食欲大魔人特別寄稿3 : 福岡ラーメン紀行2

by せりあだんな

福岡にまたもや3泊4日の出張が入った。これは再び九州ラーメン行脚のチャンスだ!

思えば高校生の頃……は、もういいですね。ともあれ、再訪のチャンス、これは生かさなければならない。しかーし、今度は妻子がついてくる。うーん、すべてが新規ダマというわけにはいかんなあ。とりあえず鉄なべと秀ちゃん、あと長浜屋には連れてってやらねば。
というわけで、以下、4日間で食べ歩いたラーメン屋7軒の記録である。鉄なべ始め、他にも2軒ほどラーメン屋以外には行っていますが、今回はせりあが旅行記も日記も書いてるからラーメン屋だけね。

……って、なんで前回より増えてますか、俺?

12月4日 : 初日

◎博多龍龍軒(博多駅前) ラーメン+半チャーハンセット+替玉 800円

午後1時過ぎ、飛行機が大幅に遅れて博多に着いた後、腹も減ったのでラーメンを食いに行こう、ということになる。では、というわけで、なんでもヤマモトマスヒロが「博多で一番旨い」とぬかしていたとか言う龍龍軒へ。はっきり言ってマスヒロは信用できないのだけれども、まあそこまで言うなら食ってみてやるか、というわけで訪問。

今回の宿から大通りを挟んですぐ、徒歩2分ほどのところにある龍龍軒は、看板にでっかく主人らしき髭面の男のイラストが描かれている。非常にハズレくさい。しかもその顔、フレンチの石鍋裕(←世界で一番嫌いな料理人)によく似ている。これまたハズレ臭いことこの上ない。 入店してみると、背の高い固定式の丸いすが据えられたテーブルが3つほどと、あとはカウンター。子供はどこに座れというんだ?しかも食券式。さらにハズレの臭いが漂う。しかも有名人の写真やサインがべたべた。一番いい場所に、髭面の店主とマスヒロがにこやかに並んでいる写真。もはやハズレの臭いどころではない。

ともあれ、気を取り直して、とりあえず、これを食えと言わんばかりに貼ってある「チャーハンセット・麺堅め」を注文。トッピングが一つできるというので、こってりスープ(100円)を注文。なぜにゴマやスープをこってりにするのまで金を取るのか全くもって謎である。すでに鉄板で大ハズレ。

程なくしてやってきたラーメンには、大量の背脂が浮いていた。お口あんぐり。これは「こってり」のとんこつラーメンとしては大反則である。よくラードでごまかす店があると聞くが、ここまで露骨にやるのは初めて見た。あきれつつ食う。麺の太さはやや細目、博多ラーメンとしてはふつう位である。

……んー、さほどハズレじゃない、かもしれない。ていうか、とんこつラーメンとしては相当ダメダメ(やっぱり堅かった大ハズレ)だけど、こういう(背脂を入れた)ラーメンだと思って食えばそれなりにうまい。腹も減っていたので、替え玉を注文。まあ、これもふつうだねえ。だいたい、換え玉ってのは麺のうまさをより一層味わえるものなのだけど、これ、別段旨い麺という感じもしないしなあ……というわけで、博多のとんこつラーメンを食いたい人にはお勧めしません。似たようなラーメンを食いたいという奇特な方はどうぞ。

食い終わって出た時、せりあが「君が替え玉を頼んでいたから、それなりに旨かったということだよね」と聞いてきた。うん、それなりに旨かったですよ、腹も減っていたし。でも、とんこつラーメンとはぜんっぜん違うラーメンだ、と思っていてね。くそう、後で絶対に旨いところにつれて行ってやる。

あ、この店、一つだけ役に立ったことがあります。それは、「マスヒロはやっぱり信用でけん」という事実を確認できたこと、ですな。

◎秀ちゃんラーメン(警固町) ラーメン 650円

仕事後、鉄なべに再訪。餃子4人前を始め、さまざま軽く飲んで食ったし(軽くか?!)、ラーメンを食いに行こう、というわけで秀ちゃんへ向かう。早くも「絶対旨いところ」中、最大の切り札を出してしまう俺である。
前回の訪問と違って、今日はほぼ満員だった。子連れなので遠慮しつつ、一番奥の席へいそいそと着席。ラーメン2つを注文。

程なくして出てきたラーメンは、前回食ったのと同じ、ヒジョーにこってりしたラーメンであった。相変わらずうちで取った水炊きスープのような、ケダモノ臭くてそれでいて脂っこくない、非常にコクのあるこってりスープに素麺のような細麺がぴったりフィットしている。相変わらずうーまーひー!
店を出た後、せりあが
「龍龍軒のこってりは邪道だ、と言っていた意味がやっと分かったよ〜」
とぽつりと漏らした。
そうそう。そうなのだよ、とんこつラーメンのこってりとは、脂っこいという意味とは全然違うのです。分かっていただけてだんなは嬉しい。

12月5日 : 2日目

◎うま馬(祇園町) ラーメン 550円

今日は仕事が終わるのが早い。というわけで、家族3人でキャナルシティに繰り出し、夕飯を食った後、やはりシメはラーメンでしょう、というわけで祇園町バス停の真ん前にある「うま馬」へ。なんでも白濁系スープとは一線を画するとんこつスープなのだとか。(Kさん、またも情報ありがとうございました♪)
入店してみると、これが見事な焼き鳥居酒屋で、子連れで入るにはちょっと躊躇してしまった。臆せずカウンターに座り、ラーメン2つを注文。

ほどなくして出てきたラーメンは、済んだ褐色のスープで、結構ケダモノ臭いものであった。いかにも「コラーゲン出まくっています」という風情のスープである。一口飲んでみるが、濃厚なコクがありながらすっと切れる、非常にさっぱりしたスープである。脂っこさは全くない。というか、口の中に脂分があってもこのスープとともにすっと流れていく、という感じである。なんでも豚骨と野菜だけを弱火でじっくり煮込んで抽出したスープとのこと。

麺は平麺で、博多ラーメンとしてはやや変わっているか。しかし、このあっさりスープにはある程度スープを吸ってくれる平麺は非常にあう。うん、俺は結構好みだなあ。
しかし、未だに「典型的九州ラーメン」を食べていないせりあは少々不満そうだ。
「おいしかったけど、"これぞ福岡ラーメン!"というのが食べたいなあ」
と。だ〜いじょうぶ、最終日までに、典型的長浜ラーメンを食わせてやるって。

◎ひろいちラーメン(博多駅東) ラーメン 500円

もうおなかいっぱい、という妻子をホテルにおいて、一人でラーメン屋巡りとしゃれ込む。目指すは渡辺通りから駅前に移転したという「元祖ぴかいち」である。
しかし、見つからない。住所を頼りに、このブロックのはずだけどな……とうろうろしていると、果たして白く輝く看板を発見。よしよし、と入店。
メニューを見ると。酢豚セットだのエビチリセットだの、変なメニューが目に付く。おかしいな、と思いながらラーメンを注文すると、
「スープはふつう、ピリ辛、カレーとありますけど、どうなさいますか?」
と聞かれる。か、カレーだとお?! そんな店だったっけ? と思いつつ、とりあえずいぶかしみながら"ふつう"を注文。

カウンターに着席して作るところを見ていると、非常に手際が悪い。しかもラーメンのスープにだしの素の様なものまで放り込んでいる。しかも出てきたラーメン、臭い。ケダモノ臭いというよりは、悪い油のような臭いがする。その上麺がゆですぎで、非常にまずい。食えたものではない。おかしい、こんな店が名店の誉れ高い元祖ぴかいちのはずが……と思ってよく見ると、メニューの紙には
「ひろいちラーメン」
と書いてある。 ……へ? ひろいち? ひ「ろ」いちですか?
マジで激怒しました。きったねー、サギだ! 同じブロックにこんな紛らわしい名前の店出しやがって(住所で言うと、何丁目何番地まで同じ)。ぷんぷん。
というわけで、半分食って後は残して出てきました。あーまずかった。神様、お金を払いますから私の空腹を返してください(泣)。

みなさん、ぴかいちにご来店の際には、類似品にご注意ください。いやマジで。

◎元祖ぴかいち(博多駅東) ラーメン 480円

口直しに目指すぴかいちへ。件の「ひろいち」よりも安い、というのが皮肉である。ここは生麺のチャンポンや皿うどんもうまいらしいが、いかんせんすでに腹の中には夕食とラーメン1.5玉(うまいの1玉とまずいの0.5玉)が入っているので、泣く泣くラーメンのみを注文。

程なくして出てきたラーメンは、ややこってり系ながら、胡椒とラー油で味がぴしっと締まった、辛目のさっぱりしたラーメンである。味の主張が非常に強い。こりゃスープ全部は飲み干せんわ。話によると、昼時はサラリーマンで非常に混雑するとのこと。確かに働く男に人気のありそうなラーメンだなあ。
ともあれ、麺と具だけは全部食いきって、ごちそうさまでした。旨かったです。近くの詐欺店に騙されなければ、スープも全部飲み干せたのになあ……自分のミスとはいえ、痛恨だ。

12月6日 : 3日目

◎ラーメン住吉亭(住吉) チャーシューメン 750円

仕事が長引き、ホテルに帰るとすでに8時。とはいえ、当然ラーメンは食わねばならない。せりあも息子も腹を減らして待っている。というわけで、気になっていた住吉亭へゴーゴーゴー。

山王公園前バス停から徒歩約10分ほどで、目指す住吉亭に到着。外観はヒジョーに汚い。後述の長浜屋にも相通ずる、好感の持てるラーメン屋である。店の前には車が多々止まっており、みんなわざわざ車を乗り付けて食うのね、といった風情。
店の中は横一線のカウンターになっており、いそいそと一番奥の給水機の前に陣取る。ラーメンとチャーシューメンを注文すると、すえた臭いのするスープの鍋のふたを開け、なにやらスープを準備している。おおおおお、良い感じだ〜。

程なくして出てきたラーメンには、ねぎが大量に入っている。どのくらいかというと……「ひとつかみ」、である。最後の仕上げの時、にーちゃんが右手でかごに入ったねぎをむんずとつかみ、ラーメンに放り込んでくれた。ねぎ好きの俺にはとても嬉しい。しかし、あまりにねぎが多く、ラーメンなのかチャーシューメンなのか区別が付かない。
具はこの大量のねぎの他、キクラゲとチャーシューのみである。これにゴマと紅生姜を自分で入れるようになっている。
このチャーシューがまた、脂がのっていて非常に旨い。しかも「ぼくスープのだしだったんです」みたいに薄っぺらいのが十数枚、いや20枚以上かもしれない、とにかく大量にぺらぺら入っていて、非常に嬉しい。なにしろ、二人にかなり分けてやったのに、まだ「食っても食ってもチャーシューが出てくる」という状況なのである。よく見ると奥のスライサーでチャーシューを薄く薄く切っている。なるほどー。確かにこうしないと薄いチャーシューはできないよなー。

すえた臭いのするラーメン、ねぎたっぷり、でもあっさり系というラーメンは非常に好感がもてた。しかし、せりあ曰く、
「臭いの割にコクがない、あれだけ臭うならもっとコクがあった方が旨いと感じる」
だそうな。なるほど、一理ありますね。では明日は典型的長浜ラーメンを食べていただくことにしましょう。

12月7日 : 4日目

◎元祖長浜屋(長浜) ラーメン 400円

最終日、博多を離れる前にぜひラーメンを食いに行こう、と前日から協議を重ねる。初めて行く店がいいんじゃないか、でも最後にまずいラーメンを食って離れるのはイヤだね、ああこの店はうまそうなのに開店時間が飛行機の出る時間とほぼ同じだ、などと侃々諤々議論を重ねたあげく、結局定番の「元祖長浜屋」へ。個人的には、博多に来たら必ずこなければならないラーメン屋だという気がしている。
「写真を見るとあまり旨そうに見えないけど」と、あまり乗り気でなかったせりあも、「福岡に来たらこの店には必ず行かなきゃ!」という俺の意見に、そこまで言うなら、といそいそついてくる。

最寄りのバス停・港一丁目から約2分ほど、ほどなく見えてきた長浜屋の外観に
「……怪しい〜! こりゃちょっと一人じゃ入れないわ!」
と喜ぶせりあ。期待も高まってきたようだ。

入店するなり、若い店員が
「ラーメン2つでよろしいですか〜?」
と聞いてくる。おかしい、入るなりラーメンが自動的に注文される店のはず……と思っていたら、息子連れだったので確認したのね。納得。で、すぐに小さい器も持ってきてくれる。

テーブルの上の湯飲みの入ったかごや、でっかいやかん、大テーブルの島のみの店内など、相変わらずいい味を出している。しかも例によってすえた臭いだ。たまらん。程なくして出てきたラーメンは、「これぞ定番長浜ラーメン!」といった風情の、極細麺にややこってり系白濁スープである。相変わらず旨い。味が全部スープに出ちゃってあとからたれで無理無理味を付けたんですという感じの薄っぺらいチャーシューも相変わらず心に響く。せりあも横で
「これ! これだよ私の食べたかった"福岡ラーメン"は!」
と、感動している。よほど旨かったらしい。
というわけで、福岡訪問の最後に「典型的長浜ラーメン」で締めることができ、今回も満足のまま離福することができました。また行くぞー!

総評

今回は箇条書きに。

  • やっぱり秀ちゃんはうまい。
  • やっぱり長浜屋はおさえておくべきだ。
  • 実は一蘭のむかつき加減は是非体験していただきたかった。

というあたりで。

謝辞

福岡再訪にあたり、新たに情報を頂いた上にラーメン本まで送ってくださったKさん、再びどうもありがとうございました。
大魔人はもう食べられません。