12月9日(木) ラッフルズとマーライオンとクリスマスキラキラ

母とシンガポール

12月頭。だんなが1週間の泊まり込み研修に行くことになった。秋田に住む母にしばらく顔を見せていなかったし、良い機会だから一度秋田に行こうかなと思う。

「あー、あのねー、私。12月の頭に、そっち行ってもいいかなぁ?息子連れて。だんなが1週間研修でいないのよ」
久しぶりに電話したところ、
「それじゃ、どっか旅行しない?ベトナムとかー、シンガポールとかー」
「……へ?」

唐突にそう言われ、そして行くことになったシンガポール。バタバタと決まったことで、しかも私はいまいち貯金もなかったので(旅行代金はしっかりワリカンよ)、できるだけ安く行こう、と、久しぶりに旅行会社のパックを使うことにした。H.I.S.の「子供と行くシンガポール」とかいうプラン。大人料金は割高だけれど子供料金が設定されていて、それが幾分かお得な感じで、総合的に見るとほんのり安上がりかなぁという内容だった。手頃なホテルを選択し、観光はつけずに飛行機とホテルとその間の送迎だけのプラン。「あっちの空港で、胸にこのボールペンぶらさげて出口を出てくださいねぇ」という指示がちょっと恥ずかしかったけれど、でも、海外2度目の母(1度目はやっぱり私と、10年以上前に韓国3日間)には送迎がついていたりする方が、きっと安心。私は今回、母と息子の2人の面倒をみなければいけないんだぞと気合い入れて、スーツケースに荷物詰めていざいざと空港に向かった。

ANA便指定の、水曜日午後4時半発のシンガポール、チャンギ空港行き。約7時間のフライトで、時差は1時間。離陸までにちょっともたついたのか、到着は予定よりちょっと遅れて現地時間の夜11時を回る頃になった。息子は機内の各座席についていた端末でテレビゲームをしまくっていて少しも眠らず、それになんとなくつきあっていた私もほとんど一睡もしていなくて、到着する頃にはもうヨレヨレだ。胸に真っ赤なボールペンぶらさげてゲートを出ると、「サザエさん」の波平みたいな顔つきの現地係員さんが待っていた。日系のシンガポリアンで、マレー語と中国語、そして微妙になまりのある英語と片言の日本語を話す。バンに私たち以外に2組の日本人旅行客を乗せて、彼らが宿泊する別のホテルに立ち寄りつつ、今回の宿に送ってもらった。

その車内は、波平(仮名)のシンガポール案内と営業トーク。
「お客サン、シンガポール何度目?何回も来たノ?」
「うんにゃ、1回目。初めてです」
「ハヂメテで、観光つけてないノ!? トモダチ、こっちにいるの?」
「うんにゃ、いませんよー。旅行の目当ては観光じゃなくて、ショッピングとハイティーだから、観光は特にいらないの」

つたない英語と日本語をチャンポンにして波平(仮名)とコミニュケーション。一緒のバンに乗った、社会人数年目らしき女の子2人連れも、大学生らしき男の子2人連れも、どちらも観光つきのプランだったらしく、「明日はロビーに8時半集合ネー、明後日も同じネー」とか言われていた。私は、団体でぞろぞろ行動したり、初対面のガイドにべったりつかれて観光したりするのはとにかく苦手なので、たとえ初めての異国の町でもそういうの無しで歩きたいと思ってしまう。

シンガポールでは、路上にゴミを捨てちゃいけない(罰金)。チューインガムを吐き出すのもいけなければ、海外から持ち込むのもダメ(罰金)。横断歩道の周囲50mのところで道路を横断しちゃいけない(罰金)。これダメあれダメと規則は厳しいけれど、でも窓から眺める深夜の町はとても整然としていて、屋台が並んで見えるフードコートっぽいところすらあまり雑多な印象がなかった。もう12時になろうかという時間帯なのに、赤っぽいライトの下、私の息子くらいの子供を連れたお母さんたちが屋台で御飯を食べているのも多くみかけた。台湾でもそうだったけれど、シンガポールのお子さまたちも宵っぱり?波平(仮名)の話によると、今はロ〜ングバケーションなのだとか。学校は6週間の休みに入っており、だから繁華街も混雑するんだよ、ということだった。

今回の宿泊ホテル「York Hotel」に到着したのは12時を回っていて、部屋に入って顔洗っただけで風呂も入らずベッドに沈没したのが12時半。シーズンオフで部屋がかなり空いていたらしく、無料でデラックスルームにグレードアップしてくれた。申し込んだ内容では息子と添い寝することになっていたはずだけど、ソファベッドがちゃんと用意されている。ベッドは普通のシングルサイズだけれどバスルームもそこそこ広いし部屋もたっぷり余裕のある広さだし、清潔でアメニティもちゃんと揃っていてなかなか良い感じ。冷蔵庫もついていて、買ってきたものを入れられるようなスペースもちゃんとある。ベッドの他には2人分の椅子とガラスの天板の小さめテーブル、テレビ台と広々したライティングデスク、チェストつきのスーツケース置き場がついていた。窓ガラスはひどく汚くて、しかも眺めは少しも良くなかったけれど、ホテルでだらだらする旅行じゃないからこれで充分。シンガポールの"銀座"とも言える繁華街、Orchard(オーチャード)まで徒歩5分ほどだ。地下鉄駅までは徒歩7分くらいだろうか。

「あらぁ、あんたたち、もう寝ちゃうの?お風呂は?私はお風呂入っちゃうわよー」
1時を過ぎるまでバタバタと色々動いていた母をよそに、私と息子は早々に沈没。ぐー。

York Hotelの朝御飯

旅行中、つい早くに目が覚めてしまう私は、やっぱり今日も6時には目覚めてしまった。だんなと一緒の旅行では、私が一人静かにあれこれ活動して夫と息子が起きるのを待つのだけれど、今回同行する母も、早起きな人。
「息子が起きないねぇ……」
「でも起こすのも可哀想でしょ」
と、2人で悶悶と夜明けを待った。夜は7時頃まで明るいというシンガポールだけれど、でも夜明けはちょっと遅いかな。7時を過ぎてようやく明るくなるという感じ。

こういう時にはパソコンに向かう(で、日記や旅行記をしたためる)のが良いのだけれど、困ったことにこのホテルのコンセントは全部3ツ口タイプ。アジアだったら大抵どこでも日本のコンセントがそのまま差せるような口がデスク脇なんかに数ヶ所あったりするものだから、すっかり油断して変換コネクタを持っていくのを忘れてしまっていたのだった。ならばとハウスキーピングに電話してみれば、「ごめんなさいねー、全部出払ってるわー」と言われちゃうし。結局、今日、外出ついでにショッピングモール内の電器屋さんに駆け込むことになったのだった。ドライバーとか接着剤とか電話線とか売っているようなお店で
「コネクタあります!? ジャパニーズタイプのをシンガポールスタイルに変換する……えーと、エレクトリックコネクタ……?ソケット……?なんていうの、アレ……」
しどろもどろに説明したら、店員さんはちゃんとわかってくれて「はいこれ6ドル〜」とブツを出してきてくれたのだった。やれやれ。バッテリーもすっかり使い切ってしまっていたから、メールチェックすらできなかったよ……。

平麺の炒めがシンガポールチック?なホテルのブッフェ朝食 で、息子が起きるのを待って、7時半頃に朝御飯。
宿泊プランには3日分の朝食もついていて、1階のカフェテリアでブッフェ式の朝食が摂れるらしい。私は
「初日と最終日はともかくさー、中日くらいは外で食べようよ朝御飯〜」
と言っているのだけれど、母は
「いいじゃない3日ちゃんとついてるなら、朝御飯はそれで」
と言う。ううう、だんなとだったらこういう時に意見が割れることは絶対ないのに〜と思いつつ、「ま、内容が充実してればそれでいいし、充実してないなら……母が折れてくれるかも」と食事内容に期待することにした。

これは美味しかった、マカロニチキンのスープ 私にとっては幸いなことに、ホテル朝食の内容は今ひとつ。
パックをあけただけ、みたいな、いまいち味気なくて甘いばかりのアップルジュースやオレンジジュース、グレープフルーツジュースの他に牛乳とコーヒー紅茶。パンはトースターつきの食パンとクロワッサンとチェリーのデニッシュ、そして妙にバサバサした食感の小さめホットケーキ(冷凍ものみたいな味がする……)。南国なのに、それらしいフルーツは全然なくて、スイカと酸っぱいパイナップルの他には缶詰をあけただけみたいな桃と梨。サラダもなくて、あとは中央でスタッフが無表情にひたすらに焼きまくっては皿に積んでいる半熟の目玉焼きと、少しのシンガポールチックなおかず数品。鶏肉入りのマカロニスープと、オイスターソース味の平麺の炒めものだけが、ちょっと嬉しい存在だった。

「ママン、ママン……満足?」
「……ぜんぜん……」
母は、新鮮な生野菜のサラダと、新鮮なフルーツが大好物。フルーツとサラダが種類豊富に揃っていて、更に絞りたての生ジュースがあるような朝食が、母には嬉しい内容なのだ。だから、このホテルの朝食は「全然ダメ」になるらしい。今日、サラダコーナーにあったのは、「"酸っぱい"という表現はもっと酸っぱくない味のものに使うものだ」と言いたくなるほどにガツンとビネガーの効いたコールスローサラダで、それを皿に取ってきた誰しもがそれをそっと皿の隅に残していくという風味のものだった。ザワークラウトとかピクルスは嫌いじゃないけれど、でも、こりゃあんまりじゃないかという酸っぱいコールスローだったのだ。

で、私が改めて提案するまでもなく「明日の朝は別のところに食べに行きましょう」ということになって、一番平和的な解決がなされちゃったのだった。

でも、全体的にイマイチではあったのだけれど、スープが素朴かつ微妙にジャンクな味で、これはなかなか。マカロニが浮かぶスープには裂いた鶏むね肉が入っていて、上から好みで刻み葱とフライドガーリックをバラッとかけていただく。この葱とにんにくの風味でいくらでも食べられそうなスープで、ついついお代わり。

Orchard 「York Hotel」内ラウンジにて
朝食ブッフェ
 カスカスパンケーキ
 目玉焼きwithケチャップ
 カリカリベーコン、フライドポテト
 ベイクドビーンズ
 炒め平麺
 チキンマカロニスープ
 缶詰の桃と梨入りのヨーグルト
 アップルジュール、牛乳
 紅茶

アラブストリートでバラジュース

「シンガポールって、可愛い雑貨が買えるかしら?」
と、私の家に来ると「この布ちょうだい?こんなところにかけてあるってことは、いらないんでしょ?」と、人が心を砕いてセレクトした、わざわざ狙って飾ってあるバリのバティックをつんつんと引っ張って持ち帰ろうとする我が母。私のお気に入りを持っていかれちゃたまらないので、そういうものが買えるエリアをせっせと歩こうというのが、一応今回の旅の目的だ。

「では今日は、アラブ人街行ってインド人街行って、余裕があったらマーライオン見て船乗って、で、3時のお茶にラッフルズホテルに行きましょう〜」
と、ホテルを出発。てくてく歩いて最寄り駅Orchard(オーチャード)に向かい、MRT(地下鉄)に乗ってBugis(ブギス)に向かう。滞在中、何度も地下鉄に乗るかもと思っていたのだけれど、結局乗ったのはこの1回だけ。タクシーが何しろ安くて、銀座から六本木くらいの距離をほんの200〜300円で行ってくれるものだから、一度乗ったらタクシーが手放せなくなってしまった。3人で地下鉄乗るのと変わらない料金でタクシーに乗れてしまい、今のスポットから次のスポットへと直接行けるのだからタクシーは本当に便利。

大気は蒸し暑く、24時間前まで寒い寒いとセーター着て歩いていたのが嘘のよう。街路樹はひたすら大きく育ちまくっていて、「もうちょっと育ったら、ラピュタの木になれるんじゃないか」と思えるほどに巨大だ。そしてどこもかしこも花だらけ。そこここにある歩道橋までもが花に埋もれている。花だらけで木だらけで、そして清潔な町並み。どこを歩いてもテーマパークにでもいるような気分になってくるのがシンガポールの町並だった。母は十数メートルおきに足を止めて「あらぁ、あの花、なんていう花かしら」と上を見上げたり、路上の花を見るためにかがんだりしている。

パステルカラーの並ぶお店は、全部布屋さん

で、やってきた、半径200mほどの距離にキュッと小さく集まったアラブ人街。雑貨屋さん食べ物屋さんの類は、あるようでなかなか見つからず、中心のArab Streetに並ぶのはひたすらに「布」を扱うお店。インドシルクやバティックなどがこれでもかとメートル単位で販売されていて、既に仕立てられているテーブルクロスやソファーカバーというのはあまり見かけない。ここぞとばかりにガバッと大量の布を買っても良かったのだけれど、
「なんか、ちょっと、違うんだよねぇ……」
「そうそう、壁にかけられるような感じのが欲しいのよねぇ……」
と、あちらのお店をうろうろ、こちらのお店をうろうろ。結局、私はこれ!というものが見つからなかったのだけれど、母はソファーカバーになりそうな大判の深い青色の模様つきの布を1枚購入し、そのあたりで疲れたので休憩することにした。通りにゴロゴロと椅子とテーブルを出している、セルフサービスのカウンターだけのお店に適当に入る。

「あっはっはっは、メニューが全然わからないよ。なんだこりゃー」
「あ、私、これはわかるわよ。"ネスカフェ"って書いてあるわよ」
壁のメニューには「KOPI GLAM SPECIAL」「TEA CINO」「BANDUNG」「HALIA SUSU」「TEA HALIA / LIMAU」「MILO / HORLICKS」「KOPI SUSU」「TEA TARIK」「TEA O」なんて文字が。"KOPI"(コピ)はわかる。コーヒーのことだ。確か練乳入れて飲むんだっけ……と、そこまではわかるのだけれど、その後がもうさっぱり。SUSUってなんだ、CINOってなんだ、と、普通の紅茶を頼みたいだけだったりするのにもうわからなくなってくる。

で、
「あ、私、このライムティーってのにするわ」と母。
「じゃあ私、冷たいコピ頼んでみるよ。カフェオレみたいなものだもんね」と私。
「ぼくねぇ、ぼくねぇ、あっちのピンクののみものほしい!」と息子。

息子の目線の先には、ぐーるぐーると中のジュースが攪拌され続けている、日本でも普通によく見るタイプのジュースマシンが置かれていて、その中にはミルキーなピンク色の怪しいものが入っていた。……イチゴには見えないぞ。
「……マジ?あれ、飲んでみるの?」
「うん、のんでみるー」
「……味、知ってるの?」
「ううん、しらないけどー」
息子、果敢だ。アルコールだったりしても困るので(←まぁ、そんなことはないと思うけど)一応お店の人に聞いてみる。

「んっとー。これ、なんですか?」
「〜〜〜(説明してくれたけど、さっぱりわからず←英語じゃないみたいに聞こえた……)」
「え、えっと……甘いの?」
「イェース、シロップシロップ、なんとかシロップ」
「じゃ、じゃあこれ1つください……」

私の前には、苦めの濃いコーヒーに練乳だばだば入れて溶かして氷をドカドカコップに詰めたような、そんな飲み物が。疲れた足を優しくいたわる嬉しい甘さ。でも甘過ぎなくて良い感じ。もとより私は練乳大好きなので、この味が嫌いなはずがないのだった。うん、美味しいなー、アイスコピ。
母は、生のライムをぎゅうと搾ってコップの底に沈めてあるかなり甘めのアイスティー、息子の前には、かのピンク色の怪しい飲み物。飲んでみると、ほのかに甘く、牛乳たっぷりという感じでなかなか美味しい。ちょっと独特の香りがあるけれど、果物の味ではないようで。

後になってわかったことだけれど、これは「バンドゥン(Bangdong)」という飲み物だった。アイスミルクにバラのシロップを入れたものなのであるとか。バラと言ってもそんなにツンとくる匂いはなく、風呂上がりに一気飲みしたいような味だった。

Arab Street の喫茶店にて
アイスコピ
$1.00

インドのクレープは、巨大だ〜「Komala Vilas」

これは花屋?それとも果物屋? アラブ人街をざっと歩いたところで、今度はそこから徒歩15分ほどの距離にあると思われるインド人街「Little India」を目指す。アラブ人街とまたちょっと違った空気の匂い。昼飯時が近いということで、色々なところから食べ物の匂いが漂ってくる。布地を扱うお店も多いけれど、今度は衣類品が並ぶ店が多い。果物屋さんとも花屋さんともつかない、極彩色をぶちまけた屋台もあった(右の写真)。

もうランチタイムも間近になってきたところで、何かお昼御飯も食べなくちゃというところ。今日の昼御飯については何の算段もしてなかったので(どのへんにいるのかも予想できてなかったということもあって)、アラブストリートからリトルインディアに突入してほど近いお店に入っちゃうことにした。ガイドブックから切り抜いて、色々自分で書き込みして持ってきたマップを出して、最初から印刷されていたレストランの記述に目が留まる。……えーと、このお店、野菜料理が美味しいカレー屋……って紹介されていたんだっけ。

そこは「Komala Vilas」(コマラ・ヴィラス)という、南インドのベジタリアン料理の専門店。今日は午後にアフタヌーンティーの予約も入れていることだし、野菜料理ならさらっと食べられるかしらという思いがあって、地元のお客さんで混雑しているそのお店に入ってみたのだった。日本人はおろか、"インド人でない人"が私たちだけ、みたいな状態。メニューは壁に写真入りのが載っているけれど、どれが何やら、今ひとつよくわからない。ほとんどが、ナンのようなパンと、数種類のおかずのセットという感じだった。5〜6人いる他のお客さんは、皆さん器用に右手だけを使って、そのパンとおかずを食べていらっしゃる。

「……どれが、オススメですか?どれが美味しい?」
お店の人にたどたどしく英語で伝え、「それならナンバー12と14がいいんじゃないかな」なんて事を言われる。「息子さんにも1皿どうだい?それならナンバー9かな」なんて事も言われ、かくして1皿$2.5前後(150円くらい)の料理を3つ注文してみたのだった。値段が値段だから、さぞさっぱりと少量のものを食べられるのかな、と。

インド
これが母のBhattura
インド
これが息子用、Paper Dosai
インド
んで、私のOnion Rama Masala Dosai

やってきたのを見て、驚いた驚いた。直径30cmくらいのステンレスのトレイに、ボボーン!ボババーン!バボーン!と、カメラのファイダーにおさまりきれないほどの色々な物体が乗っている。「これ、息子さんに良いよ」と言われたものが一番の迫力の外見で、ただただびっくり。この、高さ50cmくらいありそうな円錐形のこれって、一体なにー?

後にガイドブックを確認したらちゃんと載っていたこの物体、"Paper Dosai"(ペーパードセイ)は米と豆の粉を練って作るインドのパンケーキ、なのだそうだ。円錐形にぐるりと薄い生地が巻かれており、とてもとても薄いのでバリバリポリポリ簡単に食べられる。息子のそれはほのかにチーズの味がして、カリサクッとした食感がとても気持ちいい。添えられているのは、辛すぎない程度にじわっと辛いサラリとした野菜のカレー、おからに似た口当たりの少し酸味のある和え物のようなもの、ほんのり辛いトマト味の煮込み野菜。それらを適当にバシャバシャと生地を浸しつつ口に入れる。周囲のインド人を見習って、使うのは極力右手だけでがんばってみる。

私の前には、玉ねぎ入りの"Dosai"。パタンパタンと折り畳まれて、その内側にカレー味のじゃがいもが巻かれている。更に3種類、野菜料理も。母の前にはンプーッと丸くふくれた生地がやってきて、つついた途端にペシャンとへこんだ。こちらは生の玉ねぎと唐辛子、そして豆を煮たのとカレー味のじゃがいもが添えられてきた。うわー、知ってるようで全然知らない味のものがたくさん出てきたぞー……。

「あっはっは、こりゃすごいねー」
未知の食べ物にさほど抵抗のない私は、「うわー、パリパリだー」と喜んでいる息子と一緒にうきうきと食べ物を口に運び始めたのだけれど、母はそういう"ちょっと濃いめの異文化との遭遇"みたいなものは苦手。その異文化が油っこい系統だと更に苦手だ。おそるおそるその"ンプーッ、ペシャン"のピザ生地様物体を一口ちぎっては口に運び始めたけれど、「こういうお店はちょっとイヤー」と、顔にありありと浮かんできてしまっていた。……ママン、ごめーん……。

「うっひゃー、それにしても、すごいよね」
「……全部、食べられるかしら」
「ぼくはねぇ、むりとおもうよー」
それぞれ勝手な事を言いながら、各自せっせと目の前の炭水化物を野菜の煮物と交互に口に運ぶ。ファーストインパクトがなにしろ「未知との遭遇」という感じだったけれど、味はどれもなかなかのもの。どれも野菜そのものの味を大切にしているような味つけで、辛く感じるものもほとんどなく、3種類のパン類はどれもこれもが香ばしくて風味が違う。焼きたてほこほこなのが何より嬉しい。息子のチーズ味のそれが一番好みな味で、思いきり空腹だったならいくらでも食べられそうではあったのだけれど、でもこれ、案外とオイリー。"ンプーッ"と膨れていたそれなんかは、明らかにたっぷりの油で泳がせて揚げたような生地だったりして、食べた分量は少なめでも案外と早く満腹感を感じてしまう。暑さのせいで、頻繁に水分を摂取し続けてきたのもいけなかった。胃袋の中でパンがもこもこ膨れていくよ。

「……うう、美味しいのに、全部は食べられない……無理……」
「私はもうダメね。由紀ちゃん、残り食べる?」
「無茶言うなー」
「ぼくも、もうダメー。おかあさん、食べて?」
「お前まで無茶言うなー」

結局、私の皿が一番、空っぽに近くなるまで頑張ったとはいえ、全員各皿を残すに至ってしまった。
こんなに美味しいのに、ごめんなさいすみません……と周囲を見渡せば、ローカルなお客さんたちは、皆さんそりゃもう旨そうに全員綺麗に皿を空にして帰って行っている。「これが旨いよ」と教えてくれたおっちゃんは、皿を下げるときに
「美味しくなかったかい?」
と、ほんのり悲しそうな顔になっていた。
あああああ、ごめんなさいごめんなさい……すんごく美味しかったんだけど、でもでも1皿多かった……。

Little India 「Komala Vilas」にて
私 : Onion Rama Masala Dosai
母 : Bhattura
子 : Paper Dosai
$2.6
$2.8
$2.2

初めてのヘナ・タトゥー

食後、引き続きリトルインディアの散策。
「ここにね、綺麗な布屋さんがあるらしい……」
と、入ったアーケード街の中には、残念ながら期待のお店は見つからなくて、でも私はヘナ・タトゥーのお店を見つけてしまった。

「ヘナ」とは、ヘアカラーの材料などにも使われている、植物の名前。粉末にしたヘナを水などで溶いてペーストしたもので手足に模様をつけると、それが肌を着色して簡易入れ墨のようにしてくれるという。植物なので体に害はなく、つけた模様も数週間で綺麗に消えてしまう……らしい。一度どこかで知ってから、機会があればやってみたいなと思っていた。

様々な図案が描かれた看板の前で立ち止まると、
「ジュウドルカラ、ジュウドル」
と片言の日本語でお店のおねぇさんに話しかけられた。黒い髪に茶色がかった肌、でも目は恐ろしく綺麗な青の、紫色の爪をしたおねぇさん。簡単な図柄なら10ドル、ちょっと凝ったものにすると15ドルよー、なんて言われ、お願いしちゃうことにした。両手の手首から指にかけて模様をつけてもらって、合わせて40ドル。2400円くらいだった。帰り際、「これで自分でも描けるわよーん」と、長さ15cmほどの絞り袋入りのヘナペーストも教えてもらって買ってきたのだけれど、これが2ドル(120円……)。自分で絵が描けるなら、すっごく安く材料は手に入るようだ。
ヘナをにょろにょろ〜

「やーめなさいよ、由紀ちゃんったら」
「やめなさいよー、おかあさんってばー」
母と息子は「そんなことするな」と非難囂々。でも、一度やってみたかったんだもんね、やっちゃうんだもんね、と、10分ほどかけて両手にニョロニョロと模様を施してもらった。真っ黒な泥状のペーストを小さな小さな絞り袋でにょろにょろにょろ〜っと。腕に黒い泥がのたくっているような仕上がり直後の様子は、その泥ペーストがボコボコと盛り上がり、確かにちょっとグロテスクだった。でもこれ、洗って落とすか何かするんだよね。

「はい、これでおしまい」
こすっちゃダメよ絶対ダメよ、鞄の中のお財布も連れの人に出してもらうのよ……なんてことを伝えられ、「では私はこの後はどうすれば?」と尋ねてみる。
「3時間は洗わないでね」
と、ただそれだけだった。腕に塗った泥、これこすったら"アート"は台無しになっちゃうわけで、でも両手首にはぐるり一周模様があるし、これからお茶しに行く予約が入ってるし、改めてそれを自覚してちょっと愕然とする。ちょっとくらい触っても大丈夫な状態になるには、一体どのくらいかかるのかしら。

「ママンママン、私の代わりに財布出して……マップ持って……」
「まったくもう。だから言ったじゃない。イヤよ、そんな怪しい……」
「おかーさん、きもちわるいよ、それ」
身内に更にクソミソに言われてしまいつつ、鞄を肩にひっかけるのも必死という感じで(だって、肩からズリ落ちたらそれが悲劇に繋がるし……)、とりあえずヨタヨタとインド人街を後にすることになった。

左手♪
翌朝の左手
右手♪
こっちは右手

さて、このヘナタトゥー、店を出て30分も経った頃には、最初に描いたあたりの線が乾燥してポロポロした感じに変化した。部分によって泥状物体の厚みが違うので全てが変化するのに時間がかかったけれど、2時間も経った頃には全体がカサカサポロポロした風になって、風に吹かれただけでカサカサと足下に散るように崩れていった。軽く指先でつついたりしていたら泥っぽいものは全て落ち消えてしまい、きっかり3時間経った頃(ちょうどハイティーブッフェが始まる直前だった)に軽く水で洗い流したら、半端に残っていた泥も全て流れて消えた。

残ったのは、適度に肌色に馴染む褐色で残った模様。左手は甲に大きな花が描かれ、ツタのような模様が手首と人差し指に伸びている。「模様、変えるわね」とお店に人が勝手にやってくれちゃった右手は(左手の模様は、私がデザインブックから選択してお願いした)、手首にぐるりとリング状に模様が入り、それに絡むようにひまわりみたいな花の絵が2、3ポンポンと。そしてツタのような模様が5本の指全てにくねくねとのたくっていた。うん、けっこう綺麗かも。

あまりゴシゴシこすっちゃいけないそうだけれど、水をかけるくらいなら問題ないそうで。結局、その後6日くらいは割と綺麗に模様が残っていたけれど、それから徐々に線が薄くなり、10日目くらいにはほとんどわからないくらいに絵柄は消えてしまったのだった。

Little India 「Little India Arcade」内ショップにて
ヘナ・タトゥー
ヘナペースト
2* $20
$2

海から見るマーライオン〜「River Cruises」

カラフルな、積み木のような町並

両手が思うように使えなくなった私と、そんな私に呆れる母と息子。歩き疲れてきたこともあって、ショッピングはもういいね……とこのエリアを後にすることにした。次の目的地は"City"。数時間後にアフタヌーンティーの予約を入れてあるラッフルズホテルをはじめ、各種博物館のあるエリアで、シンガポール川の河口にはMerlion Park(マーライオンパーク)もある。さほどマーライオンのオブジェ自体には興味はないのだけれど、「浅草行ったら、一応雷門は見ておかなきゃね〜」といった気持ちと似たようなものを抱えて、この公園を訪れてみた。
これが噂のマーライオン

2002年の秋に、200mほど離れた場所から移転してきたというマーライオン、現在は美しい広々とした公園に設置され、河口に向かってだばだばと勇壮に水を吐いている。セイレーンとかハヌマーンとかスフィンクスのような精霊とか聖獣などの類かと思っていたのだけれど、数十年前にシンガポールの観光協会の手によって作られたものなのだそうで。

「シンガポール」の「シンガ」とはライオンの事で、これは11世紀にやってきたインドネシアの王族がこの地に上陸したときに不思議な動物を目撃し、「これはシンガ(ライオン)に違いない!」と「シンガ(ライオン)プラ(都市)」と名付けたのが名前の起源であるとか。更に昔には「海」の意味を持つ「タマセク」という呼び名がシンガポールの地についていたことから、"海の象徴"である魚の下半身とライオンの上半身を持つあのオブジェが作られたのだそうだ。

だんな曰く、「マーライオンは"世界三大がっかり"のひとつなのだ」そうで。なんでも、この高さ10mくらいの巨大なマーライオンは後に作られたそうで、一番最初の"本来のマーライオン"は高さ2mくらいの可愛い可愛いものなのだとか。「マーライオンを見にきたぞー」で、人の背丈ほどのオブジェ1個はあんまりだというので、このでっかいものが作られたらしい(今では別の場所にタワー型の巨大マーライオンもあるし)。
その、「可愛いサイズのが本来のマーライオン」というのを知らずに行った私たちは、
「あれ、こんなところにこんな可愛いマーライオンもいるねー」
なんて、その「本来のマーライオン」の前は綺麗にスルーしてしまったのだった。がっかり以前の問題というか……。

ちなみに、他の「三大がっかり」は「コペンハーゲンの人魚姫」(後ろの背景が造船所で悲しいらしい)、「ベルギーの小便小僧」の説が有力、小便小僧ではなく「オーストラリアのオペラハウス」が挙げられていることも多いらしい。どちらにせよマーライオンは「世界三大がっかり」のひとつだそうで……(でも、「ああ、シンガポールのガイドブックの表紙によくある、ここに来たのねー」という感慨はあったよ)。

さすがにこのあたりには観光客がいっぱい。海風は適度に心地よいけれどやはり蒸し暑く、冷房よけにと持ってきた長袖のジャケットは今日のところはまだ全然出番がない。香港などと同じく、シンガポールもレストランやショッピングモール、地下鉄などの冷房のきつさは相当なものがあると聞いていたけれど、旅行を通して「こりゃ寒いなぁ」と心底思ったのは地下鉄の中ぐらい。元来私は暑がりなので、どこに行ってもさほど寒さを感じることはなかった(でも、レストランでもっこもこに着ぶくれている人もよく見たので、冷房が苦手な人にはやっぱりつらいものなのかな)。

「うーん、マーライオンパークと言っても、別に他に何があるわけじゃないのか……」
周囲には小洒落たレストランなどもあるけれどそういうところで休憩する気になれず、周囲をぷらぷら。ああ、そういえば川を遊覧する船なんかもあったっけー……と思っていたところで、遊覧船の客引きに声をかけられた。
「ボート、ドウ?イッシュウ、45プン。オトナ、15ドル。コドモ、8ドルダケド、7ドルデイイヨ」
辿々しい日本語でそう話しかけられ、値段もぼったくられているようじゃなかったのでその船に乗ってみることにした。マーライオンのほど近い船着き場から船に乗り、シンガポール川を数キロ上流にのぼり、同じルートを戻って最後にマーライオンの近くをかすめて同じ船着き場に到着しておしまい。

乗った船は、漁船に毛が生えたような感じの、木製ベンチがずらりと並んだ質素なもの。ただ、乗ったお客は私たちの他に日本人の中年夫婦1組だけで、ほぼ貸し切り状態でゆったり船に乗っていることができた。川の両側には大きなホテルがいくつも並び、そのホテルの壁や入り口には大きな大きなクリスマスリースが飾ってあったりする。
「あー、あのへんの並んだお店、綺麗だねー」
なんて、のんびりと川沿いに並んだ銅像を眺め、カラフルな模様のついた橋の下をくぐって45分のクルージングを堪能した。乗り物大好きな息子も大喜びだったし、疲れた足をここで休ませることができたのもありがたかった。

時間も頃合いになったし、公園からはてくてくてくてく10分ほど歩いて、次の目的地ラッフルズホテルに。

ラッフルズでハイティーを〜「Tiffin Room」

ラッフルズもクリスマスの装い 母にとって、Raffles Hotel(ラッフルズホテル)は、そりゃもう憧れのホテルなのであったらしい。
「泊まるのは無理でも、せめてお茶しに行きたいわねー。でね、ホテルでいっぱい写真撮ってくるの♪」
なんて言っていたものだから、ではその願い叶えましょう、と、日本からE-Mailでハイティーの予約を入れておいたのだった。

このホテルのハイティーは、ブッフェ形式。イギリスの植民地となっていた時代があるシンガポールでは、あちこちのホテルで"High Tea"(ハイティー=アフタヌーンティー)を楽しむことができるのだけれど、ブッフェ形式になっているところが多いのが特徴。そして焼き菓子やフルーツ、ケーキなどの甘いものだけではなく、中華の点心っぽいものとか、麺料理やカレーなどの軽食が用意されているところが多いのも特徴らしい。ラッフルズホテルのハイティーは当然ながら日本人観光客に大人気で、行く時期によっては「店のお客の9割が日本人女性」なんてこともあるらしかった。異国の地で、わざわざ他の日本人がうじゃうじゃいるようなところにはあんまり行きたくない……というのが、実のところ私の本心で、しかもホテルで記念撮影しまくるぞという行為もちょっと恥ずかしくもあり、心の隅でちょっとだけ「とほほほほー」と思いながらのラッフルズ訪問。あ、でも、ホテルショップでのお買い物はかなり楽しみだ。
純白の回廊

で、結局、"日本人うじゃうじゃ"の心配は杞憂に終わった。12月の初旬なんて時期は、勤め人ならば皆さん忙しくて当然の時期なのだ。そういえば成田でもガランガランだったものねぇ……と、"日本人うじゃうじゃ"じゃなくて"オージーうじゃうじゃ"(どうやらシンガポールにやってきている白人さんたちはオージーが主流なようで←訛ってるからすぐわかる)の中でのお茶の時間とあいなった。

純白のホテルの壁面は赤と緑でクリスマスの飾りがなされていて、天井がこれでもかと高い広々としたしつらえ。10以上のレストランとけっこうな規模のアーケード街を擁しているこのホテル、非宿泊客が立ち入れるエリアというエリア、どこもかしこも観光客でいっぱいだった。アーケードと客室棟の間にはうっそうと樹木が繁り、私たちが入ることはできない階上の廊下を宿泊客らしき男性がのんびりと歩いていくのが見える。
「はぁ〜、ここ、泊まってみたいわねぇ」
と母は言うけれど、宿泊代のお高いお安い以前に分の相応というものがあるわけで……私にはまだまだ当分無理そう、という感じ。いつかは泊まりに来てみたいと思うけれど、それにはまず、全部屋スイートタイプだというこの部屋にもれなくつく専属バトラーのサービスを充分使えるだけの英語力を身につけなきゃ、とも思うし。

午前中から雑多な町を歩き回りまくり、船に乗って潮風に当たったり、更には私の腕には怪しいヘナ・タトゥーが描かれていたりと大変ないでたちになってしまっていた私たちだったので、ホテルには玄関側からじゃなく、アーケード側から密やかに入ることに。まず最初にトイレを探して右往左往し、できる範囲で身だしなみを調えてから予約した「Tiffin Room(ティフィン・ルーム)」に向かった。正面玄関入ってすぐ左手にある、軽食のレストランという感じのお店だ。昼と夜にはインド料理のブッフェが供されていて、毎日午後3時半から5時までがブッフェスタイルのハイ・ティーの時間帯ということだ。
アツアツの点心の数々

予約時間ぴったりの3時半に訪れると、また客足はまばら。平日なので特に予約も要らなかったかもしれないけれど、でもブッフェ台にほど近い席に案内してもらえてありがたかった。「6歳の子供がいるんだけど」と予約の段階でちゃんと伝えていたけれど、それについても「全然かまいませんよ〜」というお店の対応で、実際、他にも子供連れのお客さんがちらちらと見受けられた。

席につくと
「紅茶にしますか?それともコーヒー?」
のお伺い。紅茶って、何の種類があるんですか〜?と尋ねてみると、1種類しかないとのことで、テーブルにポットが置かれることはなく、空になったカップにはその都度お店の人がだばだばだ〜と注ぎに来た。……で、よく見るとそのお店の人が持つポットにはざくざくとたっぷりのティーバッグが……(ほんのり悲しい……)。

壁際にずらーりとセットされたブッフェの内容は、噂通り、"しょっぱいもの"が案外と多かった。
まずは、日本でもお馴染みのスコーンとクロテッドクリーム、ジャム類。"フィンガーサンド"と表現するにはちょっと大きめな薄切りパンで挟んだ各種サンドイッチに、ブリオッシュ生地を使ったようなころりと丸いタイプのサンドイッチ類。そしてクッキーやタルトや生ケーキ、葡萄やパイナップル、スイカ、スターフルーツ、ドラゴンフルーツといった南国のフルーツ各種。そして"しょっぱいもの"系はチャーシューパイや焼売、焼き餃子やチキンカレーパイなどなど。蒸籠でしゅんしゅんと蒸されている中華まんなどもあってどれもとても美味しそう。
「これじゃ、昼御飯そのものが要らなかった?もしかして……」
甘いものは後にして、最初はしょっぱいものを食べよう……と皿にあれこれ点心を盛りつけてきて、心底そう思った。並ぶ料理はたっぷり1食分をカバーするくらいあった。

ほんのりカレーの味がしたモチモチした焼売や、お麩を甘辛く煮たような感じのもの、ポット状になったパイに鶏の煮込みが入っているものとか、甘い味噌が入ったチャーシューパイをサクサクと食べていると、紅茶よりも酒が恋しくなってくる。周囲を見渡すと、このホテル発祥のカクテル、「シンガポールスリング」を飲んでいるお客さんがやたらと多く、せっかくだからとひとついただいてみることにした。

チェリーブランデーとドライジンを使って作るほんのりオレンジ色が入ったような赤い色のカクテルは、表面に細かな泡が立っていて、楊枝に刺さったパイナップルとチェリーが添えられている。日本で飲むシンガポールスリングは、苦さが口に残るものが多い気がするけれど、ここのはかなり甘めな感じ。トロリとしていてジュースのようにくいくい飲めてしまう。しょっぱい点心と合わせるより、フルーツと一緒にいただく方が似合いそうなカクテルだった。うんうん旨いよ〜、と、昼から飲んだくれる私。
ちなみに、コーヒー紅茶の料金はハイティー代に含まれている。このシンガポールスリングはもちろん別料金で、そして息子用に頼んだオレンジジュースも別料金。

点心類から気になるものを1皿分つまみ、シンガポールスリングを飲み干したところで、いよいよアフタヌーンティーっぽいものをあれこれと。
ゆで卵に刻んだきゅうりやセロリを混ぜたようなサラダが挟まれたフィンガーサンドに、スモークサーモンのサンド。スコーンは小粒の干し葡萄入り。白くふわふわとしたクロテッドクリームは案外軽めの食感で、ほのかに酸味もあるものだった。サワークリームを少し混ぜてあるのかな?ブルーベリージャムを添えて、こてこてとスコーンにつけながらいただく。苺の乗った一口サイズのタルトとか、細かく刻んだ色鮮やかなミックスフルーツが乗ったタルトとか。シンガポールの郷土菓子と思われる、日本の和菓子にもちょっと似た風の"生菓子"的なものもいくつかあったのだけれど、手を出せぬまますっかり満腹になってしまっていた。……やっぱりこれ、昼御飯は全然必要なかった気がする。
これが「ボボチャチャ」

どれも洗練された美味しさの料理の数々だったのだけれど、でも正直なところを言うと「さすがラッフルズ!」というような感動はいまいち薄かった。点心の類はやっぱりそれ専門のお店の方がずっと美味しいなと思えてしまうし、スコーンやクロテッドクリームの味も「もっと美味しいの、どっかで食べたことあるわよね」という感じのもので。サンドイッチ類などは確かにとても美味しかったけれど、でも、わざわざ予約したり行列したりしてまでして必死に来るブッフェではないかなというのが感想だった。

そうそう、一番気に入ったのは、「Buh Buh Cha Cha」という料理(右の写真)。
キャンドルで温められていた小さめのボウルに入っていた白っぽいお汁粉みたいなものが気になって、
「……なんだこれ?」
と説明札を覗いていた私に、すぐそばに立っていた給仕の人が
「ぶぶちゃちゃ」
と。

「……ぶぶちゃちゃ?」
「イェース、ぶぶちゃちゃ」
「……甘いの?……ココナッツ味なのかな、もしかして?」
漂う匂いでそう察せられて尋ねると、
「そうそう、あったかいココナッツにあれとこれを入れて甘くしてねー」
と、教えてくれた。最初にその説明が聞けたらありがたかったのだけれど、いきなり脇から「ぶぶちゃちゃ」と呟かれてしまって、私はちょっとびっくりさー。

ブブチャチャは、ココナッツミルクのお汁粉みたいなもの。中にはタピオカとかぼちゃとお芋とナタデココが入っていて、甘すぎず、ほわんと優しい自然な甘さ。これがもう、すごくすごく美味しくて、お腹いっぱいになったときにいただいたのにお代わりしてきちゃったよ。このハイティーブッフェで一番美味しかったものが、このブブチャチャ。

City 「Raffles Hotel」内「Tiffin Room」にて
High Tea (A)
High Tea (C)
Orange Juice
S'Pore Sling
2* $31.50
$18.00
$8.50
$16.00

食後は、まださほど歩いていなかったホテルの中をうろうろうろ。
「由紀ちゃーん、そこ立ってー」
玄関先でカメラを構える母に
「やめてよママン、恥ずかしいよー。……撮るなら、私が撮ってあげるから。ね」
なんてガサガサしながらあっちをうろうろ、こっちをうろうろ。南国なので4時を過ぎても太陽はまだまだ高く、そして蒸し暑い。

ブランドショップには興味がないけれど、数十分かけてじっくりあれこれ見てきたのが、ホテルのグッズショップ「Raffles Shop」。ロゴ入りバスタオルとか食器類を始めとして、マグネットだ酒だ本だとラッフルズマークつきのものがあれこれあれこれ売られている。ちょっと洒落た雑貨もあって、「すてきすてきー」と眺め歩き、2つだけお買い物。

1つは、シンガポール名物「カヤトースト」用のジャム。カヤトーストは明日の朝に、それが名物のお店に食べに行くつもりなのだけれど、ラッフルズホテルのカヤジャムというのも売られていたので、試しに買ってみることにした。あとは、ホテルのロゴはどこにもついていない、クリスマス用のリース。大きな赤いリボンがついて金色の鈴が2つぶら下がっている、見かけのゴージャスさに比較して案外とお安かった(900円くらい)ので、「玄関に、これぶらさげよう〜」とお買い上げ。母は、ラッフルズマーク入りのマグカップを買っていた。

City 「Raffles Hotel」内「Raffles Shop」にてお買い物
Singapore Kaya
Mini Loop
$7.90
$14.90

そんなこんなでもう時刻は午後5時。
そろそろホテルに戻りたいと思いつつ、隣接している「Raffles City Shopping Centre」というショッピングモールも少しだけぷらぷらし、
「食料品のお店があるよ〜。ジュースとか水買ってって、ホテルの冷蔵庫に入れておこう」
と、食料品売り場をうろうろうろ。水とジュースと、あとは風呂上がりに飲みたい牛乳も少し……というつもりだったのだけれど、
「あ、このスープストック、おすすめだって聞いたなぁ〜」
と、顆粒コンソメを籠に入れてみたり、
「あぁ!ハインツのバーベキューソースだぁ……日本じゃバーベキューソースってあんまりないんだよねぇ……」
と、巨大なボトルを籠に入れてみたり、更には「百福 [虫可]仔麺線」なる、「煮込むだけでできあがり!」の麺線の素(麺線とは、台湾の煮込み素麺料理のこと)を発見してしまい、「だんなにおみやげ〜」と買うことにしてしまったり。数十分の間に、けっこうな大荷物になってしまった。これでもう、帰り道もタクシー利用決定だ。

City 「Raffles City Shopping Centre」内「Jasons Market Place」にてお買い物
Meiji Fresh Milk
Evian Water
Chilled Drinks
Mart App Juice
Heinz BBQ Sauce
Maggi Gran Stock
SF Noodle Oyster
4* $0.95
$1.85
$0.15
2* $2.00
$3.65
2* $3.00
$3.45

レシートを見て気づいたのだけれど、「Chilled Drinks」なんて項目で10円くらいの金額が取られている。どうも、「要冷蔵」品の牛乳なんかはともかくとして、常温コーナーにも置いてある水やジュースを冷蔵ケースから購入すると、こういう料金が取られるものであるらしい。果物や野菜のコーナー、肉や魚のコーナーを歩いて、
「うーん、品揃えは確かに南国っぽいけど、でもけっこう日本のマーケットに近いかも?」
なんて思っていたのだけれど、この「冷蔵料金」にはちょっとびっくり。ある意味合理的なのかしら。

さて、じゃあこのビル内にあるホテルの入り口あたりからタクシーに乗っちゃいましょうかね……と歩き、通り道にあった 「The Metropolitan Museum of Art」なる店にもふらふらと引き寄せられてしまった。ニューヨークのメトロポリタンミュージアムの公式グッズ屋さんだ。日本にもいくつかお店があるのだけれど、この店にしかないものはないかな……?と覗き、だんなへのクリスマスプレゼントによさそうな品を発見。METのキャラクター、カバの"ウィリアム"(エジプトの墓から出土した、青いカバ)のネクタイと、マグネット。"かばちゃん"なんてあだ名で呼ばれる我が夫、密かにカバグッズを収集しているのだけれど、カバネクタイってあんまり見つからないのよね。というわけで、ウィリアムのネクタイ。喜んでくれるといいな。

City 「Raffles City Shopping Centre」内「The Metropolitan Museum of Art」にてお買い物
William ネクタイ
William マグネット
$99
$33

クリスマス、キラキラ

ホテルに戻ると、もう6時半になろうというところだった。……おかしいなぁ、予定では、4時半頃には一度ホテルに戻ってちょっと休んで、で、夜の町に!と思っていたのだけれど(何が悪いって、私があれこれ買い物しているのが悪い)。

けっこう疲れていることだし、このままホテルの部屋に腰を落ち着けたら今日は二度と外に出られなくなってしまう……という強迫観念に駆られるように、
「軽くシャワー浴びてさ、で、すぐに外に出かけない?」
と提案する。母も息子も「まだまだ大丈夫だよ〜」という感じだったので、軽くひとっ風呂浴びてから最寄りの繁華街"オーチャード"目指してホテルを抜け出した。
もう、こんな感じにキラキラキラ

ホテルから繁華街までは歩いて10分くらい。日本の住宅街くらいの、街灯だけの明るさのところもあるけれど、車通りもそこそこあってあまり危険はない様子。他の旅行者も普通に歩いているみたいだし、そのあたりを夜に歩く治安の善し悪しはあまり考えなくて良さそうな感じだ。なにより今はクリスマス時期ということがあって、大通りに近づくとあらゆるビルに煌びやかな明かりがキラキラキラキラ。暗闇で暴漢に襲われる危険より、イルミネーションを口開けて眺めている間にスリに財布を取られないようにする事の方が重要みたいだ。

話には聞いていたけれど、すごいすごい、ほんとにどこもかしこもキラキラだ。大通り沿いの巨大な街路樹にはスダレのようにロープ状の明かり が吊られ、その通り全体のコンセプトが存在しているのかしてないのか、各店が全力をもって盛大にクリスマス飾りを展開しています、といった様相。どこを見ても「うっひゃー」という光景が広がっていた。これでもかと華やかな色を使った花を模したイルミネーションのアーチなんか、いかにも南国だなぁという光景だ。そして、平日の夜なのに、人通りもおそろしく多かった。日曜の銀座もかくやという人混みだ。

「すっごーい!クリスマス、すっごーいねー!」
「こらこら息子、手を離すなぁ!」
「由紀ちゃん、ほらほら向こうに立って」
「こんな人混みのところで無理矢理写真撮ろうとしないでよママン!」
色々と、もう大変。

夜景はたいそう綺麗だったけれど、旅行中の各場所で見てきたクリスマスツリーもそれぞれとっても素晴らしかった。数フロア吹き抜けのところにそびえ立つ巨大なツリーも多く、旅行を終えた頃には「5年分くらいのクリスマスツリーを見てきました」と、かなりお腹一杯な状態に。ここでちょこちょこ撮ったツリーの写真をまとめてみました。

クリスマスツリー
「Paragon」の天使つきのツリー
クリスマスツリー
これは「Raffles Hotel」ロビーの
クリスマスツリー
宿泊ホテルの金色ベースツリー
クリスマスツリー
「Paragon」店内。赤い花のツリー
クリスマスツリー
高島屋の3フロアぶち抜きツリー
クリスマスツリー
植物園にて。ひまわりがステキ♪

日本で生まれ育った私としては、「クリスマスといえば寒いものでしょう」なんていう感覚がどうしても存在しているものだから、タンクトップ1枚で汗びっしょりかいて、でもクリスマスでサンタクロースでツリーにイルミネーション……というのは少しばかり不思議な感覚。花を多用した、どこかあっけらかんとしたクリスマスツリーが南国の空気に良く似合う。ひまわりを使ったツリーはほんとに素敵だった。お持ち帰りしたいくらい。(……でも、日本のお茶の間には似合わぬ……)

これが本場の海南飯か〜「Chatterbox CoffeeHouse」

クリスマスイルミネーションを眺めながら、通りをぐるっと遠回りして目指したのはMeritus Mandarin Singapore。大通り沿い、目立つところにある高層ビルのこのホテル、一階のカジュアルなレストラン「Chatterbox CoffeeHouse」では、「ちょっと高級めだけど美味しい」海南飯が食べられるらしい。シンガポールといえば海南飯、一度は食べてみたいと思っていたのだけれど、母は雑然とした屋台風のお店はいまいち好きではないし、にんにくの匂いなんかにもかなり弱い。大衆食堂みたいなところじゃない、海南飯以外にも料理の選択の余地のあるお店を……ということで、事前に調べていたのが、このお店なのだった。ここなら私は海南飯を食べられるし、母や息子は別の料理を注文できて問題なしかな、と。

海南飯(単に「チキンライス」と言ったりする)は、茹でたり蒸したりした鶏肉にタレ(多くの場合、3種類ほどが用意されるらしい)を添え、そしてその鶏のスープと、鶏のスープで炊いた御飯をセットにしたもの。「鶏定食」といった風の食べ物で、安いお店ならたったの200円程度で食べられる料理なのであるらしい。このお店のは$17,80(1000円ちょっと)。確かに「ちょっと高級め」な海南飯ではあった。けど、初めての本場海南飯はすこぶる美味しいものだった。元より鶏肉好きな私なので、これなら毎日食べても飽きないかも、という旨さ。

品名は「Chatterbox Chicken Rice」。メニューの説明書きには
Our famous Hainanese chicken rice.
Tender boiled chicken with fragrant rice and broth complemented with ginger, chilli and dark soya sauce
と記されていた。私は当然、それを注文。母は
「ちょっと軽いのが食べたいわ……サラダとか……」
と言うので、「このサラダにはにんにく使われてる?」と確認したうえで、チキンをトッピングしたシーザーサラダ、息子にはキッズメニューからスパゲティボロネーゼ。生ビールを1杯ずついただいて、その旨さに喉ふるわせながら(さんざん歩き回った後だし、ホテルでお風呂にも入ってきたしねぇ……)、料理がやってくるのを待った。
これが海南飯。うーまー

やってきたのは、茶色い木の葉型の陶器皿に盛られた鶏肉と、どんぶりサイズのほのかに褐色に色づいた御飯、にんにくの香り漂う濃厚なスープ。セットになった食器も美しく、そして分量は見た目より更にたっぷりとあった。皮つきの鶏肉は2段になってどっさり盛られ、上にはにんじんと香菜のトッピング。肉の下には刻んだレタスなども隠れていた。添えられたタレは3種類、オイスターソースをベースにしたようなほのかに甘いものと、ねぎにんにく和えという風なもの、そしてピリ辛のチリソース系のもの。香り豊かなタイ米にはしっかりと鶏の味が染みていて、それが米本来の香りとしっかり合わさっている。スープもシンプルながら、ちゃんと鶏のダシが効いていてしみじみと美味しい。うわー、美味しいな美味しいな、海南飯、美味しいな。

骨なしのふくふくとした歯触りの鶏は、たとえば日本でも時々とんでもなく美味しい蒸し鶏の前菜とか棒棒鶏が食べられたりするけれど、その鶏肉の感じと似ている。軟弱じゃない柔らかな歯ごたえがあり、しかもジューシー。皮がプリッと光り輝き弾力があって、ほのか〜に塩味のついた鶏肉には臭みが少しもない。そのまま食べてもいいし、3種のソースを好みでつけてもいいし、しまいには「この黒いタレと白いタレを一緒につけたらどうかしら〜」なんて合わせ技で試してみたりも。3種のタレを少しずつペショペショッと肉につけるのも、その複雑な味がまた一層鶏を美味しくしてくれたりもして。
ボリュームたっぷりココナツアイス

母も念願の生野菜を堪能できたようで、ただ、息子はスパゲティがいまいち口に合わない様子。ラッフルズホテルで「あんた、飲茶のバイキングに来たんじゃないんだから」というほどに大量の焼売や餃子にばかり執念を燃やしていた息子だったので、あまりお腹が空いていなかったのかもしれないけれど、確かにボロネーゼスパゲティはいまいちな味だった。牛バラ肉をほろほろに煮込んだミートソースだったけれど、赤ワインが効きすぎて子供向けにするにはいまいち酸味がとがり、そこに更にトマトのピュレのソースがかかっていて、それがまたやけに酸っぱい。口が「*」の字になっちゃうほど酸っぱいボロネーゼというのも珍しいもので……それでもがんばって食べていた息子は、ちょっと悲しそう。が、キッズメニューを注文するともれなくアイスクリームがついてくるということで、息子はその後元気に巨大なストロベリーアイスにむしゃぶりついていた。キッズメニューのセットというにはボリュームありすぎの、パフェグラスにおさまっているアイスクリームだ。

「いいわねぇ……」
「アイス、いいよねぇ……」
ということで、私と母もアイスクリーム。息子のこのアイスの大きさからして、1人1個はぜっっったいにすごいものが来てしまうぞということで、 ココナッツアイスを1個だけ注文して半分こ。説明文には「ココナッツの容器に入っています」なんて書いてあるし、きっとすごいものだろうなぁと伺えた。

やってきたのは、期待にそぐわない見事なボリュームの見事なアイス。ココナッツをくりぬいた容器にみっちりと3〜4スクープほどの濃厚なココナッツアイスが詰められ、こんがりローストしたココナッツの果肉が散っている。そしてパインやチョコや紙製の笠の飾りがボスボスと添えられ、ある意味パフェよりも迫力のある外見に仕上がっていた。
「……すごいわね」
「ほら、ね。1人1個にしなくて良かったでしょう?」
圧倒されている母に「ほれほれ」とスプーンを渡しつつ、「食べる」というより「掘る」という感じにアイスクリームにとりかかる。自家製だというココナッツアイスは、すんごく濃厚な味わいだった。外はクリスマス電飾ピッカピカで、お店の人もサンタ帽かぶったりしているのに、でもこんなに暑くてこんなにココナッツアイスが美味しい。

Orchard 「Meritus Mandarin Singapore」内「Chatterbox CoffeeHouse」にて
Chicken Rice
Caesar Salad
 Add Chicken
Spagh. Bolog
Beer (G Tiger)
Pepsi
Coconut Ice-Crm
$17.80
$14.00
$4.00
$9.50
2* $8.50
$4.00
$9.50

食後は、疲れちゃったのでまたタクシーでホテルに……と思ったのだけれど、大通りはもう大変な大混雑で道路も大渋滞。タクシーもなかなかつかまえられそうになくて、夜景を見ながらぽてぽて歩いてホテルに帰還した。今日はとにかく歩いたねぇ……。