10月5日(木) 不安だらけのマニラの夜

目指すはクラブパラダイス

息子の通う小学校は2学期制。夏休みが少しばかり短い(8/30あたりから登校しなければならない)代わりに、「秋休み」なるものが存在する。体育の日の連休に絡めて、それは毎年5日くらい。
「ねぇね、その時にみんなで旅行しましょうよ、私、アマンプロに行ってみたい」
私の母がそうのたもうたのは、今年の春だった。旅行は良いけど……アマンプロですか???

アマンプロは、超高級ホテルグループ「AMAN RESORTS」が誇る、所有ホテルの中でも屈指の豪華ホテルだ。何がすごいって立地がすごい。フィリピンの島丸ごとひとつがそのホテルになっているのだ。マニラから専用機で移動する「世界で最も美しい」と言われるビーチを持つホテル。宿泊費は1泊1部屋$550から(2006.10現在)で飲食費は別、更にマニラからの送迎費(飛行機代)が$325。一家でぺろっと4泊して帰ってくるには、あまりにもおそれ多いその価格なのだった。無理、無理ですママン。アマンは無理。

でも、確かにフィリピンのそのあたりの海はたいそう美しいらしい。何もアマンでなくとも、他に選択肢はあるのでは?と調べてみたら、ありましたありました孤島ホテル。有名なところでは、エルニド。更にはクラブノアクラブパラダイスなどなど。

当初は日系資本なのだというエルニド滞在を考えていたのだけれど、残念ながら4月下旬の段階で問い合わせると既に10月上旬は満室とのこと。ホテルのホームページをじっくり眺め、更にはそこに旅行した人々の旅行記をみつけて眺め、そして私たちは「Club Paradise」に行ってみることにしたのだった。船で行けるところに「サファリ島」なるものがあって子供連れでも楽しめそう。ビーチはもちろん美しく、プールもちゃんとあるらしい。孤島ホテルということで、食事は3食ブッフェで固定、ドリンク代は別で、1人1泊$163.20なのだそうだ。ここならなんとか、私たちの懐具合にも合いそうな感じ。早速ホームページから「10月に泊まりたいんだけどー」とホテルのオフィスにメールを投げてみたのだった。

予約はファイナライズが必要ですよ

ホテルに問い合わせのメールをすると、簡単に宿泊の予約が取れた。「最寄りの空港までの、マニラからの往復飛行機チケットも一緒に抑えてくれるという話だったので、日本からの予定フライトを伝えつつ、国内線の予約もお願いする。島には「Standard Beachfront Cottage」「Hillside Cottage」「Gardenview Cottage」などなど各種のコテージがあるということだったけれど、「Beachfront Deluxe Cottage」(ビーチフロント デラックス コテージ)を2部屋申し込むことに。ホテルの部屋を予約し、国内線のフライトの調整もし、やれやれと4月下旬にやりとりを終えた。そして10月からの正規割引運賃が確定し次第、国際線のチケットも手に入れて、合わせて初日のマニラ宿泊の予約も完了させた。全ては滞り無く行われた……と、私たちは思っていた。

だが、しかししかし。
「そろそろ旅行も近くなってきたし、一応リコンファームしておく?」
と9月半ばにクラブパラダイスにメールをしたところ、とんでもないお返事が来たのだった。

Sir!!!
I was shocked to hear from you.
I immediately look for your booking (I actually cancelled it since i haven't heard from you)
Luckily I still have two Beachfront Deluxe Cottage for you and the flight is still confirm.

(要約)
メール拝見しました、すごくびっくりしましたよ。
あれから連絡くれないから、私は予約をキャンセルしちゃいましたよ。
幸いまだビーチフロントデラックスコテージは残ってますけど。

……ショックなのは私たちの方で。びっくりしちゃったのは私たちの方で。
「連絡くれないから」って勝手にキャンセルするなよー、「連絡くれないけど、どーしたの?」くらいメールしてからキャンセルしろよー……と、慌てながら再び確認を繰り返して、やっとこさ予約の「Finalizing」をすることができたのだった。……こっちからのメールには何度も「finalize our reservation」とか書いていたのに、なんでキャンセルしちゃうかな、もう。

そうこうしているうちに、もう旅行まで2週間を切ってしまっている。国内線のチケットなどを日本に送ってもらう余裕もなさそうだ。予定では、日本を夕方に発って深夜にマニラに着き、その翌朝に国内線に乗ることになっている。「宿泊ホテルにチケットを渡しに行きますよ」「やっぱり国内線空港のオフィスで待ち合わせしましょう」と直前までバタバタとやりとりしつつ、結局ホテルのマニラオフィスのスタッフが国内線空港にまで来てくれることになったのだった。搭乗予定の航空会社のオフィスで落ち合い、そこでクレジットカードで宿泊費と国内線運賃を支払う手続きをして、国内線のチケットを受け取るということに。

……マニラはあんまり治安がよろしくないところだと聞く。道路事情もよろしくなく、渋滞することが多いとか。大丈夫かなぁ、無事にホテルスタッフと会えるかなぁ、と、かなり不安になりながら、とりあえず荷造り開始。

そしてマニラへ

そしていよいよ出発日。今日まで息子は学校があり、給食まである。息子の帰宅を待って、午後6時過ぎに出るJAL便で一路マニラに。行きの飛行機はたいそう揺れて、配膳中にシートベルト着用サインが点灯し、「ビールやワインはいかがですか?」の言葉を聞くこともなく客室乗務員の方々はすごい勢いで去ってしまったのだった。揺れ揺れの中で半泣きになりながら肉じゃがの夕飯を食べ終え、そして現地時間(日本時間からマイナス1時間がフィリピン時間)10時過ぎに無事にマニラに到着。

マニラのニノイ・アキノ空港は、決して治安が良いとは言えないらしい。こういうところなどを見ても
・深夜便では到着しない方が良い
・空港で両替すると、その金額を見られて空港内外で強盗に襲われる可能性があるので注意すべし
・タクシーに乗ったら、しっかりドアロックするように(ドアを開けて強盗が入ってくる可能性がある)
などなど、注意喚起のアドバイスをいくらでも見ることができる。夜到着ということで用心に用心を重ね、空港では両替はしない方向で、できるだけ速やかに送迎の車を見つけなければならない。

今晩の宿は、空港に近いことと安全面などを考えてHYATT Regency Manilaにした。「Total Value Package Twin Room」なるパッケージは、朝食ブッフェとホテルへの送迎が含まれている。ツインベッドルームが1部屋$100、コネクティングルームの指定も可能だったので、お願いしておいた。一応しておいたリコンファームでも「Request for connecting rooms was likewise noted.」の旨ちゃんとお返事が来て、ハイアットリージェンシーだったらまず間違いがないだろうなと。

空港を出て、いまいち指定場所がわからずに右往左往してしまいつつもなんとかホテルの送迎車と合流し、クーラーの効いた車に揺られてホテルまで約15分。夜だというのに道路はけっこうな混雑で、そして数週間前にマニラを直撃した台風の被害があちらこちらに見てとれた。街路樹の椰子の木は一部では軒並み倒れていて、建物の看板なども外れかけたりしている。目指すホテルは、日本大使館のすぐ隣に建っていた。車の運転手が話してくれたところによると、
「ここ、日本大使館です。毎日、すごい数の人々がビザを求めて並んでいますよ」
とのこと。その話通り、翌朝には朝早くから門の前に100人以上の人々が集まってきていた。
早くお部屋に行きたいなー、と思いつつ

そして到着したホテル。もう少しで夜も11時を過ぎようとしていて、日本時間では日付が変わる頃。息子も眠そうだったので早く部屋に入れて欲しかったのだけれど、難しい顔をしてレセプションのカウンターの向こうで端末を叩いていたホテルマン曰く、
「はい、4名様……別フロアになります」
とのこと。数日前にリコンファームまでした「コネクティングルーム」のリクエストは、どこかに吹っ飛んでしまったみたい。それにしたって、別フロアはあんまりだ。
「え?コネクティングルームをリクエストしましたよ。了解しましたってお返事も貰ってます」
普段から怖い顔をますます怖くしてフロントににりじ寄るだんな。しばし押し問答をした後、
「……では、同じフロアの部屋を、なんとか。ただまだ準備ができていないのでお部屋の準備に10分ほどお時間をいただきたいです」
という申し出を貰った。部屋を準備している間に、このチケットで飲み物飲んで待っていてね、と人数分のドリンクチケットも貰った。

ジャズの生演奏が流れる中ふかふかのソファに腰かけて、予期せぬドリンクタイム。だんなはビールを、私は「レモネードよ」と説明があった「カラマンシー」なる飲み物を。「アイス?それともホット?」と続けて聞かれ、アイスのを持ってきてもらった。「カラマンシー」(Calamansi)は、果物の名前だ。ライムのような……というか、シークワーサーのような果物。旅行中に何度も目にしたけれど、さわやかな酸味がとても心地よい果物だった。甘酸っぱい飲み物は美味しかったけれど……でも、眠い。早く布団に入りたい。
やっと眠れる……

甘さ強めの黄色い飲み物を飲みつつ待つこと十数分、やっと部屋の鍵が手渡された。コネクティングルームが用意できなかった代わりにどうやらグレードアップしてくれたらしく、案内されたのは上階のリージェンシークラブフロアで、廊下を挟んだ斜め向かいの2部屋だった。ただ、ベッドはツインじゃなくてキングサイズのが1つ。男部屋と女部屋に別れ、軽く汗を流した後は早々にベッドに倒れたのだった。

フィリピンって……フィリピンって……なんか疲れる……と思った初日。
明日は無事に国内線のチケットを手に入れることができるのか、旅の目的地であるクラブパラダイスに無事に着けることができるのか、とにかく心配。大丈夫かな。