11月26日(火) クラムチャウダーよ、癒しておくれ

イングリッシュマフィンな朝御飯〜「rebecca's cafe」

2泊3日なんて、あっという間だ。今日の午後にはニューヨークに発たなければならず、それでも行きたいところは沢山残っている。今朝は朝6時起きで荷造りし、早々にチェックアウト。荷物はホテルに預けたまま出かけてみた。

朝食は、プレデンシャルセンターのショッピングモール内フードコートにあった「rebecca's cafe」で。ボストンとシカゴに展開する、そこそこ人気のカフェらしい。サンドイッチが旨いらしいので、朝食にちょうど良いかと寄ってみた。
卵たっぷり〜 私たちが到着した時は直前にお客が1人2人いた程度だったけれど、食べている間に10人ほどの行列ができあがっていた。フードコート内の店がまだ半数ほどが開店前だったということもあるかもしれないけれど、他の開店済のお店は閑散としているのに、この店だけは何やら大人気。皆、コーヒーやサンドイッチを紙袋に詰めてもらって出勤していく、という感じだった。

サンドイッチはパンを選び、野菜やチーズやベーコン類を選んで好みの内容でサンドしてもらうスタイルであるらしい。が、"朝食セット"なるものもあったので、これを注文。3ドルほどでサンドイッチとコーヒーがセットになっている。
「ソーセージ?それともベーコン?あと、パンはベーグル?それともイングリッシュマフィン?」
と、このセットでもあれこれ選択するようになっていた。私がもらったのは、イングリッシュマフィンにベーコンのサンド。オムレツ状(というか、スクランブルエッグを寄せて固めたような)の卵が、卵2〜3個くらいは入っていそうなボリュームでこんもりと挟まっている。カリカリベーコンとチーズも間にたっぷりと。コーヒーはたっぷりで、寒い朝には嬉しい温かい朝食になった。

Boston 「rebecca's cafe」にて
Breakfast Combo
$2.95

あれもこれもお休みで

本日の予定は、「9時オープンのボストン茶会事件船に行き、そのまま10時オープンのコンピューター博物館に行く」という予定になっていた。両方とも同じ地下鉄の駅下車で、隣接しているような場所にある。
ボストン茶会事件船は、2002〜03年度版『地球の歩き方』に「売店の火災のため、しばらく閉鎖」と載っていたけど、その記事が載った時点から半年以上過ぎているし、さすがにオープンしているだろうと勝手に思っていた私たちだった。それがいけなかった。

ショック〜 South Stationの駅で降り、コートを着込んでぽてぽて歩いていくと、入江にかかった橋のそばにこぢんまりとした船が見えた。
「これだ、これだ〜」
と近づいていくと、既に開いているはずの事件船ミュージアムのドアは閉まっているままだ。「売店が燃えちゃったのでしばらく閉鎖しまーす」という案内板が、入り口にもの悲しく揺れている。
「ま、まだオープンしていない……」
「なんか、やる気なさそう……」
吹きすさぶ寒風以上に冷えていく私たちの心。そのままよれよれと、「じゃ、じゃあコンピューター博物館に……」と歩き出したのだった。

時間は9時20分ばかり。コンピューター博物館のオープンまでには40分ほどあったけれど、
「入り口の場所だけ確認して、そのへんの喫茶店かどこかで休んでいよう」
と場所の確認に動き出した。川岸近くにある「子供博物館」に隣接しているらしいコンピューター博物館だけど、周囲を歩いてもその入り口らしきところが見つからない。歩いていた人に尋ねると、
「あぁ、コンピューター博物館?……さぁてねぇ、確か子供博物館のすぐ隣にあったはずだけどなぁ……」
とのこと。建物をぐるりと回りこむように、「ここかな?」とドアを覗きながら歩いてみた。

超ショック〜〜〜〜あったあった。小さなガラス扉の前に、「The Computer Museum」の文字が見えた。が、その張り紙には続けて「is Closed at the Location」という文字が続いている。その紙には
「コンピューター博物館は99年6月に閉鎖しました。コンピューター博物館の志は"Museum of Science"に引き継がれ、2つの展示品がそちらで見られるようになっていまーす。」
てなことが記されていた。もう3年半も前に閉鎖していたとは。博物館が閉館してしまうなんてことは全くの想定外だったし、しかも最新の『地球の歩き方』アメリカ版のマップにもしっかり「コンピューター博物館」と記されていたものだから、疑ってもいなかった。そういえば、AAAでもらったボストンマップには子供博物館しか載っていなかったよな……なんて呆然とした頭で考える。

私も多少楽しみにしていたけれど、"ボストンに来た目的はこれだった"という、それはそれは楽しみにしていただんなの落ち込みぶりときたら、もう何と声をかけたらいいか困ってしまったほど。
10年ほど前、だんなは 『電子立国 日本の自叙伝』(相田洋/著 日本放送出版協会)なる本を読み、その中でコンピューター博物館の事を知ってずっとずっと来たいと思っていたそうなのだ。
「初期型アップルとかあるんだよー!スーパーコンピューターとかあるんだよー!見てみたいなぁ……」
と、だんなはボストンに来ることが決まる前から、日本にいる時からそう言っていた。あー、もう、なんだかねぇ、言葉が出ないよねぇ。

「もういい……ぼく、テネシーに帰る……」
とすっかりシオシオになってしまっただんなの背中は、可哀相なほどに肩ががっくりときてしまっていた。落ち込みまくりながら、そのままとぼとぼとホテル方面に戻り、プレデンシャルセンターのショッピングモールへ。プレデンシャルセンターに隣接してもう1つ巨大なモールがくっついており、そこで防寒着など買い物することにした。とりあえず、冷え切った身体を心を温めようと、フードコート内の「BOSTON CHOWDA CO」でスープを飲んで温まることに。サンドイッチやサラダもあるけれど、店名が"チャウダー"というのがなんとも良い感じで気になっていたお店だ。

ロブスタービスクこちらはクラムチャウダー(食べかけ)私は"ロブスタービスク"(甲殻類を用いたクリームベースのスープを"bisque"という)を、クラムチャウダー愛好家のだんなは当然クラムチャウダーを。
小から特大まで4種類ほどあるスープカップのうち、下から2つめのサイズによそってもらって4ドル弱。さらさらタイプの軽い味のチャウダーには、じゃがいもとクラムがごろごろ入っていた。生クリームが大量に入ったどっぷりしたチャウダーも美味しいけれど、軽いものは軽いものでなかなか美味しい。ロブスタービスクは赤ワインの香り漂う、海老の肉がごろりごろりと入ったものだった。ミルク感がたっぷりで、強めのとろみがついている。

Boston 「BOSTON CHOWDA CO」にて
New England Clam Chowda
Rockport Lobster Bisque
$3.94
$3.94

食後は、博物館閉鎖のショックを吹き飛ばすごとく、お買い物。
サンクスギビングを目前にしてじわりじわりとセールが始まりつつあるようで、ショッピングモールにはちらちらと「20%OFF!!」なんて文字が出没し始めている。衣類にかかる税金が低いボストンで、テネシーと商品の値段はさほど変わらぬだろう「GAP」でお買い物。だんなは防寒着を1着購入し、私は手袋。息子用にも手袋と、手袋とお揃いの耳が隠せる帽子。
「テネシーから来たんだけどね、ここは税金が安いから服買って帰ることにしたんだよー」
とレジの店員さんに言うと、
「テネシーって、そんなに高いの?」
と。
「んとね、9.25%」
答えただんなに店員さん、目を丸くして
「まぁ〜!冗談でしょ?クレイジーだわ。じゃあいっぱい買っておかなきゃね」
だそうだ。「明日は雪が降るらしいから、あったかい服はちょうど良いわよ♪」と、ニコニコしながらでっかい紙袋を渡された。

ボストンで最後の牡蠣を〜「LEGAL SEA FOODS」

ボストン最後の食事は、"生牡蠣が美味しいお店"としてチェックしていたうちの1つ、「LEGAL SEA FOODS」に行ってみることに。ボストンを中心としてアメリカ国内に二十店舗強展開しているシーフード料理屋さんだ。プレデンシャルセンターの中にもあったので、これは楽でいいや、と行ってみたのだった。目当ては当然、生牡蠣。

生牡蠣を1/2ダース、それに合わせてビールを1杯。メインディッシュには、私はスカンピのリングイネ、だんなはフライドクラムを注文してお互い適当につつくことにした。更に、AAAの会員証を見せることでもらったクーポンで、クラムチャウダーが1杯サービス。AAA、今日もありがとう。
最初にやってきた生牡蠣とクラムチャウダーにニヤニヤしつつ、昼から食べる生牡蠣&ビール。一昨日の「Union Oyster House」で食べたものと異なり、こちらは牡蠣の殻の上にたっぷりの汁気があった。ころりと丸っこい牡蠣はほんのり甘くて新鮮で、チュルンと喉の奥に落ちていく。あやうくもう1皿注文しそうになるところをぐっと堪えて、次の料理へ。

この店のクラムチャウダーはどっしり系だ。角切りじゃがいもがごろごろと入り、クラムもたっぷり。生クリームの風味が濃厚でとろ〜んとしている。テーブルにやってきたところで上から黒胡椒をガリガリとかけてくれる。粘っこいほどのとろみがあるチャウダーは、塩味もちょっと強めだった。クラムチャウダー、本当にどこの店にも置いてあるという感じで、それぞれ工夫があってどの店もそれぞれ美味しい。

生牡蠣〜♪チーズたっぷりスカンピリングイネこちらはフライドクラム

そして、こんがりきつね色に上げられた小山のようなクラムのフライ。タルタルソースとレモンが添えられ、牡蠣フライのクラム版、という感じ。コリコリとした食感のクラムは、牡蠣フライとはまた違った甘さがある。だんなの側に置かれたそれを私も横からつつきつつ、私の前にはスカンピのリングイネが。トマトとマッシュルーム、青葱と共に炒め合わされた、シンプルなオイルベースのパスタだった。テーブルの上で仕上げのチーズと黒胡椒がドパーッとかけられた。パスタは見た感じ、リングイネというよりもフェットチーネのようで、海老もまたスカンピではなく大ぶりだけど別の海老のよう。それでも味は悪くなく、レモンも添えられてさっぱりといくらでも食べられそうな味わいだった。でも、アメリカのパスタって、なんでアルデンテではなくて、いつも"くたくた"に茹でるんだろう。

料理をすっかり平らげ「まぁ、デザートはいらないかな……」と思いつつあったその時、ものすごく良いタイミングでテーブルが綺麗に片づけられ、デザートメニューが渡されてしまった。デザートメニューを眺めてしまうと食べたくなるもので、私はついつい「Boston Cream Pie」なるものを注文してしまったり。これもまたボストン名物の1つのようで、あちらこちらでその"Cream Pie"の文字を見かけてきになっていたのだった。要するに、ミルクたっぷりのクリーム生地のパイで、上からチョコレートソースをかけるのが基本スタイルであるようだ。
「うちの店のは、スタンダードなやつとはちょっと違いますよ」という説明があったそれは、小山のような黒い物体だった。丸い型で作られたクリームパイの上からは、どっぷりと濃厚な濃厚なチョコレートソース。仕上げに店のロゴ入りのチョコの薄膜まで添えられていた。クリーム生地は比較的軽い食感、甘さも控えめで、牛乳風味たっぷりのプルプルした舌触り。ただ、表面のチョコが強敵だ。チョコの量はこの1/5くらいにした方が美味しいのではないか……と思いつつ、チョコをなるべく除けながらクリーム生地を食べる。最後に名物を1つ食べられ、かなーり満足♪

Boston 「LEGAL SEA FOODS」にて
Oysters (on the half shell)
Legal's New England Clam Chowder
"Scampi"
New England Fried Clam
Samuel Adams Draft
Ginger Ale
Boston Cream Pie
Coffee
Espresso
$10.00
$0
$12.00
$11.00
$4.75
$1.95
$4.50
$1.75
$2.95

ACELA REGIONALでニューヨークへ

午後3時過ぎのAmtrakで、再びニューヨークへ。
行きはExpressだったけれど、今度はRegionalだ。「Reserved Coach」なる指定席ではあるけれど、これは"座席数分しかチケットを出しませんよ"というだけで、席の指定があるわけじゃない。早めに駅に到着するようにして、早めに電車に乗り込んで席を確保した。通路を挟んで左右に2席ずつしかない座席は新幹線よりもゆったりめで、座り心地はExpressのビジネスシートと比べてもさほど劣るものではなかった。しかも席の脇にはきっちりコンセントも豊富に用意されている。周囲を見るとノートパソコンを持ち込んでいる人が大変多く、4人に1人くらいは画面を見ているような状態。何か作業をしている人もいれば、DVDを見ている人もいる。私がハマッているゲームをやっている人もいて、思わずニヤリとしてしまった。

おやつに、「The Cheesecake Factory」のチーズケーキ。
プレデンシャルセンターのモールの入口にレストランも併設されたこのお店があり、
「チーズケーキ屋さんだぁ……ニューヨークに着くのは7時過ぎだしぃ、もしかしたら遅れるかもしれないしぃ、お腹空いたら大変だよねぇ♪」
などと言いながら、1人1個分のケーキを買って電車に乗り込んだのだった。
ショーケースには、これでもかこれでもかとチーズケーキの山が。中にはパンプキンパイやアップルパイもないではないけど、しかし十数種類並んでいたケーキのほとんどはチーズケーキだった。オレオチーズケーキだのチョコレートチーズケーキだの、バニラだのバナナだのと壮観な眺めだ。

購入した後その店のリーフレットを眺めていたら、この店、カリフォルニアをはじめとしてフロリダからボストンまで広範囲に展開しているチェーン店なのだということが判明(日本にも同じ名前のお店があるけど、それは全くの別物らしい)。「ボストンのお店というわけじゃなかったのかぁ……(しかもニューヨークにもあるし!)」と思いつつ、車内のフードコーナーでコーヒーなど買ってきて、おやつの時間にもりもり食べた。

1人1個は多すぎた……1つ1つのケーキが、プラスチック容器に収まっている。しかも「Original Cheesecake」はそのままケーキ単体だったけれど「Vanilla Bean Cheesecake」と「Fresh Banana Cream Cheesecake」には、ホイップクリームが山のようにトッピングされて(というか脇に添えられて)いた。そんなに絞んないでも、という程に。更には、バナナクリームチーズケーキにはアルミホイルにくるまれた半分にカットされたバナナまでついてきている。1つ1つのケーキが、"その扇形の内角を1/3にしても倒れないんじゃないか"というほどにボリュームたっぷり。高さもたっぷり。しみじみ眺めた後、「こりゃ、1人1個じゃなくて3人で1個でも良かったかもなぁ」と思ってしまったのだった。

ケーキはどれも、ふわふわプルプルちょっとだけねっとり、という食感の、若干軽く感じるものばかり。クリーム感たっぷりだけど(トッピングの生クリームはいらないんじゃないかという程に)、そのクリームが今ひとつ美味しく感じられないケーキだった。"不味い"という程には不味くはないけど、あれこれ工夫されたフレーバーがある割には全体的に大味だ。うーん……いまいち。

Boston 「The Cheesecake Factory」の
Original Cheesecake
Vanilla Bean Cheesecake
Fresh Banana Cream Cheesecake
$5.75
$6.25
$6.25

こんなのスィートじゃない……〜「Hotel Wolcott」

午後7時過ぎ、ほぼ定刻どおりに列車はニューヨークのペンステーションに到着した。そこからホテルまでは真東に2ブロックほど。地図で見るとさほど遠くではなさそうなのでタクシーにも乗らず、徒歩でえっちらおっちら移動した。今日は近隣で何かイベントでもあるのか、何やら多くの人が繰り出してきている。警官もあちこちで警備していたりして、大荷物でトロトロ歩くのは迷惑かつ危険じゃないかと、つかつか早足での移動。中身満載のドラムバッグを抱えるだんなの息があがりはじめ、かなりつらそうな表情になってきたところで、やっとホテルに到着した。カウンターの受付のお兄ちゃんが
「……マラソンでもしてきたの?」
と笑っている。シャンデリアがキラキラ光るロココ調なロビーのそのホテルは「Hotel Wolcott」。マンハッタン内の安いホテルを、と探した結果選んだホテルだった。ツインルームは100ドルほど、ジュニアスィートルームも130ドルほどで宿泊できる、破格に安いところだった。安いには、安い理由があった……んだけど。

写真で見ると、なかなか、なんだけど……

間取り、こんな感じさして値段も変わらないし、とジュニアスィートを予約していたのだけど、ドアを開けてびっくりした。開けるなり、目の前50cmほどのところにベッドがある。ベッドの脇には申し訳程度の古くさ〜い小さなテレビが1つ。廊下とも言えないような1mほどの通路の右側にベッドルーム。これまで泊まってきたアメリカのホテルは(まぁそのほとんどはモーテルなんだけど)、ツインルームはダブルサイズのベッドが2つあるのが通常だったけれど、ここのはシングルベッドが2つ、ちんまり並んでいるのだった。狭くはない部屋だが、ライティングデスクの他にコーヒーテーブルもない。椅子だけは3つ、ぽつりぽつりと部屋のあちこちに置いてはあった。でも、その椅子の種類が全部違っていたり。

バスルームもまた、笑っちゃうほど狭かった。トイレで用を足そうとすると、トイレットペーパーは左肩の後ろ、ヨガのごとくに手をねじ曲げなければ届かないところについている。真っ正面には回れない、便器側を向いて設置された洗面台はこれまでの人生で見てきたどの洗面台よりも小さなもので、顔を洗おうとしたら周囲中が水浸しになってしまいそうなサイズのものだ。汚いというわけではなさそうだけど、量だけはたっぷり用意されたタオルのうち何枚かはなんとなーく黄ばんでいる。なんだか凄いホテルに来てしまった、と思わず笑ってしまう。とりあえず、ドアを開けたところの3畳ほどの空間でもって"ジュニアスィート"と言い切っちゃうその心意気が凄いじゃないか(あれが居間、なんだろうか……)。あんまり凄かったので、あの間取りを忘れないように自分で間取り画像など作ってみたり。

ともかく、ベッドは家族人数分だけあることだし、息子が
「これ、ぼくのベッド?ひとりで寝ていいの?」
と玄関先のベッドを見て喜んでいたようなので(実際大喜びで一人で寝ていた)、苦笑しながらもそのまま4泊5日をこのホテルで過ごすことになった。
特に不自由は感じなかったけど、でも、コーヒーテーブルがないと、テイクアウトしてきたものを食べるスペースがないんだよねぇ……。

うまうまユッケ〜「Woo Chon」

チェックインが終わり、部屋に入って落ち着くと午後8時を回っていた。
なんとなく、気分はビビンバ。先日から飲茶だの寿司だのスパゲティだのとあれこれ食べていたし、しかも電車内で巨大なチーズケーキなぞかっくらってしまったため、今ひとつたっぷり食べられる腹具合ではなかった。でも、何か食べておきたいところでもある。
「焼肉が恋しいかも……」
「ビビンバなんか、いいよねぇ……」
と、気分は韓国料理なのだった。で、友人Yに電話。
「Y〜Y〜、ニューヨークに戻ってきたよー」
「あらぁ、せりあちゃん、おかえりなさい」
「でさー、これから夕飯なのね。美味しい韓国料理屋に心当たりはある?」
Yの返答は早かった。
「ん〜、私も何軒かでビビンバ食べたことがあるけど……美味しいところか〜……。私は行ったことないんだけど、友人が"ここが大好きで何回も行ってるのー"っていう店があるなぁ」
と、店名と住所を教えてくれた。うちのホテルから数ブロック先で、歩いても行けそうだ。地図を見つつてくてく歩いて行くことにした。

「牛村」と書いて「Woo Chon」と読むらしい。小さなその看板を見つけて入ると、店頭には"ザガット・サーベイでなんちゃらナンバー1"という額がいくつか置かれていた。和と中華と韓国が入り交じったような、お洒落だけど微妙に違和感を感じる(だって、焼肉屋なのに寿司カウンターがあるし……)店だ。でも、なんとなーく美味しそうな雰囲気が漂っている。
メニューにはしっかり日本語で「タン」だの「ミノ」だの書いてある。ついつい目は「上牛タン」に引き寄せられつつ、焼肉メニューからグッと目をそらしてビールをユッケを注文。私は海鮮石焼きビビンバを、だんなはカルビタンを食べることにして、息子には寿司バーから好物の玉子とイクラの握りをとってやることにした。

たっぷりキムチ〜♪海鮮ビビンバ

ビールと共に、テーブルにはずらりとキムチが並べられた。ちょっと甘さのあるタコのキムチ、ピリリと辛い白菜キムチ、海鮮のやらキノコのやら、にんにくたっぷりのほうれん草のナムルやら、9種類ばかりがテーブルの中央に。どれもこれも全く味の違う、しかも美味しいものばかり。
「何しろ韓国料理屋はこれが幸せなのよね」
なんて言いながらキムチとつついているうち、ユッケもやってきた。
ユッケは、平皿にキュウリや梨などと共に美しく盛られている。短冊切りにされた牛肉の中央には生の卵黄が1個。おばちゃんが目の前でわしわしっと混ぜてくれ、テーブルの中央にどかんと出された。ちょっと甘めのタレで和えられた生肉は、ショリショリした食感の梨やキュウリと良く似合っていた。卵黄がねっとりとまとわりつき、"肉、喰ってますー"という気分が盛り上がる。久しぶりに食べる美味しいユッケは期待以上の味で、温まらないうちにとせっせせっせとユッケから食べる。

そして石焼き海鮮ビビンバ。アツアツの器の中に収まる御飯の上に、ナムルの姿はない。代わりに大量の生の帆立や海老、貝類が表面を埋め尽くし、葱と刻み海苔がトッピングされていた。そして別皿に胡麻入りの甘辛いタレが添えられ、それを鍋肌にジュジュッと回しかけつつわっせわっせとかき混ぜていく。ナムルの味のしない、ちょっと珍しいタイプの石焼きビビンバは磯の香りがたっぷりの面白いものだった。タレはこっくり濃いめの味ではあるけど、全体としてはさっぱりとしていて、いくらでも食べられそうな味。白濁スープたっぷりのカルビタンには大量のテールと共に薄切りカルビもこれまた大量に入っており、柔らかく煮えた大根も沈んでいた。

「やばいよ、何を食べても美味しいよ〜」
「箸が止まらなくなってしまう〜」
「キムチも全部なくなってしまうぅぅ」
と、ニューヨーク到着直後に感じていた旅の疲れもどこかに吹っ飛び、9時半頃まで飲み食いしまくる私たちだった。
デザートに、サービスで出てきた葡萄とメロンを堪能する頃にはすっかりご機嫌かつ満腹になり、そのままへろへろと歩いて宿に帰還。寒いと聞いていたニューヨークだけど、今日はあまり寒いとは感じない。コートを着てはいるけど、マフラーも手袋もいらないし、前を合わせる必要もない、という感じだ。

New York 「Woo Chon」にて
ユッケ
海鮮石焼きビビンバ
カルビタン
握り(卵)
握り(イクラ)
CB Lager
コカコーラ
緑茶
$17.95
$16.95
$11.95
3×$2.00
$2.30
2×$4.00
$2.00
2×$2.00