2001年年末 暑い国に行きたくて

台湾か、温泉か

2001年年末、私にはちょっとした臨時収入が入っていた。入った金は使わなければならぬ。「貯蓄」という文字は私の脳内辞書には搭載されていなかった。
「また香港?」
「いや、今度は台湾で小龍包三昧とか」
「はたまた国内の温泉でしっぽりと……」
夢は膨らむ。未知なる美味に腹も膨らむ。

本当は、旅程を決める寸前まで「気分は台湾」だった。小龍包専門店。排骨飯。パパイヤミルク。中国茶。麺にお粥に豆乳の朝。ガイドブック類もちらほらと買い集めてしまっていた。

だが、寒い、寒いのだ。北風が吹き下ろしてくる関東の冬は今年もめっちゃ寒かった。12月頭にして、すきま風の入る我が家は早くもストーブが消せなくなる。こうなってくると、「んもう、常夏の国での〜んびりしちゃうんだもんね」という気分が盛り上がってきてしまう。何より、3歳児の息子が行って楽しいのは海やプールに決まっているのであった。

「質問があります」
「なぁに?」
「台湾で小龍包、南の島でプール遊び。行きたいのはどっち?」
「ぷーる!ぷーる、はいるよー!」
聞くまでもないことなのであった。というわけで、"バリはもう何度か行ってるしね"と行き先を初めてのタイ王国に定めてみた。成田から直通線が出ているビーチで、かかる時間もかかるお金もほどほどで、空港からホテル群まであまり遠くないところ。プーケットはなかなか便利そうだし楽しそうだった。どうもハワイとかグアムは眼中にないらしい私たちだ(アジアが好きなのねー)。

飛行機の予約をしませう

香港へ行くならキャセイで、バリに行くならガルーダで(いやでもガルーダは色々不安で乗りたくなくなっている今日この頃)。海外旅行は、目的地の国の航空会社を利用するのが色々と楽しいし便利なような気がする。機内食も妙にあっちの味のものが出されたりするし。何より目的地への便数が多い。選択肢が増えるのは良いことだ。

タイ国際航空では週に3便、プーケットへの直行便が出ている。9時45分に成田発で、到着は15時45分。しかしプーケットから成田行きで帰って来ようとすると、朝8時40分プーケット発の、しかもバンコク経由だ。朝早く現地を出るスケジュールはいただけない。どうせ行くなら午後まで遊んで帰りたい。深夜のバンコク→成田便があるのを見つけ、ならばプーケット→バンコク間をそれに合わせて取れば良いんじゃないかなぁという結論に達した。いそいそとインターネットでフライト状況を集め、自分で作ったスケジュールのメモを握りしめ、タイ国際航空の日比谷オフィスに行ってみた。ツアーに参加すればこんな手間はいらないし、多分安いのだろう。でも、勝手に便を決定されたり他の観光客と一緒に胸にシールやバッジをつけて添乗員さんと一緒にホテルに移動、なんてことはしたくないんである。自分で全部決めたいんである。子連れ旅行のくせに、めんどくさい手法で挑む私たちだった。

めでたく、予想通りの便で正規割引運賃にて航空券の予約ができた。席の予約も完了したし、息子のチャイルドミールも予約した。お一人様7万7千円。1月12日9時45分の便でプーケットに直行し、16日の20時40分の便でバンコクへ、1時間ほどの乗り換え時間を経て23時40分バンコク発の成田行き。良い感じだ。

家族でバカンス、楽しいお宿

宿は4泊。3歳児がいるから「カップルでイチャイチャに最適」なホテルは選んじゃいかんだろうと思う。でっかいプールに「子連れもオッケーよーん」な雰囲気のホテルはないか、と探していたところ「Bant Tao Beach (バンタオビーチ)」なるリゾートを見つけた。「Banyan Tree Phuket」「Dusit Laguna Resort」「Laguna Beach Resort」「Sheraton Grande Laguna Phuket」「Allamanda Laguna Phuket」の5つのホテル及びゴルフ場だのショッピングエリアだのが1つのラグーンで結ばれて、無料のバスや水上バスで行き来できるのだそうだ。支払いも滞在ホテル付けにして各ホテルを利用できるとか。プールやアクティビティも他のホテルを利用できるらしい。いかにもな人工的リゾートだなぁと思いつつ、子供連れでだらだらするにはそこそこ安全で便利で楽しそうじゃないか、と思えた。

で、「Laguna Beach Resort」に目が止まった。ウォータースライダーがある。アクアビクスだのアーチェリーだのテニスだのと無料アクティビティが豊富すぎるくらい豊富で、しかも子象がいる。98年生まれの雌の子象、Puggyちゃん。ああ、可愛い。象、触りたいぞ。乗りたいぞ。おっきな動物は男子永遠の憧れなのだ!いや私は女子だけど。

値段を見ると、コンドミニアムスタイルの「Allamanda Laguna Phuket」よりはちょっと高い。でもその他のホテルの中ではかなり安いように思われた。早速インターネットで申し込み。
「子供連れだけど、エキストラベッドはいらないよー」
「最終日は夜出発だけどレイトチェックアウトは可能かなー?」
「送迎もひとつよろしく」
海外留学目指して目下英語勉強中のだんながぺけぺけと英語でリクエストしてくれた。確か新婚旅行は私がほとんど英語での折衝をしていたというのに、ここ数年はもっぱらだんな任せだ。妻らくちん。ありがたいことだ。せめてタイ語の挨拶でも勉強しておくとしよう。