4月20日(日) フローズンカスタードォォォォ

スタバみたいなパン屋さん〜「Saint Louis Bread Co.」

私たち家族だけになった、セントルイス最終日。家族で旅行するのはいつものことだけれど、昨日まで何人もでわいわいやっていたことを思うと、静かだなぁと思う。
本日の最大目的は、なんといってもフローズンカスタード。ついでに、息子が喜びそうなGrant's Farmというところにも行ってみようということになっている。どちらも、昨夜ホテルの部屋でパンフレットなどを読みながら調べたところによると、日曜日もやっているらしい。だが、今日はただの日曜日ではなく"Easter Sunday"なのであった。キリストの復活を祝う、キリスト教徒にとってはクリスマスと同等かそれ以上に盛り上がるのがこの日であり、敬虔な教徒たちは春らしい服でお洒落して教会に向かうのだと聞いている。どうかどれも休みではありませんように、と念じながらの出発になった。

ホテルをチェックアウトし、朝御飯にと立ち寄ったのはセントルイス内のあちらこちら(どころか州の南部やイリノイ州に至るまで)に展開しているチェーンパン屋さん、"Saint Louis Bread Co."。人気のあるパン屋さんらしく、しかも道中にあるBakery-Cafeは日曜も朝から営業しているらしい。イースターの今日も、煌々とライトをつけて営業していた。

どれにしようかな、と

ガラスのケースの向こうには美味しそうなデニッシュやクロワッサン類がごろごろと並ぶ。奥のカウンターで注文すればサンドイッチやベーグルサンド、ホットパニーニなども食べられるようだ。まだ準備できてないのよ、と言われてしまったのだけど、スープも種類豊富にメニューに並んでいた。"French Onion Soup in a Sourdough Bread Bowl"なんて、素晴らしく旨そうだ。

デニッシュの大きさにびっくりしつつ、これを2個も食べたら満腹になるだろうなとチーズデニッシュを1個頼んだ。あと、冷たい牛乳も。息子はチョコレートクロワッサンと牛乳、だんなはチーズクロワッサンとフレッシュオレンジジュース。トレイにごろごろと大ぶりなパンを乗せ、ソファー席に腰掛けて食べた。
こざっぱりとした店内は広々として居心地がよさそうで、なんだかスターバックスのような印象。両手でわしっと掴んで齧ったデニッシュは、生地にシナモンパウダーが練り混まれていた。ほんのりあまい生地の中央には、クリームチーズをベースにした甘いチーズペーストがたっぷりと。
日曜の、朝8時半という時間に、店内はなかなかに混雑していた。いかにもこれから日曜礼拝に行くんです、という風情の親子連れなどもいる。お父さんはスーツ、女の子はピンク色のワンピースなど着ていたりする。ドライブしていると、あちらこちらの家にウサギの飾りものや綺麗に色づけされた卵を吊した庭木などを見ることができる。

St.Louis 「Saint Louis Bread Co.」にて
Danish (Cheese)
Milk

子ヤギと戯れる……というか襲われる〜「Grant's Farm」

バイソンバイソン! でかい牛でかい牛! 9時半のオープンに合わせて到着したのがGrant's Farm(グラント農園)。
元々は、南北戦争時代に北軍で戦ったグラント将軍が所有していた農園なのだとか。彼の死後、バドワイザーのビールメーカー、Anheuser-Buschが買い取り、入場無料(ただし駐車料は取られる)の子供向けパークとして管理運営している。農園と名がついてはいるものの、その実質はミニ動物園というところらしい。"吹き抜けのトラムに乗ってバイソンや鹿がいる敷地を周遊"だとか、"ヤギの子供にミルクをあげられます"などという案内文を読んで、動物好きな息子が喜ぶだろうなぁ、と行ってみることにしたのだった。

入園すると、そこにあるのはお土産屋さんとトラム乗り場。内部には、トラムに乗らなければ行けないようになっている。園内には、いかにもテーマパークで流れていそうなカントリー調BGMが流れており、ベンチ状の椅子がずらりと並ぶ窓・ドア無しのトラム(というか3連結のバス)に乗り込み、奥のエリアに向かう。さすがにイースターの午前中だからか、お客さんはほとんどいない。トラムは数分おきに頻繁に出ているけれど、乗っているお客さんは数組いるかいないかというところだ。

のったらのったら林や草原を走っていくトラム。そのうち、鹿やバイソンが群れるエリアに入った。ドアも窓もない私たちの席のすぐ横を、大きな角をつけた牛がのんびり歩いていく。バイソンが寝そべり、奥にはシマウマも見えたりする。子供ならずとも、なかなか楽しい光景だった。
「牛、いたぁ!」
「バイソンもいたぁ!」
「うま!うまだよおかーさん!」
もう、誰が子供だかわからなくなってくる。
草食動物ばかりの、簡易サファリパークを終えると、そこがミニ動物園エリア。ヤギとかカンガルーとか猿とかフェネック狐とかカピバラなんかがいたりする。動物展示の目玉ということか、象も2頭いたりする。
油断すると子ヤギに襲われます

で、私と息子にとっての目玉が、多分"Milk House"。30m×30mほどの広さの柵の中に、私の膝くらいまでの高さしかない子ヤギたちがうじゃーっと100頭近くもいるのだけれど、その柵に入っていって子ヤギにミルクをやることができる。小さなほ乳瓶にヤギ用のミルクが入れられており、それは1杯1ドル。2つもらって柵の中に入っていくと、朝一番で余程飢えているのか、子ヤギがうじゃーっと寄ってきた。人に慣れまくっているヤギたちなので、「ねぇねぇ、ちょうだいよ」とばかりに後足で立ち上がって寄りかかってくる。息子もさすがに余裕がなくなり、ほ乳瓶をだんなに渡し、逃げ腰で子ヤギと対峙していた。私のところにもンメエェェンメエェェェと鳴く子ヤギが後足で立ってすごい勢いでミルクを催促してくる。ジーパンはすぐに足跡でいっぱいになった。

しっかし、子ヤギはたまらなく可愛い。隅っこのほうで要領を得ないひときわ小さなヤギがプルプルしているのを見ると、ついそっちに行ってミルクをやってみたり。真っ白なのを見ると
「あ!ユキちゃんだ!」
「ハイジのユキちゃんだ!」
とストーカーしてみたり。中型犬くらいの大きさしかない子ヤギをなでくりまわせて、かなり幸せな私だった。
アメリカの象徴、ハクトウワシ

で、奥にはアメリカの国鳥、ハクトウワシなんてのもいた。ここまで間近で見るのは、初めてかもしれない。雄と雌なのか、それともたまたまそういう顔立ちなのか、体つきの大きな顔の険しい1羽と、ちょっと小柄な可愛らしい顔の1羽が並んで木に止まっていた。
更には、本当はラクダやラマもいるらしい。ラマの柵の前には餌の自動販売機があり、本来ならラマに手ずから餌をやれるようになっていたようだった……が、残念ながらラクダもラマも柵の中にはいなかった。

そして、最後に中庭で休憩。ビール会社の運営するアトラクションということで、ここではビール類が2杯まで無料で飲めるようになっている。カウンターに行き、「これをちょーだい」と言えば無料で紙コップに注いでくれるのだ。ただし、ソフトドリンクなどは有料。
「ビールだけ飲んでればお得なわけですが」
「やっぱりフライドポテトとか恋しくなっちゃうんだよねぇ〜」
「しかも小腹がすいてきたし」
と、ビール会社の思惑にまんまと乗るようにジュースとホットドッグとポテトのセットなど買っている私たち。

朝はちょっとどんよりした曇り空で雲行きが心配だったのだけど、ここにきて青空が見え始めた。肌寒かった気温も、陽が差すとすぐに暖かくなってくる。
「青空の下で、ビール!」
「昼間っからビール!」
「しかも無料ビール!」 「さいこうですね〜」
と、しばらくダラダラと大人の悦びを堪能してみた。息子は
「ぞうさんぞうさん!しまうましまうま!」
と想定以上に喜んでいたようだし、ちっちゃなテーマパークだけど来て良かったと思う。

帰りもまた、トラムに乗って今度は数分で入口まで帰還。
時間は午前11時。フローズンカスタード屋さんがオープンする時間だ。

St.Louis 「Grant's Farm」にて
Parking Fee
$5.00

逆さにしても零れないのよ〜「Ted Drewes」

朝御飯を食べたパン屋さんのそばに、フローズンカスタード屋さんTed Drewesはあった。行きの道中にその看板を発見しておいたので、農園からの道をただ戻っていくだけで無事にお店に到着。オープンしているかどうかが一番の心配の種だったけれど、お店には続々とお客さんが詰めかけていた。薄紫色のワンピースに白い小花の飾りを散らした妖精のような服を着た可愛い女の子連れの一家(これまたいかにも教会帰り、みたいな)も一家揃ってフローズンカスタードを買っている。私たちも、メニュー看板を眺めて何を注文するか決めたあと、いざいざとカウンターに向かった。

ただただ戸惑ってしまいそうな豊富なメニューだ。
"FLAVORINGS"として、チョコレートやホットファッジ、バナナやブルーベリー、パイナップルにピスタチオにバタースコッチにプラリネ、オレオ……とやたらめったらと種類がある。更に"CONCRETE"(コンクリート!?)、"MALT&SHAKE"、"SUNDAE"、"CONE"などと続き、更にトッピング類の紹介がある。Dutchman、Hawaiian、Cardinal Sin、Strawberry Shortcakeなどというスペシャルものや、ホイップクリーム乗せ、ココナッツ乗せ、ピスタチオ乗せ、などなど。

どうすればいいんだかなー、と思いつつ、私は基本と思われる"Concrete"にした。だんなは、New!のマークがついているカラメル味を。
どうやら、すごく固いコンクリートのようなアイスデザートであるらしい。手元のお店のカードには、
「Two famous attractions in St.Louis...one is made of STEEL & one is made of CONCRETE」
(セントルイスには2つの名物がある。1つはスチール製で、1つはコンクリート製だ)
と書かれ、Gateway Archの写真と、おっさんがカップを逆さに持っている写真が載っている。カップを逆さにしても零れないほどの強固なアイス、というわけらしい。

サイズは3種類。レギュラーは$2.50、スモールが$1.60、ラージは$3.60。フレーバーを1つ入れると60セント追加だ。
「レギュラーサイズは、これね」
とカウンターのおねぇちゃんが示してくれたカップは、「それは我が国ではMサイズドリンク用のカップということになっています」というシロモノだった。これでレギュラーですか……と周囲を見ると、背後でおっちゃんが「それは我が国ではLサイズ(以下略)」のサイズのアイスをもりもり喰っている。スモールが、やっと理解できる大きさのカップだった。ま、息子も一緒に食べるしね、とプレーンはレギュラーで、カラメルはスモールで。

こちらがプレーン こちらがキャラメル

カップにたっぷりと、とぐろを巻くように入ったアイスがやってきた。アイスクリームというよりは、ソフトクリームに近い。大きなカップには、スプーンと共にストローもぶっすと刺さっている。
味と舌触りは、こってり濃厚めなソフトクリームという感じ。ねっとり粘っこく、とても滑らかなソフトクリームだ。各種フレーバーは、基本のものに追加材料を加え、奥にミキサーで混ぜて作られる。うっすらとマーブル状になって混ざったキャラメル味も、ふわんと香ばしい風味が漂ってくる美味しいものだった。甘さは少々強めではあるけれど、甘すぎるというほどでもない。味の割に食感が軽いのでいくらでも食べられそうだ。
「うまー!」
「フローズンカスタード、うまー!」
と、私たちは大騒ぎ。普通のもいいけど、フレーバーものもいいよねぇ、と交換しながら駐車場に止めた車の中でがつがつ食べた。私たちの目の前を、ひらんひらんの服を着た女の子がレギュラーサイズのカップを持って通り過ぎていく。その後ろからは彼女のお母さんがラージサイズのカップを抱えてついてくる。

「ラージサイズってさ、やっぱり"飲む"のかな?」
「ストロー刺さってるしねぇ」
「買ったままの状態じゃとても飲めないので、溶けたら飲め!ということだね」
「飲んでも旨いぞ、ということか」
などと周囲を観察しながら話し合っている間に、私たちの分は綺麗になくなってしまった。
念願のフローズンカスタードは、冷たくて美味しくて大満足。まだ昼時ということで、ちょっとばかり寄り道しながらの帰路につく私たちだった。

St.Louis 「Ted Drewes」にて
Concrete (R)
Caramel (S)
$2.50
$2.20

ポパイの生まれた町〜「Chester」

小さな小さなアンティークショップ兼ミュージアム

行きは、イリノイ州側、東側からセントルイス入りした私たちだった。そのまんま同じ道を通っていくのもねぇ……ということで、帰りはミズーリ州を南下する高速道路に乗って行くことに。I-55は、ミシシッピ川に沿うように南下してメンフィスに向かう道だ。高速道路だけを使って我が町まで帰ると遠回りになりすぎてしまうので、"下の道"もちょこちょこ通っていくことになった。

途中、I-55を降りて十数マイル進み、ミシシッピ川を越えたイリノイ州側の町でChesterというところがある。
ここはポパイの作者であるElzie Crisler Segarの生まれ故郷なのだそうだ。特に何があるというわけではないけれど、ミシシッピ川を渡った町の入口に小さな記念公園があり、ポパイの銅像が立っているということだった。あと、見逃せないのは町の中の小さな博物館兼ショップで"ポパイのイラスト入りほうれん草の缶詰"が売られているらしい、ということ。
「ポパイ印のほうれん草缶、イカスー!」
「お土産好適品!」
と、これをちょっと楽しみにしながらChesterに立ち寄ってみた。
ああ、ポパイだねぇ……

高速道路を降りると、まさに"田舎の一本道"といった道路が延びている。ガソリンスタンドの他は民家しかないような道路をえんえんと十数分。だだっぴろい畑を抜けると、ミシシッピ川だった。かなりの川幅がある向こうに川岸まで、細い橋がかかっている。ミシシッピ川にかかる橋はそれほど多くはないのに、たったの片側1車線しかない橋だった。橋を越えると、右手に小さな小さな公園がある。ワゴン車に乗ってやってきていた家族連れがミシシッピ川を見下ろしながら食事していたところだった。
小さな小さな公園の中央には、ポパイの銅像。見上げるほどの高さがある、思ったよりも大きな銅像が立っていた。おおー、ポパイだー。

そして、博物館があるという町の中にも行ってみる。州道を見失わないようにうねうねと曲がる道を進んでいくと、右手に小さなショップが見えた。オリーブのイラスト看板が立っていて、ぶらさがっている小さな看板はほうれん草の缶詰マーク。「これだぁ!」と行ってみると、残念ながら日曜休業ということだった。イースターサンデーということで、多くは期待していなかったものの、そもそも日曜日ということで休みだったようだ。
「ここに缶詰が売られているのねー」
「博物館は、まぁいいとして、缶詰が買いたかったのよねー」
と名残惜しげにガラスにへばりついて中を覗く私たちだった(不審者……)。

まぁしょうがない、ダメもとで来た寄り道だったんだし、と再びミシシッピ川を越えて高速道路へ。ミズーリ州の南端あたりで高速道路を降り、下の道をずんどこ東に進んで我が町へ至る高速道路、I-24を目指す。
途中の数十マイルは、ほんっとーに何もなかった。ぽつりぽつりと民家があり、イースターサンデーを祝うのかところどころ車が集まりパーティーをしている様子がうかがえる。本当にこの道が高速道路に続くのかしら……と不安になると共に、すっかり空腹になっている私たち。

そういえば、昨日の夜に食べたスパゲッティの残りが鞄に入っていたんだった!と気がつき、高速道路に乗り込む直前のガススタンドで飲み物とハンバーガー、アメリカンドッグなどを少量買い込み、ショップ内の電子レンジでスパゲッティを温めさせてもらい、ガススタンド裏の駐車場でガツガツ食べる。12時間以上おいているというのに、麺はさすがにすっかりグダグダになっているというのに、それでも美味しいスパゲティだった。やっぱりここの店のミートソースは絶品だ。

とてもまともな味のものを食べることができた喜びに身を浸しつつ、残りは140マイル。ケンタッキー州を抜け、テネシー州に入り、無事に我が家に到着したのは午後6時半を少し過ぎたところだった。
ミシシッピ川を何度も渡り、ついでにオハイオ川も渡り、大きな川を堪能しまくった帰り道だった。