3月2日(金) 山越・まえば・はりやなど

やっぱり王者の風格か?〜綾上町「山越うどん」

朝7時30分起床、朝8時出発。今日は朝からうどん屋巡りだ。
今日はまず綾歌郡を攻めてみようということで、有名すぎる有名店「山越」の開店と同時の9時現地到着を目指して宿を出発してみた。

前回、香川に初めて訪れて、道に迷いつつも最初に入ったのがこの店だ。今度は迷いもせず無事に9時を少々過ぎた頃に店に到着できた。20台は止まれるかという専用駐車場に、既に5台ほどの車が泊まっている。早々にうどんを食べる客で混み始めている店内だった。

「山越」のうどん♪製麺所的様相(というか、まんま製麺所)の厨房でうどんをもらい、店と民家の軒下のようなところでベンチに腰掛けうどんを啜る。テーブルはほとんどなく、基本的に「ベンチに腰掛けて喰う」という、ワイルドさ漂う雰囲気は相変わらずだ。どんぶりのうどんに葱を乗せたものが手渡され、自分で天ぷらをトッピング。だしは外のタンクの中に入っている。熱いのも冷たいのもあるだしはどちらもなかなかの味で、釜玉に醤油をかけるのも旨い。マヨネーズがけ、なんて凄いものもある。しかも旨いらしい。

今回は、"かけ"(一番シンプルな、だしをぶっかけて食べるだけのやつ。いや、それよりもシンプルなのは醤油をかけただけのやつだけど)を"ひや"でもらってみた。前回は「釜玉」を頼み、そのピヨーンと伸びる麺に驚愕したものだった。"ひや"はどうだろう。1玉90円。安い。

冷たく締まったうどんは、シコシコキュッキュとした強いコシが感じられ、しかし舌触りはやっぱり滑らか。つるつるつるつる、ぴよーんと、どこまでも口から食道にフィットして胃に落ちていく、という感じだ。げその天ぷらを囓りつつ、空腹の胃にうどんを流し込む。
コシがあって伸びもあってまろやかで滑らかで、だしはすっきりめだけど、いりこの風味がしっかりと。全体的に何とも良い感じのバランスを保っているうどんだ。人気があるのも当然だ、という感じの王者の風格があるというか。逆に、何というかバランスが良すぎて、突き抜けた個性がいまひとつあるようでないようで、外せない店なのに私の中では一番にならないというか。そんな店でもある。でも、美味しいことには変わりない。

「くー、"今日は3軒だけですよ"とかいう状況だったら絶対にお代わりするのに〜」
「いや、食べ歩きするとしても、お代わりしたかも」
お代わりの誘惑にくらくらしながら、後ろ髪ひかれつつ店を後にした。歯に挟まった葱まで愛しい、最高のお店のひとつだ。

綾上町「山越うどん」にて
かけ(ひや)小
かけ(あつ)小
げそ天
ちくわ天
90円
90円
90円
90円

わが夫、最愛のだし〜綾南町「田村」

続いての目的地、車を5分ほど走らせた店「田村」へ。
前回来たときは、私は満腹でだんなの丼から一口分けてもらって食べるのが精一杯な店だった。一口だけでも美味しかったし、だんなに至っては「俺の中では、ここのだしが日本一!」と宣言する始末だ。とにかくここのだしは、すごい。個人の好きずきだろうけど、このうえなく濃厚なのだ。いりこが。

「田村」のうどん。だしが、だしが〜それほど目立たない店であるし、車を止める場所にも困ってしまうような場所だ。止めていいのかどうかわからんまま、店の向かい側にある自動販売機が並ぶ空間へ車を止めて、お店へダーッシュ。
タイミング良く、うどんが茹で上がったばかりのところで注文の順番がやってきた。おばあちゃんがざかざかと茹でたてのうどんを水で締めていて、そこからうどんをチャッと取っては1玉ずつどんぶりに乗せている。だしはタンクから自分で注ぎ、ボウルに入った葱をよそう。小さな棚に乗った天ぷら類から、ちくわの天ぷらを1個乗せる。息子用にコロッケも1個もらい、店先のカウンターに腰掛けてぞるぞると啜る。

ここのだし、苦手な人もいるだろうけどヒットする人にはたまらないというタイプだ。だんなはどうやらど真ん中ストライクに当たってしまったものらしい。一口啜っては「はー」、もう一口啜っては「ふー」と至福の顔をしている。私にとっては、少し塩辛くもあり、いりこが濃すぎて苦さもちょっと出ているように思えて「美味しいけど、私にとっては一番じゃないかな」という感じ。いや、美味しいんだけど。とにかく口中全体が「いりこだし〜、いりこだし〜、いりこいりこいりこりこ」と全面的いりこ状態になってしまうのだ。
ねっちりしたうどんはツヤツヤと光り、どこか素朴な味わいもある。ピチピチとした、活きが良いなぁと思えるうどんだ。呑むようにがぶがぶとうどんを啜り、「さ、次に行こうか」と店をちゃっちゃと後にする。

やっとスタートダッシュがかかってきたかな、という感じの私たちの胃袋。

綾南町「田村」にて

ちくわ天
コロッケ
2×100円
50円
90円

このゲソ天なの、ゲソ天なのよ〜綾南町「松岡」

続いて車を走らせ、十数分。
「宮武ファミリー」と称されているうどん屋群がある。どっしりした強いコシと粘りのある強い麺を出している、「宮武」から派生した店(親戚であったり師弟関係であったり)の数々で、この「松岡」もそのひとつとのこと。「宮武」を愛してやまない私たちは、「ならば他の宮武ファミリー制覇ということで」とここに来てみることにした。

10時の開店直後。ちょうど店が開く直前に車は店先に到着し、店の前には8人の団体様が開くのを待ちかまえているところだった。8人でうどん屋巡りをしているらしい。何だかすごい。いや、人のことは言えないけれど。

「松岡」のうどん、ゲソはみ出てます店内は、小さなテーブルと椅子が10人分くらい、あとは小あがりに4人がけテーブルが1つ。息子が「こっち、こっちよー」と小あがりに行きたがるので靴を脱ぎ、座して待望のうどんを食べる。
あつあつで頼んだ「小」には葱とだしがかけられた状態で出てきた。あとは別テーブルの上にある天ぷらを好みで乗せる。
「宮武系」といったらゲソ天、なのである。お店で揚げているわけでなく、藤原屋という業者が各店に卸しているゲソ天は絶大な人気があり、漏れなく我が家も大好物の1つになっている。ここにも当然ゲソ天が鎮座ましましていた。長い長い、どんぶりの端から端まで届いた挙げ句溢れてしまうようなゲソ天だ。これは1個100円。

宮武系独特のコシの強さは、あったかいうどんであっても強く強く感じられるものだ。噛むとずしっとした押し戻しがあって、ねっちりと切れる。口の中がうどんで押されてポヨンポヨンとする感じ。ピカッと光るうどんは少々のねじれとよれがあり、その艶がいかにも旨そうだ。いや、実際旨いんだけど。
だしは、若干さっぱりした風味のすっきりしたもの。透明感溢れるだしだ。塩味も強すぎず弱すぎず、ゲソ天の油が溶けていくとそれがじんわり甘さを帯びてきて、これがまた美味しい。さっぱりめではあるけれど旨味が凝縮しているようなだしだ。しっとり衣のゲソ天は、ゲソが2本3本入ったものがどっかりと揚げられている。衣そのものに味がちょっとばかりついていて、ゲソのコリコリした食感には甘ささえ感じられるような衣が妙に似合うのだ。

のれんに店名さえ入っていないような、小さな店だった。でも、客はどんどん続々とやってきていた。

綾南町「松岡」にて
かけ小
げそ天
2×150円
2×100円

磯部卵揚げ!!!〜綾歌町「まえば」

このエリア、狭いところにぎゅうぎゅうと旨い店がひしめきあっているのである。胃袋の余裕ができぬまま、するすると次の店に到着してしまう。ま、まだ喰えるかな。余裕だな。

次に訪れたのは「まえば」なる店。
今回の旅行、お世話になっていたSさんから「だしがとにかく美味しい、S級クラスであることは間違いない」と事前にプッシュされていた店だ。本でチェックしたコメントも気になるもので、花丸チェックつきの店だった。

ここは、これまでの4軒の中では一番広い店だった。大人数が一気に入る、いわゆる「大衆セルフ」な店だ。
食べる場所の確保すら怪しい店も多い中、ここは30人以上が座って食べられそうな幸せ設計。オプションもものすごく多い。天ぷらやおむすび、お寿司など色々あって目移りする。そろそろ頭の中がぐちゃぐちゃで、何が旨いのか何を食べるべきかのチェックもし忘れつつ、入店。とりあえずおきまりの「かけの小、ひとつ」と注文。

「まえば」のうどん、ピカピカでござる奥からはどんぶりに入ったうどんの玉が出てきた。別台にて自分でゆがき、だしを注ぎ、オプションものも取り、レジでお金を払って脇にある葱や生姜をぶっかける。種類豊富な天ぷらを眺めていると
「おゆきさんおゆきさん、卵、卵っ」
と嬉しそうなだんなの声が。彼は早速と卵を1個小皿に取っているところだった。半熟卵の天ぷららしい。しかも、磯辺揚げ。青海苔のかけらが衣の向こうにちらちらと見えるそれは、いかにも美味しそうだ。というわけで、私も当然1つ所望する。卵だ卵だ。
……そろそろ腹もいっぱいだというのに、なんでここで卵喰ってますか私たち。

麺はゆがかずに、冷たいまま温かいだしをかけて喰うことにした。適度なコシのうどんは適度なのび、好みな程度の弾力性がある。切り口がピシッとしたシャッキリうどん、というよりは、ツヤツヤツルツルツルツル〜という滑らかさ数値の方が高い感じのうどんだ。喉になじむうどん。
そして、だしは透き通っていてとても綺麗な色味を帯びている。いりこの風味がこれもまた濃厚。今日の店はどこへ行ってもそれぞれいりこ風味が強めの良いだしを飲ませてくれたけど、ここもまた格別な美味しさがあった。適度な濃さで、なのにすきっと透き通った味がする。

これが磯部卵揚げで、卵だ。中がとろんと半熟のゆで卵には青海苔がまぶされた状態で揚げられている。卵を揚げただけで、なんでこんなに美味しいのだろう。ほの甘さすら漂ってきて、青海苔がまた香ばしい。「卵♪卵♪卵♪」「うまいよたまご〜」などを感激しながら即食。

あー、旨かった旨かった。そろそろちょっと腹が厳しくなってきた。立て続けの4玉は、さすがにちょっとつらくなった。どの店でもゲソ天だのちくわ天だの卵天だの喰ってるのだから、あったりまえである。喰い歩きを前提とするなら、そんなもの喰っててはいけないのである。でもだって、天ぷらだって美味しいし食べたいのだから仕方がない。

このエリア内の「なかむら」に行こうとも思っていたが、かなり胃袋は悲鳴をあげつつある。仕方なく、「市内に戻ろう……」と、11時開店の「はりや」を目指すことにした。こちらも超人気店らしい。
車に戻って『さぬきうどん全店制覇攻略本2002年度版』を眺め見る。今喰った店の説明文には、
「半熟卵の磯辺揚げ(90円、限定70個)が人気急上昇らしいぞ。」
と書いてあって、
「そうだった!これ見てこれ喰いに来たんやないか!」
と思い出した。いや、ちゃんと喰ったし喰えたからいいんだけど(今度からはちゃんと予習してから入らねば……)。

綾歌町「まえば」にて
かけ小
磯部卵揚げ
2×160円
2×90円

麺も大将もイカす店〜高松市「はりや」

車は一路、高松市へ帰るべく国道を突き進む。
「カウンターだけの一般店。混むしちょっと市街からは離れているし、売り切れ次第終了だけど、美味しい!」
と、これまたSさんに教えてもらった店、「はりや」に向かう。
スケジュール上、せっかく香川県西部に入ったのだからそのまま善通寺市だとか坂出市などに行けば効率は良かったのかもしれない。だが、この店は明日は休み。しかも売り切れ御礼。開店は11時。とにかく今日の今、目指さなければならない店だった。
ちなみに、セルフサービスの店じゃなく、注文とって普通にで出てくる店のことを「一般店」という。

午前11時40分。店の前には既に長蛇の列ができていた。20人ほどはいるだろうか。店の中にまで並んでいるのが窓の外から見て伺える。が、ここで臆していてはいけない。普段だったらラーメン屋の行列に並ぶのも避けているはずなのに、おとなしく行列の後ろについて待ち続ける私たちだった。1人の客が座ってから出ていくまで15分ほどで、それゆえに15席ほどあるカウンターは思いの外すいすいと入れ替わっていく。

カウンターの向こうの厨房では、3人が戦闘態勢にあった。茶髪の兄ちゃん(おっちゃんと呼ぶには若いよなぁという感じの)が麺を茹で、麺を洗い、麺を盛りつけていく。どうやら彼が大将だ。天ぷら鍋の前ではおばちゃんがひたすら揚げ物を作っている。めがねのお姉さんは蕎麦猪口を出したりどんぶりを下げたりと、これまた細々と動いている。

天ざるの注文が多いらしい。うどんは、かけ、ざる、釜揚げと基本は3種のようで、それに天ぷらだのゲソ揚げだのかしわだのとトッピングのバリエーションがある。カレーうどん、なんてのも。

注文してから茹でたてのうどんに揚げたてのトッピングをつけてテーブルへ、という感じだ。だが、トッピングの盛りは半端でない。かしわ(鶏の天ぷらというか唐揚げというか)は、大きな塊をがっしがっしと3つかみくらい(多分7個くらい)、天ぷらも4種くらい、ゲソもこれまたわっしと掴んで超山盛りに盛りつける。うどんの上にうどんが見えないほどトッピングを盛りつけて、最後にうどんの山の中にレモンの櫛形切りのやつをすっ……と刺して、供している。なんだか格好良い。ステキだ。

大将の兄ちゃん、ニコニコと愛想良く、楽しそうにうどんを扱っている。 「はーい、お待たせしましたっ」
「はい、どうもありがとね♪」
兄ちゃん、とにかく元気だ。常連客らしい人と「子供がね、インフルエンザで……(奥さんが)看病中なの」などと苦笑しながら話している。自分が子供持ちのためなのか、子供へのサービスが何だかめちゃめちゃ良い。
運良く3人並んだ席ががばっと空き、息子も一緒にカウンターの席につくことができた(膝の上に乗せて食べることを当然覚悟していたけれど)。すぐさま、
「はい、お待たせしちゃったね。良く並んでくれたねー。どうぞ」
と小さな小さなきつねうどんがサービスで出てきた。2口分ほどのうどんに、かまぼこと半分に切った油揚げが乗っている。すすす、すばらしい。こんなサービス、初めてだ。ありがとう、兄ちゃん。

「はりや」の天ざる、おそるべしそして、茹でたてのうどんをざっしざっしと洗い、手で掴みながら1人分をうっちゃっちゃ、と盛りつける。揚げたての天ぷら類を乗せて、さっと出す。2分ほどで出来立てのうどんと天ぷらがやってきた。海老と南瓜とさつまいもと蓮根の天ぷらは、どれも大ぶりだ。うどんの中に切ったレモンが刺さっている。これを天ぷらにジューッとかけて、では、いただきます。

美味しいんである。めっちゃめっちゃめっちゃめっちゃ、美味しいんである。
うどんは好みの、断面四角の切れ目がシャープなピッチピチのもの。茹でたてをサッと締めたばかりのものなので、何だかもう、うどんの躍り食い喰ってる気分だ。コシも充分、歯ごたえもとても好みだ。強いコシのうどんは、チュルチュルチュルチュルチュルチュルと、自重でいくらでも胃の底に落ちていく感じ。
ざるうどん用のつけだしには、葱と生姜と胡麻が添えられてくる。ちょっと甘め、濃いめの味付けがまた良い感じ。いくらでも食べられそうな味わいだ。甘さ強めだけど、かなり好み。
そしてそして、揚げたての天ぷらがこれまたサイコーだった。厚めに切った蓮根は柔らかく栗のように甘く、さつまいももホクホクホクホクする。パリッとした衣は歯触りが快感で、良い感じの揚がり具合だった。

本当は、あまりに満腹だったものだから
「天ざる1つとって、あとはざる1つ取って天ぷらをわけっこしない?」
などと言っていたのだ。だが、あまりに旨そうだったもんで1人1つの天ざる。それもぺろっと食べられた(実はうどんがちょっと苦しくてだんなに2口分ほど手伝ってもらったけど)。
あまりに旨かった。それで、一人600円。この味、この盛りだったら都内では1500円しても良さそうなものが600円。
もうもう、すばらしすぎる。長蛇の列も頷けるというものだ。

かしわも大盛り、ゲソも大盛り、こういう店が近所にあったら週に一度は通いたい、そんな幸せな店だった。
もう、兄ちゃんもね、大好き(イイ男だったんです、これがまた)。

食べ終わって出てみると、12時半。まだうどん屋巡りには余裕のありすぎる時間帯だ。
だが、私たちの胃袋はもうぎゅうぎゅうのギューだった。あたりまえだ、あんな天ぷらの盛り合わせ喰ってんだから。
「もうね、今ね、お腹押したらピューッて出るよ。ピューッて」
「私はね、地図見たら眼からうどんが出そうだよ、ピューッて」
「やばいね」
「もうダメだ」
「帰って寝よう」
で、あえなく敗走。途中のマーケットでドリンク類を仕入れつつ、宿へと帰還したのだった。帰るなり昼寝。牛のように喰っちゃ寝している私たち。でも悔いはないの、美味しかったから。

高松市「はりや」にて
天ざる
2×600円

山かけ、喰った〜高松市「五右衛門」

優しくも、旅館に戻ると時間外だというのに「お風呂も入れますよー」と言っていただいたのである。だが、怪奇うどん腹人間と化した私たちは、風呂に入ったらそのまま破裂するんじゃないかという状況に陥っていた。お風呂は、無理だ。ていうか、上向いて寝てるのも苦しいというか(←バカや……)。

ごろんごろんとしながらこれまでの食べ歩きを振り返りつつ、親子で昼寝。最初にだんなが寝息を立て始め、次に私が端末に向かって日記を書いていた手をぱたりと止めてそのまま突っ伏して寝始め、最後に息子が「なんだなんだなんだ!?」という感じで一緒になって寝転がり、寝始めた。長い昼寝は3時間ほど。目覚めると、すでに夕方だった。息子が起きるのを待っていたら、7時を過ぎた。あちゃー。
「夜のうどんを食べに行こう〜」
と、今晩は高松市内で深夜までやっているという「鶴丸」「五右衛門」の2店を目指して行ってみることにした。

まずは、「こっちの方が美味しいみたい」と「鶴丸」を目指す。
午後7時からやっている店のはずだけど、午後7時20分に到着した時点で、店は閉まっていた。ガラスの入り口扉から覗くと、従業員さんたちが御飯を食べている最中。
「あれ?30分間違えたかな?」
と、とりあえずは100mほどしか離れていない「五右衛門」を目指すことにした。

「五右衛門」の山かけ夜が早い高松市内にあって、午前3時まで営業しているという気合いの店だ。多数のメニューがある店で、食べたいものがあれこれとあったけれど、胃袋が相変わらず苦しい状態だったので私は「山かけ」750円、だんなは「ぶっかけ」500円を注文。どちらも"ひや"にしてみた。
"一般店"は、おしなべて量が多い。製麺所のうどんはちゃちゃちゃちゃ〜、と4口くらいで食べられそうなところが多いが、一般店は値段が高い分、分量も十二分にある。1店入れば満腹になってしまいそうなので注意が必要だ。

で、「山かけ」のひや。
たっぷり多めのシャキッとしたうどんの上には、たっぷりととろろが、その上には卵の黄身がごろりと乗っていた。わさびがたっぷりどんぶりの縁になすりつけてあって、それを少量うどんに乗せつつ、ツルツルと啜りこむ。適度に締まったうどんは、コシも強めで心地よい口当たり。卵の濃厚さが加わったとろろはうどんに良く絡む。濃いめのだしと混ぜ合わせてずぞぞ、ずぞぞ、と啜りつつ、一気にうどんを平らげた。

夜7時を過ぎて、だが厨房ではうどんの生地がこねまくられている。まだまだ営業はこれから、といった風情の店だった。
飲んで飲んで飲んだあとに、こういう店で深夜のうどん。それもまた良いかなぁと思ってしまう(東京だと、やっぱりラーメンかなと思っちゃうんだけど)。

高松市「五右衛門」にて
山かけ(ひや)
ぶっかけ(ひや)
750円
500円

早すぎると、いなりは無いのよ〜高松市「鶴丸」

「鶴丸」、午後7時40分に再び訪れてみたものの、まだ開いていない。今日は閉店というわけじゃなく、中ではスタッフが動いている。扉をちょっと開けて、だんなが聞いてみてくれたところ「あと20分くらいだね〜」という返事が返ってきた。開店、8時であるらしい。
しょうがないので商店街をぷらぷら歩いて20分ほどの時間をつぶす。夜の早い街は、土曜日だというのに飲食店以外のほとんどの店は閉まっている。

午後8時10分、無事に開店したらしい「鶴丸」の扉を開ける。ここは朝5時まで営業しているという、これまた驚異の店だ。
だんなは「かけ」350円、私は「冷天」850円。どうもだんなは風邪気味のようで、さっきから"かけ"ばかり食べている。風邪薬も買ってきた。明日は6〜7軒うどん屋をめぐる予定なので、何が何でも治っていただかなくてはならぬ。がんばれ、だんな。
この店の「いなり寿司」もまた、絶品らしい。息子のために注文……と思ったが、
「すんません、まだ出来ていないんです」
と言われてしまった。ならばおむすびでも……と思ったが、そもそも御飯が炊けていないらしい。まだまだ営業開始直後なので、うどんとおでんしか準備は整っていないらしかった。ちょっとショックだ。遅く来るほど活気も出てきて充実してくる店なのかもしれない。

「鶴丸」の冷天ここの店も、カウンターの奥でどかどかとうどんが切られていた。うどんは次々と茹でられていき、茹であがるなり流水で揉まれている。だんなの「かけ」はすぐやってきたが、そのまま20分ほど経過した後、やっと「冷天」がやってきた。褐色の濃いめのだしが少量どんぶりに入り、さらしたてのツヤツヤとしたうどんがたっぷりと。上には葱と胡麻と生姜が盛られて、その上に天ぷらがいくつも盛りつけられていた。大きめの海老が1本と、南瓜とアスパラだ。揚げ玉もおまけのようにたっぷりと散らされている。揚げたての天ぷらが美味しそうだ。

これまた、繁華街(というか、このへんはバーとか飲み屋がすごく多いので歓楽街というべきか)の中とは思えないほど美味なうどんだった。キュッキュとした歯触りはとても心地よく、喉ごしも悪くない。長い長いうどんは啜っても啜っても終わりがなく、「噛みきるのは反則なんだっけ?」と思いつつ、飲み込みきれずに口で噛みきる。ずぞぞぞぞぞぞ、と店の中にはひたすらにうどんを啜る音が響いているのであった。
昼間に食べ歩いた超1級クラスのうどん屋群と比べてしまうと、どうしても物足りなさは感じられるけど、夜にふらりと入って食べられる店の中ではやっぱりかなり良いセン行っているのだろう。

周囲には、うどんが茹だるのを待ちつつビールとおでんで一杯やっている人が多かった。
卵や大根をつまみつつ酒を酌み交わし、いざいざ、というタイミングでピシッとしたうどんが出てくるのだ。何だかステキだ。
香川の住人さんたちがちょっぴり羨ましくなる夜だった。

さぁ、ゆっくり風呂に入ってさっさと寝ることにしよう。明日も早起きだ。

高松市「鶴丸」にて
冷天
かけ
850円
350円