4月3日(木) 5年ぶりの台湾と寧夏路夜市

5年ぶりの台湾

息子の小学校の春休み後半、家族で台湾に旅行することになった。
そこそこ溜まっていた航空会社のマイルがこの年末にいくらか失効してしまうことがわかり、どこか行こうかと考えた結果の目的地が5年ぶりの台北。
「蒸籠が壊れちゃったから、前にも買ったあの店にまた買いに行かなくちゃ」とか
「あのかき氷がまた食べたいからまた食べなくちゃ」とか、
とか、そんな理由で決めた目的地。
息子は帰国早々に新学期がスタートというハードな日程になってしまったけれど、マイルと交換できるチケットはこの日程でしか空いていなかったのだ。

今日は午後便での出発なので、家で軽く朝食を摂ってから空港へ。
今回は事前にさほど熱心な下調べをしなかったこともあり、今ひとつ旅行という実感が湧いてこない。
「パスポート持ったねー」
「航空券も大丈夫だねー」
「それだけあれば、まあ大丈夫だよねー」
と、ゆるーい気分で、いざ出発。

「台北青年國際旅館」〜今回もお世話になります

空港の外の、シンプルなバス停 現地時間17時頃、無事に台北の「台湾桃園國際機場」に到着した。
日本との時差は1時間(日本時間マイナス1時間)だ。

二度目の台湾、宿泊ホテルも同じところというわけで、土地勘も失われていないはず……と、少し気楽に繁華街に向かう。利用したのは前回と同じく「國光運行」のバス。大人125元、子供65元で、台北市内の数カ所に止まりつつ、終点は「台北車站」。目指すホテルはそこから徒歩で数分だ。

台湾では、明日4/4が休日なのだという。3連休を前にした平日の夕方ということもあってか、繁華街に向かう高速道路は大変な渋滞。何事もなければ50分ほどで行けるはずだったのだけれど、台北車站に到着したのはもう7時になろうという頃合いだった。混雑する地下街を急ぎ足で抜け、急ぎ今回の宿泊ホテル「台北青年國際旅館(Y Hotel Taipei)」に移動した。

台北駅至近、東西南北どちらへも行ける地下鉄ターミナル駅の出口から150mほどという好立地が素晴らしいこのYMCAホテルは、何しろ安いのも気に入っている。トリプルルームは通常価格で2800元、子供が1人同行ということで10%OFFにしてくれた。フロントに申し込めば部屋でLANも使え、それも1日100元と良心的な価格だ。

部屋の広さは申し分なく、自由に使える冷蔵庫があるのも嬉しいところ。ただバスルームはかなり狭く、シャワーの湯の出は、タイミングによっては悲しいほど悪かったりもした。それでも1泊8500円というのは代え難い魅力だし、外出してはスーパーの袋や麺線の碗などを抱えて帰ってくる私たちには高級ホテルはどうにも似合わないのだった。ちなみに台北駅付近は、東京の御茶ノ水的学生街でもあって、定食屋さんなどが数多く並んでいる。そのなんとも言えない雑多な感じもお気に入り。

ともかくも、荷物を置いて外に繰り出すことにした。

「[髟/胡]鬚張魯肉飯」〜まずはじめに、魯肉飯

「……さて、初日にどこ行こうとか、全然考えてなかったわけですが……」
「しかも雨だね、けっこう降ってるね」

"雨が降る"ということを全く想定していなかった私たち。でも、そういえば日本で確認したここ数日の台北の天気は「曇」マークが続いていたような気がする。
空港に到着した時から、既に重い雲が垂れ込めて「びしゃびしゃ」といったけっこうな降りで、少しは小降りになったような気もするけれど、これから止みそうな気配も特にない。行きたい店だけを簡単にメモしてきた地図を眺めつつ、
「とりあえずホテルを出て、雨が大丈夫そうだったら夜市に向かい、あまりにもダメそうだったら台湾料理のお店に行く」
という結論でまとまった。

ホテルを出ると、なんとか傘をささずに歩けそう……といった程度のサラサラとした小雨だった。
これなら大丈夫そうかも、と、駅2つ北の「雙連駅」に移動して、そこから更に西に向かって10分ほど歩いて「寧夏路夜市」に向かってみた。寧夏路夜市は、飲食店の屋台が150mほどの距離に渡ってひしめき合う、大規模ではないけれど美味しそうなものだらけの楽しい夜市だ。5年前、あまり資料もないまま向かってみたその夜市は、今も変わらず同じ雰囲気だった。
魯肉飯。横の漬物が良い感じです

前回来た時には気付かなかったのだけれど、夜市の広がる通り沿いには「[髟/胡]鬚張魯肉飯」という魯肉飯屋さんがある。日本にもいくつか支店があり、以前お弁当を買って食べたことがあるお店だ。せっかくだから本店の味を試してみたいねと、台北市内のお店の場所をマップにチェックしてあったのだけれど、あちこちに支店があるものだからマップのそこかしこに「ヒゲ」「ヒゲ」「ヒゲ」とマーキングがたくさん。

そして、めでたく通り沿いに目立つ看板を見つけ、「ヒゲ!見つけた!」と入店した私たち。
持ち帰り用の弁当も揃っているし、中で食べることもできるようになっていた。

この手のお店は飲み物が置いていないところが多く(水もない)、飲みたい人は勝手によそで買って持ち込んで飲んで良いよということになっている。だんなが速攻、近くのコンビニに走り、ビールを買ってきてくれて、それを飲み飲み台北初飯魯肉飯をおおいに堪能。

「煮込み豚肉のぶっかけ御飯」という風の魯肉飯、店によって八角などのスパイス臭がきつかったり、甘さが控えめだったりと千差万別の味がする。脂の多い豚肉を使うところが多いので、言ってみれば下卑た味。でもそれがたまらなく美味しい。

このお店の魯肉飯は、大、中、小の3種類。大は49元、中は39元、小は26元だった。
だんなが頼んだ大サイズは軽めのどんぶり飯くらいの分量、私と息子が頼んだ小サイズになると、幼児用の茶碗かというサイズの小ぶり浅めの碗にごく軽く一杯がやってくる。煮卵(鴨卵)も2つ頼み、あとは「苦瓜排骨湯」というスープも1つ。
苦瓜のスープは、あんまり苦くはなかったです

お店のロゴ入りの器によそわれてきたスープは、私の知る苦瓜とは違う、冬瓜のような白い野菜が入っていた。独特の凹凸の表皮の感じは間違いなく苦瓜のそれなのだけれど、普通の苦瓜ほどには苦くないし、色も真っ白。後で朝市などを見て知ったのだけれど、「真っ白い苦瓜」というのが普通に売られているようなのだった。

透明なスープの中には、白い苦瓜と共に骨付き豚肉もたくさん。適度にほろ苦く、適度にケダモノ臭も感じられるスープだった。骨付き肉のこの手のスープを飲むと、「あー、台湾に来たぞー」という感じが湧いてくる。
甘じょっぱい汁を吸った御飯も存分に堪能して、雨が強くなってきた夜市をぷらぷらすることにした。

寧夏路 「[髟/胡]鬚張魯肉飯」にて
魯肉飯小
魯肉飯大
苦瓜排骨湯
鴨卵
コンビニで買ったビール
2×26元
49元
58元
2×12元
2×35元

5年前の紙幣が使えない

さて、ここで問題勃発。
「日本から持ってきた、台湾の幣紙が使えない」
ということに。

前回台湾に来た時に数千円分の台湾ドルを持ち帰っていたので、それを今回持ってきたのだけれど、コンビニでだんなが500元紙幣を使おうとした際に
「これは古い紙幣よ、使えないわ」
と言われてしまったとのこと。

コインと小額の紙幣は変わらず使えるようだけれど、500元、1000元貨幣は偽造防止のホログラムつき紙幣のみが現在は流通しているらしい(ホログラムなしのものは2007年7月末に流通停止になったのだそう)。魯肉飯屋さんでも「この紙幣はダメー」と言われ、両替は明日、日が昇ってからにしようと思っていた私たちは慌ててしまった。魯肉飯屋さんの支払いはぎりぎりなんとかなったけれど、これでは夜市巡りもできないと、だんなが急ぎ銀行のキャッシュディスペンサーに走ってくれた。24時間使える機械で、キャッシュカードを使って1000元ばかりキャッシングして、今日のところはなんとかなったのだった。

私たちが持っていた「使えない紙幣」は1000元分だったのだけれど、これは銀行に持っていけば交換してくれるとのこと。でも明日は休日、その後は土曜日日曜日、と、「交換できるタイミングがないね」と愕然としていたところ、夜市巡り後に戻って相談してみたホテルのフロントのお兄ちゃんが、「じゃあ僕の紙幣と取り替えてあげる」と、個人的に新紙幣と交換してくれたのだった。ありがとうお兄ちゃん。本当に助かりました。

寧夏路夜市「余師[イ専]湯包」〜笑顔のおっちゃんの小龍包屋台

そうこうしつつ、雨はどんどん強くなる。

だんながキャッシュディスペンサーに向かってくれている間、私は息子につきあって"子供の社交場"に行っていた。夜市に行けば、たいてい何ヶ所かは、子供向けのコーナーがあったりする。広くはないこの夜市にも、端の方にひっそりと子供用パチンココーナーがあった。
景品には、日本のキャラグッズのパチもんが山盛りでした

あいにくの雨ということもあってか、以前来た時には空いている台を探すのも大変だったコーナーは、今日は全く人影なし。ガラガラの台の前で、お店のおばちゃんに50元渡して、1元硬貨50枚に交換してもらった。1元硬貨1枚を台に入れれば、1回ボールが発射できる仕組みだ。

1打毎に盤上に並ぶ数字のいくつかが光り、光った番号のところにボールを入れると「当たり」ということで台の上から紙製チケットがべろべろと吐き出されてくる。紙製チケットを溜めることで、20枚ならこれ、40枚ならこれ、と、あれこれ景品が貰えるのだった。

このゲームコーナー含め、各屋台の上にはきちんとテントが張られているので、とりあえずは雨に濡れず楽しむことができるようになっている。

他に子供がいないのは少々つまらない感じだったけれど、息子は50元分しっかり楽しんで、チケットを40枚くらい入手した模様。お店のおばちゃんにこことここのコーナーから1個ずつどうぞ、などと指示されて、プラスチック製の小さな刀と、スポンジのボールを飛ばす銃のおもちゃを貰っていた。

雨はますます強くなってきた。

飲食店屋台にも、それぞれ屋台の脇や背後にテントつきのテーブルコーナーが設けられたりしているのだけれど、雨除けは万全というわけでもなく、初日から雨に濡れて体調を崩すわけにもいかないねと、早々にホテルに戻ろうという話になった。
蒸したてほやほや

それでも、と、最後に食べたのが「余師[人専]湯包」という屋台の小龍包。

メニューは2種類、「小龍湯包」(いわゆる普通の小龍包)と「蝦仁湯包」(海老入り小龍包。ちょっと高い)だけ、という思い切りの良い屋台で、試しにと8個入りの「小龍湯包」を頼んでみた。

屋台の後ろには巨大な冷凍庫があり、そこにあらかじめ作ったものを大量に保存してあるようだったけれど、でも出されたそれは皮はモチモチ、囓るとスープは溢れんばかり、と非常に良い感じの小龍包だった。それが8個入りでたったの60元(200円くらい)。海老入りのは少し高いと言っても80元(300円弱)だ。

蒸された小龍包の上には無造作に針生姜が散らされ、片言の日本語を操るおっちゃんが笑顔で人数分のプラスチック容器やレンゲを渡してくれる。
「海老!海老入りは?美味しいヨ!」
のおっちゃんの言葉に、思わず海老入りのも1蒸籠追加注文。

海老入りのは、大ぶりの海老が1尾丸ごとごろりと入った、なんともゴージャスなものだった。普通の小龍包の肉あんを少なめにして海老を入れたという感じ。もちろんスープはたっぷりだ。この海老プリプリはなんとも豪華だけれど、でも味はといえば普通の小龍包の方が好みではある感じ。しかし、これで200円、300円というのは本当に素敵な事。
美味しかった、美味しかったー、の私たちの言葉にうんうんと頷くお店のおっちゃんの笑顔がこれまたキュートだった。

そして雨はやっぱり降り止まず、少なからず心残りを感じつつも台北駅まで戻ってきた。ホテル近くのコンビニで牛乳や「風呂上がりに飲みたい感じのヤクルトもどき」を買い込みつつ、部屋に戻って早めの就寝。
でも初日から美味しいものを食べられて幸せなのだった。

寧夏路夜市 「余師[イ専]湯包」にて
小龍湯包
蝦仁湯包
一籠 60元
一籠 80元