キラキラピカピカ クリスマス

カメラのファインダーにおさまらないほど巨大なツリー……
我が町一番の巨大ツリーと噂される、「Opryland Hotel」のツリー

「サンクスギビングが終わったら町はクリスマス一色になる」
という話は以前から聞いていた。聞いていたけど、本当にサンクスギビングが終わるやいなやそんな感じになってしまうとは、私はそれまで"キリスト教本場でのクリスマス"を舐めていたようだった。

サンクスギビング期間にはニューヨークに旅行していた私たち。12/1に我が町に帰ってきたところ、道中の家々の玄関には既にクリスマスリースが飾られ、商店の軒先にはライティングが施され始めていた。その飾りっぷりときたら、「家をクリスマス仕様に飾りたてなければ人間失格」とでもいうような感じだ。せっかくクリスマスの本場(?)にいるのだから私たちも楽しんでみよう、ということになった。

● 屋外のデコレーション

昼
昼は昼で華やかだし、
夜
夜は夜でまた華やか
わかりやすい例として、ご近所のある家を撮影してみました

・ リース
まず、ほとんどの家の玄関先につけられるのがクリスマスリース(Wreath)。
ライトつきの華やかなものあり、オーナメントがたっくさんつけられたものあり、赤いリボンだけがついているものあり、とその種類は豊富。町を歩いていると、玄関につけているものとお揃いのもの(色合いが同じで小ぶりなものとか、全く同じものとか)を家の各窓につけている家も多い。通りから見えるその家の窓、10個くらいあるその窓の全てにリースが綺麗に飾られていたりする光景も珍しくなかった。

・ ガーランド
リースと同様にあちらこちらで見かけるのがガーランド(Garland)。
リースをほぐしてまっすぐにしたような、緑のマフラーか何かのような3mほどの長さの緑の飾りが玄関先、あるいは暖炉の上などに飾られる。(上の写真、リースの上に赤いリボンつきで垂れ下がっているのがそれ)

・ ライティング
そして忘れちゃいけないのがライティング。
全ての家がピカピカギラギラに飾り立てるわけではないものの、私の住むあたりでは10軒のうち6軒くらいが何らかのピカピカ飾りを施していた(上の写真のような家がごくごく普通なピカピカ具合)。そして10軒のうち1軒くらいは「どっしぇ〜〜〜」と言いたくなってしまうような気合いの入った夜景を演出してくれていたりして。ディズニーランドでやっていた"エレクトリカルパレード"、まさにあんな感じだ。庭にはトナカイのキラキラオブジェがそそり立ち、しかもそれが動き、庭の樹木の全てが「光る樹」と化していたりする。気合いの入った家の周囲はやはり微妙に気合いが入っていることが多く、「通りの一角5軒が全部キラキラビカビカ」という光景が広がっていたりすることも。
何しろアメリカは電気代が安く、ライトも安い(300個のライトが繋がったものが10ドル以下で余裕で買える)。12月に入って、大型安売り店の"クリスマス特設コーナー"でデコレーション関係の品々を眺めていると、確かに欲しくなってしまうのだ。安いし……。

● 屋内のデコレーション

とても日本の狭い家じゃ飾れないサイズだわー ・ クリスマスツリー
まずは必須のクリスマスツリー。
サンクスギビングが終わるや否や、大型安売店やDIYショップにはクリスマス特設コーナーが設けられ、生木及びイミテーションのクリスマスツリーが売られ始める。ここでは生木のツリーを使うのがごく普通のことで、一番小ぶりなサイズのものが子供の背丈ほどあり20ドル前後。高さ2m以上あるものも珍しくはない。街角には、仮設の生木ツリー店も出たりする。
「生木はいいわよー、良い香りよー。ステキだし」
と米国在住歴が長い研究室の日本人スタッフMさんは言う。だがその反面、毎日たっぷり水をやらなければならず、多少なりとも葉が落ちたりと面倒な点もあったりするらしい。生木のツリーを買う際には5ドル程度の専用のホルダー(中に水を入れられるようになっている)も買う必要があると聞いた。

生木のものも見て回ったのだけどイミテーションの方が圧倒的に安かったこともあり、我が家は組み立て式のイミテーションものを購入。
180cmほどの高さのもので、16ドル。安かった……(写真は我が家のツリー)。
イブ直前にお邪魔した夫の研究室のボスA先生のお宅のツリーは、天井まで届きそうな高さ2メートル以上の生木のもの。周囲には針葉樹の良い香りが漂っていた。やっぱり生木はいいなぁ。

・ クリスマスツリースカート
日本ではあまり馴染みのなかったクリスマスアイテムが「クリスマスツリースカート」(Christmas Tree Skirt)。
安いものは5ドルくらいから、高いものは数十ドルに至るまで様々な種類が売られているこれは、中心に向かって1本切込が入っている円形の布。スカートという名のとおり、ツリーの下部に生木用のスタンドだとかイミテーションツリーの台だとかを隠すように巻いて広げるようになっている。
豪華なものはビロードであったりキルティングになっていたりボタンやビーズなどの飾りがついていたりと、すごく凝っている。

・ オーナメント
ツリーに飾るオーナメントも、また多彩。安いものは本当に安く、1ドル程度で両手たっぷりの飾りを買えたりもする。が、非常に高価なものも数多い。12月に入ると町の文房具屋も雑貨屋も調理器具屋もオーナメントが店の一角に並んだりするけれど、凝ったものは1個15ドル20ドルという値段がついていることも。実際、クリスマスシーズンに2軒の家にお邪魔してクリスマスツリーを拝見する機会があったけれど、どちらの家も安っぽくない立派なオーナメントが飾られていた。子供のいる家は凝った飾りに加えてピカチュウなどの可愛いオブジェがぶらさがっていたり。子供3人がまもなく成人というA先生のお宅のツリーは、年代を感じさせる古めかしいオブジェが山とぶらさがっていた。

・ クリスマスプレゼント
クリスマスが近づくと、色々な人からあれこれお菓子などを貰ってみたり、あるいは家族のために何かを買ってみたり。
そういうプレゼントはその場で開けてしまったり当日まで隠してしまったりせずに、クリスマスツリーの下に積んでおくのが習わしだということだ。家族の多いA先生宅のツリーの下には、ツリーに触れる距離まで近づけないほど大量のラッピングされた箱がツリーの下に積まれていた。
我が家も倣って、ささやかながらプレゼントを並べてみたり。プレゼントは25日の朝、あるいは26日あたり(それは各家の伝統ということで色々らしい)に家族で1つ1つ開けていくのがクリスマスのお楽しみ、なのだそうだ。
そして、こちらの人にとってのクリスマスプレゼントは「日頃お世話になっている方へのお礼」をするにもってこいなものなのだとか。日頃何かとお世話になっている我が家が住む住宅の管理人さんに何かお礼をしたいね、と言っていたところ
「それはね、クリスマスに返せばいいんだわ。安いチョコでも何でもいいから包んで持っていくと喜ばれるわよー」
とMさんにアドバイスされた。

暖炉がある家があたりまえなのねー ・ 暖炉まわり
テネシーに住むことになって驚いたのが、「このあたりの一軒家には必ず暖炉がついている」ということ。
2階3階がある集合住宅ではさすがについていないところもあるが(それでもついているところもある……どういう構造なんだろう)、一軒家にはほぼ確実に煙突がついており、リビングルームには暖炉があるのだ。そして暖炉まわりをクリスマス仕様に飾りたてるのも、クリスマスデコレーションの重要なポイントであるらしい。

写真は、友人Rさんのお宅の暖炉飾り。
暖炉の上にはガーランドとイルミネーションの飾り。そしてぶら下げられる大きな靴下。中にはサンタクロースの人形が飾られていた。A先生のお宅の暖炉には家族の名前が刺繍された靴下が同じようにぶら下がっており、暖炉の上にはキリスト誕生を模した陶器の人形達がずらりと並べられていた。キャンドルを飾るのも一般的らしい。

レストランの入口なんかにもカードはたっぷり飾られる ・ クリスマスカード
日本人にとっての年賀状にあたるものが、アメリカ人にとってのクリスマスカード。
12月に入って続々と届くカードはツリーのそばの壁に飾ってみたり、暖炉の上に並べておいたりするらしい。研究室では受付に置かれた籠の中にカードが詰まっていたし、街の飲食店の入口そばの壁にはテープでカードが山のように貼られ飾られていた。1つ1つ届くたびに「また来た〜♪」「また飾ろう〜♪」とクリスマス気分が盛り上がる。


こうして迎えたクリスマス。
日本の文化はどちらかというと
「クリスマスは友人や恋人と共に馬鹿騒ぎ、年始は自宅に籠もって家族とのんびりと」
というものではないだろうか。日本のレストランは「クリスマス特別ディナー」の案内を出しても、「大晦日特別ディナー」なんてものはやらないはずだ。

アメリカでは、ちょうどこれが逆になった感じだった。
クリスマスイブ、クリスマス当日は休業する店が圧倒的に多く(ショッピングモールすらお休み)、代わりに年末年始は休まない。新聞の広告にはクリスマスディナーの案内はさほど掲載されていなかったけれど、クリスマス後に発行された新聞には「New Year's Eve Party」や「New Year's Eve Dinner」の案内がこれでもかと掲載されていた。クリスマスは家に籠もって家族や大切な人とゆっくり過ごすもの、というものであるようだ。

そしてクリスマスの飾り類は年明けを過ぎてもこのままキラキラピカピカと残される。
クリスマスシーズンは1月7日までなのだとか。この日までは、夜の住宅街はあちらこちらピカピカキラキラ、ツリーの明かりが道路に漏れ、玄関先にリースが揺れる状態が続く(早めに片づける家も当然ある)。
……でも、観察していると、1月9日の段階でまだまだまだまだ飾りが残っている家が多い。
一体いつまでクリスマスなんだろう?