食欲大魔人特別寄稿2 : さぬきうどん紀行

by せりあだんな

話は「恐るべきさぬきうどん」を知ったところから始めなければなるまい。

タウン情報かがわという、高松のタウン誌に連載されていた「恐るべきさぬきうどん」は、その名の通り恐るべき連載であった。製麺所併設の、地元の人に密着した穴場うどん店(書ではこれを「生活うどん」と称していたが)を見つけだして探訪する、いわば「針の穴場探訪記」なのである。
思わず全巻を四国から取り寄せ、読みふけり、「なんとかー!」と叫ぶという(←叫ばんでえーっちゅーねん)、第一次さぬきうどんブームが我が家に訪れたのであった。ていうか俺、加ト吉冷凍うどん&ヒガシマルのうどんだし、買い込みすぎ。
うどん作って食う度に、「香川にさぬきうどん食いに行きたいねえ」という憧憬は深まるばかりだった 。

そして月日は流れ……

ファイナルトリガーは、TVCMだった。
TVをぼんやりみていた俺は、何気なくこう言ってしまったのだ。
「全日空、超割だってよ。全行程1万円均一かあ。……さぬきうどん、食いに行けそうだね。」
その瞬間、せりあの目がきらりと輝いたことを見逃した俺が馬鹿だった。

そんなこんなで、11月1ヶ月間の「うどん断ち」期間を経て、やってきました香川・高松。
レンタカーも借り(運転は久しぶりなのでちょっと不安)、香川県ロードマップも買い、「恐るべきさぬきうどん」全体マップと本文の対照表もぬかりなく準備し(こういうことをするのはたいがいせりあだ)、超割で買ったチケットで一路高松空港へ。そして着くなりいきなりうどん屋を目指す。 クイーンズイースト・Yさんのアドバイス通り、やはり午前中になんとか製麺所関係を攻めねば。

というわけで、以下3日間で回ったうどん店の記録である。今回は私的評価をつけてみました。(★3つが最高点、☆は★1/2個分です。)
※あくまで俺の私的評価なんで、反論・苦情はいっさい受け付けません。味覚なんて人それぞれだしね。

12月1日 : 初日

【山越(綾上町) かけ小+かき揚げ 180円 (★★★)】

まずは評判の山越へ。いかにも製麺所といった風情の中、おばちゃんらが3人で麺を必死でゆでている。おっちゃんはあげもんの前で会計の担当だ。店構えは、なんか評判になっちゃったんでがんばって食う場所拡張しまくったんですといった感じ。どうみてもふつうの家の軒先、という部分までうどん食う場所になっとる。山越さん、苦労してはるのね……
順番がきたところで、とりあえずかけ大を注文。っておーい!おばちゃん、これ小やがな! しかもせりあの釜玉が大になっとるー! ……ま、いいか。というわけで気を取り直してかき揚げをのっけて食う。

いりこの風味たっぷりのだしは、のどごしの良い麺と非常にマッチしている。これにかき揚げの油が入ると、これがもう、えもいわれぬこくを生む。たまらんす、これ。うーむ、評判になるだけのことはあるのう。これならつるつると何玉でもいけそうだ。
ちろっとつけだしをかけた釜玉も横から奪って食ってみたけど、これもすこぶるうまい。こっちの方が麺の味が良くわかる。うちで加ト吉の冷凍うどん使って釜玉作ったときは、こんなに黄身がきちんと絡まなかったがなあ。やっぱ生麺のゆでたては違うのかのう。
というわけで、いきなり最高点。あ、これ以上うまいのでてきたらどうしよう……

【池内(綾上町) 冷たいん1玉 100円 (★★)】

次、すぐ近くということなので、「鯉がうどん食いよる」で有名な池内へ。
県道沿い、もろ民家といった風情の店に、「うどん池内」と書いたタタミ1畳弱くらいの看板が立てかけてあるだけ。これ、場所知っててもたどり着けへんぞ〜!
気を取り直して引き戸をがらがらとあけて入っていこうとすると、新聞読みながらうどん食いよるおっちゃん3人組に「食べるんやったら家の間やで〜」と指摘される。確かに、建物と建物の隙間に人一人がやっと通れるくらいの隙間があって、そこから奥に入っていくと、確かにうどんゆでてるおばちゃんらのすぐ横にでられた。このシチュエーションはかなり美味しい。期待も高まるというものだ。
で、早速おばちゃんに「熱いんと冷たいんと1つづつね」と注文。ラーメンのどんぶりに、あらかじめだし(醤油?)がちょこっとだけ入っているうどんを受け取る。
……うーん、12時過ぎではさすがにきた時間が悪かったかな。ゆでおきのうどんだったので、ややコシがなくなっている。これ、作りたてだったらもっとうまかったろうなあ……それに俺、だしのたっぷりかかったうどんの方が好きなんだよね。醤油うどん一本も悪くないんだけど、選べると良かったなあ。
というわけで、こちらのミスも加味して★2つ。
そうそう、鯉はやっぱりまるまる太ってました。さすがにうどん投げる勇気はありませなんだが。

【うどん市場(高松市) うどん小とネギトロ丼ミニのセット+かき揚げ 450円(★★☆)】

いったんホテルに移動し、チェックインタイムまでのうどん屋散策。なんでもサイドメニューが異様にたくさんある、という話のうどん市場へ。
高松駅近くのアーケード商店街の中にある、間口の狭い店に入ってみると、あるわあるわお総菜から天ぷらからいなりからちらし寿司からカレーにネギトロ丼まで。しかも安い〜!まずうどんのサイズと、カレーorネギトロ丼の希望があればそれも注文し、お総菜関係を適当に取って、最後にお会計。かっこよく言えばカフェテリア方式ですね。店構えは立ち食いうどんのカウンターみたいだけど。
とはいえ、不味かったら仕方ないので、慎重にうどんとネギトロ丼ミニのセットを注文。かき揚げもぬかりなくゲット。どこが慎重なのかはつっこんではいけない。ほら、やはり評価のためにはできるだけ手を広げた方が……って、すみません、ぼくネギトロ丼大好物なんです。

食ってみるとこれが、うーまーひー! 「基本」の域は出ていないものの、だしも麺も十分に合格圏内である。ああ、これ、職場のそばにあったら確実に通うなあ。高校生の時学校のそばにあったら、吉野家より通ってたかもしれー。いろんなものが少しずつ食える安くてうまい店、理想ですねー。
そりゃうどんの味で言えば、山越や宮武(後述)の方が遙かにうまいんだけど、この品揃えと値段にノックアウトされました。こういう店、すっげー好き。
というわけで、★2つ半です。半分の減点は、一つしかない小上がりでバカそうな高校生4人組がふすま締めて何も食わんとヤニ入れながらダベってたのを店のもんが放置していた分、かな。

【讃岐うどん・瀬戸(高松市) かけ小+かき揚げ+おでん 450円 (☆)】

いったんホテルに戻って昼寝した後、「さあ夕飯だ」と町に繰り出す。琴電高松築港駅付近のセルフ、「瀬戸」へ入る。かけ小とかきあげ、おでん(すじと大根)をもらい、席へ。
しかし、このうどんが見事なゾンビだった。おもわず松田優作顔になって「なんぢゃこりゃああああ!」と叫んでしまいたくなるような、コシの全くないうどん。おでんも煮込みが足りないのか、味がいまいち染みてないし。しくしく。
まあ、駅前の安うどんに期待する方がバカだったかな……というわけで、とりあえず★半分だけつけておきます。別に行かなくていいよ、ここは。

【かな泉(高松市) ぶっかけおろし 500円 (★★☆)】

まずいうどん食ったから口直しだ、というわけで琴電に乗って瓦町駅へ。ここのコトデンそごうに「かな泉」が入っているのだ。入った時間が遅かったため、「天ぷらはもできませんよ〜」と言われたものの、こんだけ食った後だし丁度いいわい、と思い入店。さすがにこれだけうどんが続くとさっぱり食いたいな、と思って「ぶっかけおろし」を注文。

ほどなくして出てきたうどんは、コシのしっかりとした、太めのうどんであった。どんぶりに割と多めの1玉が鎮座ましましており、横にはゴルフボール1個分くらいの大根おろしと、少量のおろし生姜が添えられ、小さい徳利に入っただしがついてきた。
さっそ全部をぶちこんで混ぜ混ぜ、いっただっきまーす……おお、これもつるつるといけるのう。デパートの中に入っているくせに、しかももう売り場は閉まっていてレストラン街しか開いていないくせに、そのレストラン街は上の方にあるから人気が異常に少ないくせに、なんかヒジョーにまともなうどんを食わせてもらった気分。これは評価できる。
せりあの頼んだざるうどんもうまい。せりあ曰く「つけだしはもっと甘い方が好み」だそうだけど、俺はこのきりりと締まった味のつけだし、すごく好みだなあ。

というわけで、★2つ半。うどんそのものは同点のうどん市場よりはるかに美味しいけど、コストパフォーマンスを加味して同点にしてみました。でも、「どっちかにしか行けない、どっちに行く?」と聞かれたら、俺は十中十うどん市場に行くでしょうけど。(そんなにチープ系が好きかね……)

<本日の小計:うどん6玉、かき揚げ2枚、おでん2品、ネギトロ丼ミニ1杯>

12月2日 : 中日

【さか枝(高松市) 熱いかけ中+かき揚げ 260円 (★☆)】

香川くんだりまできた理由の一つ、「ぜひ自分で湯がいてみたい!」という願望を満足させるため、セルフの店「さか枝」へ。丁度よくここは朝から開いているので、朝飯がわりにゴーゴー!

古い木造民家のような、ガラス張りの引き戸をがらがらとあけると、大テーブルが3つ、川の時に並んでおり、その周りにはイスがてきとーに並べてある。そして一番奥には湯がきスポットが。おお、これが世に言うセルフうどん。なに、知っているのか雷電。
ともあれ、おばちゃんに「中ね〜」と注文、ちゃっちゃと麺を湯がいて、かき揚げもぬかりなくゲットし、だしをたっぷりかけたら早速いただきます。って俺、これから一日食い歩くんとちゃうんかい!いきなり2玉食ってどうするよ……
薬味は、ねぎと生姜、揚げ玉がいれ放題になっている。セルフ系や製麺所系は、薬味入れ放題のところが多いのでネギ好きの俺にはちとうれしい。しかも青ネギ。我が人生に一片の悔いなし!

肝心の味は……なんかうどんが半殺しにされとる、てな感じ。ゾンビまではいかないけど、結構コシの甘い、やわやわな麺になっとる。いりこの香りのするだしはそれなりにうまいので、ふつーの観光客だったら「やわらかくておいしいですねー」になるやもしれん。でも俺的には評価できないなー。
というわけで、★1つ半と相成りました。同じ「ちょっと死にかかってるかも」でも、とても池内と同点は付けられんなあ。

【宮武(綾南町) あつあつの小+げそ天 340円 (★★★)】

本格的食べ歩きの今日、まず一番遠いところに行こう、と、車を飛ばして宮武へ。宮武ファミリーと(ファンから勝手に)称される一家の総本山だけに、期待は高まるばかり。Yさん@QEからも「天ぷらはとりすぎちゃだめよ、でも宮武のげそ天は本当にうまい!」との一言をいただいているだけに、なおのことである。
はたして宮武は人気があるらしく、路駐の車が多々止まっている100mほど手前に、新しくできたらしい駐車場を発見して無事到着することができた。何しろうどん屋を発見する上手なやり方の一つは、路駐の多いところの周りをよく探すこと、なのである。……この技が何度役に立ったことか。

で、あつあつとひやひやを二人で一つずつ注文。しっかりげそ天を取ることも忘れない。って、せりあさん、げそ天に加えて、なんですか、その芋天は。これから何件も食べ歩き……(以下略)
肝心の味だが、すこぶるうまい。コシがばっちり、「恐さぬ」の言葉を借りるなら、エッジのたった歯ごたえのある麺、である。だしもいりこの風味がばっちり効いていて、麺とヒジョーにマッチしている。げそ天もでかくて、しかし大味ではなくて、すこぶるうまい。マジでもう一玉食おうかと思った。ひやひやの方も、これがまたコシが際だって、いりこの香りも強く感じられて、そりゃあもううまいのうまくないのって。い、うまいんですけど。(←こんなところにも恐さぬの影響が……)
というわけで、文句なしの満点。山越とどっちがうまいか? それは言えんなあ。

【山下(綾南町) 冷やしうどん小+おでん2品 420円 (★★)】

幸せな気分のまま、一番近くにある「山下」へ。なんでも釜揚げの元祖と謳っている店らしい。ぶいぶい飛ばして到着してみると、街道沿いによくあるうどん屋、と言った風情の怪しい店構え。いやいや、外見にだまされてはいけない。気を取り直して入店。
とりあえず釜揚げと冷やしの小を注文。ついでにおでん鍋からすじと卵をゲット。このくらいなら軽く食えるでしょう♪

……ところが、である。

出てきたうどん、小を頼んだはずなのに、どうみても2玉くらいずつ入ってる。こここここ、これはこの後の食べ歩きにとって大きな障害かもしれー。1升くらい入りそうな徳利からそば猪口(いや、うどん猪口か、この場合)にだしを注ぎ込み、さて必死で取り組むべし……と思ったら、あれ? 結構するする入るぞお。麺はひたすら長いけど、喉越しの良さは山越の次くらいかも。コシもしっかりしていて、一般店でありながら250円という値段も評価できる。子供連れなのをみて、小上がりにどうぞ、とすぐ案内してくれたおばちゃんらの接客も好感が持てるし。

というわけで、★2つ。かなりうまいんだけど、「これはっ!」というインパクトがないので2つ止まり、っつーことです。

【彦江(坂出町) かけ小+ちくわ天 230円 (★★)】

続いて坂出町の彦江へ。これがまた、車の接近を阻むような路地の中にあり、しかも看板もなにも出ていないという恐怖の店で。とりあえず川沿いの民家の前に車を止めて(民家の方ごめんなさい)、路地の中をうろうろすること約10分、問題の彦江を発見する。ていうか、プレハブみたいな四角い建物で、窓からおばちゃんがうどん打ってるのが見えなかったら絶対気づかなかったぞ、これ。

入ってみると、中身はもろに製麺所。不安に思いながらおばちゃんに「食べられますか〜?」と聞いてみたところ、「はいはい、どうぞ〜」と非常に親切な答え。「どんぶりもってって、そこで何玉入れてもらうか言ってね〜。熱いのが良かったらそこのうどんゆでてるところで湯がいて。天ぷらもこっちにありますからね。だしはここ、ちょっと出にくいですけどね〜」と、手取り足取り。でもちっとも嫌みじゃない。
「あの……お代は?」と聞いてみると、「後払いでいいですよ〜」とのこと。なるほど、自己申告制後払いか、と納得して、隣接したカウンターのみの部屋へ行き(これも「食べるところはあっちね〜」と親切に教えてくれた)、食べる。

ここのうどんも「これはっ!」というインパクトはないものの、だしも麺も非常に優しい味である。おかんの手打ちうどん、という風情(←って、そのまんまやがな)。朝からうどん食い続けだけど、こんだけ優しい味付けだとするする入っていくなあ。衣に青ノリのまぶされたちくわ天も、香ばしくてうまし。

あ、そうそう、評価でしたね。★2つです。山下と同じ理由です。でも、あえて順位をつけるとしたら、俺的には山下よりは上だなあ。

【休憩:シュークリーム(うどんではないので評価なし)】

ここらでトイレ休憩も兼ねて、坂出駅前のサティへ。息子おむつの交換も無事できたし、塩分とりまくりなので少々水分を補給しましょう、ということでお茶類を購入。
さて帰ろうか、と出口に向かったとき、そこに「手作りシュークリーム」の文字が。おお、皮が山になっとる。注文するとクリームをその場で詰めてくれるのか〜。ふーん。

……せりあさん、その物欲しげな目はなんですか? ちょっとシャレで「買っていく?」と聞いてみるか。

……せりあさん、今、あなたの目、きらりと光りませんでしたか? え?3つとおっしゃいましたか? あなたが1つ食べることは全くかまいませんが、だんなと息子の分も買うんですか? あ、そうですか、3つ買いますか……。

というわけで、うどん食いまくりの旅の途中、なぜかスーパーの駐車場の中でシュークリーム食ってる親子3人であった。……サクサクでうまかったんですけど、ね。

【がもう(坂出市) かけ1玉+ちくわ天 170円 (★★☆)】

続いて「ダシはイデやぞ」のがもうへ。しかし、ここへのアプローチが強烈だった。ヒジョーに狭い道をずんずん行くと、下手すると田んぼに転がり落ちそうなせっまいカーブが待っている。やっと抜けたと思ったら、車2台がやっとすれ違える道にタクシーが止まってるし。かなり久しぶりの運転になる俺には相当きつい。が、そこをなんとか乗り切ると、視界かパッと開けるとともに、田舎の農家の倉庫のような建物に「うどん がもう」の看板が。目の前の駐車場には山のような車が止まっていて、うどん屋の入り口には客がよーけ並んではる。

早速その列に加わり、順番を待つ。目の前には幅50cmくらいの側溝があり、がもうの店内からうどんのゆで汁がちょろちょろと排水されてきている。「おお、これが件のイデか」と妙なところに感心する俺たちであった。
ほどなくして順番がやってきた。頑固で無口そうな、「こんなに評判になっちゃって困ってるんだよね俺」とでも言いたげな顔をした大将に「1玉ね」と注文、奥でちくわ天もゲットして、大混雑の店内から脱出して、さていただきます。なにしろ店内は8席ほどしかなく、ほとんどの客が外で食ってるのだ。

それにしてもがもうの周りは一面の田んぼで、紅葉の映える周りの山々がとてもきれいに見える。こんな絶景の、いわば大自然の中で食ううどんは2割増はうまく感じる。コシもしっかりしてるし、ダシもいりこ風味のさっぱりしたダシ。もう朝から相当食ってるはずだけど、美味しくいただけるなあ。ずるずる。
……ところでせりあさん、また芋天召し上がってらっさるのですか? あとで堪えますよ〜。あ、そうですか、好きなんだから仕方ないんですか。そうですか。それは是非もありませんねえ。
……あと、息子さん、父の天ぷらの衣だけかじらないでいただけますか?

なお、あっと言う間に1杯を平らげたら、横でまだ半分くらいしか食ってなかったせりあが目を丸くしていたことはまあ内緒にしておいてください。

てなわけでがもう、★2つ半です。満点をつけるにはややインパクトが足りませんが、相当美味しいうどんであることは間違いないっす。なお、運転に自信のない方は、お願いですからタクシーをご利用ください。いやもう、ホントに。(帰りに駐車場の入り口で、大阪ナンバーのド下手な姫ドラにえらい目に遭わされましてん……)

【田村(綾南町) かけ小 100円 (★★☆+)】

引き続き本日6軒目、田村へ。ぶいぶいゴーゴー♪
しかし、ここでせりあ弱音を吐く。
「1玉はとても食えない……君のから一口くらいもらえばいいや……」
と言い出すのだ。はたして芋天を2つも食ったせいなか、でっかいげそ天を欲張ったせいか、それとも途中でシュークリームなんか食ったせいか、山下の釜揚げの量がボディーブローのように効いてきたせいなのか、その辺の事情はよくわからないが、ともあれ
「せりあちゃん、きみ、マンモスへそぬけね」
と、へそぬけの烙印を押すことにする。うどん5玉程度で音を上げるとは、全く情けない。(←ていうか、それが普通では?)

ともあれ、綾南町に入ってすぐの十字路のそばに、目指す田村はあった。駐車場には3台くらいしか入りそうになく、すでに満杯なので、とりあえず手前に路駐して店内へ。
ちょうど昼のラッシュが一段落した時間帯でもあり、天ぷら類は一つも残っていなかった。仕方ないのでかけの小を注文、がしがし湯がいてネギとだしをかけたらいただきます。
一口だしをすすると、ヒジョーに強い魚の香り。いりこがこんなに強いダシは初めてだけど、これがミョーにエッジの立ったコシの強いうどんにマッチしている。「恐さぬ」で「うますぎるやんかー!」と評されていたのもやんぬるかな、これはいけるっ! 「一口くらいで」と言っていたせりあも、3口目に突入している。こらこら、そんなに取るんじゃない。(って、俺もそろそろ腹一杯だったので丁度いいんですが)

てなわけで★2つ半です。半分は天ぷらがなかった分。天ぷら食ってたら、十分満点になり得た店だ、と評しておきます。てなわけで2つ半にプラスをつけておこう。

【大円(高松市) 天ぷらぶっかけ 460円 (★★☆)】

さすがに朝から昼まで6軒をはしごしたら、食べ疲れました。塩分の取りすぎなのか、なんだか顔とか足とかむくんでくるし……というわけで、ホテルに帰って昼寝した後、改めて「さあ夕飯だ」と繰り出す先はぶっかけ専門店、大円。
これがよーく見ないと見逃しそうな店で、なんとか見つけたんだけど急に止まれず、通り過ぎてしまった。折良く200mくらい先にドラッグストアがあったので、ここの駐車場に車を入れて(←ひでえ……)、ほてほてと親子3人で戻ってみる。

店構えは小料理屋か定食屋、といった風情の木造の小さな店で、夕飯にはいい時間なのに客は全然入っていない。香川人はあんまり夕飯にうどん食わないんだろうか? カウンターに一つ席のないスペースがあり、そこには「麺出るすゾーン」と書いたイラスト入りの紙が貼ってある。おいおいおっさん、べたべたやで……

メニューを見ると、確かにぶっかけぶっかけぶっかけと、ぶっかけばかりが並んでいる。とりあえず天ぷらぶっかけを注文。昼寝前には「もう食えない」と言っていたせりあ、なぜかスタミナぶっかけを注文。
数分ですぐに出てきたぶっかけには、揚げたてのエビ天が乗っていた。横にだし入りの小さい徳利が添えられてくる。あんまり早く出てきたので、もしや作り置きか?と危惧したのだが、麺についても天ぷらについてもその心配は単なる杞憂だったようである。喉越しが良く、コシの強い太めの麺に、やや甘めのぶっかけだしがマッチしていてうまい。しかも天ぷらはあつあつサクサク。値段も手頃。こういう店はいいねえ。一般店ながらかなり評価できるぞお。

というわけで、★2つ半です。満点から半分減点というよりは、「ふつーにうまい」の★2つに、コストパフォーマンスと味で半分加点、という感じです。

【うどん棒今里店(高松市) 冷天うどん 600円 (★★☆)】

地図によると、5〜600mほど先に「うどん棒」なる店があるらしい。じゃ、ついでだし、行ってみるか、というわけでぶいぶいと移動、ほどなく到着。
チェーン店らしく、和風ファミレス風の店構えである。メニューは種類が多く、おおむね500円から、高いものでも1,000円以下という価格設定。高松のうどん屋としては高い部類に入る。1杯100円だの150円だのっつーうどんに慣れてしまったので、なんだかミョーに高く感じてしまうのう。でも東京で同じもん食ったらもっと不味くてもっと高いんだ、きっと。

なんか天ぷら系の冷たいものが食べたいな、と思っていたら、せりあが速攻で「私、天ざる」と注文してしまった。交換して食べる(と、種類が倍食える)ことを考えると、同じものを頼むわけにはいかない。メニューをしげしげ眺めていると。冷天うどんなるものを発見。店員に「これなあに?」と聞いてみると、「ぶっかけに天ぷらを乗せたものです」とのこと。おお、さっき食った天ぷらぶっかけみたいなもんか、というわけでこれを注文。

注文を聞き終わった店員は、「5〜6分お時間をいただきますがよろしいですか?」と言ってくる。時間がかかると言うことは、つまり麺を一からゆでるということだな。ええ、ええ、いいですとも。待ちます待ちます。はい、喜んで。(←庄○じゃないんだから……)
しばらくして出てきた冷天うどんは、妙に豪華であった。エビ天、シソ天、海苔天、カボチャ天など、数種類の天ぷらがぶっかけうどんに乗っている。これで600円なら安いかもしれー。せりあの天ざるは、これにエビ天がもう1本となす天が付いている。さすが900円。

でも不味かったら意味がないもんね、と思いながらうどんにかぶりついてみると、これがまたうーまーひー! 待たせただけあって、ちゃんとゆでたてのうどんをぴしっと冷水で締めたばっかりなんです、といった風情のコシのある麺に、さっぱりした風味のあまり甘くないだし。うむ、好みだ。しかも天ざるの方はつけだしがやや甘の味付けで、これもせりあの好みにヒットしたらしい。息子もエビ天がお気に入りの様子だ……って、そないむしゃむしゃ食うな〜っ!

てなわけで、★2つ半です。うまかったし、その意気もすっごくよかったんだけど、やっぱり高松のうどん屋にしてはちょっと高いしね、ということで半分減点。

<本日の小計:うどん9玉、天ぷら各種全部で9個、おでん2品、シュークリーム1個>

<合計:うどん15玉、天ぷら各種11個、おでん4品、ねぎトロ丼ミニ1杯、シュークリーム1個>

12月3日 : 千秋楽

【かな泉セルフ(高松市) かけ しんぐる+肉の具 360円 (☆)】

朝から開いている近くの店はねぇがぁ〜、と検討の結果、比較的美味しかった「かな泉」のセルフ店がある、ということがわかったので、朝飯を食いにぶいぶいと出かける。
入ってみると、棚の上にうどん、そば、中華麺のそれぞれ入ったどんぶりが置かれている。いやな予感……。とりあえずうどんの「しんぐる」を取って、じゃぶじゃぶ湯がく。肉うどんの具も取って、いただきます。

はたしてイヤな予感は正解だった。うどん、ゾンビどころか完全に死んどる。コシもくそもあったもんじゃない、ただの柔い小麦粉の固まり。いかんよー、かな泉ともあろうもんが、こんなうどん出しとったら。評価がた落ち。ていうか、セルフ形式の格安店だから仕方ないのかなー。

というわけで、★半分です。さすがにだしはそれなりにうまかったので。でも、それだけ。

【穴吹製麺所 冷たいん小+かき揚げ 180円 (−)】

続いて製麺所形式のうどん屋、穴吹へ。これがまたへんぴな場所で、さんざん迷ったあげく、細い路地の奥にそれらしき店を発見、近くの工場(休みだったのである)に車を止めて、いざ出陣。こういうへんぴなところにあるうどん屋は、それだけで期待が高まってしまう。おっちゃんに
「熱いん冷たいんと、どっちにする?」
と聞かれ、とりあえず熱いんと冷たいんを一つずつ注文。かきあげものっけて、さあいただきます。

しかーし、ロケーションだけでうまいうどんにありつけると思った俺がバカだった。冷たいだしはなく、冷たいんをもらった俺はぬるいうどんを食う羽目になり、そのだしはだしで醤油が勝った、ただしょっからいだけのだし。かき揚げは出来合いの「うどんどん兵衛」に載っているようなもの、おまけにうどんも死んでいる。ゾンビもいいところだ。ちゃんと午前中に来たというのに、どうも前夜ものを出されたようだ。

こりゃ、★なんかやれません。評価どころじゃねえよ。うどん代とガソリン代と時間と俺の空腹を返してくれ。ぷんぷん。

【大島製麺(高松市) かけ小+おでん(すじ) 250円 (★)】

「恐るべきさぬきうどん」のホットカプセル(株)編の「さぬきうどん全店制覇2」によると、うどん屋が700軒あるという香川県全体でも「自分で湯がく」店は46店しかないのだそうだ。しかし、すでに俺の経験は「さか枝」「彦江」「田村」「かな泉セルフ」に続き、5店目である。後述の谷川を入れると……すげー。15%制覇。

というわけで、自分でゆがく「大島」へ。今日の本命、あたりやがまだ開店前なので、あたりやそばのセルフ店に寄ろうという算段である。へ?満腹度? そんなもの気にしてたらあーた、うどん食い歩きなんてよーしませんって。
ここの名物は、うどんにワカメを練り込んだ緑色のうどん「わかめうどん」であるらしい。が、わかめうどんを注文すると、「まだできません」との返事。へなへなとなりながら、気を取り直してかけ小を注文。がしがし湯がいて、薬味を入れて、だしをかける。ついでにおでん鍋からすじを1本ひょいとゲット。

……うーん、まずくはない、んだけど……コシが特別強いわけでもないし、のどごしが特別良いわけでもないし、だしが特別香ばしいわけでもないし、天ぷらが特別うまいわけでもないし(せりあのとったタコ天はすこぶるでかかったけど)、おでんが特別うまいわけでもない。ミョーに印象に残らない、べつだんフツーのうどんであった。高松でこれってのは、もしかして悪い評価してもいいんでねえかなあ。

というわけで、★1つです。東京のちょっと旨い立ち食いうどん屋レベル(つまり東京の一般店並み)、と考えていただければ分かりやすいかと。

【あたりや(高松市) ひやひやの小+ちくわ天 350円 (★★★)】

朝からまずいうどん2玉とうまくないうどん1玉食って、そろそろ腹が重くなってきた。や、うまいうどんだったら何杯でも行けるのだけど、まずいうどんって本当に腹に堪えるんだよね。困ったもんだ。

というわけで、口直しに今日の本命・あたりやへ。パチンコ屋の地下(でも段差があるので店そのものは地上に立っている)という非常に香ばしいロケーションにあり、しかもなぜここにしたかというと、店主曰く「たまたまここが空いていたから」だという、すばらしく香ばしいシチュエーションの店なのである。しかもこの店主、宮武ファミリーの最若手である。期待は高まるばかりだ。

11時の開店時刻を15分ほどすぎて到着してみると、店にはすでに10人ほどの行列ができていた。待っていると、麺のゆで上がりにあわせて、「4名様どうぞ〜」「6名様どうぞ〜」とその都度若いにーちゃんが呼びに来る。あとでこのにーちゃんが店主だと知ってびっくりしたのだけれども。
15分ほど並んだ後、我々も呼び込まれたので店内へ。ぞろぞろと列のまま店内に入り、順番が来たところでひやひやの小を注文。天ぷらの入ったガラスケースの中から、青のりのまぶされたちくわ天も取って、いただきます。……こらこら、息子さん、父より先にちくわをかじらないように。

エッジの立ったぴかぴかのうどんを一口すすると、すばらしいコシ、そしてのどごしの良さ。ああ、これって確かに宮武のうどんと同系列だよ……う、うーまーひーっ! もはや「旨い」以外の言葉が出てこない。
ひやひやのだしも、冷たくてだしの味が強いものはどうしても塩気が勝ってくるものなのに、ほんのり魚臭くて、でも塩気があまり強く感じられなくて、すこぶるうまい。ちくわ天が、これがまたこのだしとうどんにミョーにマッチして、結構腹が重かったはずなのに、するするするする入っていく。だからそんなに食うなってばよ、息子さん。
しまった、大にすれば良かった……と思ったときには後の祭りでぴーひゃらら。すでに1杯を軽く平らげてしまった後だった。ごちそうさまでした。ホント旨かったです。

というわけで、文句なしの満点です。団長が「宮武系のうどんは、一度はまったら抜けられんようになる、他のどこで食うてももの足りんように感じてまう」とおっしゃってましたが、まったくよく分かりました。食欲大魔人、大はまり。

【谷川製麺所(高松市) かけ小 120円 (★★☆)】

続いて「郵便屋さんがイノシシ食ってまう」谷川製麺所へ。これまたへんぴな、地図を見ながらでもよく分からないところにある。迷い迷ってぶいぶい進んでいると、湯気の出ている建物を発見。「あれだーっ!」と突進。……でも、そこまで行く橋、異常に細いんですけど(泣)

中はまんま製麺所で、その手前の倉庫の様なところが食う場所になっている。が、半分物置の様になっており、話に聞いた巨大な扇風機や、その他諸々の雑貨が雑然と置かれている。
奥にずんずん入っていき、おねーちゃんが蒸籠にうどんをあげている横で「かけ、小ね」と注文。うどん入りのどんぶりをもらって、奥の麺をゆでている鍋でちゃっちゃか湯がいたら、だしをかけてねぎを入れ、いただきます。
このうどん、目の前で水で締めていただけあって、ぴしっとしたうどんである。コシもさることながら、つるつるの喉ごしがかなりのレベルである。これは良い。

しかし、谷川の神髄はだしにあった。今まで食った中で一番深みがある。他が魚系のだしであるのに対し、ここは動物系の味のするだしである。誤解を恐れずに言うなら、うまいおでん屋のつゆの味、といった風情。こりゃうんめぇぇぇぇええええっ! なるほど、時々イノシシが入ってるとかいうのもよく分かるわ、こりゃ。
というわけで、★2つ半です。麺のインパクトが山越や宮武ほどではなかったので半分減点(ていうか、だしのおかげで半分加点)。あと、天ぷらがなかったのよね。これだけ旨いうどん屋、天ぷらも食ってみたかったなあ。

【長田うどん(満濃町) 冷やし小 250円 (★☆)】

最後は「釜揚げ一本で勝負」という長田うどんへ。本当はこの後宮武にも寄ったんだけど、大行列で、飛行機の時間に間に合いそうになく、あえなくあきらめることとなった。

で、長田うどん。でっかいのれんの掛かった一般店で、駐車場には山のような車が止まっている。そばには元祖醤油うどんの「小懸屋」があり、そっちにすれば良かったかな、とちらりと思いつつ、入店。
入ってみると、これが学食のような店である。かなりの大混雑で、大テーブルの思い思いの場所に適当に相席で座る、というスタイル。注文は食券方式と言えばよいのか、レジのところに並び、欲しいうどんを注文、ちらしやいなりなどを適宜取り、代金を払って番号札を受け取ったら、あとはおねーちゃんが「14番の方〜」と叫んで持ってきてくれるのを待つだけだ。

釜揚げと冷やしをそれぞれ1個ずつ注文した後、札を受け取り、テーブルの端っこの狭い席に座る。山下で出会ったような、だしの入った徳利からだしを猪口に入れ、テーブルの上のねぎとゴマをだしに入れ、まだかな〜と待つ。程なくして出てきたうどんは、もちもちつるつるであった。うん、割とうまい。釜揚げ一本で勝負するほどには旨くないような気もするのだけど(←ひでえ)。ていうか、宮武にはまった俺には非常に物足りない。冷やしも、つゆが熱いので十分な締まり具合が堪能できないし……なーんかいまいち不満が残る。やっぱ小懸屋行っとくべきだったかのう。

というわけで、★1つ半、です。もっと店もおなかも空いていて、もっとゆっくり食えたら2つくらいにはなったかもしれないけどね。残念。

<本日の小計:うどん6玉、天ぷら各種2個、肉の具1個、おでん1品>

<合計:うどん21玉、天ぷら各種13個、肉の具1個、おでん5品、ねぎトロ丼ミニ1杯、シュークリーム1個>

総評

山越はおいしゅうございました。宮武はおいしゅうございました。あたりやもおいしゅうございました。大魔人はもう食べられません。……でも、すっかり讃岐うどん文化に魅せられてしまいました。やはりうどんはいりこだしに限るっすー!というわけで、また来ます。しっかり加ト吉のいりこだしも買い込んだし、しばらくは我慢できそうだなっ。

次回は、山越と宮武(とうどん市場)には必ず再訪、あとは行ってないところばかりを回ります。いつになることやら?!(JASのマイルがそろそろ1万マイルだな……くふふふふ。)

謝辞

今回の讃岐うどん紀行へのきっかけを与えてくださった、麺通団・田尾団長をはじめとする潟zットカプセルのみなさま、帰る間際、空港までわざわざ会いに来てくださった香川在住のサヌカイトさん、そしてうどん紀行の偉大なる先輩、クイーンズイーストのYさん、本当にどうもありがとうございました。大魔人はもう食べられません。

おまけ

香川某所にて「恐るべきさぬきうどん」カップ麺を発見。「なんとかー!」というわけで、購入して持ち帰り、食べる。
うどんは……「ごんぶと」と変わらない。しくしく。でも、それは仕方ない。
が、だしがちゃんといりこの風味がするのがうれしい。このだしに加ト吉の冷凍うどんをぶち込めば、結構うまいうどんが食えるかも。(←でも所詮インスタント風味でした)