11月24日(日) アムトラックでボストンへ

なんてスノッブな朝御飯〜「BALTHAZAR」

友人Y宅で過ごした一夜。マンション下の道路では、数十分おきに車のクラクションの音が鳴り響いていた。そんな程度で眠れなくなるほどの脆弱な神経はしていないけれど、でも……けっこううるさくありませんかYさん。
「いやーもう、どこでだって寝られるようになったわよ。あはははは〜♪」
Y……なんだかすっかりニューヨーカーで……。

私が最初に目が覚め、一人パソコンを触っていたところYも目覚め、そのうちだんなと息子も起き出した。朝御飯は、Yおすすめの"パンがめっちゃ旨いカフェ"に行ってみることに。
「安くはないけどね、一度話のタネにでも行ってみるといいかもしれない。……夜は、予約入れるのも大変なくらい人気があるらしくってね、一時期は"ニューヨークで人気ナンバー1の店!"とか言われていたところだし」
なのだそうである。その店の名は「BALTHAZAR」というらしい。

毎日午前中にはクロワッサンやブリオッシュなどをはじめとするパン類と共にコーヒー類が供され、少々時間を遅くしてブランチメニューには各種卵料理も登場する。夜にはオイスターバーになるようだ。
いかにも老舗のカフェ〜といった印象の、セピア色の重厚な匂い漂う店内だった。このテの店はどこか野暮ったさも漂ったりするものだけど、計算してその古くささを演出しているようなこの店は野暮ったさはどこにもない。天井まで積まれたワインの並びも木張りの床も、"スノッブ"という言葉が良くも悪くも似合うような、そんな感じ。私などは微妙にくすぐったくなってしまう空間だ。

長いソファ席に座るには、テーブルとテーブルの間が狭いためにテーブルを引かなければならない。「仕事なのよ」と言わんばかりに大量の新聞のスクラップを持ち込んでめくってる人、「ここ、近所なのよね」という軽装でクロワッサンをつまむ人。
カフェオレ一杯が3ドルちょいという価格は高いとは感じないけれど、デニッシュ1個が3ドルというのは高価に思える。それでも周囲のテーブルで食べられているものはどれもこれも美味しそうで、そういえば"美味しい洋風朝食"にも我が家は飢えていたんだよなぁ、と今更ながらに思い出した。うきうきしながらメニューを眺め、さんざん悩んだ後にあれこれ注文。

私は
「ROASTED PEPPER & CARAMELIZED ONION QUICHE w/ gruyere cheese and thyme」
なるキッシュを1つ。それだけじゃ物足りないかとチョコクロワッサンもつけてもらった。飲み物はカフェオレ。当然ボウルで。

土日の午前10時からは「Le Petit Brunch」としてちょっと凝った卵料理なども出されており、だんなはそこから「EGGS BENEDICT」を、友人Yもそこから「BRIOCHE FRENCH TOAST with smoked bacon」を注文した。息子にはチョコブレッドとコーラ。
周囲を見渡すと、「HOMEMADE GRANOLA FRUIT AND YOGURT」を食べている人が多いように思う。巨大なカフェオレボウルにみっちりと、ヨーグルトに和えられたフルーツが入っているような外見のもので、中にはシリアルも入っている様子。それを傍らにパンを囓る人も多い。「La Panier」という盛り合わせのパン(10ドル)もまた人気のようだ。

オニオンキッシュフレンチトーストエッグスベネディクト

大きなカフェオレボウルになみなみと入ってきたカフェオレ。カフェオレボウル、大好きなんだけれど日本人の感覚だとついついボウルを両手でおごそかに持ってくるくる回し、ずずずっと抹茶のように啜りたくなってしまう。牛乳たっぷりのカフェオレをはふはふ言って飲んでいるうちに、テーブルに美味しそうなパンや卵料理がずらりと並んだ。
飴色に炒められた玉ねぎがどっさり入ったキッシュは、温められて出てきた。卵たっぷり生クリームたっぷり、プリンのようにプルプルとした生地が揺れている。パイ生地部分もサクサクと軽い食感で、久しぶりに食べる美味しい美味しいキッシュだった。これはかなり、良い感じ。
上質のチョコが2列にくるまれたチョコクロワッサンもパリパリサクサクの食感の中にもしっとりさが感じられ、息子用に注文したチョコブレッドはチョコがしっかり練りこまれたチョコレート色の生地がもちもちとしたものだった。
いかにもなバターたっぷりブリオッシュ生地を使いました、という感じのふわふわのフレンチトースト、じゃがいもや玉ねぎのソテーが添えられた上品なクリームソースがかかったエッグスベネディクト。何を頼んでも美しく、そして旨かった。

「パンが超うま!」で人気のこの店、パンだけならば「DEAN&DELUCA」などでも買えるようだ。

Soho 「BALTHAZAR」にて
EGGS BENEDICT
FRENCH TOAST
QUICHE
PAIN AU CHOCOLAT
CHOCOLATE BREAD
CAFE AU LAIT BOWL
CAFE LATTE CUP
COKE
$13.00
$13.50
$4.50
$3.00
$2.25
2×$3.75
$3.75
$2.50

もちもちふわふわドーナッツ〜「Doughnut Plant」

朝食後、ぽてぽて歩いてY宅へ帰還。途中、オープン直後でまだガラガラだった(昨日の夕方は身動きとれなくなりそうなほどの混雑だった……)「DEAN&DELUCA」に今日もふらふらと引き寄せられてしまった。食器から調理用具から、ハーブ類や調味料、生鮮品に至るまでどれもこれもキラキラしていて(値段もそりゃあキラキラしていて)、うっとりしてしまう。友人が持っているのと同じ中国茶器を見つけ、「ああ、これ大好きなんだよなぁ……」と値段を見たら250ドル。買おうか買うまいか、帰宅直前まで悩むことにした。我慢できなかったら買いに来よう。

焼きたては、きっともっと美味しい……このお店、オリジナル商品も多く扱うけれど、旨いと評判のあるものをとにかく扱っている。その中の1つに「Doughnut Plant」のドーナツ、があるらしい。友人Y宅にあった雑誌記事に掲載されていたドーナツで、"独特な食感"とか"お店は行列"とか、読んでいてすごくすごく気になってしまったドーナツだ。パン売場を覗いてみたら、3種類ほどの巨大ドーナツが確かに売られていた。外見はどっぷりシュガーコーティングされていて、「う……こ、これは甘そうかも」と一歩後ずさってしまう。第一印象は「とにかく甘そう」という、あまり心そそられないものではあったのだけど、とにかく1個、プレーンなものを買ってみた。

紙袋に入れてもらったそれを、食べるタイミングを狙って持ち歩き持ち歩き、結局食べたのはAmtrakに乗ってから。ちょうど良いおやつになった。
片手に乗せると溢れてしまいそうな(両手ですっぽり持ってちょうどよいくらいの)巨大なドーナツは、ちょっと不思議なモチモチ感。気泡が多めでふわふわしているけれど、強い弾力のある面白い歯ごたえだった。しかも、見た目ほど甘さはなく、シュガーコーティングの味も上品なさっぱりめ。どっしり重たく甘いだけのスーパーマーケットのドーナツとか、ふくらし粉たっぷりといった感じの軟弱な歯ごたえのタイプのものなどに比べると、これは確かに旨かった。私としては、かなり好み。

「これは……ちゃんとお店に行って買ってみなきゃなぁ」
と、ボストン行きの列車の中で誓ったのだった。

Soho 「DEAN&DELUCA」にて「Doughnut Plant」ものをお買物
ドーナツ $2.00

廉価版コンランショップ?〜「Crate&Barrel」

「この店もね、けっこう面白いわよー」
と、Yが続いてつれて行ってくれたのが「Crate&Barrel」というお店。ショーウィンドーには調理器具や食器の類がクリスマスっぽい仕立てで飾られていて、確かにこれは、いかにも私が好きそうな。

本日の収穫ノリとしては、「廉価版コンランショップ」という感じだろうか。コンランショップも大好きだけど、どうもいちいち個性が強すぎて格好よすぎて、「いやー、欲しいんだけど、日本の狭いお茶の間には全然全く似合わないのよー」というものが多い。その点、このお店の商品たちは若干控えめで若干シンプルで若干好みなアジアっぷりで、しかもお手頃価格のものが多かった。かなりツボだ。
しかも、安いものはすごく安い。醤油皿になりそうな、ちょっと変わった小型の楕円皿は1個95セントだ。木製の調味料用に使えるスプーンも95セント。前菜を乗せるお皿として使えそうな、うずまき型の妙なお皿やら、木製の四角く区分けされた皿やら、あれこれあれこれ買い込んでしまった。欲しかったセイロも、巨大なものが2段重ねで20ドル弱。ついついそれも買ってしまう。あとは日本の家族へのクリスマスプレゼントになりそうなものとか。

結局、Yもいくつか買い物して、皆でわさわさと紙袋を抱えてY宅に戻ることになったのだった。
「せりあちゃん……何だか全然旅行客っぽくないニューヨークを楽しんでいるわー。私が普段使っているようなお店で生活雑貨とか買ってるし、もー」
と、Yにゲタゲタ笑われた。確かに、ニューヨークまで来て醤油皿買ってるのもどうかと思う。

Soho 「Crate&Barrel」にてお買物
中華セイロ
写真フレーム
木製角皿
うずまき陶器皿
調味料用角皿
木製スプーン
ガラス調味料皿
$19.95
$19.95
$6.95
$6.95
2×$1.95
4×$0.95
4×$0.95

屋台だ屋台だピタサンドだー

Yの住むマンションの周辺では、週末になると通りに屋台が出るらしい。その時々によってあっちの通り、こっちの通り、と場所が異なるらしいけれど、ともかくこの週末も屋台が出ていたのだった。
こういうものにも、弱い。わくわくしてしまって、つつつーと引き寄せられて、怪しいものを買ってしまう。一度Y宅に荷物を置かせてもらってから、息子とだんなは部屋で待っていてもらってYと2人、露店巡りをちょっとだけした。

こういうのって心浮き立っちゃって、もー

「I LOVE NY」のロゴ入りコテコテTシャツを売る店、化粧品を売る店、防寒着を売る店あたりがちょっと多く、それ以外にも手作り芸術作品を売る店だのおもちゃを売る店だの和食器を売る店だの、脈絡無くあれこれあれこれ並んでいる。食べ物やも多い。ドラム缶にたっぷりのピクルスを(ピクルスだけを)計り売る店とか、焼きとうもろこし、シシカバブ、クレープ、ホットドッグ、パイやケーキ、などなど。

次は私の番通りにはスターバックスのワゴンが出て無料試飲などやっていて、"ミントホイップクリーム乗せホットチョコレート"が入ったミニカップなど受け取ってしまう。スーハーするミントの生クリームの下には、甘い甘い甘いホットチョコレート。
「……うぅ、私が耐えられる甘さの限界を越えているわ……」
と、Y。一気飲みする私。

食べ物を買うつもりは無かったはずなのに、旨そうな匂いを漂わせていた屋台でピタサンドを1つ買ってしまった。鉄板の上で塊の鶏肉を煙をまき散らしつつ焼いていて、注文が入るとざくざく切ってトマトやレタスと共にピタパンでくるんでくれる。手早くアルミホイルで巻き込んだら、ずっしりと重いそれが手渡される。1個5ドルだ。タコスの何倍も重く、食べ応えがありそうだ。

午後2時過ぎの列車に乗ることが決まっていて、昼食を食べにいく時間の余裕も胃袋の余裕もなさそうだったこの時間。だんなと2人で囓ったらちょうど良い昼御飯になった。ていうか、1人で食べても食べきれないほどのボリュームがある。
もっちりした歯ごたえのピタパンに、まだ温かい焼かれたばかりの鶏肉がたっぷりと。その鶏を覆い尽くすかのようなレタスとトマトと玉ねぎが挟まり、ソースはサワークリームをベースにした酸味のある白いもの。Y宅でわしわしとピタサンドを平らげたら、ボストンに向けて出発だ。タクシーに乗り込み、目指すのはペンステーション。Y、お世話になりました。また2日後に帰ってくるからねぇ〜。

ACELA EXPRESSでボストンへ

アメリカの長距離鉄道を「Amtrak」(アムトラック)という。血液中、微量に"鉄分"が流れている我が夫は
「列車の旅いいなー、一度くらい、乗ってみたいなー」
とずっと言っていた。だが、ほとんどの路線は「シカゴからニューオーリンズまで20時間」とか「ニューヨークからマイアミまで25時間」とか、ダイナミックすぎるものばかり。手頃なところとして、ニューヨークからボストンへの4時間の旅をしてみることになったのだった。

これで駅弁とお茶があれば……ボストンとワシントンDCを繋ぐこの路線は、「Acela」(アセラ)という名称がついており、「Acela Express」と「Acela Regional」の2種類が走っている。前者は日本で言うところの"ひかり"みたいなもので、後者は"こだま"というところだろうか。車体もスピードも違う2つのAcelaは席の区分けも異なっていて、「Express」はファーストクラスとビジネスクラスの席しかない。「Regional」にはファーストクラスの席はなく、ビジネスクラスのシートもあったりなかったり。そして自由席にあたる「Coach」と、指定席にあたる「Reserved Coach」があるらしい。どっちも面白そうだねと行きはExpress、帰りはRegionalに乗ってみることになった。ExpressはRegionalの1.5倍ほどの値段だ。

アムトラックは、遅れるのがあたりまえだという。ニューヨーク・ボストン間などはそれでも遅れは少ない方だと聞いていたけれど、発車は予定の30分遅れ。じりじりしながら駅で待ち、到着ホームが案内されたところでバタバタとホームに移動。なんとか乗ることができたし、並びの席に座れることができた。
「ビジネスクラスシート」だそうだけど、席は指定されていないのである。席数分しかチケットは発行されない(はず)なので絶対に座れるようにはなっているけれど、家族3人向かい合わせで座るのは、始発の駅でもない限りほぼ無理な話だった。テーブルつきの向かい合わせの席、ご夫婦らしき男女が座る向かいが空いていたので私と息子がそこに入り、通路挟んで隣にだんなが座り、電車の旅の始まりだ。

席は広く、快適だった。写真のように向かい合わせになっている席もあるし、新幹線のような感じでずらりと片側だけを向いて並ぶ席もある。ドア近くには1人用のテーブルつきの席もあったり。
テーブルつきの席は、すこぶる快適だった。何しろ床近くにコンセントがついていて、バッテリーを気にすることなくパソコンをいじくれる。広々したテーブルで食べ物飲み物も置きやすく、だんなは持ってきた大学の宿題をここでせっせとやっていた。トイレも素晴らしく広く、快適だ。

世界の車窓から

大きな窓の外は、えんえんと「世界の車窓から」な光景が広がっている。
海岸付近を通り、湿地帯を抜け、見事な夕焼けを眺めながら電車は走り、午後6時半頃にボストンに到着した。

牡蠣を喰うぞー〜「Union Oyster House」

ボストン2泊の宿泊ホテルは、Prudential Center(プレデンシャルセンター)近くの「Mid Town Hotel」。インターネットで検索して、1泊100ドル程度の安いホテルを探した結果の選択だった。いかにもなビジネスホテルで、しかも壁や床が薄い。滞在中ずっと、隣や上階でバタバタ動く音が聞こえてきており、隣の部屋がつけているテレビの音がこちらにもガンガン流れてくる。部屋はそこそこ広く、その壁の薄ささえ気にしなければ快適なホテルではあった。交通の便も悪くない。

Back Bay駅でアムトラックを降り、そこからタクシーに乗ってホテルへ移動。
ボストンには、現在Oさんが日程をほぼ同じくして遊びに来ている。だんなの職場の同期生で、現在米国留学中だ。他州で勉強しているのだけれど、我が家と同様、サンクスギビング休暇にボストンとニューヨークに遊びにやってきた。一人旅ゆえ食事の時間がちょっと寂しい、ということで、ボストン滞在中は一緒に何度か御飯を食べようということになっている。

今晩の夕食予定地は「Union Oyster House」。
創業1826年の老舗のオイスター屋さんだ。お店の案内によると「アメリカで一番古いレストラン」なのだとか。観光客も多数押し寄せるところで、年々味が落ちているという噂も聞く。それでも、この店のクラムチャウダーは美味しいらしく、とりあえずそれを食べておきたい私たちだった。クラムチャウダーが大好きで大好きで大好きな我が夫は、ボストンへ向かう途中、ずっとクラムチャウダーに思いを馳せているようで、ニヘラ〜と怪しい笑みを浮かべている。

店には既に「いやもう、今日、歩き疲れちゃって〜」というOさんが一人、1階のオイスターバーで待っていた。2階がダイニングになっているそうで、2階に移動して速攻ビールを注文。やはりボストンに来たからにはサミュエルアダムスを飲んでおくのが基本だろうかと、冬季限定ビールがあるそうなのでそれを頼み、まずは"コールドシーフードサンプラー"なるものを1人1皿注文してみた。

サンプラーボストン初のクラムチャウダーオイスターロックフェラー

楕円形の小ぶりな皿に盛られてきたのは生牡蠣が2つ、大きな大きなクラム(クラムとは"はまぐり"と訳されたり"アサリ"と訳されたりして、実際そのどちらも使われているらしい。なので"クラム"は"クラム"と書くことにしてみた)が2つ、シュリンプカクテルも2つ。甘味のあるトマトソースとホースラディッシュがそれぞれ小さなプラスチック容器に盛られて添えられ、大きく切ったレモンも脇についてきた。
生牡蠣は、今ひとつ瑞々しさに欠けていた。牡蠣のジュースが殻の底に溜まっているような、プリプリプルプル光っているようなものがいかにも美味しそうに見えるし実際美味しいのだけど、このお店のは"乾いている"とは言わないけれど水っぽさがあまり感じられない。それでも、甘味のある牡蠣は弾力もあって、味はかなり良い感じ。巨大なクラムも牡蠣とは違ったほのかな甘味があり、これはこれで美味しかった。海老は、まぁ、普通の味。あっという間にサンプラーは空になった。

「全然足りないよ〜、牡蠣〜、生牡蠣〜!」
と、続いて生牡蠣を12個追加。更にオイスターロックフェラーも注文。ほどなくテーブルは18個の牡蠣で満たされた。ほうれん草をチーズ風味のクリームソースで和えて牡蠣に乗せ、オーブン焼きした"オイスターロックフェラー"は、ニューオーリンズでも食べたことがある。あちらのものはこってりクタクタにほうれん草に火が入っており、しかもクリーム分が濃厚だった。このお店のものはほうれん草がたっぷりで、クリーム少なめ。さっぱりしていていくらでも食べられそうな勢いがついてしまう。Oさんは生牡蠣よりもロックフェラーの方がお気に召したようで、更にロックフェラーを1皿追加注文。私とだんなはとにかく生牡蠣だ、と磯の匂い漂う牡蠣を次々と空にしていくのだった。

そして、待望のクラムチャウダー。
"オイスタークラッカー"なる丸っこい小粒の袋入りクラッカーが添えられていたクラムチャウダーは、どっしりこってりぽってりとした、とびきり濃厚なものだった。チャウダーとはトロトロしているのが常ではあるけど、それにしてもこの濃度はスープというより"煮物"と言った方が良いんじゃないかという感じ。海の香りが強く漂い、中には大ぶりのクラムがこれでもかと大粒のままたっぷりと。小指の先ほどに角切りにされたじゃがいももどっさり入り、牛乳じゃなく生クリームを使っているのでは、と思ってしまうほど牛乳の風味もたっぷりだ。
「さすがクラムチャウダーの本場だねぇ……」
「老舗の味だねぇ……」
と、素朴な味に感動しながらせっせとスプーンを動かした。時々、ジャリッと舌に砂らしきものが当たったりもしたけれど、それは気にしないことに。

散々飲み食いした挙げ句、最後に"今日のおすすめ"としてメニューに載っていた「Shrimp and Scallops Special」なるものを頼んでみる。説明文を見ると、"海老と帆立をソテーしてピラフの上に乗せ、バジル風味のクリームソースをかけたもの"らしい。英語はまだ全然不得意なくせに、こういうメニューとか説明文だけは異様に理解できてしまう自分たちを笑ってしまいながら、これは旨そうだねと注文してみた。
生クリームたっぷりのソースからはバジルの匂いがぷんぷんと。楕円の皿の中央には細長くピラフが盛りつけられ、その上にはグリルされた海老と帆立が交互に美しく一列に並べられている。そして周囲にバジルソースが美しく敷かれていた。見た目も美しい料理に一同大喜びで、この段階ですでに"腹七分目"くらいの状態であったはずなのにガツガツ食べる。

かくして、最初は「Hot Indian Pudding」「Boston Cream Pie」なんていうデザートメニューにも心ときめいていたにも関わらず、デザートに到達する前にすっかり満腹になってしまって午後9時半過ぎに店を後にした。
1階にはしっかり土産物屋さんも併設されている。本場のレシピを買っていこうと、ニューイングランド料理本を手にとり、キュートな海老型マグネットも1つ購入した。

「ボストンに来て最初の夜にオイスターとクラムチャウダーだなんて、"いかにも"だよねぇ」
と笑いながら、まだコートの前を合わせる必要もないくらいの気温の中、地下鉄に乗ってホテルに戻る。暗くなってからの町しか見ていないボストンだけど、古い町だなぁという感覚があちらこちらから感じられた。
明日はボストン美術館。

Boston 「Union Oyster House」にて
Cold Seafood Sampler
(Freshly Shucke Oysters and Cherrystones, Cocktail Shrimp)
Blue Point Oysters
Oysters Rockefeller
Oyster House Clam Chowder "A Boston Classic" (bowl)
Shrimp And Scallops Special
Fried Chicken Tenders
Union Caesar Salad
Beer (Samuel Adams Winter Ale)
Ginger Ale
Coke
Coffee/Tea

海老マグネット
『The Best Basic & Easy Recipes of New England』

3×$9.95
 
2×$9.95
2×$9.95
$4.75
$21.95
$6.50
$4.95
2×$4.95
2×$1.75
$1.75
3×$1.50

$3.00
$4.30