春のお祭り Easter

たまごたまごたまご〜

イースターとは、キリストの復活を祝う日。毎年の"春分の日の直後の満月後、最初の日曜日"がイースター。2003年は4月20日がイースターだ。
キリストは、イースターの前々日にあたる金曜日"Good Friday"に十字架にかかって亡くなったとされていて、イースターに復活したということになっているのだとか(イースター翌日に復活したという話もあったけど、どちらだろう?)。
「イースターはね……うーん、お祭りとしてはハロウィンとかサンクスギビングよりも大きなものかもよ」
と、この地に長らく住むMさんは言う。

言い伝えによると、イースターの前日、"Easter Saturday (Holy Saturdayとも言うらしい)"の夜に、庭にニンジンを置いておくとイースターバニーがやってくるのだとか。イースターバニーは、ニンジンを持ち帰る代わりにイースターエッグを庭に残していくのだそうで、イースター当日の朝は子供達が庭で"イースターエッグ探し"をするのだそうだ。

バレンタインデーが過ぎた頃から、スーパーマーケットなどではパステルカラーが目立つようになる。"新生"の象徴である卵と、"多産"の象徴であるうさぎ、"復活"の象徴の百合の花(百合は枯れても毎年花をつけるから……ということらしい)などがシンボルとしてあちらこちらで用いられるようになる。使われる色は、パステルカラーを中心とした華やかなものばかりだ。パステルピンクやベビーブルー、クリームイエローばかりのほわほわした色使いの棚を見ると、「おお、春じゃのぅ」と何やら心が浮き立ってくる。

スーパーに並ぶウサギのチョコ カップケーキもやたらと華やかに こんな綺麗な卵型チョコも

スーパーマーケットに早速並び始めるのは、イースター用のお菓子類。
いつも派手派手ではある生菓子コーナーは、パステルカラーの色も鮮やかに一層華やかな光景になる。メーカー菓子のコーナーには、うさぎ型、卵型のチョコレートばかりが並ぶようになり、m&m'sのチョコレートまでもがパステルカラーバージョンになったりする。ピンク色の包装を施されたキットカットも見かけた。中身のチョコもピンク色なのかな……?
輸入菓子などを扱うちょっと洒落た店に行けば、見た目が卵そのまんま、みたいな素敵な菓子にもお目にかかれる。
彫刻品のように精巧に象られたうさぎ型の大型チョコレートとか、ハート形のフルーツグミようなものとか、"Easter Egg Cake"という名の大きなドーム型のケーキ、花や小鳥の形のクッキーなどなど、こちらはスーパーマーケットで見かける子供っぽい可愛らしいものとはまた違う、美しい外見のものが多い。

色鮮やかなクッキーデコレーションセット 調理器具や食材などを扱うWilliams-Sonomaという店では、ハロウィンやクリスマスなどの折々にクッキーのデコレーションキットが発売される。ハロウィンはオレンジと黒、クリスマスは赤と緑、といった色に色づけされたグラニュー糖やアイシングペンがセットになっているのだけど、イースターバージョンはひときわ綺麗な色使い。うさぎやひよこの形にカットされた小さな砂糖飾りや、パステルカラーの砂糖がセットになっているのを見て、思わず購入してしまった。大きなデイジーの花の形のクッキー型も購入し、イースターに合わせてクッキーでも焼くか!……と燃えていたのだけど、ちょうどイースターの前後に旅行の予定を入れてしまい、イースターに合わせて華やかなクッキーを作ってみよう計画はとりあえず延期に。
これがまた種類豊富なんです

そして、イースターエッグ。
先の、「イースターバニーが庭に置いていったイースターエッグを探す」というイベントの他にも、家族や仲の良い人同士で綺麗に飾り付けられた卵を贈り合ったりもするらしい。芸術品のように細かな細工をされた卵もあるようだけど、家庭で普通に楽しむのは卵の殻に色をつけたり模様を描いたりしただけの、比較的簡単なものだ。
イースター前のスーパーマーケットには、右の写真のような"卵色づけキット"が大量他種類並ぶことになる。どれも価格はさほど高くなく、数ドルで楽しめるようになっている。バケツがセットになっていて、そこに色液を作って卵をじゃぼんと浸すもの、筆と絵の具がセットになっていて絵付けを楽しむもの、マーブル模様を作るもの……などなど、どれもそこそこに凝っていて面白い。

で、卵の加工には、簡単に分けて2通りある。卵の中身を残すか、残さないかだ。更に卵を茹でるか生のままかという選択も残される。

卵の中身を抜くバージョン
卵の上下に小さな穴を開けて、中身を出してから加工する方法。
これなら卵の鮮度を気にすることなくイースター前に早めに準備できるし、しかも中身は有効活用できるので、長く楽しむにはこれ!という感じ。ただし、中身のない卵の殻はすごく華奢なものなので、取り扱いには注意が必要。子供が作業する時には、ちょっと大変。

生卵バージョン
国によっては、生卵に色づけしちゃったりもするそうだ。日本のような高温多湿の国ではガスが溜まって破裂してしまったりするそうだけど(腐った卵が破裂……おそろしい……)、乾燥気候の国だったら、何年か経つうちに中身が小さく干からびていき、中でカラカラと綺麗な音をたてるようになるのだとか。当然、中身は食べられない。上のバージョンよりは作業は簡単だけど、それでも割れると悲惨なので子供向きではない。

ゆで卵バージョン(食べない)
多分、一番多く用いられているのがこのやり方。固ゆでに卵を茹で、それから染色作業に入るというもの。日曜日のイースターに合わせて数日前から作業したりするらしい。ゆで卵なら万が一割れてもたいした被害ではないし、子供に色塗りさせる場合は大抵こうしているらしい。

ゆで卵バージョン(食べる)
多くの場合、色づけした卵は食べないらしいけど、「え?イースターの朝にエッグハントしたゆで卵、皆で一緒に食べるわよ?」という話も聞く。卵の気泡から色素がゆで卵本体に染み出てきて、染まるから危ない……ということらしいけど、それならばと食用色素で色づけして食べるということだ。

我が家は、中身抜きバージョンに挑戦してみた。4月の上旬、1パック分12個の卵の穴あけ作業をした。やってみるとけっこう簡単だ。"卵の中身取り出しキット"のようなものも売っているらしいけど、カッターと竹串があれば充分。そして、雑誌に載っていた"マーブルエッグの作り方"を見て、その方法でマーブル模様の卵にしてみた。それが一番上の写真だけど、雑誌のように美しくはならなかったものの、充分満足できるものになってしあわせ。

作り方は、こんな感じ。

  1. 卵に穴を開ける。
    カッターで上下の一番とんがっているところをカリカリと少しずつ削り、片方には竹串が余裕で入るくらいの穴、もう片方には空気穴程度の小さな小さな穴をあける。あまり穴を大きくすると見目が悪くなるので、控えめに。かといって穴が小さすぎると中身が出てこないし。
     
  2. 卵の中身を抜く。
    卵の黄身を潰さなければ、殻から中身は出てこない。ボウルを手元に用意して、あけた穴から竹串を掻き出すように出し入れしていると、白身が少しずつ出てくる。黄身もつついて壊せば、そのうち黄身も出てくる。「上の小穴から息を吹く」「ちゃぽちゃぽと卵をふる」などの行為もけっこう有効。気長に振ったり竹串動かしたりしていると、そのうち中身がほとんど出てくる。
     
  3. 卵を洗う。
    空になった卵の中に水を入れ、しゃかしゃかふって軽く洗う。あとで臭くなったりしないように。
     
  4. 下地つくり。
    今回は、面白がって買ってきた染色キットの絵の具を使ったけれど、食用色素でも水彩絵の具でもなんでもいけるようだ。湯に薄めに色素を溶かし、そこに卵をじゃぼんと漬ける。漬ける時間によって染まり具合は変わるし、卵の中身を抜いていた場合にはすぐに浮いてきてしまうので、まんべんなく染まるように転がしたり沈めたり、がんばる。卵のパックなどに並べ、一旦綺麗に乾かす。青、緑、黄、赤、紫などの色に薄く薄く染めてみた。
     
  5. マーブル模様作成。
    先の、"色素を溶かした湯"に、更に色素を多めに投入して濃いめの色液を作る。油を入れてざっとかきまぜると、それがマーブル模様の元になる。油が多くても少なくても、それはそれでけっこう綺麗で楽しい。乾かした卵をこれにじゃぼんと漬けると、マーブル模様がつく。模様を壊さないように、そっと乾かす。"水色の上に青"などの同系色も綺麗だし、"ピンクの上に青""黄色の上に緑"などの補色系を試してみても、これまた綺麗。
     
  6. 更にマーブル。
    乾いたところで、更にもう一度マーブル模様をつけると、より複雑なことに。黄色→ピンク→緑と染めた卵は、なんだか恐竜の卵か何かのようになった。それはそれで良し。
     
  7. あとは、完全に乾かしてできあがり。

籠に入れて飾るのも良いし、庭木があれば、上下の穴にリボンを通してクリスマスのオーナメントのごとく飾るのも、よくある飾り方のようだ。
我が家は木のボウルに入れてダイニングテーブルに飾ってみた。抜いた卵(溶き卵状)は、マロンケーキに、キッシュに、茶碗蒸しにと数日のうちになくなった。

当日は日曜日なので、ここらの人は(というかイースターを祝う人はキリスト教徒であるわけなので)午前中は礼拝へ。この日の聖歌はちょっと特別なものだったりするらしい。いつもそこそこ着飾って日曜礼拝に赴く人々だけど、この日はまたちょっと格別にお洒落していくのだとか。
そして夜(というか夕方の早い時間から)イースターディナー。卵料理をはじめとして、ニンジンのスープや春の野菜の料理、そしてメインディッシュは"ハム"なのであるらしい。スーパーマーケットのテレビCMでも、
「イースターの晩餐用のカントリーハムがお安いですよぅ!」
とじゃんじゃん宣伝されている。どうやら、イースターと言ったらハムなのであるらしい。

他にも、『EASTER』という本を眺めたところによると、
 ローストラム ミントアップルのクスクス添え
 アプリコット風味のローストポーク
 ハニーローステッドハム
 レモンとアーティチョーク風味のグリルチキン
あたりがイースターディナーの例として掲載されている。デザートは季節のベリーのスフレに、ラベンダー風味のクレームブリュレなど。

そこら中から春の息吹が感じられるお祭りが、イースターなのであるらしかった。