10月18日(金) 夫、カジノに破れる

円卓のバフェ朝食

午前7時半、起床。少し部屋でのんびりしてから午前8時半、ラスベガス名物"バフェ"に行ってみようかね、ということになる。
"ビュッフェ""ブッフェ"などと日本語で言われるバイキング料理だけど、英語の発音では"バフェ"の方がより近いため、ラスベガス情報ホームページや書籍では、多くのところで"バフェ"という記述が用いられている(試しに"ビュッフェ""ブッフェ""バフェ"をそれぞれ検索エンジンにかけてみると、どれも相当数のページがヒットするが、"バフェ"はラスベガスやその他アメリカ国内情報としてヒットする確率が高い)。

「ラスベガスと言ったらバフェよねー」
「バフェなのよねー」
と、バフェ巡りに情熱を傾ける観光客は多いらしい。が、要は「食べ放題」だ。「バイキング」だ。いかに厳選した食材を使っていようと、種類が多かろうと、大量生産された料理は「食事なんかはちゃちゃちゃっと済ませてさ、カジノで遊んでよ」というホテル側の都合が見え隠れしている。安い料金のバフェはそれなりの理由があるし、バフェに何十ドルもつぎこむくらいならば、自分のために作ってもらう出来立ての料理をゆったり座って食べる方が良い……なんて、ブッフェ料理に今ひとつ愛情を持てない私などは思っちゃうのだった。

夕食はゆっくりしたいし、バフェに行くなら朝かしらね、と宿泊ホテルの案内を見ると、朝食料金は8.99ドル。あんまり安いとはいえなかった。隣の「Excalibur」は7.99ドルらしい。安い方でいいや、と隣のホテルに行ってみた。
Excalibur」(エクスカリバー)は中世西洋がモチーフのホテル。中に入ると、RPGゲームにおける"○○城のテーマ"みたいなBGMが流れている。剣と魔法とドラゴンの世界で、トイレには"Load's""Lady's"なんて表示がついていた。コスプレ写真館みたいなものまであって、RPGやファンタジーがお好きな人にはたまらないホテルだ(でもちょっとチャチではある)。

バフェレストランは「Roundtable Buffet」という名前。
「円卓の騎士か!」
「え、円卓の騎士がブッフェ喰うのか……」
と苦笑いしながら、20人ほど並ぶレジの後ろに並んだ。時間は9時過ぎ、朝食を摂る人が大勢押し寄せてくる時間帯のようだ。

一人8.99ドルを払い(1ドル値上げしたらしい……)、皿を手に取ったら、そこからがまた長い。
左右に2レーンに別れ(各レーン同じ料理が並んでいる)ずらずらーっと数十メートルも料理台が続いている。ここもぎっしり人が詰まっていて、目の前の料理を取っては、ゆっくりゆっくり進んでいく。とてもじゃないけど「ちゃっと全体を眺めてから好きなものだけを取る」なんてことはできない状況だった。
「ああっロールパン取っちゃったのに奥にクロワッサンもあったよー」
なんて状態に陥りながら、それでも好きそうなものをちょこちょこと選んで盛りつけていく。目の前では、量が少なくなったフルーツポンチを補充しようと、カウンターの向こうでお兄ちゃんが巨大ポリバケツに入ったフルーツをじゃばじゃばと容器に移しているところだった。もう「餌やり場」という感じ。

最初にヨーグルトとフルーツの棚だったのに面くらいながらもパイナップルを盛り、プルーンを添え、スクランブルエッグとベーコンとハッシュポテトを盛りつける。パンと、アップルソースを詰めたパンケーキ。牛乳に、更にアップルジュースも。
種類はそこそこ豊富ではあったけど、特に目新しいものもないごくごく普通のブッフェ朝食だった。驚いたのは、デザートコーナーにはしっかり多種類の甘そうなケーキが並び、ドーナツやカップケーキなどの類もたっぷりあることだった。朝からケーキか、アメリカ人。

我が家も、
「ま、しっかり喰っておこうね」
ともりもり食べていたので人のことは言えないのだけれど、アメリカ人はとにかく朝からよく食べる。しかも、"これが好き!"というのがあるようで、少ない種類のものを山のように盛りつけて持ってくるのだ。厚切りハムを4枚くらい重ねてとっているおっちゃん、フルーツポンチを小皿に山と盛りつけてくるおばちゃん、あっちのおっちゃんはフレンチトースト5枚重ねだ。すごい。

私たちもハムやベーコン、卵やパンをしっかり摂った後、ミニエクレアまで囓ってから店を後にした。

Las Vegas 「Excalibur」内「Roundtable Buffet」にて
Adult Breakfast
$8.99

レストランを出て、ホテル内の店をひやかしてから一度部屋へ戻る。
「Excalibur」には、子供向けの中国製プラスチックの"エクスカリバー"なる剣が売られていて、
「大量生産の聖剣がいっぱいあるよー」
「"エクスカリバー"じゃなくて、"エクスカリパー"って感じだよね」
と笑いながら息子に1本買ってあげた。すっかり気に入って、人気のないエレベーターホールあたりで剣をぷんぷん振り回して遊ぶ息子。部屋に帰ってからもしばらくチャンバラごっこをしていたけれど、途中から剣を振る動作がちょっと違うものになった。ベッドに向かって、とてててて、と細かく剣を動かしている。
「あ、あの、息子さん、何やってるの?」
と聞くと、
「あのね、にんにく切ってるのー」
と返された。続いて、なにやら"じゃーっ"と炒め物の動作に移っている息子。エクスカリバーはいつのまにか"料理包丁"として進化を遂げたようだった。って、何も聖剣でにんにく切らなくてもいーじゃないか、息子よ。

M&M's World と World of Coca Cola

朝食後すぐ、だんなは今日もカジノコーナーに出かけていった。数十分後、思ったより早い時間にシオシオになって
「35ドル、あっさり溶けました……そりゃもう、あっさりと」
と、スロットでスってしまったのだと涙ながらの御報告。

そして暑くならないうちにと、昨日バスに乗っていて気になっていたスポットに行ってみることにした。道路沿いに巨大なM&M'sとコカコーラの看板が出ていてやたらと派手な一角だ。中はショップなのか何なのかわからなかったけれど、息子も「チョコとコーラだ!」と騒いでいたこともあり、覗きに行くことになった。

目がチカチカしますなぁ〜「M&M's World」は、中にIMAXシアターを持ったM&M's専門ショップ。4フロアほどある上から下まで、とにかくあのチョコのキャラクターグッズばかりが詰まっている。当然IMAXもキャラクターの大冒険の内容だ。
衣類からベッドカバー、テーブルや椅子などから文房具、そして当然色とりどりのチョコも売られている。基本カラーは赤・青・黄・緑・オレンジ。このテーマカラーがどのフロアにも溢れていて目がチカチカしてくるのであった。
もうすぐハロウィンということで、ちゃっかりオレンジと黒の"ハロウィン仕様M&M's"なんてものも売られていたり。

AAAに加入していると、旅行中、ホテル宿泊費が10%オフになるなどのサービスがあるけれど、ここでも「AAAカードを見せたらクーポンをあげますよぅ!」というサービスをやっていた。試しにカードを見せてみると、「○ドル以上買ったら○ドル引き」「これこれのサービスを申し込むと5ドルオフ」などといった割引の他に、「アイスクリーム、無料であげます」「チョコレート1個、無料であげます」なんてチケットまでついている。こりゃいいや、と店内のアイスクリームショップで「M&M's入りバニラチョコレート」をいただいた。無料アイスだというのにコーンにはたっぷりと2スクープのアイスクリーム。2人で食べてちょうど良いくらいのたっぷり量だ。バニラアイスの中には、ミニサイズのM&M'sがざらざらと入っていた。
1階では、高級チョコレートショップ(それこそGODIVAのようなショーケースの)で好みのチョコをAAAクーポンで1つゲット。
「このアーモンドチョコをちょうだい」
などと言うと、無造作に紙にくるんで1個手渡しでくれる。鼻血が出そうなほどチョコだらけの店だった。

「M&M's World」のお隣は、「World of Coca Cola」。
かつてはコカコーラ博物館があったらしいけれど、数年前に博物館は閉鎖してしまったらしい。現在は2フロアに渡ってコカコーラショップのみが残っていて、昔なつかしフォルムのコップなどを買うことができる(もちろんコーラも飲める)。
夫は一人、「コカコーラ モノポリー」を見つけてしまってうきうきしていた。

そして部屋へ戻る。散策ひとつにやたらと歩かされるラスベガス、ちょっと出かけるにもけっこう疲れてしまう(何しろホテルロビーから自分の部屋に帰るのだって大変なのだから)。
朝食がブッフェだと、さすがに昼にはあまりお腹が空かない。ホテル内には幸いマクドナルドなどのファーストフード店もしっかりあって、昼はマクドナルドで買ってきて部屋で食べた。
「ビール、ビールあったら買ってきて飲んじゃおう」
と言っていたけれど、さすがにそういった店ではビールは売られていないのであった。

ビッグマックにフライドポテト、ジンジャーエール。
ポテトにケチャップだばだばつけて食べちゃう。

そして、溶けた

昼食後、だんなは再び
「起死回生のブラックジャックゥゥゥゥ」
と言い置いて出かけていった。
私と息子はごろごろしてみたり、ちょっとロビー階に言って遊んでみたり。
そして数時間後、かつてなく呆然とした顔で、だんなは
「あのね……かばちゃん……溶けました……」
と帰ってきた。見事、玉砕したようだ。

話によると、最初は勝っていたらしい。けっこう儲けていたらしい。だが、途中からディーラーが変わりその途端に「こいつ、イカサマしてるんじゃないか」と思うくらいに強い手ばかりディーラーに出るようになり、あれよあれよと100ドル溶けて消えたのだそうだ。
まぁ、ラスベガスでの100ドルなんて、はした金なんだから……となぐさめる。

夕方は、家族皆でホテルをぷらぷら。
息子は身長が足らなくてみられない「IMAX Ride Film」なるもの、ちょっと見てみたいなと思ったので一人見に行ってみた。チケットは7ドル、このホテルオリジナルのIMAXで、題目は「In Seach of the Obelisk」。ピラミッドの中に大変なものが見つかったんだ、探しに行こう!……みたいな内容で、要するにディズニーランドの「スターツアーズ」みたいなものだった。
なかなかに凝っていて、ビデオで案内があった後、地底に降りるエレベーターを模した立ち乗りの小型ライドに乗せられる。急降下して地底に降りていく様が揺られ流され、そしてピラミッド地底深くの発掘場を模した広いホールに一度出る。そして20人乗り程度のライドに乗り、がっくんがっくん揺さぶられた。
ノリは本当に「スターツアーズ」なんだけど、でもそれにしても「こんなに揺らさなくても」というほどにライドは激しく揺れた。映像もかなりめまぐるしく、乗り物酔いしてしまいそうだ。ヒロインが悪者にさらわれたり、最後はヒーローが悪人を倒してヒロインを助けたり、と非常にそれっぽい内容になっていた。けっこう面白い。

そんなこんなで、夕御飯。
「ブッフェも何だか"もういいやー"って感じだしね」
「外に出るのはめんどくさいし」
「美味しい中華は私たちには貴重だから、今日も行っちゃいましょうか」
と昨夜食べた「Papyrus」にまた行っちゃうことにした。案内係のおっちゃんは「お、また来たね」と笑顔を向け、昨夜"中国茶を持ってきてくれる?"とリクエストしたおばちゃんは、今日は何も言わないのに中国茶を持ってきてくれた。

今日は「回鍋肉」(Twice Cooked Pork)をメインに注文することにした。合わせて、さっぱりした魚介も入れたいね、と帆立料理を頼んでみることに……したいところだけど、メニューには帆立のさっぱり味料理は乗っていない。豆鼓炒めじゃ、回鍋肉と同じ系統になっちゃいそうだし。
「帆立が食べたいんだけど……昨日食べた、海老と野菜の炒めみたいな、あんな感じのにしてくれる?メニューにはないんだけど」
と聞いてみると、「Sure !」とにこやかに即答された。五目炒飯と、コーンスープも注文。

最初に来たのは、1人分の器に盛られて各々の前に来たコーンスープ。
よくあるタイプの"卵とコーンだらけ"の黄色いスープではなく、鶏肉たっぷりの白っぽいスープがやってきた。卵もコーンも入っているけど、なんだか鶏肉の方が多いみたいな。国立公園旅行中は今ひとつ食欲全開という感じではなかった息子が、この店では異様に良く食べる。スープは一人前をペロリと食べきった。

そいて残りの料理がずらりとテーブルへ。残念ながら、回鍋肉は豚バラ肉を使ったものではなく、チャーシューを使ったものだった。甜麪醤の味がちゃんとする、ビリリと舌に辛い回鍋肉は、味付けはかなり本格。バラ肉じゃないのだけが残念だ。パプリカたっぷり、椎茸も入って、当然キャベツもどっさりと。炒飯とは別に、白い御飯もおかずと一緒にやってきていたのだけど、この白い御飯に乗せて食べると回鍋肉、めちゃめちゃ美味しかった。このおかずで御飯何杯でもいけそうだ。

昨夜の海老の炒めがそのまま帆立に変わったような炒め物(まさにリクエスト通りだった)には、今日も青梗菜やヤングコーン、袋茸などの野菜がふんだんに使われている。帆立は直径5cm、厚さ3cmあるんじゃないかというくらいの巨大なものがブリブリ入っていた。五目炒飯は、海老と鶏肉と牛肉入り。早めの夕食だったためもあって、今日はちょっと食べ切れなかった。
「ドギーバッグ、くれる?んーと、2つくれる?」
とリクエストして、1つには半分ほど残った炒飯、もう1つには白い御飯を詰めた上に残った回鍋肉をどっさりかける。これで回鍋肉丼だ。今晩遅くか明日の朝食か昼食に食べることになるだろう。

せっせとドギーバッグに詰めている時、店員さんに
「デザートも食べる?」
と言われ、ついついバニラアイスやソルベを注文。大好物のココナッツソルベがあったので、それをもりもり食べた。美味しい中華に、昨日に続いて癒されてしまった。

Las Vegas 「Luxor」内「Papyrus」にて
Chicken Sweet Corn Soup
Twice Cooked Pork
Sauteed Scallops
House Fried Rice with Chicken, Beef, Shrimp
Tropical Sorbet
Domestic Beer
Soft Drink
3 × $3.50
$11.95
$19.95
$11.95
3 × $5.25
2 × $3.50
$2.25

今晩もめげずにカジノに行くのかと思ったら、だんなはもうイヤになっちゃったらしい。
「あのねあのね、ブラックジャックはやっちゃいけないんだよ」
と遠い目をして呟いている。一度増えただけに、その後の負けっぷりが胸に響いたらしかった。

そして早々に就寝。我が家のラスベガスは滞在は、なんだかものすごく健康的なのだった。

本日のだんなの成果
$35(所持金)→$0
$100(所持金)→$0