4月5日(土) 絶品豆漿と、初挑戦臭豆腐

「阜杭豆漿」〜やっぱりアナタから浮気できない

空いてるテーブルに適当に座ります 台北車站から地下鉄で東に一駅、「善導寺」のすぐそばの古ビルの2階に、絶品の豆乳屋さんがある。

前回の台湾旅行時にも赴いたこのお店、それまで「豆乳なんて、要するに固まってない豆腐を薄くしたようなやつでしょ?」くらいの認識でしかなかった私の豆乳感をうち崩す味で、以来日本でも時々豆乳を買って飲むほどまでに私の嗜好を変えてしまった衝撃の味だった。

昨日の朝食豆乳も悪くはなかったけれど、それは私の普通に知る味の範囲内のものでしかなくて、どうしてもあの衝撃の豆乳を再び口にしたいなとホテルからてくてく歩いて食べに行くことに。

1階に市場が入っている、外見はかなり怪しい感じのビルの2階にある、豆乳屋さん「阜杭豆漿」。

いかにも市場らしいタイル敷きのそっけない床のそこここに、無造作にテーブルや椅子が並んでいる。今日は入り口から階段に行列があふれ出すほどの混雑で、「内用」(中で食べる)「外帯」(テイクアウト)2つの列に分かれてお客さんが並んでいた。

階段まで伸びていたのは「外帯」の列で、最初うっかりそこに並んでしまいつつ「内用」に並び直して豆乳を手に入れて簡素なテーブルについた。

なんといっても美味しいのは「鹹豆漿」。でも甘く冷たい豆乳も捨てがたい美味なので、これも1ついただくことにした。

息子は豆乳が今ひとつ好きではないので、「蛋餅」なる、腸粉に似たプルプルとした餅生地の卵焼き包みクレープを買ってやり、私とだんなは「豆乳にはやっぱりこれよね」と油条も2本。調子に乗ってあれこれ頼み、朝からお腹がたぷたぷになるほど満喫してしまった。
鹹豆漿とサクサク油条

5年ぶりのこのお店の豆乳、変わらない素晴らしい美味しさで本当に嬉しかった。

甘く冷たいシンプルな豆乳も、なんでこんなに濃厚なのにくどくなく自然な味なのかと不思議になる。豆そのものの甘さも心地よく、他の店の豆乳で感じられる豆特有の青臭さが、このお店の豆乳には感じないのだった。

醤油だれを絡めた風の油条のかけらが散らされた鹹豆漿は、碗の底に調味料や葱などを加えてから膜が張るほどのアツアツの豆乳をよそってくれるというもの。数分でおぼろ豆腐状に固まってくる豆乳は「豆乳」というよりも「茶碗蒸し」に近い感もある。塩気もそれなりにあるし、じわっと辛さもあるのはラー油も入っているからだろう。

豆乳も勿論の事、他のあれこれが美味しいのも嬉しい。
サクサクの油条(これほどサクサクな油条は他の店では食べたことがない……普通は、もうちょっとパン寄りにモフモフした食感だったりするのだけれど)をちぎっては豆乳に浸してもぐもぐ。鹹豆漿の口直しに飲むのが冰豆漿というのも我ながら妙な感じなのだけれど、あれもこれも大変美味しくいただいた。

なにしろ、日頃は豆乳豆乳言わないだんなが、
「持ち帰り用に、もひとつ冷たい豆乳買って帰る?」
と言い出すほどなのだ。阜杭豆漿の魅力や、おそるべし。(結局、あまりにお腹がたぷたぷなので持ち帰り豆乳は止めておいたのでした)

善導寺 「阜杭豆漿」にて
鹹豆漿
冰豆漿
油条
蛋餅
2×25元
20元
2×18元
25元

前回も買い物した気がするのだけれど、この豆乳屋さんの隣のビルにはスーパーがある。台北駅付近にはコンビニは良く見るけれどスーパーはなく、ここに寄ってあれこれお買い物。酒類を置いていないのは難点だけれど、ホテルで飲むためのお茶や牛乳、あとはお土産にする調味料の類などなど。

ホテルまでは充分歩ける距離ではあるのだけれど、それなりの荷物になってしまったので帰りは地下鉄を1駅乗って帰ってきた。

善導寺 「全聯福利中心」にてお買い物
インスタントXO醤焼きそば
500mlパック牛乳
500mlペットボトルお茶
オレンジーナ
XO醤
麺線の素
22元
38元
16元
3×15元
199元
41元

「大華行」〜蒸籠を買いに

乾物街の町並 今日の午前中は、乾物街「迪化街」に。

今回の旅行では、乾物は特に買う必要がなかったのだけれど、
「家で使ってる蒸籠、ずいぶんボロボロになってきたね」
「台湾で買ってきたのはまだ壊れてないし、これすごく良い感じじゃない?」
と、5年前にこの通りのお店で買った、蒸籠のお店を探しに行くことにした。

蒸籠なんてどれも似たようなもの……という印象があったけれど、あちこちで買い足しつつ使っている我が家の蒸籠はよくよく見ると造りは千差万別。台湾で買ってきた蒸籠は金属の枠がついていてかなり丈夫で、しかも造りも丁寧、しかもすごく安かった記憶がある。

そしてもう一つ、この町に来る小さな目的があった。
以前とある乾物屋さんで会ったものっすごい美少年がどう成長しているか、会えるものなら会ってみたい……という、小さいながらどうしようもない野望。

地下鉄の駅から歩くにしては、少々半端なところにあるこの乾物街。ホテル近くからタクシーに乗って「この通りとこの通りの交差点に行ってちょうだい」とお願いして、乾物街の南端で降ろしてもらった。南側は布の問屋街が並び、そこから乾物街、漢方薬専門店が北に広がってる。北の方には「にんにく問屋」が西に広がり、東には家具問屋も並んでいたりする。北端は調理器具を扱うお店も少々、といった感じ。

「あ、あった、あったよ、この店だ」
一見倉庫かという風の、至極殺風景な蒸籠屋さん(というか、桶とかまな板といった木製竹製の調理器具あれこれを扱うお店)に辿りついた。お店の名前、今回はちゃんとチェックしてきた。「大華行」と言うらしい。

このサイズの蒸籠の、蒸籠を4つと蓋も1つ下さい、と、お店のおっちゃんが座るテーブルの脇に積まれた蒸籠を指さして出してもらって、お会計はたったの400元。本体も蓋もどちらも1個80元(250円くらい)という、相変わらずの幸せな価格だった。変わることなく造りは丈夫そうだし、使い勝手も良さそう。

乾物街のそこここは閉店して工事しているところも多く、「蒸籠屋さん、まだあるのかな」「なくなっちゃったかな」と心配していたところだったので、また買えたのは本当に何よりだった。

そして感動の再会の店、第2弾。

「あった……"美少年屋"だ」
「うん、そうそうここだ"美少年屋"」
私たちの中ですっかり「美少年屋」と化していた北端の方にある乾物屋さんにも無事に辿りつくことができた。

美少年屋は、こちらも変わらず全体的に手頃な価格の品が並んでいた。そういえば干し椎茸は欲しいと思ってたんだ……と思い出し、あれこれ見せてもらって1斤(600g)580元の干し椎茸を半斤包んでもらうことにした。お店にはおばちゃんとおっちゃんと……お兄ちゃんがいた。

愛想の良いおばちゃんが、片言の日本語で「蒸籠買ったの?何に使うの?ショウロンポー?」などと話しかけてくる脇で、ひょろりと背の高い痩身のお兄ちゃんが椎茸を袋に詰めてくれている。あの時、ちょうど11〜12歳と思われた少年は、今はきっと18歳弱というところ。今風の長めの茶髪をした顔立ちを見て、「あ、ビンゴだ」と思った。

「いたね、"美少年"いたね」
「あのお兄ちゃんだよね、面影あるよね」
「はぁ……美しい思い出は、思い出のままで取っておいた方が良かった……かな?」

あの時、きらめくばかりだった美少年は、「小綺麗な感じの、でも割と普通のお兄ちゃん」に変わってしまっていたのだった。ほんのり残念に思いつつ、でも「あの子の5年後」が確認できて、それは嬉しかったりして。

迪化街 「大華行」にてお買い物
 蒸籠
 蒸籠の蓋
4×80元
80元

迪化街 「李日勝公司」にてお買い物
干し椎茸半斤
290元

犬小屋……? バイクが小さく見えるほどのでっかい犬 後ろにはトラ猫も

ところで、台北の町にはものすごく犬が多かった。

首輪はかろうじてついている(ついていないのもたくさん)ような犬が、鎖もヒモもつけずにそこらへんをぷらぷらとしている。あからさまに尻尾を振ったりはしないけれど、かといって人を見て唸ったり吠えたりということもない、おとなしい犬がそこら中にいるのだった。動物好きな息子は「撫でたい、触りたい、一緒に遊びたい」という態度を丸出しにしていたけれど、さすがに海外で野良犬に近い状態の犬に触って噛まれでもしたら……と思ってしまう。私も撫でたい気持ちを抑えつつ、代わりに写真を撮っていた。その一部が上の写真。

通りに無造作に置かれた調理台らしきボックスを寝床にしている犬や、トラ猫と一緒にお店の番をするように立っていた犬、そして50ccのバイクがミニサイズに見えてしまうほどの巨大なシェパードのような犬。ああ、どの子も可愛い。撫で撫でしたい。

台湾高速鉄道を見に行こう

見えてきた、見えてきた 買い物を終えた後、再びタクシーで台湾車站付近まで戻ってきた。

そういえば、台北駅には、2007年に運転が開始された「台湾高速鉄道」が通っている。車両は日本の新幹線技術が投入されており、日本のみならず台湾の人からも「台湾新幹線」と呼ばれたりしているとか。

当初は「これに乗って台南に台南担仔麺を食べに行こう!」という話もあったのだけれど、旅程をそう長くは取れなかったので乗るのは断念。せめてもと、ホームに電車を見に行くことにした。

乗りたいのではないのです、電車が見たいんです……と、窓口の人に相談して入場券を作ってもらい(本当は専用の入場券があるらしいのだけれど、今は扱いがないということで隣の駅までの自由席券を発券してもらったのだった。1枚35元)、発車前の列車ホームに入れてもらう。

本当は、乗客はアナウンスがあるまで上のフロアで待っていなければいけないらしい。侵入禁止状態になっていたエスカレーターを使わせてもらい、ガードマンつきで車両の先頭までホームを歩かせてもらったのだった。ぺろっと入ってぺろっと見られると思っていたのだけれど、なかなか警備は厳重だ。駅の人に「そっかー日本から見に来たのかーしょうがないなー」という感じに色々お世話されてしまったのだった。
おおー、新幹線っぽいなー

白地にオレンジ、シュッと長い先頭車両の格好良いフォルムは、確かに新幹線を彷彿とさせる。

「おおー、新幹線っぽいなー」
「ぽいなー!」
と、車両の前で記念撮影。座席は3列2列で、車内の雰囲気もとても新幹線的だった。台湾の人もこれに乗ってお弁当とか食べるのかな。

「杭州小籠湯包」〜安旨小龍包と、初体験臭豆腐

店頭で大量の蒸籠が 一度ホテルに戻り、午前中に買い物したあれやこれやを部屋に置いてから昼食へ。向かってみたのは、中正紀念堂近くにある小龍包屋さん、「杭州小籠湯包」というお店。

今ひとつ地下鉄の最寄り駅らしい最寄り駅がない、少々不便な場所にあったこのお店、「中正紀念堂」駅を降りて眩しい日差しの中、紀念堂を通り抜けるようにてくてく歩いてお店に向かった。これでお店に水もお茶もビールも置かれてなかったら泣けちゃうよねと、途中のコンビニでお茶やビールを買ってみたり。

が、そんな心配は杞憂で、セルフサービス式の無料の温かいお茶が用意されており、これまたセルフサービス式の缶ビールやジュースの類まで用意されているお店だった。全体的にシステマティックでお客の回転も速い。店頭には数組のお客さんが入店を待っている状態だったのだけれど、ものの数分でテーブルにつくことができた。

店頭の看板には
「鼎泰豐的實力 三六九的口味 路邊攤的價格」
という文字が。

意味は、「鼎泰豐の実力、三六九の味、屋台並の価格」という感じらしい。鼎泰豐は小龍包の有名店、三六九は包子の有名店だ。すごいキャッチコピーだねと笑ってしまいつつ、
「でも、こういうところに名前を出されるくらい、鼎泰豐は"小龍包と言ったらここ"というお店なんだね」
と、そんなところに感心する。

メニューが記されている伝票に、自分たちが食べたいものの個数を記入する仕組み。飲み物は自分で冷蔵ケースから取ってきて、生姜や酢、醤油などの調味料の類も一ヶ所にまとめられているところから自分で持ってくるようになっていた。調味料の脇の棚には「小菜」コーナーもあって、美味しそうなメンマや筍の和え物、もやしのピリ辛和えなどが置かれている。

天井が高く、適度にクーラーがきいているフロアは快適。ついつい調子に乗って色々と注文してしまった。

普通の小龍包を2蒸籠、蟹入りの小龍包と、海老入り焼売も1蒸籠ずつ。
更に更に豆鼓排骨(これが大好きでねぇ……この文字を見ると注文せずにはいられない……)と、ついに初挑戦の「臭豆腐」も頼んでみてしまった。
煮たり焼いたり揚げたりと色々な調理法のある「臭豆腐」だけれど、この店のは煮たうえで辛めの肉味噌やパクチーを添えてくれるものらしい。それならビールのアテになりそうだし、写真で見る限り分量も程良い感じ。この分量ならたとえ口に合わなくても私一人で食べきることもできそうだなと、試しに食べてみることにしたのだった。

そして、早々にやってきた臭豆腐。
息子はテーブルにそれがやってくるなり鼻をつまんで後ずさっている。店内に充満してしまうほどではないけれど(実際、隣のテーブルで注文されていたけれど、こちらまではほとんど香ってこない)、自分たちのテーブルに置かれた皿からの匂いはやっぱり強烈だった。

これが噂の臭豆腐 小龍包ですよー こちらは豆鼓排骨
どんな匂いかと問われると、「豆腐が腐った匂い」としか言いようのない匂い。
「これは"発酵"ではなく"腐敗"です」と主張したくもなる強烈な匂いの豆腐は、実際口にしてもそのまんまの匂いなのだった。なのに食感と味は豆腐。匂いだけアレ。なんとも不思議な存在のその物体に、ビリッと辛い肉味噌や香菜、唐辛子のかけらなどなどがトッピングされているのだった。厚さ2cm、5cm四方ほどのその「スゴイ匂いのする豆腐」2切れを、だんなと2人で半分こ。

「食べた!食べました!私、臭豆腐を無事に食べることができました!」
と胸を張って威張りたいけれど、でも実のところ、そう何度も食べたい感じではなかったというのも正直な話。沖縄の「豆腐よう」、中華食材の「腐乳」などと方向は似ているけれど、あちらは食感や味までもがチーズのように"発酵"しまくっていて、あちらは前向きに大好きな味だ。でもなぜ臭豆腐、こんなに匂うのに、あなたはきっちり豆腐のままなのか。あと一歩豆腐の殻を突き破って、新しい世界の扉を開けた方が美味しいものになるような気がしないでもない。

なんでも臭豆腐は

植物の汁と石灰等を混合し、納豆菌と酪酸菌によって発酵させた漬け汁に豆腐を一晩程度つけ込んだ物
Wikipediaより
なのだそう。豆腐そのものが内部まで変質しているわけではないのが違和感の元なのだな……。
豆腐をこのように加工した結果、「これは食べられるものである」と認定した人の判断力こそすごい、と私は思ってしまったのだった。

ともあれ、この店の目玉は臭豆腐ではなく小龍包。こちらは素晴らしく美味しかった。しかもお安い。

皮の端を少し噛みちぎるだけで溢れんばかりのスープが出てくるし、スープも肉あんも、適度な具合に上品すぎず下品すぎずな味わい。皮はムチムチプリプリで、これまた心地よい食感だった。リッチな味の蟹入り小龍包も悪くはなかったけれど、食べ比べた結果、スタンダードなものが一番だねという結論に。大きな海老が1尾ずつトッピングされていた焼売も、小龍包とは異なるプリプリ感で美味しかった。

骨つき鶏の蒸しスープ「元[中皿]鶏湯」も頼んでしまい、小龍包と共にその具沢山のスープや豆鼓排骨も美味しくいただいた。スープや豆鼓排骨は、これという鮮烈な印象はない料理ではあったけれど(というか臭豆腐の印象が強すぎたのね、きっと……)、安心して食べられる馴染みのある味という感じ。

本当はこの後ショッピングモールでも覗きに行ってみようかという話だったのだけれど、お腹はいっぱい、しかも調子に乗って缶ビールをお代わりしてしまってほろ酔い状態……ということで、一旦ホテルに戻ることにした。
今日は雲一つない良い天気。昨日一昨日とは比べものにならない気温の高さで、半袖Tシャツで歩いていても汗がじわじわ出てくる陽気だった。なのに台湾の人々は案外に厚着で、日本の春先の装いで歩いている人がとても多い。

杭州南路 「杭州小籠湯包」にて
麻辣臭豆腐
豆鼓排骨
元[中皿]鶏湯
小籠湯包
蟹黄湯包
蝦仁焼賣
台湾ビール
80元
50元
80元
2×90元
160元
130元
4×40元

新光三越でお買い物

午後の散策を止めてホテルに戻ってきたのは正解だったらしい。
だんなは頭が痛いとそれから数時間横になり、息子は持参した携帯ゲームに興じていたり、私も旅行記を記していたり。

強い日差しも少し柔らかくなってから、少し買い物に行こかとホテルを出て、近隣のお店をぷらぷらしてきた。雑貨屋さんを覗き、デパートの食器売り場なども少し眺め、結局デパ地下の食材売り場で調味料の類や日本に持ちかえる予定のビールをお買いあげ。

日本ではあまり見かけない「肉骨茶(バクテー=シンガポール名物の、豚のスペアリブスープ)」の素があったり、蔘鶏湯の素があったりするのが嬉しい。
「あー、豆板醤安いな、家のを切らしていたところだったんだよね」
などと、あれこれ買い込んで戻ってきた。

台北車站駅前「新光三越」にてお買い物
台湾ビール
辣豆板醤
松品醇味皮蛋
肉骨茶ミックス
蔘鶏湯ミックス
6×30元
45元
2×49元
59元
79元

「九番坑」〜巨大角煮に絶品餅スープ

だんなの体調はやっぱり今ひとつなようで、「夕飯は軽くにしとこう」という話になった。可能だったら2軒ハシゴしようかとも話していたのだけれど、昼食がかなり重めになってしまったということもあって、チェックしていたお店のどちらか1軒にすることに。しばらく悩んだ結果、台湾に来たからには担仔麺を食べておきたいよねと、前回も行った「台南大胖担仔麺」を目指すことにした。

が、タクシーで乗りつけたそのお店は、あいにくの休業。確かこのあたりの路地だったよと大通りから少し入ったところにあったはずのその店を探したところ、真っ暗なお店の店頭に貼り紙があった。「第2、第4土曜日は休み」と書かれていたけれど、でも今日は第1土曜日のはず。がっかり。

でも、がっかりしていても仕方がないねと再びタクシーに乗って、第二候補のお店だった台湾家庭料理のお店「九番坑」。
旅行前に、友人が「ここ、美味しいと聞きました」と教えてくれたお店だった。また聞き情報ではあったのだけれど、ネットなどで評判を見てもなかなか素敵な感じ。何よりもだんなが食いついたのは「ラード御飯」(猪油飯、という名前)の存在だった。御飯の上に、ラードと醤油だれを乗せて混ぜて食べるという、「ラード版 バター醤油御飯」といった感じのもの。体調悪いのにラード御飯はどうよと思いつつ、そのお店に行ってみることにしたのだった。
ビールを飲む器はこんな感じ

オーナーがインテリアデザイナーだったというこのお店、調度品のセンスがとても素敵だった。
コンクリート剥き出し的なところもあるのに冷たい感じはなく、大きなテーブルが心地良い。細長い、鳥の止まり木のような椅子はちょっとばかり座りにくかった。

テーブルにやってきたのはヤカン入りのお茶と茶碗。
ビールを頼むと大きなお猪口のような陶器製の深鉢がやってきて、それで飲むという面白いスタイルだ。

メニューを見せてもらったのだけれど、事前にチェックしていたメニューは今はないものも多く、結局「おまかせ」でお願いすることに。お店の人からも「おまかせにする?おまかせが良いよ」と勧められたので、お願いしてみた。

私もだんなもそう好き嫌いはないので、何が出てきても食べられる自身はあるのだけれど、問題は、今日に限ってだんなはあまり食べられそうにないという事。食べ切れそうになかったら、包んでもらって明日の朝御飯かな……と少々の不安を感じつつ、料理がやってくるのを待った。そもそも、初めて入ったお店で「おまかせ料理」というもけっこう怖いものがある。

最初に、「これだけは食べたい」とお願いしていたのは、看板料理でもある「封肉」なる豚の角煮と、ラード御飯。
大丈夫、「封肉」はもちろんお出ししますよ、といった感じで、それが一番最初にやってきた。

テーブルにやってきたのは、おそろしく大きなバラ肉の塊。高さは13cmほど、縦横は10cm四方くらいあっただろうか。香菜や菊の花が添えられ、皿には青梗菜も盛られている。最初にそれを見せてくれ、歓声あげつつ写真を撮っている私の横で店員さんが待っていたかと思えば、ハサミでジョキジョキ一口サイズに切り分けてくれたのだった。肉部分も脂身も、同じような食感に煮えているホロンホロントロントロンの角煮は、これでもかと柔らかい。脂はかなり落とされた感じで、見た目の脂身の多さほどくどさを感じなかった。味つけ自体も若干淡めだ。

封肉 肉団子と冬瓜、魚介の炒め物 これが絶品だった餅スープ

2人分の盛りつけで持ってきていただいた料理は、この角煮を入れて全部で4品。私と息子、不調のだんなの3人で食べるには程良い分量なのがありがたかった。だんなが好調だったら「あと、2〜3品持ってきてくださーい!」となりそうなところだったけれど、今回はこれで満足。

続いての皿は、肉団子と魚介を冬瓜と共に炒め合わせたもの。美しく切られたイカが美しく、旨味のある肉団子は口に含むとホロリと崩れる。次の品も魚介がメインで、白身魚の甘酢あん。酢豚ほど酢の味は強くなく、筍やパプリカの入った野菜あんが絡めてある。これも美味しかったけれど、他の3品に比べると普通な感じの味ではあった。
実に危険な美味しさでした

最後のは、「これ、また食べたい!」と家族で絶賛だった「鮑魚糕渣」という名前らしい、餅スープ。

「これ……鮑、だよね?」
「うん、だよね。鮑だ」
薄切りにされたシコシコした食感の鮑はスープの味に深みを加えてくれている。厚揚げのような餅のような不思議な食感の揚げ団子は、芋の粉も入っているらしい。口に含むととろけるような、実に不思議な団子だった。人参や筍入りの具沢山のスープの味つけも、あっさりしているけれど印象に残る味。

で、せっかくの美味しいコースを台無しにするかのような最後の「猪油飯」。表向きには存在しない、隠れメニューであったらしい。角煮の煮汁を脂ごと御飯にかけてざっと混ぜました、といった感じのもので、息子とだんなが2人して目を輝かしている。御飯はキラキラと怪しく光り、そりゃもういかにも美味しそう。息子がえらい勢いでかっこんでいたのが面白かった。

だんなの体調もじわじわと戻ってきたようで、とりあえずは一安心。
請求された金額は、予想していたものの7割ほどのものだったので、それもまた一安心だった。帰り際にご主人が表に出てきて、また来てね、ぜひ来てね、とお店のカードを渡してくれる。

また来られるといいね、今度はガッツリしっかり食べたいよねと話しつつお店を後にして、再びタクシーに乗ってホテルまで帰ってきたのだった。

長安東路 「九番坑」にて
おまかせコース 2人前
猪油飯
台湾ビール
 
 
全部で1600元

あっという間の3泊4日の台湾旅行は、明日でおしまい。
片付けられそうなものからスーツケースに詰め始めると、「あーあ、もう終わり……」という気分がひしひしと。