匂いを漂わせつつ、「豚汁は最高よね」と2杯。3口ほどで食べられるミニクロワッサンは3個。更に牛乳をコップに2杯。
……なんだかすごく充実した腹具合の朝食になってしまった。
Big Mac Combo Meal
Oreo McFlurry
次の金曜日に出発予定で、サンクスギビング週間は旅行の予定を入れている我が家。
「このままでは、サンクスギビングらしい料理が食べられないままになってしまうかも!」
と、それはそれでつまらない事態だということで、前倒しにサンクスギビング料理を作ってみることにした。1週間早いけど、水曜日あたりにターキーでも焼いてみよう、と、今日はその買い出しに。
ハロウィンが終われば次はサンクスギビングだ、と言わんばかりに、スーパーマーケットにはターキーやかぼちゃの缶詰(←パンプキンパイを焼くのが伝統らしい)が並び始めている。ターキーの腹に詰める袋入りスタッフィングなんてのも大量に。スタッフィングは、パン粉やコーンブレッドを砕いたものにハーブを混ぜ込んだタイプのものが多いらしい。それがスタンダードなものだとは思いつつ、
「……でも、わしらはね」
「米の国の住民だでね」
などと呟きつつ、"ターキーの腹の中にはガーリックピラフを詰めてしまえ"と決意したのであった。
ターキーに添えるソースのためのクランベリーなども購入し、車のトランクは食料品でいっぱいになった。火曜日には料理持ち寄りの"サンクスギビングランチパーティー"なるものに出席するため、それに予定しているちらし寿司の材料なんかも入っている。
ボリュームたっぷり朝御飯を10時過ぎに食べていたので、昼御飯は簡単にマクドナルドで。
「今日は、シェイクーシェイクーシェイクを飲むのよー」
と店に入ったものの、「McFlurry」なる一見シェイク風のシロモノの看板が出ていたので、思わずそれを注文。HC-オレンジ入りだのオレオ入りだのM&M's入りだのがあり、
「スモールっすかー?ラージっすかー?」
と聞かれた声に即座に「スモールでっ!」と答える。まだ食べたことのないものをラージサイズで注文できるほど、私たちはアメリカ人化していない(どれほどの量が、と想像するのも恐ろしい)。
あとはビッグマックのセット。セットについてきたソフトドリンクのカップは息子に渡してコーラを飲ませ、私は「Flurry」をつつきながらハンバーガーとポテトを囓った。
シェイクと言うよりは、ソフトクリーム。白っぽいアイスクリームに具を混ぜて、ミキサーでかきまわしたようなものだった。思ったより甘くなくふわんふわんと食べやすいそれをスプーンですくってざくざく食べる。シェイクよりアイスクリーム寄りで、シェイクよりさっぱりしているという感じだ。ところどころジャリジャリと感じられるオレオの味が、いかにもだった。
バーガーの味は日本とほとんど変わらぬマクドナルドだけど、ソフトドリンクはお代わり自由であったり、ケチャップのディスペンサーがあってミニカップに入れられるようになっていたり、メニューが細々と違っていたりと、微妙な差が面白い。私たちは、すっかりフライドポテトにはケチャップが欠かせなくなっている。
「日本に帰ったら思うんだよ」
「そうそう、"ケチャップがなーい!"って思うんだよ」
と今からそんなことを言っている私たち。
グリーンサラダ
キャンベルのチキンクリームスープ
2日目の豚汁
羽釜御飯
そろそろ魚が食べたいな、と思う。我が家は相当「肉喰い」に傾いていると自覚しているけれど、本音としては3日に1度は肉じゃなく魚介にした方が良いんじゃないか、良いもなにも魚が食べたい、と思わなくもない。
思うのだけど、スーパーに行く度に肉を買ってきてしまうのだった。値段が違いすぎるのだ。
「これ、これ、これ、すごいですよ」
と、スーパーマーケット「Harris Teeter」の週替わり広告をひらひら差し出してきた我が夫。ステーキ用の牛肉が1ポンド1ドル99セント。同じく特売として載っていた海老は、1ポンド5ドル弱だった。しかも今回、じゃがいもがお安い。5ポンドのじゃがいもが49セント。これは買いです、買いなんです、奥さん、とだんなは鼻息が荒かった。
で、アジア食材屋とWAL☆MARTに行った帰りに、このスーパーにも寄って買い物してきちゃったのだった。ごっついごっついステーキ肉が、600gほど入って3ドル弱。笑ってしまうほど安かった。だから今日も肉料理。
魚は、どんなに安くても1ポンド5ドル前後はしてしまう。平目が食べたいなぁと思ったら10ドルは覚悟しなければならないアメリカ南部台所事情だ。
「私は米を研ぎましょう……」
「では僕はにんじんをグラッセにしましょう……」
と、台所を2人でパタパタ。肝心の"肉焼き作業"はだんなにやっていただいたところ、にんにく醤油バター味ステーキとなった。瓶詰めのローストガーリックをこれでもかと散らし、焼き上がりに醤油とバターをざっと絡めて、できあがり。スキレットから溢れそうなほどの大きさの1枚肉を、盛りつけ寸前に互いの皿に切って盛りつけた。切り口は見事な好みな具合のミディアムレアっぷり。肉汁が赤いことはなく、でも断面は美しい薔薇色だった。
煮詰まった醤油色がテラテラと光る肉は、当然御飯に良く似合う。
禁断の"皿に残った肉汁に白米ぶちこんで混ぜ御飯"状態などにしてしまいながら御飯を食べる。
「えっへっへ、"簡易性豪華ガーリックライス"って感じ」
「これがまた、残りものの豚汁にまた良く似合っちゃって」
と、今日も怪しくにニヤニヤしながらの夕食となった。
夕食後は、おもむろにだんなは"ラーメン打ち"を始めた(←どうもクセになったらしい)。
私は明日、ピザ生地を作ってみる予定。
やること違っているようで、なんか似たようなことやってる週末だ。
(しかし、具の乗せっぷりに品のない私……)
おにぎり
牛乳
昨夜、夕食寸前に昼寝(というか夕寝というか夜寝というか)を始めてしまった息子。
「起きたらおにぎりでも食べさせてあげよう」
と、だんなが夕食後におにぎりを作ってくれていたのだけど、そのまま目を覚ますことなく朝を迎えてしまった。一昨日に予防接種3本も打たれていることもあるし、何か疲れでもあるのかもしれない。
で、いつもより朝早く活動を始めた我が息子。横をごにょごにょ動くモノがいるので薄目を開けたら、瞳に「充電完了」の文字が浮かんでいる息子と目が合った。
「やばい、目を合わせたら襲ってくる……!」
と二度寝体勢に入ろうとしても時は遅し、
「おかぁさーん、ねぇね、ねぇね、ぼくはおなかがすいたな〜ぁ?」
とのしかかってきた。耳元で
「おはよう、おはよう。ね?おはよー」
と無理矢理「"おはよう"と言え」と強要される。
「……お腹、すいたの?」
と薄目のままで聞いてみると、全力で頷いてくる。
「テーブルの上の、おにぎり食べていいよぉ……」
と伝えたら、「うん、わかったー」と言って、一人台所の電気をつけ、椅子によじのぼり、一人もそもそとおにぎりを食べ始めた。ああ、朝早く一人で冷たいおにぎり囓ってるなんて、さすがに母親としての微細な良心がちくちくと痛む。
しょうがないので、起きた。
で、朝御飯は息子と一緒に(そのすぐ後に起きてきただんなも一緒に)おにぎりを。それだけじゃ物足りないので冷凍庫に保存しておいていたカレーパンもオーブンで温めて食べる。カレーパンは具のカレーがおかずになったパンであるようなものなのに、それを更におかずにしておにぎりを囓っているような、ちょっと妙な気分。
ビール
「ああ、旨いピザ食べたい。いっそのこと自分で作っちゃおうか」
と思い続けたここ何日か。いよいよ今日のお昼に合わせて実行してみることにした。
ぬるま湯にドライイーストと塩とオリーブ油を混ぜ、それを強力粉に練りこんでいく。良く考えたらパン焼き機があるのだからそれに任せれば生地はボタン一つでできるはずだったのだけど、なんとなく膨らむ過程もちゃんと見ておきたくて両手でこねこねと頑張ってみた。ツルンと艶やかな生地になるまでせっせとこねまくり、あとはラップをして25℃前後の気温のところに1時間放置。
我が家に「気温が25℃前後になる」という場所は1ヶ所しかないのである。風呂場なのである。
風呂場の天井には電気コンロと同じような渦巻き状の電熱線があり、スイッチを入れるとかなり温かくなる。寒くなってきたこの季節、入浴に欠かせない暖房だ。気温も適度に、多分25℃前後。ラップにくるまれたピザ生地は、洗面所に置かれることとなった。1時間ほどすると、生地はんぷーっと綺麗に膨張していた。500gの強力粉で、4枚分ほどのピザ生地になるらしい。
不格好ながらもピザ生地っぽく整形したらまずはオーブンで4分ほど加熱。生地がパリッと焼けつつあるところを取りだして、トマトの水煮缶にバジルやローリエを入れて軽く煮詰めたトマトソースをたっぷり敷いたら更に輪切りのトマトを散らし、生のバジルとモッツァレラチーズも散らしかける。そして更に4分加熱。期待以上に美味しそうなピザができた。
「うぉー!焼けた焼けた焼けた!」
「ビール!ビール!」
「食べるぞー!」
「飲むぞー!」
と一家で盛り上がりつつ、昼間っからビールを飲み干す日曜日の昼御飯。
生地はパリッパリと超好みな具合の軽い食感に焼き上がっていた。1枚目はちょっとレストランのピザっぽく美しく散らしてしまった具は、ほんのり物足りない感じ。
「ああ……もっとトマトをたっぷりと、」
「チーズもたっぷりと、」
「そいでもって、当然バジルもたっぷりと、ね……」
などと言いつつ、数分で無くなってしまった1枚目のピザに引き続き、2枚目をすぐさま焼き始める。今度は表面をみっしりと覆うほどのたっぷりの具を盛りつけた。あー、もう、なんて下品な見栄えのピザなのだろう。でも美味しそうなので気にしない。
ピザ生地、あと2枚。
明日の朝、トマトソース抜きの塩味シンプルなピザにして食べようかなぁと思っている。
巻き寿司
ビール
買い物に行くと、あれこれ「おぉ!これは!」というブツが見つかっちゃうのである。昨日発見したのは、2束1ドルの香菜だった。1束束ねた茎の直径が4cmほどもある、これでもかとたっぷりの香菜が2束1ドル!しかもヒヨヒヨしてない、どっしりとした香り豊かな力強い香菜だった。お買い得である。
「んー、んー、んー、んー」
とその場足踏みを10秒ほどした挙げ句、
「……食べきれなさそうだから、いらないや……」
と呟いた私に「諦めるな!買え!」と背後から励ましの言葉をくれたのは我が夫。
「ちょうどラーメン打とうと思ってたから!担々麺作るから!」
「……んー」
「香菜食べる用の肉味噌も作ってあげるから!」
「……んー」
「久しぶりなんでしょ?買っちゃいなさいよ」
「……んー、んー、んー」
……で、買ってきた。しかし、だんなは香菜、苦手なのだ。なんでこんなに力強く購入を勧めてくれたのだろう。何かが乗り移ってでもいたのだろうか(←香菜職人とか?)。謎。
宣言どおり、昨夜から手打ちラーメンに取り組んでくれた我が夫。けっこう簡単にできちゃうものだから(しかも味はインスタント麺より全然良いわけで)、だんなは最近手打ちラーメンにハマりつつあるようだ。今日は夕方、担々麺用の豚肉を買ってくるついでに、「ラーメンだけじゃ物足りないかなぁ」と、海老の天ぷらを巻いた巻き寿司もスーパーで買ってきて、ラーメンと寿司とビールというアメリカの日本食屋みたいな光景の食卓になった。
練り胡麻とラー油がたっぷり入ったスープに今回はちょっと細めの手打ちラーメン。赤味噌ベースの味をつけた炒めひき肉がたっぷり盛られ、更に茹でた青梗菜と煮卵もトッピング。私のどんぶりには、表面を覆い尽くすほどの香菜の葉がこんもりと山をなしていた。私にとってはこれ以上なく豪華な担々麺だ。
甘辛い炒め肉に香菜がこれでもかと良く似合っていて、ラー油の辛さで汗が吹き出てくる。
「ハヒー、寒かったはずなのに、いきなり全身汗びっしょりにー」
「もう、顔中汗まみれなんですけどー」
などと言いつつ、ちょっとばかり味が濃いめの担々麺をたらふく食べた。巻き寿司が適当な口直しになってくれちゃって、もう。