やっぱり"ざっぱー"なアメリカ人

"日本人"とひとくくりに言っても物静かなのからうるさいのまで、個々の性格は様々だったりするので一口に言うのは危険と知りつつ、それでもアメリカに来て私は思った。
「アメリカ人って……大雑把?しかも、ものすごく大雑把?」
と。そして明るくフレンドリー。ネガティブ指向よりはポジティブ指向。それがこの町で暮らしたり旅行したりして触れあったアメリカ人に対する印象だった。

典型的なアメリカンコミックの登場人物として、日本の漫画やアニメの中でギャグとして描かれてしまうような
「HAHAHAHAHA! ナイスチューミーチュー! HAHAHAHAHAHA!」
みたいなアメリカ人、そんなのはデフォルメされたアメリカ人でしょーそんな人が実際にいるわけないでしょー、と思っていた渡米前。しかしその想像は渡米直後に簡単に覆されることになった。その、アメコミから出てきたような人が、我が家のドアを叩いている。

「ハァ〜イ!ハウアーユー!小包をお届けにきました!ここにサインをお願いしますね!HAHAHAHAHA!」
無駄に元気だ。「How are you?」に対してこちらが「えっと……fine……」と答えようとする前に、怒濤のようにまくしたてて「HAHAHAHAHA!」とか言っている。なんだ、なんなんだお前。なんで小包配達人がそんなに無駄に明るいんだ。呆然とする私を前に「バァ〜イ!」とその人は去っていった。発する言葉の全てに"!"がついているような人だった。

アメリカ人全部が全部そうではないけれど、日本ではお目にかかることが難しいような、便所の100ワット状態(そのこころは"無駄に明るい")の兄ちゃんやおっちゃん、おばちゃんに頻繁にお目にかかれるのがアメリカだ。なんでガソリンスタンドの売店のおばちゃんがそんなに無駄に明るいかなぁ、なんでモーテルの受付のおっちゃんがチェックインのわずかな間にあれこれギャグ飛ばして「HAHA!」とか笑ってるかなぁ、と、その明るさやフレンドリーさに内気な日本人としては後ずさりしたくなってしまうことがある。

私とだんなが「すっげー」と驚き笑ってしまった体験を、事例として書き残してみたり。

● 商品パッケージを破くおっちゃん

「うどんを作成するにあたって、生地を踏むときにカバーするビニールシートが欲しいのよね」
とDIYショップを訪れた私たち。ビニールシートは置いてあったものの薄さが微妙に求めるものと異なっていたり、手頃そうなものは業務用の巨大ロールであったりした。
「あのね、ビニールシートが欲しいんだ」
と店員さんに相談し始める我が夫。こんなのか?いや違う、もっと厚くて大きさはこのぐらい、とあれこれ話している。そうそう、こんな素材でこんな厚さのが欲しいんだよ、と、横にあったドアだか窓だか(←もちろん商品)をくるんでいたビニールを指さした。

「これか?こういうのがいいんだな?大きさは?」
頷いて聞いてくるおっちゃん。大きさを伝えた途端、腰のポケットからカッターナイフを取り出し、おもむろに商品のパッケージをピピピピーッと切り出した。
「ほら。これ、持ってきな」
と、渡してくる。……って、お金は?ていうか、それは商品のパッケージでは……と驚きつつ理想のビニールを手にした私たち。ショッピングカートを静かに戻し、ビニールシートを片手にレジも通らずショップを後にした私たちだった。
ありがとう。うどん、打てたよ。

● 大根を無料にしたおねぇちゃん

近所のスーパーマーケットにて、大根を見つけた。そのマーケットにはいつも大根があるわけではなく、1ヶ月に1度見るかみないかという食材だ。"Daikon Root"と商品札には書かれていた。1つ1つがパックされているわけでなく、ラベルもついていない大根が野菜コーナーに小山になっている大根。その好みのものを1本むんずと掴んでビニール袋に入れ、レジに持っていく私たち。
「これは……なに?」
レジのおねぇちゃんは、大根を見たことがなかったらしい。白く固い野菜を見て怪訝そうな顔をする。
「ダイコンだよ。"Daikon Root"って、書いてあったよ」
とつたない英語で説明する我が夫。
「ダイコン?わからないわねぇ」
と首を傾げるおねえちゃん。でも、商品札にはちゃんと"Daikon"って書いてあるんだよぅ。

「わからないから……いいわ、うん」
とおねぇちゃん、レジを通さずに大根をチェック済み籠に移動させた。

大根、タダかい!わからないからってタダかい!と、苦笑してしまう私たちだった。同じ要領で、長ねぎを万能ねぎとしてレジを通されたり(←万能ねぎの方が安かった)、ゴボウをセロリとして通された事もある。もう、何がなんだか。