10月17日(木) 夫、カジノに張り合う

いざ、金と色の街、ラスベガスへ

のんびり、8時過ぎに起床。今日はいよいよラスベガス。
今泊まっているホテルは、安いだけあって朝食サービスなどはなかった。ロビーにあるのはコーヒーサーバーと熱湯、紅茶のティーバッグだけが置かれている。
息子が「チョコパン、食べたいなー」と騒いでいたこともあり、すぐそばにあったスーパーマーケットに行って朝食用食料を調達してくることにした。

チョコドーナツと牛乳、おまけにバナナ。残念ながら"チョコパン"は見つからなかったものの、チョコドーナツを前に息子は御機嫌だった。バナナもなんだか久しぶりな気分で、嬉しく食べた。
午前10時、チェックアウト。ネバダ州「Mesquite」からI-15を西へ西へと75マイルで、ラスベガスに到着する。

Luxor のエジプトチックな滞在

カジノで有名なラスベガス。私たち、来るのは初めてだ。
ラスベガスといったら、カジノ。テーマホテルの滞在。ジェットコースターなどの乗り物があるホテルもあるし、華やかなダンスショーだのマジックショーだのが催されるところも多い。そして毎夜開かれる大人向けのトップレスダンスショー。
いろんな方向の欲望を満足させる街、という感じだ。

ここには数多くのホテルがあるけれど、大型ホテルの多くが「テーマホテル」になっている。「パリ」がモチーフのもの、「ニューヨーク」がモチーフのもの、「イタリア・ベニス」がモチーフのもの、などなど。その内容もまた、1/2スケールの自由の女神を建ててみたり、エッフェル塔を建ててみたりとやることが豪快だ。ホテルの中に滝や水路を作っちゃってるところも数多くあるみたい。
そのホテルの規模もまた、とてつもなくでかい。世界最大の客室数5034部屋を持つ「MGM Grand」を始め、3000〜4000室の部屋を擁するホテルがうじゃうじゃと建っている。話によると、客室数世界ランキング20のうち18までがラスベガスにあるのだとか。

私たちが選んだのは、エジプトがテーマの「Luxor」(ルクソー)。ピラミッド型のホテルで、ホテルの部屋の窓が斜めになっていて……と話に聞くだに、その珍妙なホテルに泊まってみたいと思っていたのだった。

午前11時、ラスベガスに到着。テーマホテルがわんさか並ぶメインストリートを、巨大ピラミッドに向けて車を走らせる。噂通り、自由の女神あり、西洋風の城ありな光景だけど、昼の光のもとでは悲しいかな、かなりチャチに見えた。ニューヨークがモチーフのホテル「New York - New York」はマンハッタンの摩天楼も再現しているけれど、明るい太陽の元では、なんとなくハリボテに見えてしまう。
ともあれ、エジプトホテルを目指してみよう。

ピラミッドとスフィンクス〜

ホテルの正面には、でででーんとスフィンクス。そしてその背後には黒々とした巨大なピラミッド。ピラミッドを作っちゃうところが何ともアメリカ人のアメリカ人なところだよなぁと苦笑いしてしまう。

怪ビ〜ムッそしてこのホテル、また夜がすごい。
他のホテルは煌びやかに建物を照明で照らしあげているところ、「Luxor」のピラミッドは黒々と暗闇の中に溶け込んでいる。そして光の雫のように頂点から稜線をツーッと流れる照明が施され、頂点から発射されるのは青く光る「ピラミッドパワービーム」。350kwのこの怪光線の強さは世界一なのだそうである。もう、何だか全体的にアホっぽくて笑えてしまう。夜、スフィンクスの真下に行って見上げると、"スフィンクスの脳天から怪光線"という構図にもなり、ますます笑いを誘うのであった。

当然、内部もエジプト調。石像が吹き抜けのロビーにどかどか飾られ、部屋の内装もベッドカバーやチェストの模様がそれらしいものに統一されている。ホテル内のレストランの名称もそれっぽいものになっているし、メニューにまで"ピラミッドなんちゃら""ファラオのなんちゃら"というものが。

24時間、この調子でキラキラ そしてピラミッド内部、これがまたまたすごいのであった。ピラミッドの中身は、そのままピラミッド型に空洞になっていてその中にカジノやアトラクション施設、レストラン群が納められている。客室は、ピラミッドの表皮に面してずらりと並んでおり、廊下から下を見やると右の写真のようになっている、という次第(写真上部、点々と横に並ぶのが各フロアの廊下であり部屋のドアである)。客室の窓の並びがピラミッドを形成しているので、窓は上部から下前方に向かって斜めになっているのだ。
で、その客室に行くには、世界でも珍しい"斜行エレベーター"に乗って行かなけばいけない。シースルーエレベーターではないので見た目にはわからないけれど、乗ってみると確かに横方向にもGがかかる。ドアの隙間に顔を押しつけて見ると、下の階のドアが斜め方向から近づいてくるのが見えたりして、なかなか面白いのだった。

「ああ……アホっぽい……」
「笑えるねぇ……」
「すごいよねぇ……」
と、到着後少々ホテル内の散策。昼食時になったので、和食レストラン「HAMADA of JAPAN」に行くことにした。
これまで、海外旅行に行っていて"日本食屋に駆け込む"ということをほとんどやったことがない。旅行先はアジアが多く、米食文化のところが多かったからというのもあるけれど、その国にいってもそこそこ食生活に馴染めるのがちょっと得意でもあった。でも、今回はさすがにきつい。私もきついが、だんなはもっときつそうだった。
「俺、御飯と麺が好きなのに、米の飯はないし、麺といったらグダグダのパスタだし……」
と、かなり限界近い様子。私もメニューの「親子丼」なんて文字を見た途端にへなへなと力が抜けてすり寄ってしまいたくなるほどに米の飯が恋しくなっていた。どうも、息子も同様なようだ。

私は親子丼とサラダ、だんなは定食、息子は寿司メニューから玉子の握りを2カン。
「ラスベガスに来たしね」
「もう車の運転、しなくて良いしね」
「飲んじゃえー」
「昼間っから、飲んじゃえ〜」
と、今日は昼からビール。

たっぷりの御飯の上には、たっぷりの甘辛く煮付けた玉ねぎ。ふわふわの卵た絡んだ、大ぶりの鶏肉が何切れも。ここ5日口にしていなかった、醤油と味醂の味がした。和食レストランとしては、普通の味だと思う。けど、しみじみ美味しかった。天ぷらや照り焼きの入った定食を食べてだんなは涙ぐんでいるし、息子はかつてない勢いで「おいしーね、おいしーね」と玉子の寿司を即喰いしている。皆、それぞれ微妙に食事にストレスを抱えていたようだった。私がもしかしたら一番軽傷だったのかもしれない。
昼間っからのビールはしみじみ美味しかった。

Las Vegas 「Luxor」内「HAMADA of JAPAN」にて
親子丼
濱田サラダ
ビール(クアーズ)
$8.50
$4.00
$4.00

そして12時30分。本来のチェックイン時間は3時となっているらしいけれど、聞いてみたら「12時半からOKですよ」とのことだったのでとっとと部屋に行ってみることにした。17階、エレベーターフロアからそう遠くない部屋だ。

クィーンサイズのベッドが2つと、一人掛けソファが1つ、椅子2つ、テーブルが1つ。広いバスルームには、バスタブはなくシャワーだけ。何故かイチゴフレーバーのシャンプーと、同じような甘ったるい匂いがするリンス、乳液が置かれている。石鹸も大きめで、モーテルの備品を見慣れてしまった私たちにはゴージャスなサイズだ。

チェックインしてしばらくし、だんなは「カジノに行ってきま〜す」と出かけて行った。私は息子を連れてゲームセンターコーナーに遊びに行ったり、土産物屋をひやかしてみたり。
しばらく歩いていて、
「ラスベガスは、幼児連れには制限が多いところだわね」
と溜息をつくに至った。

カジノは、ロビーフロアにある。レセプションのすぐ裏、いくつかのレストランなどの施設がある他は、広大な1フロア全てがカジノエリアだ。そのほとんどはスロットマシーンで、5セントから1ドル以上の高額スロットまで数多く、膨大な種類が並んでいる。中には商品としてBMWなどの高級車が当たってしまうようなものも。あとはブラックジャックやバカラ、ルーレットなどのディーラーを必要とするタイプのものもそこここに固まってテーブルがある。朝も夜も関係なしに、カジノは不夜城の営業だ。カジノというと、なんとなくアンダーグラウンドというかゴッドファーザーというかな暗い大人の悦び的イメージがあったものだけど、隨分あっけらかんとしたものだ。ここからカジノエリアですよ、というゲートなどもない。一見すると、誰でも入って遊ぶことができそうなのだった。

見た感じ、どのホテルもそんな感じ。ロビー階かその上下あたりのフロアに、各ホテル巨大なカジノフロアを抱えている。客は宿泊ホテルで遊んでもいいし、外に出て遊んでも勿論かまわない。ただ、数軒のホテルグループ共通のカジノカードを作ったりすると、ポイントを溜めて後でささやかな商品と交換してくれたりする。

だが、カジノは21歳以下プレイ禁止なのであった。宿泊者の家族でなければ、カジノフロアに立ち入ることも許されていない。では、家族であれば同伴していても良いのかと、息子を膝に乗せてスロットをやってみようとしたところ、しかめ面のガードマンにダメダメ、と止められた。話によると、21歳以下はたとえ宿泊者の家族であったとしても、許されるのは「カジノフロアを通り抜けること」だけなのだそうだ。マシンやテーブルに触っちゃダメ、立ち止まってても、ダメ。ダメダメだらけだ。

で、ダメダメ、と言われた私の手にはスロットマシンから出てきた5ドル弱分の5セント硬貨があるのだった(最初に5ドル札を入れて始めたんだけど、終わる時にはコインで出てきちゃうのね)。仕方がないから両替コーナーに持っていくと、
「子供、いるでしょ?貴方にサービスすることはできません」
と両替さえ拒否された。だから、間違ってやっちゃったんだから大きい札に戻してよ、と言ってもダメ。そのキャッシャーの言いっぷりがまた、これ以上なくムカつく言い方だったもんだから(鼻をツンと上にあげて、フフフンといった感じで言われた)、「ルクソー、許すまじ」「ラスベガス、くそくらえ」という気分が一気に盛り上がってきた。5セント硬貨、そいつの顔めがけてぶちまけて「チップよ、とっといて」と言い捨てて来ようかと思ったほどだ(思っただけで出来なかったけど)。

ホテル内のライド型IMAXシアターは、息子の年齢じゃダメ。ジェットコースター類も当然ダメだ。お色気ショーなんか、ますますダメ。子供連れは、とかく制限があるのだった。
それに、何をしようとしても、なにがしか金を取られてしまうこの街。マジックショーとか、確かに楽しそう。でもチケットは1枚60ドルとか80ドルとか。3人で見て180ドル一気に飛ばすのは、ちょっと勇気が必要だ。ちょっと気になるな、ちょっと見てみたいな、で払える程度の金額ではない。○○ホテルにゴンドラライドがあって面白そう、と案内を見ればゴンドラ1個乗るのに12ドル、とか。そこここのホテルでは毎食時にブッフェレストランがオープンしているけど(ちゃっちゃと食べてギャンブルしてね、ということなのか、ラスベガスはこのブッフェレストランも1つの名物だ)、それもちょっと"その金額払うならブッフェじゃなくちゃんとしたところで食べたいよ"と思える金額や内容のところが多かったり。

ラスベガス、1日経つ頃には
「ラスベガスってさ、街中が"F田観光"のカタマリみたいな感じなんだね」
というコンセンサスが夫と私の中にできあがっていた。何年か前のゴールデンウィーク、箱根の某小涌園に行ったことがある。周囲にはあまり食事処がなく、簡単に行けるところは1軒のコンビニを除いて全てF田観光運営の店、という状況で、それは見事なぼったくり値段なメニューだった。その料理内容にそんな金は払いたくないよ、と、てくてく歩いてちょっと離れた個人経営のレストランまで食べに行っていたのだ。
巨大企業が運営する箱モノと箱モノを移動して金を落として楽しむ街、それがラスベガスの印象となった(その"箱モノ"を出てダウンタウンあたりに出れば話はまた違うと思う)。今のところ、ラスベガスを私はあまり好きにはなれていない。

で、私と息子がぷらぷらする中、待望のギャンブルを楽しんでいた我が夫。もともとギャンブルが好きな人なのである。現在は競馬もパチンコも卒業し、もっぱら"自分の実力が反映するのがいい"と、麻雀一辺倒なのであった(でも、その麻雀も全然やってないらしいねぇ)。
「ラスベガスで、ブラックジャックやってみたいな……」
と彼はずっと言っていたのだ。
ギャンブルが好きな割には、あまり熱くなりすぎないタイプなので(私はダメ、すぐに熱くなって大金つぎ込むタイプ)放っておいても大変な事態にはならないと信じつつも、
「300ドルをスるまでは好きにしていいんじゃない?私はそこまでなら許す」
と伝えておいてみた。さて、増やすことはできるかな。

行ってくる、と最初に部屋を出てから30分後に高揚した顔つきで帰ってきた我が夫。
「10ドルが75ドルになりました!」
と盛り上がっていた。25セントスロットマシン(BMWが特賞として当たるやつ)で、いきなり大当たりしたらしい。再び意気揚揚とまた出かけていき、数時間後には
「50ドル……い、いや、60ドルかな、スりました……」
とシオシオになって帰ってきた。
なかなか思い通りにはいかないようだ。

無料ショーを見に行こう

だんなのギャンブルも一段落して、夕方。今ひとつお金を使って何かする気分になれないので、ささやかに無料のショーを見にいくことにした。客寄せのために、いくつかのホテルではホテル前で無料の噴水ショーだの火山ショーだのをやっていたりする。

夜はさすがにキラキラで美しい〜

夜のラスベガスは、さすがにキラキラピカピカで本領発揮、という感じ。どこもかしこも凝った照明で目を楽しませてくれる。
マップを見るとそう遠くなさそうだと歩いて行きかけて、1つ1つのホテルのあまりの巨大さにすぐに歩いて行くのを断念した。1つのホテルを越えるのに、500mほどは歩かなければいけない、という感じ。1人2ドルのバスに乗り、まずは「Treasure Island」(トレジャー・アイランド)ホテルに行ってみることにした。

どっかんどっかん、もひとつどっかん

The Battle of Buccaneer Bay (バッカニアの戦い)

スティーブンソンの小説『宝島』がテーマのホテル、「Treasure Island」の人気無料ショー。『宝島』は知らなくても、少年ジャンプの海賊漫画『ONE PIECE』がお好きな人ならたまらないホテルかもしれない。そこら中に海賊ドクロが満載で、萌えます(萌えるな)。
で、この海賊ショー、ただでさえ人気があるのに1時間半に1度しかやらないので毎回大変なことになるらしい。7時の回を狙って行ったところ、開始15分前で既にホテルの前は身動きとれない程の大混雑。なんとか段差のある手すりの前に立つことができ、ショーを待った。

目の前の小さな池には、海賊船が浮かんでいる。ショーが始まってから気が付いたけれど、数十メートル先にはもう1つ池があって、イギリス海軍の船が浮かんでいるのだ。海賊船とイギリス海軍の船がお互い
「おっ!ヤバイッ海軍だぜっ」
「あやつらは海賊っ、ここで会ったが100年目ッ!」
といった風情に戦いの準備を始めるところからショーは始まり、十数分のショーは、ドンパチドンパチ大変なことになる。動くわ燃えるわ爆発するわ、想像以上に凄かった。だんなに肩車してもらっていた息子は、肩の上で
「ひやぁ〜……うわっうわっ、うわぁ〜……」
と溜息ついたり悲鳴あげたりで大変なことになっていたそうだ。余程楽しかったらしい。

ホテル名がホテル名だからして、勝利は当然海賊側。萌えました(だから萌えるな、と……)。


こちらもまた凄かったです
The Volcano (火山噴火ショー)

「Treasure Island」の隣のホテルは、「The Mirage」。こちらは南国パラダイスがテーマのホテルで、レセプションの後ろが巨大な熱帯魚水槽になっていたり、ホテル内が熱帯雨林のようになっていたり、虎がガラス張りの中にいたり。
このホテルの前の噴水コーナーでは、日没後になると数十分おきに火山噴火ショーが無料で公開されている。

ドドドドド、ゴゴゴゴ、と地鳴りがしたかと思うと山を模した形状の噴水の色が一気に赤くなり、溶岩のように赤く照らされた水がわき上がる。続いて、炎もぼっこんぼっこん出てきて、クライマックスには噴水の水面まで燃えてしまう。
数分で終わるショーだけど、なかなか見応えがあった。顔が炎で熱くなってくるほど、炎の迫力もあった。


ピラミッド内の中華料理屋さん〜PAPYRUS

時間はすっかり8時近くに。
遅めの夕食に向かったのが、滞在ホテルの中にある中華料理店「PAPYRUS」だった。カジノフロアの上階にあり、IMAXシアターなどに囲まれてていて今ひとつ目立っていないお店だ。入り口付近はウェイティングバーになっていて食事の客席はかなり奥の方に作られているため、客の入りの様子などが入り口付近からはまず見えない。通りすがりの客がなかなか入れない作りになっていた。美味しい、という噂は聞いていたからずんずん入っていけたけど、それでもちょっと勇気が要る。

「もう、毎食ビール飲んじゃうんだもんね」
「ただれたラスベガス滞在にするんだもんね」
などと言いながらビールを注文。シンプルな味のシーフードが恋しくて、海老のソテー、そして豚肉の炒飯。更に
「この"Bean Curd"って、厚揚げのことじゃないかな……」
「おお!厚揚げか!食べたいねぇ〜」
と盛り上がり、厚揚げ(と思われるもの)を。

すぐさまビールがテーブルにやってきて、ほどなく全ての料理がずら〜っとテーブルに並べられた。
もう8時も過ぎて、めっちゃめちゃ空腹だった私たち。テーブルにみっちり並んだ料理に嬉しくなってしまった(いつもは"一品ずつ出してよー、冷めちゃうじゃないよー、もー"と思ったりする)。
料理はどれも、「アメリカに来て3ヶ月、今まで食べた中でこれが一番まともな中華料理です」と断言できるほど美味しいものだった。ガーリック風味のシンプルな海老の炒めは、青梗菜やベビーコーン、袋茸などの中国野菜がたっぷりと入っている。適度な塩加減に適度な火の通り具合。プリプリの海老の食感が、痺れるほど心地よく感じられた。
"Bean Curd"は間違いなく厚揚げだった。市販の厚揚げを調理したものなんかじゃなくて、豆腐を厨房で揚げた、その揚げたてのものがやってきた。アメリカの豆腐は、日本のものよりもちょっと硬く、やや濃厚な味がする。表面をサクッと揚げた豆腐には唐辛子を刻んだものが入っている醤油ベースの甘辛いタレがついてきた。ちょっとずつそれを垂らしつつ、ハフハフ言いながら食べる。"豚肉炒飯"は、チャーシューがざくざく入ったものだった。パラッと炒められた炒飯は、具沢山で量もたっぷり。

「な、なんか、めっちゃめちゃ美味しいんですけど……」
「涙、出でてきそうなんですけど……」
「日本から来た人は"えー?普通の中華よ、これ"なんて思ったりするのかなぁ、もしかして」
「中華料理に飢えるあまり、よけい美味しく思っちゃうのかなぁ」
「でもでも、美味しいよねえぇぇぇ」
なんて、泣き笑いしながらぺろっと3品の料理を速攻平らげた。
すっかり歩き疲れて眠い眠い、と言っていた息子は、しっかり炒飯を食べ終えてからレストランのソファーに横になって眠ってしまっていた。


Las Vegas 「Luxor」内「Papyrus」にて
Sauteed Shrimp
Braised Bean Curd
Pork Fried Rice
ビール(クアーズ)
$19.95
$10.95
$9.95
 

部屋に帰り、再びだんなは一人でカジノエリアに向かっていった。
「うーん、ブラックジャックやってみたいけど、ルールがまだ完全に把握できていないしなぁ……」
なんて言いながら、30ドルだけ持って出ていった。

息子を寝かしつけ、私ものんびりして、「さて風呂でも」と思った頃にだんな帰還。
「……トントンになりました……」
と苦笑いしていた。30ドル持っていって30ドルのまま帰ってきたらしい。

今日の彼の成果は
$10(所持金)→$75
$60(所持金)→$0
$30(所持金)→$30
ということで、大体トントン……いや、もしかしてちょっとだけ勝った、のだろうか、もしかして。
ラスベガス滞在はあと2日、我が家にBMWを持って帰れるだろうか(とちょっとだけ夢を見る)