6月1日(火) プールでこんがり、ブッフェでもりもり

そんなわけで、サイパン

「5月のゴールデンウィーク、カレンダー通りに出勤するじゃない?周囲の人は有給休暇使って大型連休にしてる人けっこういたんだけど俺はしなかったからー、だから、6月にちょっとまとめてお休みもらうことにしました」
と、だんなから聞いたのは5月の連休前。その数週間前にJALからマイレージキャンペーンのおしらせも届いていて、にわかに
「海外旅行、行っちゃう行っちゃう?」
なんて欲望が高まってしまったのだった。

キャンペーン対象は韓国や中国、バリにハワイにサイパン、グアム。通常消費されるマイレージより少ない量で往復チケットが手に入る。
「俺は3万マイル近くある」
「私はねー……2万マイル弱ってところ」
「バリは無理だな」
「無理だねぇ……」
あれこれ考え、1万2千マイルで行けるサイパン・グアムをターゲットにしてみた。南国南国、ビーチビーチ、熱帯魚〜♪

実のところ、サイパンやグアム、ハワイあたりをこれまで(数年前まで)ちょっと馬鹿にしていた私たち。アメリカンな文化にいまいち魅力を感じていなかったから「同じ南国ならこてこてアジアのバリとかプーケットがいいわぁ」と思っていたし、「子連れ旅行といったらグアムかサイパンかハワイ」という風潮に対しても、「だったらあえてそこは外して別のエリアに!」なんて天の邪鬼に思ってもいたのだった。どこに行っても日本語が通じちゃうと聞いて「それじゃ海外に行ってる実感があんまり感じられないんじゃ……」とも思っていたりして。

でも、調べてみたところ、グアムやサイパンはとにかく日本から近い。成田から飛行機が飛び立った後、たったの3時間で到着してしまう。アメリカ暮らしを体験してアメリカンなステーキやハンバーガーが大好きになってしまった今、アメリカンな文化も懐かしく感じるばかりの愛すべき対象になってしまった。
「あー、アンガスビーフのステーキ屋さんがあるってよー」
「スーパーに行ったら、懐かしい食材とか色々買えるかなぁ」
いいねいいねサイパンとグアムいいね、と盛り上がり、あれこれホテル情報などを検索した結果、サイパンに向かうことが決定した。

宿泊ホテルは、Pacifc Islands Club(パシフィック・アイランズ・クラブ 略してP.I.C.とかPICとか書かれたりする)。ホテル内にウォーターパークを擁し、テニスやアーチェリーやウォールクライミング、ビーチバレーなどの設備も整っているらしい。アクティビティ参加や器具の貸し出し、ホテル内で開催される各種スクールやキッズプログラムなどなど、宿泊者は全部無料で受けられるのだそうだ。息子はきっと喜ぶだろうなぁ〜……と価格などを調べてみたところ、Web上で申し込みできるe-パッケージというプランがなかなかお得そう。3泊4日で1人分の料金が$270。デラックスルーム利用で朝食つき、夕方発の日本への帰国便に合わせて午後2時までのレイトチェックアウトサービスつき。

行きたい場所も泊まりたいホテルも目処がついたので、航空券の手配とホテル宿泊の申し込みをさくさくと進める。
日焼け止め買ってビーチバレーや浮き輪、ビーチサンダルも用意して、いざいざ初めてのサイパンへ。

Pacific Islands Club に到着

朝から大雨だった6月1日、予定から数十分遅れて離陸したJAL便は現地時間午後2時半にサイパンの空港に到着した。JALのリゾッチャ便に乗るのは初めてだった私たち。乗務員さんたちの制服がトロピカルで良いわぁとか、デザートにビスケットサンドアイスクリームが出てきて嬉しいわぁとか、ほんの3時間たらずのフライトはあっというまに終わってしまった。入国審査も
「オコサン連れは、コッチ、コッチですヨ〜」
と案内された別ゲートからスルリと抜け、スーツケースを受け取って出口に出るとまだ3時前。迎えに来てくれていたホテルのワゴン車に乗り、スルスルーッとホテルに向かった。早い早い。「雨だねぇ……」と家を出てから半日たらずで、もう気温30度の空気の中にいる。これは手軽だ。これは嬉しい。

ホテルから迎えに来てくれたのは、黒人のロジャーと、アジア系の顔立ちのアンドリュー。ロジャーは日本語がほとんど話せないらしく、どうやらアンドリューは日本語通訳ということで来てくれたものであるらしい。でも、だんなは「チャンスさえあれば英語を話しておきたい」という人なので、英語でぺらぺらと話す話す話す。

「ロジャー、生まれはどこ?」
「俺はカルフォルニアから来ました。あなたは?トーキョー?」
「いや、東京の近くの、千葉」
「オー!チバね、前に1週間滞在したんだけど、同じような町並で、道路で迷っちゃって。地元の友人に電話をかけて"もしもーし、俺だけど、いま俺はどこにいるんだ?"って」
なんてことを話し、結局、日本語対応アンドリュー(彼は韓国人だった)も一緒になって英語で
「チバはねぇ、私のガールフレンドが住んでいます」
なんてチバチバ言って盛り上がることに。
私はそれを聞きながら窓の外をボーッと眺めていた。今は雨期直前。目に鮮やかなオレンジ色の花がもっさりと繁った樹がそこらじゅうで目立っている。
ロビーから見えるプールに、早くもわくわく

町並は微妙にアジアなような、アメリカなような。「POKER」と書かれた看板のついた小屋がやけに目立ち、英語と共にカタカナ、中国語、韓国語で「ポーカー」の意味の単語が書かれているようだ。窓もなく入り口にも小窓などがなく、ほんのり怪しげ。空港からホテルまでの、ほんの10分くらいの道のりで20軒以上、その看板つきの小屋を見かけた。寂れたショッピングモールのような建物もあり、"道の両側にずらりと飲食店や雑貨屋が並ぶ"という華やかさはない道沿いで、特に滞在ホテルは繁華街から離れているので周囲にはなんにもないという感じ。思ったよりも派手さのない、うら寂しさがわずかに漂う案外と静かな島だというのが滞在の印象だった。閑散期だからよけいにそう思ったのかもしれないけれど。

で、ホテル到着。私たちの部屋はロビー棟から1つ隣の建物内の5階になった。ダブルサイズのベッドが2つとベッドになるソファが1つ。1人がけソファが1つとカフェテーブル1つ。ライティングデスクとスツール、テレビ入りのチェストの他は、よくある感じのちょっと狭めのユニットバス。冷蔵庫やセキュリティボックスが入ったクロゼットもあった。狭くはなく、かといって"広々〜"という風でもない、電気のスイッチなども紐を引っ張るタイプの、素朴な設備の部屋だった。部屋にも廊下にもバティック調の模様を多用したゴーギャン風の絵画がこれでもかと飾られていて、それがちょっと独特な雰囲気。
シンプルな客室

「ともかく、泳ごうか!」
「まだ3時半だもんねー。泳いじゃおう泳いじゃおう」
到着するなり衣類をクローゼットに詰め込んで、短時間だしと日焼け止めも塗らずに階下に広がる大きなプールに急いで出発。

ホテルの宿泊者は2種類のカードを持つことになる。1つはルームキーと食事カードを兼ねるもの。ブロンズカードなら食事なし、シルバーカードなら朝食のみ、ゴールドカードは全食つき。カードの裏面には曜日の書かれた表があり、レストランでカードを差し出すと、「月曜の朝食は摂取済み」というようにマジックでチェックされていく。もう1枚はタオルカード。プールサイドのインフォメーションカウンターにカードを出して代わりにビーチタオルを1枚貸し出してもらうのだ。タオルを返さないとカードは戻ってこないので、カードもタオルもなくさないように注意が必要。

プール施設のひととおりを泳いで遊んで楽しんで、
「まーだー、まだ、遊ぶのよー。おへやに帰るのは、イヤ!」
と、初日からエンジン全開で遊びたがる息子を必死で宥めて午後5時に部屋に。1時間半ほどしか外にいなかったのに、うっすらと水着の跡が背中に残った。さっそくこんがりと肌が焼けていく。今日はこれからお買い物に行くのよー。

スーパーでお買い物

私たちの宿泊するホテルは、島の南寄りに位置している。中心街のGARAPAN(ガラパン)は島の西側、車で30分ほどの距離だ。ガラパンに行く用事は特になく(気になるステーキ屋さんがあるので、一度くらいは夕飯摂りに行こうかなというくらい)、2kmほど北上したところにあるスーパーに向かうことにした。部屋の冷蔵庫に、風呂上がりに飲むための水やジュースを詰めておきたい。ビールも安かったら買って日本に少し持って帰ろう、と、目的はそのくらいのささやかなお買い物だった。
見たことのない野菜もありました

島内にはDFSが運行するバス(無料でガラパンのDFSまで送迎してくれる。でも当然途中下車はできない)と、それとは別のショッピングバスが走っている。3ドルの1日券を購入し、1駅分バスに揺られてスーパーへ。バスを降りると目の前に「Meitetsu Shopping Center」(名鉄マート)、道路を挟んだ向かい側には「Pay-less Supermarket」(ペイレス・スーパーマーケット)がある。名鉄マートは日系なので馴染み深い日本の食材も多く並ぶけれど、それを除くと品揃えはだいたい同じ。さすがに野菜や果物を買って日本に持ち帰るわけにもいかないけれど、見慣れぬ野菜が並んでいるのを興味深く眺め歩く。ああ、懐かしいものがいっぱい。見慣れないものもいっぱい。

「あー、アメリカでお世話になったバターがある!」
「冷凍だけどアンガスビーフだ〜。おいしそう〜」
「息子が好きだったコーンフレークはあるかなぁ」
目的はジュースやビールだったはずなのだけれど、あれが安いこれが懐かしいと、たっぷり眺めて歩いてしまった。
「あー、これ、アメリカで気になって気になって買わなかったミートボールのパスタソース缶だ……買っちゃおうかなぁ」
「ココナッツミルク缶が79セント!買っちゃおう買っちゃおう」
タコスのスパイスやコンビーフまで買い物して、ビールも12本購入して大荷物。近くのホテルにあるレストランで御飯を食べようかとも話していたのだけれど、とてもじゃないけど持ち歩いていられないねとそのままヨレヨレとバスに乗ってホテルに帰還。

「Meitetsu Shopping Center」にてお買い物
Instant Noodle SUPREME
Chef BOYARDEE Spaghetti & Meatballs
TEPTIP Coconut Milk
Beer (San Miguel)
Beer (Corona)
Juice (Martnl.Apple)
Juice (7-UP)
Juice (Ginger Ale)
Juice (Dr.Pepper)
3×$0.69
$1.39
2×$0.79
6×$1.10
6×$1.75
2×$0.99
$0.60
$0.89
$0.60

「Pay-less Supermarket」にてお買い物
Fajita Spice (MacCormick)
Fajita Spice (Western Family)
Taco Spice (MacCormick)
Taco Spice (ORTEGA)
OX & PALM Corned Beef
Rosarita Traditional Refried Beans
Water
$1.19
$0.59
$0.89
$0.99
$1.69
$0.99
$1.25

ブッフェ夕食

遊び疲れて、夕飯はもう手近なところで良いよねーと、夕飯はホテル内のブッフェ専門レストランへ。朝食もブッフェ、昼食もブッフェ、夕食もブッフェのみを提供するそのレストランは、翌日から3日間朝食のお世話になるレストランでもあった。6時半、夕食にはちょっと早い時間に訪れると、まだ客足もまばら。7時を過ぎてやっと混み始めた中、のんびりとあれこれつまんできた。
華やかなおかず

大人30ドル、子供15ドルで生ビールやワイン、ソフトドリンク各種も飲み放題になるのがありがたい。
「30ドルで食べ放題のうえにビール飲み放題だ〜♪」
「飲むぞ飲むぞ、喉乾いたぞ〜」
と、目当ての中心は"飲み放題ビール"。レバーを押し下げるビール注ぎの難しさに苦戦しながらも、3杯4杯とくっぴくっぴ飲んでしまってすっかり御機嫌になった。

メニューは和風、韓国風、メキシカン、アメリカンと、笑っちゃうほど色々。種類は豊富だったけれど、巨大鍋に作られたパエリアのような外見の親子丼があったり、天ぷらの脇にサルサ添えのイカリングフライがあってその脇には餃子があって……といったようなほんのり違和感を感じる料理の並びだったりした。
華やかなデザート

まずは冷菜コーナーから生牡蠣や茹で海老などを持ってきて、カクテルソースをこてこてつけながらビール片手に平らげる。サラダ系のものも春雨サラダっぽいもの、ポテトサラダっぽいものとあれこれ揃っている。果物やデザート類も豊富で、ソフトクリームマシーンも。イイダコとピーマンを串に刺したピリ辛味の韓国風料理やフライ類をつまんでみたり、マヒマヒと野菜の天ぷら(でもどこか味わいがアメリカ〜ン……)に大根おろしとだし汁をたっぷり添えて食べてみたり。あれこれひととおりつまんだけれど、実のところその味は「やっぱりブッフェだなぁ……」といった"可もなく不可もなく"という程度のもので、気がつくとキムチばかりをパクパクつまみつつビールかっくらって
「……うまー」
と呟いている自分がいたりした。サイパンまで来て、何やってるんだろう自分……と、我に返って苦笑い。

それでもなんだかんだでたらふく食べて、最後には色鮮やかなデザートコーナーからカスタードプリンやチーズケーキ、アップルクランブルなんかを皿に盛りつけてきて、紅茶を片手にぱくぱくと平らげる。濃厚さのない、やけにさっぱりしすぎた味のソフトクリームもいただいた。薄く大きく丸く作られたカスタードプリンがねちねちもっちりした舌触りで美味しかったなー。

Pacifc Islands Club」内「Magellan Room」にて
Adlut
Child
2×$30.00
$15.00

部屋に帰ってお風呂に入って、日記などつけていると外のステージから歌声が聞こえてきた。ライブ?ライブだなー、ライブやってんなー……とか言いながらも、疲れてしまって10時半頃就寝。初日から全力で遊んでしまったよ。