9月18日(金) 初めてのクルーズ船

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クルーズ船の予約

夏といえば花火。
以前一度、漁船の上から東京湾の華火大会を見る機会があり、それはなかなか楽しい体験だった。でも、もっと大きな船で、たとえばクルーズ客船に乗って1泊2日で花火鑑賞、といったツアーもあるらしい。
 
クルーズ船というのに乗ってみたいなぁ、そして船上から花火を見てみたいなぁと思い立ったのはゴールデンウィークの少し前という頃で、あれこれパンフレットを見て予約の電話を入れてみるも、どこを聞いても「満員ですねー」とのこと。夏の花火を見るクルーズツアーは特に人気なのだそうで、年明け早々に予約が埋まってしまうものなのだそうだ。
 
そこで見つけたのが、「秋の屋久島・奄美大島クルーズ」。9月の大連休を利用しての5泊6日のクルーズで、息子の学校もだんなの仕事も休むことなく、みっちり休日を使って行くことができる。手頃な国内クルーズで、目的地がまだ行ったことのない(そして行ってみたいと思っていた)屋久島と奄美大島というのもとても魅力的。
5月の時点ではまだ「ぎりぎり空きがあります」とのことで、家族会議を重ねた結果「行ってみよう!」ということになった。
 
乗る船は、「ぱしふぃっくびいなす」。カタカナでもなく英文字でもなく、平仮名で「ぱしふぃっくびいなす」だそうで、愛称は「ぱしびい」「ぱしびぃ」なのだとか。日本の客船で世界一周クルーズに出るような規模の船は3つあるそうで、「飛鳥U」「にっぽん丸」と、そして「ぱしふぃっくびいなす」。他の2隻に比べると若干カジュアルめな船で、価格帯も若干お手頃、「フレンドリーなおもてなしが魅力」とパンフレットなどには書いてあった。
 
予約に利用したのは、若干の割引があるという「Cruise Planet」というH.I.S.系のクルーズ専門旅行会社。資料をもらい、前金を払い、出発1ヶ月前には「ぱしふぃっくびいなす」の冊子と今回の旅行に関しての冊子、屋久島や奄美大島のパンフレット諸々が届いた。更にそれから2週間ほどして、割とシンプルな風の(ぶっちゃけ、紙っぺら1枚)乗船券も届いた。
 
9月の客船旅行、しかも行き先は南の島行きだなんて、台風は心配だし、今年に限っては「新型インフルエンザの流行」という心配要素も。私はなかなか強力な雨女なのでなおのこと心配だったけれど、
「大丈夫!俺がこんなに楽しみにしてるんだから!」
と、これまた強力な晴れ男のだんなが胸を張っていたので、天候操作はだんなにお任せすることにした。何しろ数年前の宮崎旅行で「自分たちのいる宮崎以外は日本中ほとんど雨」という状況を体験したりしているので、まぁなんとかなるでしょう、と。よしんば雨でも、それはそれで楽しい体験になるんじゃないかな、と。私は乗り物酔いする体質(苦手なのは車全般、特に観光バス)だけれど、それもまたなんとかなるんじゃないかな、と。

クルーズ船の文化

船は、下の方が安い部屋、上の方がお高い部屋になっている。同じ広さの部屋でも上階になれば値段は上がる。
「まぁ、初めてだし、多分部屋に籠もるのは寝る時だけだろうし、安い部屋でいいよね」
と、私たちが泊まるのは一番狭い部屋のしかも一番安いカテゴリーでの3人1部屋。窓も角窓ではなく、小さな丸窓なのだそう。船によっては船内のレストランも客室カテゴリーですっぱり別れたりもするようだけれど、この船はスイートクラス専用のダイニングがあるくらい。
 
そして、クルーズで忘れてはいけないのが「ドレスコード」。
旅程表にも明記されているドレスコードは、その日のカクテルタイムから夜寝るまで守らなければいけないもので、基本はカジュアル。だいたい4泊につき1回くらいはインフォーマルディナーがあり、インフォーマルディナーが3〜4回あるような泊数のクルーズだと更に「フォーマルディナー」もあるらしい。フォーマルはタキシードにロングドレス、結婚式に出るかそれ以上の装いが必要になるとのこと。
 
で、カジュアルと言っても「ジーパンサンダルは止めてね、襟つきシャツくらいは着てね」という程度の格好はしなければならず、インフォーマルは子供も含めて男性はジャケットネクタイ着用というのが目安なのだそうだ。
それがめんどくさくもあり楽しみでもあり、1回のインフォーマルディナーのために、息子は久しぶりにスーツを新調することになった。フォーマル用の靴も荷物に入れる必要があるとなると、靴だけでも「フォーマル用、普段履き、サンダル、トレッキングシューズ」と今回3〜4足は必要。すごいな。Tシャツの他はせいぜいワンピースをつめこんで、「靴はサンダルの他はあと1足あればいいやー」くらいの、ゆるい東南アジア島国旅行とは、用意するものが全然違うという感じだ。
 
船内にはネイルサロンありエステティックサロンあり、美容室理容室もある。嬉しいことに、そう広くはなさそうだけれど「展望浴室」もある。私たちの泊まる部屋はバスタブがない(シャワーはある)ので、空いている時間を狙ってせっせと展望浴室に通おうかなと思っている。そうそう、各フロアにはランドリーコーナーもあり、洗剤なども無料で用意されているとのことだ。
 
食事は、1日、食べようと思えば7食もあるとのこと。
朝食前のアーリーモーニングティー(コーヒーと焼きたてマフィンなど)、朝食(和食か洋食バイキング)、モーニングティー(小菓子とコーヒー紅茶)、昼食、アフタヌーンティー(ケーキとコーヒー紅茶)、夕食、そして夜食。
 
そのほか、基本的に1日中、サロンやバーなどで無料でいただけるコーヒー紅茶があるとのこと。部屋のミネラルウォーターも無料で飲むことができ、湯沸かし器もあるそうだから、家からティーバッグ持参して紅茶や日本茶をいただくというのも大丈夫そうだ。
 
そして、インターネット接続については、こちらはほぼ絶望的な感じ。
この船はインターネット接続環境はなく、E-mailについては「乗船後の申込みで専用アドレスを発行します、そのアドレスを使ってのメール送受信のみ可能です」といった感じで、船の環境からではwebサイトの閲覧などは全く無理。自前の携帯なりphsなりを使って無理矢理通信ということになるだろうけど……海の上ってどのくらい電波届くんだろうね?と考えると、旅行中の日記の更新とか情報検索とかは諦めた方が良さそうだ。

夜の横浜港出航

みなとみらいの夜景を見ながら

出航は横浜大桟橋から、夜の9時。
 
受付は8時から8時半までということで、中華街に寄り道して夕食を摂ってからてくてく歩いて「大さん橋」へ向かった。
初めて間近で見る「ぱしふぃっくびいなす」  
遠く見えてくる白く浮かび上がる船に、大人も子供も興奮気味で
「あの船に乗るんだよ」
「でか!綺麗!」
と歓声あげつつ、船着き場のデッキから船の全容を眺めつつ乗船手続きをし、早々に船に乗り込んだ。
 
乗船後数十分は、慌ただしく荷解きを。
邪魔なスーツケースをとにかくなんとかしたいと、クローゼットに中身を全て移して、スーツケースやボストンバッグはベッドの下に押し込んでいく。
 
部屋には既に今日の分の船内新聞(「Lighthouse」ライトハウス)が届いていた。
 
それによると、20:50から「セイルアウェイ横浜」という出航セレモニーがあるとのこと。出港直後の9時からはメインダイニングで「お夜食」のサービスが始まり、トップラウンジでは早々に18歳以下入場不可能なゲームタイムも始まるらしい。メインラウンジではダンスタイムが、シアターでは映画が、と、出航当日早々に船のあちらこちらでイベントが始まる模様だ。
ジャズの歌声と共に静かな船出  
昼間の出航だったら、歌と踊りと飲み物、紙テープで賑やかな船出になるそうなのだけれど、今回は夜の船出。
 
外国人女性シンガーのジャズの歌声が響く中、紙テープが飛ぶこともなく、ゆっくり船は横浜港を出発した。
 
眼前には、みなとみらいの綺麗な夜景がすぐそこに見えて、甲板にはまだまだたくさんの人たちが惜しむように夜景を眺めている。
ベイブリッジ。この真下をくぐるのねー。  
ベイブリッジをやっぱりくぐるのかな?と、セレモニーのあった8Fのデッキをぐるりと歩きつつ船の前方に向かって歩いていくと、ベイブリッジ方向に船がゆっくり旋回していくところだった。
 
目の前に白く浮かび上がる橋に向かって船は進み、おおーでっかいなー綺麗だなーと歓声が挙がる中、ゆっくり船は橋下を通過した。
ベイブリッジの下を通るのは、私はこれが初体験。
左右に広がる工業地帯のクレーンの灯りなどを少し眺めた後、船内に戻った。

ステートCの3人部屋

ベッド2つでいっぱいの部屋の幅 私たちの部屋は、客室では最下層にあたる5階の部屋。
 
乗船時に、名前とバーコードが印字されたプラスチック製の乗船者カードと、救命艇の番号も記されたカードタイプのルームキーを1人1枚ずつ渡されている。
 
乗船者カードは、これを提示することで船内の有料の飲食やショップでの買い物を部屋付けにしてもらうことができ、寄港地ではカードのバーコードをかざすことで乗船、下船の管理をする。
 
ルームキーと共に大切なものなので、首からさげるタイプのカードケースを携帯している乗客たちも多い様子だ。
 
そして部屋の方は覚悟していた通りに、そう広くはないものだった。
狭めのシングルベッドが2台並んでその間にチェストが置かれただけでいっぱいという部屋の幅。本来ソファーがあるところに息子のベッドが作られていて、その向かいにデスクやチェスト。
 
アメニティは充実していて、チェストの上には湯が満たされた湯沸かしポットと、隣には氷水がたっぷり満たされた保冷ポットが並んでいた。日本茶のティーバッグと湯呑みとコップが人数分。洗面所にも歯ブラシや綿棒まで一通りのものが揃っている。収納スペースはたっぷりと、3人分区切られたロッカーがあったので、「君は右ね、私は真ん中ね」と各自の場所を決めて早速荷物を詰め込んだ。
クルーズ中、結局一度も使わなかったシャワーブース  
そしてバスルーム。
 
トイレは通常サイズの、ウォシュレットつきのもの。
飛行機や列車などのトイレでよく見る「真空式」で、詰まってしまうと最悪「船内全てのトイレが使用不可」という状態になってしまうこともあるそうで「ゆめゆめ異物を流さないように」、と、翌日のオリエンテーションなどでも注意があった。
トイレは船内のパブリックスペースのあちこちにもあり、どこも清潔。使いやすかった。
 
このクラスの部屋は、バスタブはなくシャワーのみ。
トイレの真横にシャワーカーテンがあり、床が数センチ低くなった1/3畳ほどのスペースがシャワーコーナーに充てられている。タオルはふんだんに用意されていたけれど、なにしろ窮屈であることには変わりなく、上階に展望浴場もあることから、結局この部屋のシャワーは一度も使わずにクルーズを終えた。

今日の「お夜食」

今日は午後9時から「お夜食」が供されるとのこと。場所はメインダイニング。
 
食べる食べないは個人の自由で、今日は少し早い時間からの提供だけれど、通常は夜10時半頃からミニサイズのラーメンやうどんなどの麺類、サンドイッチやケーキ、フルーツなどが用意されているのだそう。
 
まだ出航直後で「今すぐ寝よう」という感じでもなく、夜食会場に向かってみることにした。
 
同じことを考えている乗客がほとんどだったようで、メインダイニングは大変な賑やかさ。ブッフェ台には何種類ものケーキやフルーツ、スープやパスタなどが用意されており、他にきつねうどん、たぬきうどん、塩ラーメンも。こちらはスタッフにお願いすると小丼サイズのそれをテーブルまで持ってきてもらえる。
 
息子はさっそくきつねうどんを堪能していて、私はハムと野菜のサンドイッチと、オレンジ、メロン、パイナップルを1切れずつ。オニオンスープがあったのが嬉しくて、それも少し。紅茶をいただきに席を立ったところで、それまで出ていなかった洋梨のムース仕立てのケーキのようなものが出てきていたので、それも1つ。
 
船は派手には揺れないけれど、ゆっくりと左右に傾き続けるような揺れは感じられて、「ああ、やっぱりここは船の中なんだ、海の上なんだ」という感じ。
夜食後は疲れもあって早々に就寝。ゆっくりと足先や頭の先から引っ張られるような感覚を感じながら眠りに落ちた。