9月19日(土) 終日クルーズ、インフォーマルディナー

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早朝船内散歩

昨日の就寝が10時過ぎという早めの時間だったこともあって、私は朝5時にばっちり目が覚めてしまった。
 
狭い部屋、電気をつければ家族を起こしてしまうしなぁと、薄暗い中手探りで身支度を整えて、カメラとポメラを持って部屋の外に出てみた。とりあえずエレベーターで上階に向かって、船内を散策してみようかな、と。
薄闇の中のスポーツデッキ  
私たちの部屋は、船の後方寄りのエレベーターホール近く。そのエレベーターで10Fまで行き外に出ると、目の前には広い広い「スポーツデッキ」が広がっていた。
 
板張りの、実に気持ちの良い空間で、バスケットゴールが1つ、壁際についている。ベンチが2つとその奥に化粧室、あとはひたすら広い空間だ。
 
そこから外階段を使えば11F。小さなサイズだけれど屋外プールがあり、温水ジャグジーの設備もある。プールに隣接した屋内にはジムスペースがあり、既にこの時間から運動している人が何人か見えた。プールから船首側に屋内に入れば、そこが展望風呂らしい。
海を眺めながら入るお風呂はさぞ気持ち良いだろうなと  
展望風呂の利用は午前6時からということで、今はまだ準備中。
 
幸い、プールデッキに面した非常口が開けっ放しになっていて、風呂場の中が覗ける状態になっていたので、ちらっと写真だけ撮ってみた。御覧の感じの広さで、洗い場は8人分くらい。浴槽もそう広くはなく、でも窓からは外の景色が一望できる。清潔だし、アメニティも揃っているようだし(タオルも部屋から持っていく必要が無いらしい)これは素敵。
 
屋外の施設を一通り見ながら明るくなっていく空を感じつつ、その後6Fのライブラリーに移動して、ライティングデスクにポメラを置いて日記をつけてみたりしていた。そろそろ「アーリーモーニングティー」も始まる頃で、人の気配が船内に増えつつある。

揺れる船内での朝御飯

だんなと息子が起きるのを待って、7時過ぎに朝食の会場、メインダイニングに移動した。
和食はセットメニュー、洋食はブッフェ式になっている。洋食を選択しても、和食メニューに好みなものがあれば単品で持ってきてもらえるし、和食メニューを選択してもブッフェコーナーでフルーツや卵料理などを持ってくるのは自由とのこと。
 
起床後あちこち船内を歩いてはいたものの、今日はとにかく船が大揺れ。
この船には横揺れ防止装置の「フィンスタビライザー」というものがついているそうだけれど、それでも窓の外の水平線は、窓の上方から窓の下方まで、盛大に乱高下を繰り返している。歩けないというほどではないけれど……正直、気分が爽快という感じにはなれない。あまり食欲も沸かず、ここで胃にあれこれ詰め込んでも余計具合が悪くなってしまいそうな気もして、軽め軽めで食べ物を持ってきた。
 
いただいたのは、トースト 1/2枚、ベーコンとオニオン入りのオムレツ、ハーブ入りのソーセージとフライドポテト、ウィンナーとキャベツの炒め煮、サラダ、梨、パイナップルというところ。コーヒー紅茶は給仕の方が注いでくれ、他にはオレンジジュース、グレープフルーツジュース、牛乳、飲むヨーグルトなどもある。
飲むヨーグルトの存在はなかなか嬉しいもので、息子と一緒にお代わりする勢いで飲んでしまった。
 
朝食の料理は、味も品揃えも雰囲気も「都内のそこそこのクラスのホテルブッフェ」と同じくらい、という感じ。感激するほどの味や品揃えではないけれど、まぁ美味しくいただける、といった風のものだった。フルーツが5種類ほど揃っていたり、サラダ類もちゃんとあるのがありがたい。今朝はフルーツコーナーに梨があったので、好物のこれなら気分が悪くてもいただけるわ、と、もぐもぐ。
 
昨夜今朝と他の乗客の方たちと顔を合わせて、「……あ、それほど皆、セレブって雰囲気でもないかもしれない……」と、なんとなく一安心。むしろ、「田舎のおっちゃん、おばちゃん」然とした人も多く、「ブッフェ方式」と「食べ放題」がごっちゃになっている(小さな皿に無理めにあれこれ大量に盛りつけた挙げ句、残しちゃうような……)人も少なくない感じ。年齢層はやはり高めで、でも子供連れの姿もちらほらと見える。
 
食後少ししたところで、これから毎朝の恒例となる「皆様、おはようございます。操舵室から船長でございます……」の艦内放送があった。
なんでも、小笠原沖にいる台風の影響で波が高めとのこと。今日の昼あたりにはまたちょっと船の揺れが強くなるので、歩く時には手すりなどにつかまるようにとのことだ。
 
5Fのレセプションのカウンターには、誰でもいつでも貰える酔い止め薬が置かれている。1錠ずつ小分けになって籠に入れられているそれを早速もらって1錠飲むことにした。1日3回までを目安に、5時間ほど空けて飲めとのこと。
「揺れるー揺れるよー」
と心中呟きつつ、食後30分ばかり部屋のベッドに俯せて寝ていたら、やっと気持ち悪さが取れてきた。
 
「あー、やっと良くなったよ。今なら焼き肉も食べられるよ!」
とだんなに言って
「食べるなよ」
とツッコミをもらう私。

オリエンテーション&避難訓練

今日は終日クルーズの日。船内新聞には「本日のドレスコード:インフォーマル」とやや大きめの文字で記され、その下には「キャプテンズウェルカムパーティー(17:00)から」の文字も。
 
別紙で「ドレスコードに関するおねがい」というものまでつき、「男性はスーツやジャケットなどの上着にネクタイの着用を」「女性はスーツ、ワンピース、パンツスーツ、ブラウス&スカートの組み合わせなど」「お子様も基本的に上記に準じ、あまり軽装にならないように」などと記されていた。時間はキャプテンズウェルカムパーティーから就寝まで。
 
他にも今日はイベント山盛りで、まずは9時から乗客全員参加が必須の「オリエンテーション&避難訓練」。その後「シャッフルボード」「ダンス教室」「船内探険ツアー」「アート&クラフト教室」、写真家の講師による「講演:屋久島・奄美大島の自然と世界遺産」、「ウノ」に「ディスクコントロールゲーム」に「折り紙教室」「ルーレット・ブラックジャック教室」「牧山純子ジャズナイト」……と、午前中から夜まで、参加しようと思うと一日中大忙しになりそうなほどの量のイベント案内が新聞に掲載されていた。
 
ともかくも、まず「オリエンテーション&避難訓練」に参加しなければいけない。
 
広いホールでオリエンテーション 広いメインホールに椅子がずらりと並べられ、船内生活の決まりについてや寄港地についての案内など、30分ほどの説明会。
 
本来600人ほど乗客が乗れる船だけれど、今ツアーの乗客は400人ほどとのこと。大型連休ではあるけれど台風シーズンでもあり、加えて新型インフルエンザの流行と不安要素が重なり、キャンセルも相当数出たのじゃないかなぁと思われた。
 
その後は一旦部屋に戻り、すぐに続けて避難訓練。5Fの自分たちの部屋からオリエンテーション会場の8Fに階段で往復し、またまた避難訓練で8Fデッキを往復し……と、揺れる船内でちょっと厳しい1時間だった。
 
救命胴衣をつけて、救命艇担当の機関士さんの話を聞く 「短7長1(たんなな・ちょういち)」のサイレンの音が避難の合図。
部屋に備え付けの救命胴衣をしっかり着用し、部屋毎に決められた「救命艇」の下に集合する。
 
「船は、何かあってもすぐに沈むことはありません。部屋に救命胴衣を取りに行くくらいの時間はあります。……が、身支度を整えているほどの余裕はないかもしれません。そして、クレジットカード10枚持って脱出するくらいなら、ペットボトル1本の水をお持ちいただくほうが、助かる確率は絶対に上がります」
と、私たちの乗る救命艇担当の饒舌な機関士さんが言っていた。
 
避難訓練後は、息子が遊びたくて待ちかねるといった様子だったので、水着に着替えてプールデッキへ。
海水を引き込んだ5m四方くらいの小さなプールがあり、更に小さな子供用のプールも併設している。脇には温水ジャグジー(こちらは海水ではない)も。タオルもたっぷり用意され、デッキチェアを並べてもらってタオルを敷いて、日光浴したり息子と一緒になってプールに浸かってみたりジャグジーを満喫してみたり。
 
相変わらず船の揺れはなかなかのもので、遠くにかすかに見える紀伊半島が激しく上下に動いて見える。
息子が浸っているプールも、船の揺れに合わせて水が揺れまくり、「天然・波の出るプール」という感じになっている。さして「泳ぐ」こともできない小さなプールだけれど、それでも息子は満足そう。
 
幸い酔い止めがちゃんと効いていてくれているようだし、外で潮風を浴びている分には気分は悪くなく、「"周囲360度が海"って中で入るジャグジーってサイコー……天国……」と、昼食までの数時間、クルーズ気分を満喫しまくった。
 
結局船内イベントのワークショップやゲームの類は何にも参加せず、ずっとプールデッキでだらだらと。
最初息子1人だったプールも、息子と年の近い風の姉妹とお母さんなど、他の乗客たちもちらちらとやってきて、人見知りしない息子は早速色々な人と話したり、子供たちと一緒に遊んだり。

昼食は鮭親子重

お昼は和食のセットメニュー。
11:30から13:30が昼食の時間で、適当にこの時間内にメインダイニングに食べに行けば良いようになっている。もうすぐ12時になろうというあたりでプールから引き上げ、プール脇の温水シャワーを浴びてから身支度して会場に向かった。
 
鮭もいくらもたっぷりの丼 「決まった食事なのかー……」
と息子はちょっとがっかりした風。

 
それでも好物の鮭といくらの乗った御飯が出てきたので嬉しそうに箸を動かし始めた。
 
量はややしっかりめで、素麺も碗にたっぷり。全部平らげたらまた船の揺れでよろしくない気分になりそうだったので、素麺だけ少し残して、あとは綺麗にいただいた。茗荷好きとしては、ゲソと茗荷の酢の物の存在がすごく嬉しかったりして。
 
食事時のアルコール及びソフトドリンクは無料ではないものの、その価格は比較的良心的で、グラスの生ビールが400円、売店で売られている缶ビールは350円といったところ。ハウスワインのボトルは2500円だったかな。
で、ついグラスサイズの生ビールを注文して、飲みながらのお昼御飯。
 

「ぱしふぃっくびいなす」本日のお昼御飯
湯葉とトマトの磯和え
鮭親子重
烏賊ゲソと茗荷の土佐酢
割り子しそ素麺
香の物(若茄子わさび漬・野沢菜昆布)
和菓子(上用饅頭)
グラスビール \400

そしてインフォーマルな夜

昼食後はなんとなく疲れてしまって(あと多分、家族皆で飲んだ船酔いの薬の副作用もあったんだと思う)、部屋でお昼寝。だんなが先にベッドに倒れ、私も続いて倒れ、気がつけば息子まで寝息を立てていて、家族揃ってのお昼寝タイムになってしまった。
 
気がつけば午後3時。
「3時になったよ……展望風呂がオープンしてるよ。カクテルパーティー前に行っておかない?」
とだんなに声をかけ、声をかけても全く起きられそうにない息子はそのまま寝かせておいて2人で展望風呂に行ってきた。
 
鍵つきの脱衣籠や靴箱など、コンパクトながら機能的にまとめられた清潔な浴場で、何よりも大きな窓から海が見える開放感にはうっとりするばかり。けっこう混雑していたものの、洗い場が埋まるほどの人数でもなく、長風呂を堪能してきた。
 
そして5時になるのを待ちつつお洒落して、船長主催のカクテルパーティーに出席。息子はまだ起きられず、「これからの時間はお洒落しないと部屋の外に出ちゃダメよーちょっと部屋で待っててねー5時半には戻るからねー」と書き置きを残してだんなと2人8Fのメインホールに向かった。
 
キャプテンズウェルカムパーティーにて カクテルパーティーと聞いていたので立食かと思いきや、乗客の年齢層もあるし、とりわけ今日は船の揺れもあるしということでか、着席スタイル。
 
テーブルを囲むように人数分の椅子が並べられ、その椅子は全てステージの方を向いている。既にジャズバンドの演奏が始まっていて、いつもはオープンバーで働いている外国人スタッフのお姉さんたちがワインやジュースなどを各テーブルに配って歩いていた。一口サイズのカナッペ類もちょこちょこと配られている。
 
さすがに皆さん、きっちりお洒落をしていて、会場は結婚式披露宴のような華やかさ。ジャズの生演奏を聞き、船長さんを始めとした主なクルーたちの挨拶をいただき、スパークリングワインのカクテルを飲んでの30分ほどのパーティーだった。
 
船長さんの挨拶によると、
「今日はこのようにけっこうな揺れで皆様にご迷惑をかけておりますが……この揺れが大丈夫だわ、へっちゃらだわ、というお客様がいらしたら、世界中どこをクルーズいただいても大丈夫だと言わせていただきます」
とのこと。
 
やはり今日の揺れは相当に酷いものだったようで、その揺れは今日の夜の今現在もまだ続いている。夜半過ぎくらいまではこの揺れは続くそうで……帰りにはもう少し快適な船旅になると嬉しいところ。
 
パーティーから帰ると、息子も既に起きていた。
夕飯まではまだ2時間ほど時間があり、お風呂に入ってくるといいよ、その後息子もお洒落しよう!と、息子を展望浴室に送り出した(インフォーマルナイトでも、浴場と部屋の往復、夜食会場と部屋の往復はインフォーマルに準じなくても良いそうで)。その後は新調したスーツを息子に着てもらい、
「かっこいい!超かっこいいから記念撮影しよう!」
と連れ出して、吹き抜けのレセプション前の階段あたりに一眼レフ抱えていって写真撮影に勤しんだ。
 
「メガネ男子!スーツメガネ男子!萌え!」などとたきつけて、だんな、息子それぞれ旅行に持ってきていた自前のメガネをかけてもらって記念撮影してみたり、お洒落着で売店を覗いてみたりオープンバーでエスプレッソなどいただいた後、ディナー会場へ移動した。
 
ディナー会場では毎晩バンド演奏がお出迎え 今回のクルーズでは、夕食は2回制。
 
乗船の日に「ご夕食時間のご案内」というペーパーが届いていて、それに
「お客様のご夕食は2回目のお時間にご用意しております」
「不都合がございましたらフロントまでお申し出ください」
などと記されていた。
 
2回目の食事は基本的に毎夜19:30からということで、少々遅め。子供もいることだし1回目にしてもらおうかとペーパーを確認したら、1回目は毎夜17:30からとのこと。……それはあまりに早すぎる。
 
結局、普段の夕飯は午後7時前後に摂ることが多いので、それに近い時間帯の方が良いだろうと、このクルーズ中の食事はいつも2回目に訪れることにしたのだった。
 
生ハムと秋野菜の前菜。栗とか乗ってました。 テーブルには船名のロゴ入りの大きな位置皿が置かれ、その脇にはずらりとフォークとナイフが並んでいる。
 
卓上に置かれたメニューカードを見ると、突き出しから始まり、前菜2品と魚料理肉料理、グラニテまで出てくる本格的なフルコースディナーだった。
 
ちょうどこの夏に「フランス料理マナー講座」なる帝国ホテル主催のワークショップに参加してきた私と息子。
その講座で体験したような、ずらりとフォークナイフが並ぶ食事なんて、結婚式の披露宴くらいしかないんだけどね、レストランに行っても最近は食事毎に配膳してくれるところの方が多いしね、なんて言っていたのだけれど、その体験を上回るフォークとナイフの数だった。「あ、これ、デザート用なんだよね。で、パン皿は自分の左側なんだよね」と息子はちょっと得意気。
 
美しい皿の数々は「おおー、ちゃんとフレンチだ!」と嬉しくなるものが多く、でも味の方は馴染みやすいものばかりだった。
 
驚いたことに、息子は帆立も、バルサミコソースのサラダも含め、最初から最後まで見事に完食。何が出てきてもフォークとナイフでそれなりに器用に食べていく息子の成長っぷり(と胃袋の大きさ)に改めて驚かされた。
 
これがメインディッシュ、リンゴを添えた牛フィレ肉のロースト ワインもおおむねお手頃価格。
 
モエ・エ・シャンドンによって設立されたオーストラリアのワイナリー、「Green Point」のワインがリストにあったのでシャルドネを1本いただくことに。
 
フルーティーで、適度にカラッと軽めの辛口でとても飲みやすいワインだったので、適当なペースでくいくい飲みつつコース料理を堪能した。
 
テーブルは6人がけ。他の方と相席になることはなく、タイミングよく次々供されるお皿をリラックスして食べることができた。
 
どれも美味しかったけれど、メインディッシュの牛肉の皿が一番素敵だった印象が。甘く焼かれたリンゴと、スライスして揚げたリンゴが添えられた、ほの甘いソースのステーキで、焼き加減も柔らかさも絶妙。カリカリに焼かれたベーコンも添えられた、食べ応えのある皿だった。魚料理の香ばしく焼かれた帆立貝も美味しかった。

「ぱしふぃっくびいなす」本日の夕御飯
若鶏のコンフィ 蜂蜜風味のピンチョス
生ハムとフリットにした秋野菜の取り合わせサラダ バルサミコ風味
ポテトのクリームスープ
帆立貝のソテー 軽い白ワインのソースと茄子のグラタン
苔桃のシャーベット
特選牛フィレ肉のロースト 林檎とマスタードのソース
自家製パン
マンゴーとココナッツのムース
紅茶
白ワイン(グリーンポイント シャルドネ) \3500

 
デザートに濃厚な味のムースと紅茶を堪能した後は、一度部屋に帰ってから「今日は星が見えるかな?」と、星座盤と懐中電灯と小さな望遠鏡を持って、上階のデッキに星を見に。
 
クルーズ船からは遮るものなく光源も周囲になく、晴れていれば素晴らしい星空が見えるよと教えてもらっていたので星座盤を旅行荷物に入れていた。今日は幸い良い天気、あいにくと船そのものからの光がけっこう強かったものの、デッキの端まで行くと暗い夜空に星が大量にまたたいているのが良く見えた。
 
「見えた見えた、あれ夏の大三角形!」
と、進行方向向かって少し左に見える明るい星の三角形を指さしつつ、しばらく船上からの星観察をした。うっすらとだけれど、天の川らしきものもぼんやりと見える。
 
まだまだ船は揺れ揺れだけれど、明日の朝には屋久島に到着。
トレッキングシューズ履いて、森を歩いてみる予定。