1月10日(金) 11人がニューオーリンズに大移動

ロケット見ながらルイジアナへ

高速道路沿いに突如現れるロケット…… あれはもう5ヶ月も前のことだった。北を目指したはずだったのに、何をどう間違えたのか南に行ってしまった私たちは、何の予備知識もなくニューオーリンズ旅行をすることになったのだった。真夏の生牡蠣は美味しかった。ケイジャン料理も美味しかった。ベニエなんて、もう涙がちょちょぎれるほど美味しかった。
「だから今度は冬に、ちゃんと下調べをして、最初からニューオーリンズを目指して行こう!」
と、あれからずっと我が家は"ニューオーリンズ好き好き病"にかかっていたのだった。我が町、テネシー州Nashvilleからは500マイルちょっと。その気になれば半日かければ車で行ける距離だった。

「そういうわけだから、いっそのこと皆で一緒に行ってみない?」
「私たちと一緒に行ったら、旨いものにありつけるよ(多分)」
と留学生仲間に声をかけてみたのが12月に入ったばかりの頃。何人かは話に乗ってくれるだろうとは思っていたけれど、ほぼ全員がニューオーリンズに行くことになったのだった。我が家はIさんを乗せて、車で。他の面々も車で、あるいは飛行機で各自ニューオーリンズに向かうことになった。出発時間はバラバラだけれど、2日目の夜と3日目の朝は全員揃って一緒に御飯を食べられるだろうということになっている。予約が必要な店にもしっかり連絡を済ませ、ホテルも全員同じところをそれぞれ予約。
「なんだか合宿みたいでわくわくするねー」
とHさんはえらく楽しそうだった。そういう私もすごく楽しみ。

同じ住宅内に住むIさんを助手席に乗せ、私たちが家を出たのは1月10日の午前7時半過ぎだった。行きはアラバマまわり。I-65をガーッと南下してアラバマ州に入り、Birminghamという町からI-59に入りミシシッピ州に。そこまで行けばルイジアナ州はもうすぐだ。

アラバマ州のレストエリアには、なぜかロケットがずどーんとそびえ立っていた。
「アラバマ州みたいな地味な州(←コラコラ)にNASAの施設でもあったっけ……?」
と思ってしまったのだけど、アラバマ州のHuntsville(ハンツビル)という町にはNASAの機関、「Marshall Space Flight Center」があり、米国の宇宙開発プログラムはここで生まれたそうなのである。観光案内所には子供向けスペースキャンプ施設の案内だとか"宇宙を感じましょう!"的レジャー施設の案内パンフレットがいくつもあった。

道中休憩を挟みつつ、無事に午後4時半、ホテルにチェックイン。
宿泊ホテルは「Hilton New Orleans Riverside」。できるだけ安く、繁華街に近く、治安も悪くなく、衛生面でも問題なさそうなところ……と選んだ結果、ここにした。hotels.comで予約して、1泊1部屋98ドル。ニューオーリンズは冬(特にマルディ・グラシーズン)が旬らしく、100ドルを切るホテルは繁華街近くではほとんどなかった。

飛行機で午前中に到着していたHさん一家ともタイミング良くロビーで会え、別働隊のWさんMさんコンビも1時間後に到着。Tさん夫妻は今日は遅めの出発になるということで、合流は明日になる予定だ。
部屋に入って一休みした後、だんなはカジノに出かけていき、1時間ほど後に
「100ドル勝ちました〜!」
と嬉しそうに帰ってきた。
私たちが滞在するホテルのすぐ向かい側には巨大カジノ「Harrah's」がある。ラスベガスでケソケソに負けてきた私たちだけど、ニューオーリンズでその屈辱は晴らせるだろうか。

そろそろ夜。いざいざと連れだって夕食の場に向かう。本当に合宿みたいだなぁ。

オイスターもガンボも〜「Red Fish Grill」

「まずは生牡蠣!ついでにケイジャン料理!」
と、9人連れ立って本日向かってみたのは、Bourbon St.(バーボンストリート、町一番の繁華街)沿いにある「Red Fish Grill」。今回が初めてのお店だけど、シーフード料理全般に定評があるらしく、生牡蠣もあり、ケイジャン料理のメニューもあるということで試しに予約してみたのだった。

町に来て観光パンフレットなどをめくると、どこを見ても必ず載っているようなメジャーなお店だった。7時半の予約で、店はもうバーカウンターからも人が溢れそうなほどの大混雑。フロアの中央に長テーブルが準備されていて、そこが私たちの場所だった。
「Abitaっていうビールが美味しいよ〜」
「じゃあ、それ!」
「全員それー!」
「あと、生牡蠣ダメな人って……いないよね?」
「いませーん」
「全員食べまーす」
「じゃ、まず生牡蠣を1人半ダースずつ、かな。あとは適当に」
と、わいのわいのやりながら、まずはビールと生牡蠣。

あとは各自スープ類を注文し、メインディッシュを取ろうということになった。私はだんなとごにょごにょ相談し、
「とにかく今回は牡蠣を食べに来たんだから……」
と、生牡蠣の次はスープを1皿ずつ、更に牡蠣料理の"ロックフェラー"と"プロヴァンカル"を1皿ずつ、そしてその代わりにメインディッシュは軽めにシュリンプクレオール1皿をだんなと半分こしよう、ということにしてみた。お店の人は
「スープと牡蠣はどっちを先に持ってくる?……OK、スープだな。で、メインディッシュは2人で分けるんだな。2人分の皿に分けて持ってこようか?……OKOK」
と快く応対してくれた。1皿全部は食べられないから、と子供たち用に海老入りのカルボナーラパスタを1皿注文したところ、ちゃんと子供2人の皿に最初から取り分けてきてくれたりと、カジュアルな店の雰囲気に反してサービスは嬉しくなるほど良いお店だ。

夏も美味しかった生牡蠣だけれど、冬のそれは比較にならないほど美味しかった。
やってきた3.5ダースの生牡蠣は、大きさはかなりまちまち。一番長さのある部分が10cm足らずのものもあれば、15cm以上のものもある。殻の上に乗ったみずみずしい牡蠣はどれもプリプリと丸っこく、レモンを絞っては啜り、カクテルソースを少量なすりつけては啜る。ほんのりと甘い牡蠣は外見どおり口の中でプリンプリンとしてくれて、期待以上の味だった。私の向かいの席で牡蠣に取り組んでいたHさんは
「こんなに生牡蠣を一気に食べるの、初めて……」
と、心なしか目が潤んでいる。

濃厚ガンボ ちょっと個性的なオイスターロックフェラー オイスタープロヴァンカル。うま〜 ボリュームたっぷりシュリンプクレオール
店がものすっごく暗くて、このくらいの画像がやっと……

続いて、私のスープはアリゲーター(←ワニ……)のソーセージ入りのガンボスープ。だんなはローストガーリックスープ。
海老や鶏肉も入った焦げ茶色のスープは、舌の根に溜まるようなスパイスの味がじんわりとする。辛くはなく、"濃厚〜"という感じ。ご飯がざらざらっと入っていて、日本人としては「これはスープじゃなくて……雑炊?」と感じてしまう。スパイスが効いているのに、どこか日本を感じさせる懐かしい味でもある。
"オニオングラタンスープの玉ねぎをにんにくに変えて炒めてみました"といった感じの、だんなのローストガーリックスープも何だかすごい。コンソメっぽい褐色の透明スープは、鼻を30cmほど近くに近づけるだけで目がシパシパしてしまいそうになるほどの強烈なニンニク臭が漂ってくる。にんにく好きにはたまらない、これ以上なくにんにくたっぷりのスープだった。ガンボもガーリックも、どちらも旨い。だんなと皿を交換しつつ、ツルツルと平らげる。

そして牡蠣料理が2皿。
「Oyster Rockfellar」は、ニューオーリンズの老舗レストラン「Antoine's」発祥の有名牡蠣料理。生牡蠣の上に細かく刻んだほうれん草やチーズを乗せ(ほうれん草をクリームで和えているお店も多い)、オーブン焼きにしたもの。ところがこのお店のものはちょっと(いや、かなり)独特だった。牡蠣はカリカリにフライになっている。そしてほうれん草は、牡蠣の上ではなく、下に敷かれていた。オイスターロックフェラーというより、"揚げ牡蠣のほうれん草ソース"という別の料理のような感じ。Hさん夫妻の口には今ひとつ合わなかったようで、
「なんか……違う……」
「ロックフェラーじゃない……ていうか、イマイチ……」
と夫婦揃って眉毛の端が下に向かって垂れ下がっていた。牡蠣の衣が、何だかほんのりと甘い。しかもほうれん草も和えられたチーズクリームに甘さがあって、なんだか全体的に甘いロックフェラーになっていた。これはこれで悪くないけれど、でもロックフェラーを期待すると確かに違う。シェフの妙な熱意が斜めに噴出してしまったような、ちょっと奇妙な料理だった。

ひるがえって、こちらはとっても美味しかった「Oyster Provencal」。これはこのお店のオリジナル料理であるらしい(料理名で検索しても、このお店のものしか出てこなかったので)。グラタン皿には牡蠣が茄子やバジル、にんにくなどと共に和えられており、ベーコンやチーズを散らしてオーブン焼きにしたような、そんな料理だ。牡蠣は適度にプリプリ感が残った火の通り具合で、バジルたっぷりのイタリア風の味。だんなと皿を奪い合うようにしながらロックフェラーとプロヴァンカルを半分こして食べた。
メインディッシュは、「Shrimp Creole」。海老のトマトソース煮込みをご飯の上にぶっかけたような、クレオール料理の有名なものの1つだ。こんもりと盛られたご飯の周囲にはとろんとした赤いソース、そしてこれが半人前とは思えないほどの大量の海老が周囲にごろりごろりと飾られている。ニューオーリンズらしい、スパイスが効きまくったご飯料理だけれど、やっぱりどこか懐かしい味。牡蠣以外の料理も充分美味しくて、とても満足した私たちだった。
食後はエスプレッソ飲む人あり、食後酒を楽しむ人あり、子供たちはアイスクリームに夢中だ。

New Orleans 「Red Fish Grill」にて
Dozen Oysters
Oyster Provencal
Oyster Rockfellar
Gumbo Soup
Soup Du Jour
Shrimp Creole
Shrimp Carbonara
Beer (Abita Amber Draft)
Espresso
Vanilla Ice Cream
……を、家族3人で
$8.00
$6.00
$7.00
$5.00
$5.00
$18.95
$18.50
4×$4.00
2×$2.75
$3.00
 

大人7人、子供2人で飲み食いして合計280ドル弱。
食後、男性陣は夜の町に消え、私とHさんは「子供がいるからどこにも行けないじゃない、ねぇ〜」とブーブー言いつつ私の部屋でしばらくビール飲みながらくっちゃべっていた初日の夜。

夜11時を回って帰ってきただんなは、
「ちょっとだけ負けました〜50ドルばかり……」
と少しばかり肩を落としていた。でも収支はまだプラス50ドル。まだまだ。