Chattanoogaへの小旅行

Chattanoogaへ

7月28日。留学生仲間Iさんの呼びかけで日帰りの小旅行に行くことになった。メンバーは子供2人を含む合計9人で、車は3台。

テネシー州で3番目に大きい都市「Chattanooga(チャタヌーガ)」は、ネイティブアメリカンの言葉で「岩が迫ってきているところ」という意味の地名なのだとか。英語っぽくないその言葉の響きは、アメリカというよりもアジアの地名を想像させる。どこかのほほんとした響きのイメージとは異なり、南北戦争時には激戦が繰り広げられた地でもあるらしい。
私たちが住む州都のNashville(ナッシュビル)からは130マイル(約200km)ほどの距離だ。ナッシュビルとは1時間の時差がある。

高速道路を突っ走って2時間ほど、無事に小さな町に到着した。地名の"迫りくる岩"は、標高700mほどの山のことで、それが湖のように巨大な「Tennessee River」沿いにそそり立っている。
「IMAX Theater」などの新しげな建物もあるけど、基本は「田舎町のちょっとした観光スポット」といった雰囲気の町並みだ。町一番の名所は「Tennessee Aquarium」なる水族館であるらしい。その水族館前の大通りには観光客相手の馬車がいくつも走っている。
蒸し暑い空気に埃っぽい空気、いつも乾いた風にさらされているような煉瓦造りの建物。まだアメリカ南部がどういうところか真実理解できているとは言えないけど、「"いかにも南部"って……こういう感じ?」という感想を抱いた町だ。

Tennessee Aquarium

一同、まずは「一番の見どころ」とガイドブックなどに紹介されていた「Tennessee Aquarium」(テネシー水族館)へ。一応、テネシー州においては最大の水族館であるらしい。

一般の水族館が海水魚を主に展示しているのに比べ、ここは淡水魚を多く扱っている珍しい水族館なのだそうだ。アメリカ国内をはじめ、世界各地の川を紹介してそこに住む魚や動植物、は虫類までを展示している。中には日本の「Nishiki-goi」なんてものも。「薄紅なんちゃら」とか「みだれなんちゃら」とか、日本人の私たちも知らぬような鯉の(模様の)種類などがきめ細かく紹介されていた。水槽の中でゆったりうごめく十数匹の鯉の上にはモミジの木なども飾られていて、錦鯉の展示など見たことがなかった私たちは思わずじっくり見てしまう。
最上階であるガラス張りの4階は温室になっていて、植物や鳥、カワウソなども併せて見られるようになっていた。

そして、「ふれあいコーナー」然とした一角は、ナマズの水槽に手を突っ込んで生きたナマズに触れるようになっている。大人の腕の長さぎりぎりほどの深さの円形水槽にナマズがウヨウヨと。私も思わず手を伸ばして、固い皮膚をなでなでしてしまった。

海草と区別がついてないけど、リーフィーシードラゴン現在の特設ものであるのか、それとも常設展示であるのか、入り口付近にはタツノオトシゴの水槽がいくつもいくつも並んでいた。ごくごく普通のタツノオトシゴから、"リーフィーシードラゴン"と呼ばれる海草じみたヒラヒラをつけた美しいものまで、中には綺麗な赤色のものもいた。こちらの人々、「ドラゴン」と名の付くものが好みなようで、タツノオトシゴは大人気の模様。
私も、池袋のサンシャイン水族館でありがたそうに数匹展示されていたリーフィーシードラゴンを山のように見られてかなりシアワセだった。

近隣の州から観光客がやってきまくるらしいこの水族館、私たちにしてみると入館料がちと高いように思うけど、客は続々と入ってきていた。駐車場にはテネシーはじめ、アラバマ、ジョージア、ノースキャロライナなどのナンバープレートをつけた車が並んでいた。

Tennessee Aquarium
One Broad Street, Chattanooga, TN 37402
(800)262-0695 www.tnaqua.org
Adults(Age 12+) $12.95
Children(3-12) $6.95

「BIG RIVER」で昼食を

水族館を堪能したあとは、そこから徒歩5分ほどの距離にある大通り沿いのグリルハウスに入ってみることに。
メニューはステーキにハンバーガー、サンドウィッチ、パスタにピザにサラダ類、といかにもな品揃え。高い天井の下、プロペラがくるくると回っている。

私は「ステーキ&チェダーチーズサンドウィッチ」とジンジャーエールを、他の面々もハンバーガーやパスタ、ステーキなどを思い思いに注文する。おおむね、一皿$10というところ。

やってきたサンドウィッチは、ローストビーフ状の薄切り牛肉がこれでもかとたっぷり詰まったものだった。パンと肉の隙間から、溶けたチーズがとろんと顔を出している。添えられているのはホースラディッシュ風味のクリームソース。それを塩胡椒味のみのサンドイッチにこてこてつけながら食べていく。ボリュームたっぷりの、いかにもなグリルハウスのサンドウィッチだ。もちろん、山盛りフライドポテトつき。

サンドウィッチは普通に美味しいものだったけど、この店で嬉しかったのはジンジャーエールの美味しさ。いつも飲んでるカナダドライなどの缶入りのものと異なり、やってきたものはあからさまに色が薄かった。「スプライトと間違われたかな?」と飲んでみると、鮮烈な生姜の風味。いかにもこの店で手作りしました、みたいな素朴な味のする、でも私にとっては初めてで新鮮な味のジンジャーエールだった。生姜の香りと辛さが、炭酸の飲み口の後にビシビシと舌に 染みてくる。めちゃめちゃ美味しい。思わず巨大なコップに2杯、たっぷりと飲んでしまった。

窓の外にはカポカポと観光馬車が行き来して、小さなこの町に日本人は私たちだけといった風情。異国情緒溢れています、というよりは、私たちが異国人そのものだった。

Chattanooga 「BIG RIVER GRILLE」にて
ステーキ&チェダーチーズサンドウィッチ
ジンジャーエール
$7.99
$1.75

Ruby Falls

昼食後は、「では第2のスポット"Lookout Mountain"に行ってみましょう」ということに。
700mの小高い岩山には、「Incline Raiway」なる鉄道が通っていて、それが山頂に向けて走っている。ノリは箱根のケーブルカーに近いものがある。

が、山の麓の乗り場に行くと、午後2時にして長蛇の列ができていた。券売所には「1時間から1時間半待ち」という掲示があり、泣く泣く車で山頂へ向かってみることに。
急なカーブの続く山道を上りまくり、山頂付近にある「Rock City Gardens」に向かってみた。

水族館に入る時にも思ったことだけど、こういう場所での入場料というものは、ビールやパンなどの価格を思うとやたらと高い。大人1人$10はあたりまえ、$15、$20取るのも珍しくないという感じ。その割に中身はショボそうだったりして、「……こ、ここも高いね……」と皆でびっくりしてしまうことになったのだった。

この岩山「Lookout Mountain」にはいくつかのそういった観光スポットがあるらしく、皆で協議した結果
「洞窟の中の滝が美しいらしい"Ruby Falls"に行ってみよう」
ということに。車を走らせ、山の中腹に位置するここを目指すこととなった。

家族3人分で$28.5の入場料を払い、エレベーター乗り場に案内された私たちはいきなり地下145フィートに連れていかれた。降りたところには手すりのついた細い通路が奥に伸び、どこかウエスタンな服装をした金髪眼鏡の女の子が「ルビーフォールへようこそ!」みたいな事を言っている。そのまま、4台分ほどのエレベーターを待ち、30人ほどになった団体を引き連れてその金髪眼鏡のガイドさんが先導して歩き出す。気分はもう、「シンデレラ城ミステリーツアー」そのものだ。普通に洞窟歩いて普通に滝を見て帰ってくるのかと思っていた私は、いきなりそのコテコテのアメリカっぷりに笑ってしまった。おねぇさんの英語は早くて、重要そうな単語以外はほとんど聞き取れない。

地面は舗装されているけど鍾乳洞なのでところどころ濡れている。そこここに美しい自然の造形が見られるけど、そのほとんどにどぎついカラフルなライトがあたっているのがいかにもアメリカという感じ。モノそのものは日本の秋芳洞と同じようなもののハズなのに、どこかバタ臭さが漂うRuby Fallsなのだった。

photo
こ、こんな照明にしなくてもいいのに……(さすがアメリカ……)

向こうから帰ってくる団体とも何度もすれ違いつつ(通路はやたらと狭いので、すれ違う時は片方の団体が壁際にひっついて立ち止まり、やりすごさなきゃいけない)、片道30分ほどかけて奥へ奥へと進んでいく。身長160cmない私が、ところどころで頭をつかえそうになるから、ほとんどの人は歩きにくいだろう、細く低く狭い道だ。ところどころで、地底の川が流れているのを越えていく。

そして"シンデレラ城ミステリーツアー"は、最後もそんな感じで終わったのだった。
いよいよ広く開けたホールが近づいてきたと思ったら、奥の方で「ジャジャジャジャ、ジャジャジャジャーン」といかにもな音楽が聞こえてくる。
「ここで、ちょーっと待ってくださいねー」
とガイドさんに促され、しばし待ってその音の方向から私たちの直前の団体が戻ってくるのとすれ違う。奥から戻ってくる皆さん、微妙な顔でニヤニヤと笑っているのであった。奥では一体何が起こるのか(もうこの段階でなんとなく想像できちゃう)。

確かに滝は綺麗だった。綺麗だったけど…… 私たちが案内されたのは、真っ暗なホール。「もっと奥へ、もっと奥へ、このへんへ」とガイドさんに促され、皆が揃ったところで「ジャカジャカ、ジャジャジャジャーン」と再びのドラマチックな音楽。そしてもったいぶった様子でカッと照らされるまぶしいほどの光。その光がまた、青や赤に輝きながら地下の空洞遙か上から落ちてくる滝を幻想的に(?)照らすのだった。

滝は確かに美しかった。自然が作ったとは思えないほど綺麗な丸い空洞の中央を、水しぶきが一直線に降り注いで地底湖に消えていく。御丁寧に滝壺を囲むように通路が出来ていて、「ほーら、滝の裏側も一周できますよー」という造りになっている。今度はジャングルクルーズか、という感じ。

もう笑っちゃうほどコテコテの演出に苦笑いしながら、皆でニヤニヤしながら地上に戻る。
「だって、でもね、滝だよ、ただの滝なんだよ……」
と、全員ちょっと脱力しながら地上へのエレベーターに戻っていったのだった。

Ruby Falls
1720 South Scenic Highway, Chattanooga, TN 37409
(423)821-2544 www.rubyfalls.com
Adults(Age 12+) $11.5
Children(3-12) $5.5

そろそろ日暮れも近づく頃。
そうして私たちはまた行きと同じ道をかっとばして我が家に戻っていくのだった。
行きはそろそろと60マイルほどの速度だった車が、帰りは慣れたのか早く帰りたいのか80マイルを軽く越えていたような気が。帰り道雷雲に遭遇したりと、最後までドラマチックな一日だった。